サイクル安全研究グループ

揮発しやすい放射性ルテニウムについて亜硝酸による抑制効果を確認

ガス状Ruは、廃液中のRu硝酸塩が硝酸により酸化されることで形成すると推測される一方、放射線分解により生成する亜硝酸で還元されるため、放出が抑制される可能性が考えられます。

本研究では、沸騰状態下における亜硝酸濃度とガス状Ruの放出の関係を実験的に明らかにするために、模擬廃液(廃液成分を非放射性核種で模擬した溶液)に亜硝酸ナトリウム水溶液を添加することで亜硝酸濃度を一定に維持した条件において、放出されるガス状Ruを捕集してその量を測定しました(図4-1)。

図4-1 試験装置図
図4-1 試験装置図

模擬廃液を一定の条件(模擬廃液:約103℃で、一定の蒸気発生速度)で加熱しました。乾燥空気を導入しポンプで排気することにより、加熱により発生したガスを回収液まで移行させます。この際、配管の途中でフィルタにより飛沫が捕集され、ガスのみが回収液で捕集されます。仕切りは亜硝酸ナトリウム(NaNO2)水溶液の添加時に発生するNOxの影響を小さくするためのものです。

試験の結果を図4-2に示します。模擬廃液中の亜硝酸濃度が高いほど模擬廃液からのガス状Ruの放出が抑制されることが分かります。さらに、亜硝酸濃度の増加に対してRu放出フラックスが指数関数的に減少することも初めて明らかになりました。放射性物質の放出を定量的に評価する上で重要な知見であり、活用が見込まれます。

図4-2 亜硝酸濃度とRu放出フラックスとの関係
図4-2 亜硝酸濃度とRu放出フラックスとの関係

沸騰中の模擬廃液における亜硝酸濃度とRu放出フラックスの関係を表した図です。模擬廃液中の亜硝酸濃度が高くなることにより、Ru放出フラックスが指数的に小さくなる関係が確認できます。

本成果は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「平成30年度原子力施設等防災対策等委託費(再処理施設内での放射性物質の移行挙動に係る試験等)事業」の成果を用いて取りまとめたものです。 (吉田涼一朗