核不拡散ニュース No.0050 2007.04.25
<イランの保障措置受け入れの状況>
ロイター通信等が伝えるところによると、IAEAのハイノネン事務次長はイランのIAEA代表部Soltanieh大使にあてた書簡の中で、4月15-16日、IAEAの査察官がナタンツの濃縮施設を訪問した際、1,312基の遠心分離機(8系統から構成)が運転されており、ウランが注入されつつあることが分かった、と述べている。
ムカジー外相が語ったところによれば、IAEAとの交渉の結果は、同委員会に諮られることになる。尚、IAEAとの交渉は、11月19日の週の後半から開始される予定である。
また、同事務次長は、無通告査察と封じ込め・監視を組み合わせた査察手段の濃縮施設への適用が、イランが合意した通りに履行されることを求めているとされる。更に、同書簡の中では、現在、建設中で、2009年に運転開始予定のアラークにある重水炉IR-40の設計情報をIAEAの査察官が検認するのを、イランが拒否したことに言及し、拒否の見直しを求めている。
書簡に対してコメントを求められたSoltanieh大使は、「濃縮はIAEAによる保障措置の下で継続している。全ては予定通り進んでおり、IAEAにはそのことを知らせている。」とのみ語った。
先週のニュースでもお伝えした通り、イランの核問題の外交交渉責任者である、ラリジャニ氏は、9日、3,000基の遠心分離機へのUF6の注入を開始したと述べており、IAEAが査察で得た情報とは異なっている。イランは18系統のカスケード、約3,000基の遠心分離機の設置を計画しているとされており、現在は、まだ途中段階にあると言えるであろう。
国際安全保障・科学研究所(ISIS)のオルブライト所長は、3,000基の遠心分離機があれば、1年以内に核弾頭を製造することが理論的には可能であるが、実際に可能かどうかは設置した遠心分離機がコンスタントに運転できるか否かによるところが大きいとしている。これまでのより小規模での運転の中でも、イランは技術的な障害に直面したことが伝えられており、実際にイランが遠心分離機を安定的に運転できる水準に達しているとは考えられていない。
また、イランは、国連安保理による制裁決議(1747)の採択後、IAEAへの協力を縮小する方向にあることが伝えられている。IR-40の設計情報検認の拒否はこうした動きの一環と見られるが、本書簡はイランに対して警告を発したものと位置づけることができる。
【解説:政策調査室 山村】