国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

大量に塩(えん)を含む氷の特異な構造を解明

発表者:

S. Klotz (パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学/フランス国立科学研究センター 教授)

小松 一生 (東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設 准教授)

F. Pietrucci (パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学/フランス国立科学研究センター 准教授)

鍵 裕之 (東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設 教授)

A.A. Ludl (パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学 博士課程大学院生)

町田 真一 (一般財団法人 総合科学研究機構 中性子科学センター 研究員)

服部 高典 (国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 主任研究員)

佐野 亜沙美 (国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター 副主任研究員)

L.E. Bove (パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学/スイス連邦工科大学ローザンヌ校 研究員)

発表のポイント:

発表概要:

氷と塩とは互いに溶け合わない、という事実は古くから知られています。しかし、高圧氷と塩との反応については、これまで系統的な研究が行われておらず、ほとんど知見がありませんでした。パリ第6 ピエール・エ・マリ・キュリー大学のS. Klotz教授らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科小松一生准教授、鍵裕之教授、および日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター、総合科学研究機構 中性子科学センターとの共同研究で、塩化リチウムおよび臭化リチウム水溶液から、リチウムイオンや塩化物/臭化物イオンを高い濃度で含む氷の高圧相を合成し、これを大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学研究施設(MLF)にある超高圧中性子回折装置PLANETを用いて観察することに成功しました。得られた中性子回折パターンおよび分子動力学法による計算結果から、高濃度に塩を含む氷は、氷の高圧相である氷VII相に似た構造を持ちながら、水分子の向きについてはほぼ等方的であり、水素結合ネットワークの多くが破壊されていることを明らかにしました。このような壊れた水素結合ネットワークは他の形の氷や水素結合を持つ物質には見られないもので、新奇な物性を持ちうる可能性があります。

参考部門・拠点: J-PARCセンター

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