平成19年7月9日
国立大学法人京都大学化学研究所
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
高品質のレーザー駆動陽子線の繰返し生成に成功
−小型粒子線がん治療器の実現へ大きく前進−

 
 京都大学化学研究所【所長 江崎信芳】と、日本原子力研究開発機構【理事長 岡撫r雄】からなる共同研究グループは、レーザーを金属や高分子などの物質に照射することにより発生させ加速した陽子線(以下、「レーザー駆動陽子線1)」と言う)に対して、適切な周波数の高周波電場を作用させることにより、発生した陽子を効率よくほぼ単色のエネルギースペクトル2)をもつ陽子線に変換し、かつ、繰り返し生成することに世界で初めて成功しました。
 レーザー駆動陽子線のエネルギースペクトルは広がった分布を持つ(陽子線の中の陽子の速度が幅広い分布を持つ)ことが知られています。このレーザー駆動陽子線を産業、医療応用に向けて実用化するためには、このエネルギースペクトルを狭めること(速度を一定にそろえること)(単色化という)と、このような単色化されたビームを繰り返し生成することが必要です。しかしながら、今までは単色化された陽子ビームの一度きりの生成は実現されていたものの、繰り返し生成は実現されておらず、これが実用化への最大の課題となっていました。
 本研究において、加速器3)の分野で用いられている陽子線に対し特定の高周波電場を作用させる手法を世界で初めてレーザー駆動陽子線に対して適用することにより、ほぼ単色のエネルギースペクトルを持つ陽子線を繰り返し生成することに成功しました。これは、発生した陽子線に高周波電場をかけることにより、ある速度より速く進む陽子は減速し、またそれより遅く進む陽子は加速することで、結果として同じ速さにそろうという手法です。
 本成果は、レーザー駆動陽子線の単色化とその安定した生成に見通しを与えるもので、粒子線がん治療器4)等の医療応用への展開が大きく期待できます。
 なお、本研究成果の一部は、2007年7月20日に発行される応用物理学会英文論文誌 Japanese Journal of Applied Physics電子版に掲載される予定です。


 ・高品質のレーザー駆動陽子線の繰返し生成に成功 −小型粒子線がん治療器の実現へ大きく前進−
 ・補足説明資料
 ・用語解説
以 上
 

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門


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