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原子力機構ニュースロゴ    Ver.39 発行 2007.7.20  日本原子力研究開発機構 広報部
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 理事長の岡アです。日頃より当機構のメールマガジンをご愛読頂き誠に有難うございます。
 新法人発足からこれまで月2回のペースで、当機構の研究開発成果やイベント情報などホットな話題をスピーディにみなさまの元にお届けするよう努めて参りましたが、この度、私どもの活動をもっと身近に感じて頂くため、『研究開発現場から』と題するコーナーを新設しました。
 そこでは、原子力の果たす重要な役割である環境・エネルギー問題の解決や新たな科学技術・産業の創出に向けた基礎・基盤研究から実用化を目指すプロジェクト研究まで、研究開発の現場で働いている研究者・技術者に毎回登場してもらい、仕事の様子や普段感じていることなどを直接お伝えします。
 原子力機構は、ホームページなどを通じ日頃から情報を積極的にお届けしておりますが、今後とも、国民の皆様のご意見やご質問にお答えしながら、一歩一歩着実に事業を進めて参りますので、宜しくお願い申し上げます

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【研究開発現場から】 安全研究センター  熱水力安全評価研究グループ  柴本 泰照
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 今回トップバッターとして、私が昨年まで実施していた放射線誘起表面活性効果に関する実験研究に関してお話したいと思います。
 放射線誘起表面活性(英語の頭文字をとってRISAと呼びます)とは、ある一定以上の吸収線量の放射線を酸化皮膜に照射することで表面の濡れ性が向上する現象です。我々はRISAによる濡れ性向上を利用して、限界状態の除熱能力(限界熱流束)をも向上させることができるのではないかと考えました。実験による調査を3年半かけて行ってきました。水が流れていない条件ではRISAによって限界出力が上昇することが確認されていますが、水が流れている流動場条件での確証例は今までにありません。
 限界出力とは、沸騰状態においても伝熱面上に液膜が存在できる最大の熱出力のことで、原子炉は限界出力で決まる許容値以下の熱出力で運転されることが決められています。もし、RISAによって限界出力が上昇することが判明すれば、安全余裕の実質的な向上のみならず、運転出力のアップグレードにもつながるため、大きな経済効果が期待できます。
 RISAを発現するには強力な放射線源が必要ですので、照射設備として当機構大洗にある材料試験炉(JMTR)を利用しました。今まで比較的少ない人数で実験や計算を行ってきた私にとって、試験炉という巨大な施設の利用は初体験です。原子炉施設の利用には多くの人々の協力と専門知識が必要です。当初は、原子炉施設を利用するために研究以外の打ち合わせや手続きの多さに当惑したこともありましたが、実験を安全に行うためにはこのようなバックアップは不可欠なものでした。また,試験炉の特徴として、原子炉内に装荷した照射キャプセルは取り出すまで一切触れることができず、設計の段階であらゆるトラブルを想定しておく必要があります。この仕様決定には経験したことの無い緊張感がありました。選択にはリスクがつきもので、リスク・マネジメントは人格の重要な構成要素であると思います。優柔不断な私にとっては非常にきつい仕事でしたが、ここでも,「実験を成功させる」という共通の目標のもと、設計に携わったメンバー各人がそれぞれに豊富な経験を活かしてアイデアを出し合い、限られた予算の中で仕様を詰めていくことができました。
 さて、肝心の実験結果ですが、原子炉のような非常に強力な照射環境では、流動場においてもRISAによって限界出力が上昇することが確かめられました。この実験結果は日本原子力学会の欧米誌に掲載され、昨年度の日本原子力学会賞技術賞をいただいております。このような大きな成果に結びついたのも、このプロジェクトが多くの方々の協力によって支えられていたからこそで、私自身、研究におけるチームワークの大切さを再認識することができたのも大きな収穫でした。

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(安全研究センターの概要)
 安全研究センターでは、軽水炉における高燃焼度燃料を利用した場合やMOX燃料を用いた場合の事故時の健全性、軽水炉プラントを長期にわたって使用したときの原子炉機器の健全性、核燃料サイクル施設の臨界安全性についての試験研究、原子力施設の安全性を評価するための確率論的安全評価に関する研究等を進めています。熱水力安全評価研究グループでは、事故時など異常な状態における燃料冷却の挙動や冷却手段の有効性の評価を行っています。これは、原子力発電所の「とめる」「冷やす」「とじこめる」という安全対策のうちの「冷やす」の部分に関わる研究です。

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【最新情報】
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07.7.9<プレス発表>高品質のレーザー駆動陽子線の繰返し生成に成功について掲載しました。

07.7.13<プレス発表>「幌延深地層研究計画 札幌報告会2007」の開催について掲載しました。

07.7.19<プレス発表>「平成18年度調査研究成果報告会」について掲載しました。

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【プレス発表】
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平成19年7月9日、高品質のレーザー駆動陽子線の繰返し生成に成功について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07070901/index.html

平成19年7月13日、「幌延深地層研究計画 札幌報告会2007」の開催について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/horonobe/press/07/press0713.html

平成19年7月19日、「平成18年度調査研究成果報告会」について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/horonobe/forum/07/seikahoukoku.html

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【採用情報】
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平成19年度事務系インターンシップ募集要項を掲載しました。
書類提出期限:平成19年7月31日(火)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/internship/internship02.html

核融合研究開発部門では、任期付研究員(「ジャイロ運動論モデルを用いたトカマク微視的乱流の研究」)を募集します。
書類提出期限:平成19年7月31日(火)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment13.html

量子ビーム応用研究部門では、研究系職員(キャリア採用)を募集します。
書類提出期限:平成19年8月3日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career07.html

核融合研究開発部門では、任期付研究員(「ITER用長パルス負イオン源と加速器の研究開発」)を募集します。
書類提出期限:平成19年8月8日(水)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment18.html

核融合研究開発部門では、任期付研究員(「ITERダイバータ不純物モニターの研究開発」)を募集します。
書類提出期限:平成19年8月8日(水)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment17.html

高崎量子応用研究所では、特定課題推進員を募集します。
書類提出期限:平成19年8月10日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment16.html

J−PARCセンターでは、研究系職員(キャリア採用)を募集します。
書類提出期限:平成19年9月28日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career08.html

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【調達情報】
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平成18・19年度 一般競争(指名競争)参加資格審査申請書の受付について。
http://www.jaea.go.jp/02/format/index.html

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■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。

■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
   http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html
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【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
         http://www.jaea.go.jp/
【お問合わせ】お問い合わせフォームより→ http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml

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