独立行政法人 日本原子力研究開発機構 / 倉敷繊維加工株式会社

平成26年7月1日
倉敷繊維加工株式会社
独立行政法人日本原子力研究開発機構

セシウム除去用給水器「クランセール®」の販売開始
-被災地区の復興の推進に向けて安心して水を利用できる環境に-

【発表のポイント】

セシウム捕集材を組み込んだ家庭用給水器の商品化と販売

倉敷繊維加工株式会社(クラボウグループ、取締役社長:青山克己。以下「倉敷繊維加工」という。)は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)により被災した地域の飲み水の安心を確保し、早期の復興を促進するため、独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:松浦祥次郎。以下「原子力機構」という。)の保有する電子線グラフト重合技術1)により共同開発したセシウムを選択的に吸着できる捕集材を組み込んだ家庭用給水器「クランセール®」を製品化しました。

図1:セシウム除去用給水器 クランセール®

本製品は、沢水などの湧水を生活用水として利用されている各家庭の台所などの蛇口に、容易に取り付けることが可能で、水に含まれるセシウムを取り除くことができる給水器です。この給水器は蛇口に取り付ける本体部分と、水に含まれるセシウムを取り除く捕集材(カートリッジ型フィルター)部分からなっており、各家庭で簡単に取り付けと交換ができるものです。


倉敷繊維加工及び原子力機構は、平成25年3月から、クランセール®を沢水や井戸水を飲用水として利用する福島県双葉郡川内村の家庭の台所で1年間実際にご使用頂き、セシウムの除去効果を確認するモニター試験を行いました。その結果、セシウムが何らかの理由で自然界から混入した場合であっても、取り付けた給水器に水を通すことにより、セシウムを確実に取り除くことができることを実証できました。

そこで、倉敷繊維加工は月産1万個規模の給水器の生産体制を整え、7月から販売を開始することとしました。本製品の供給につきましては、被災地の復興状況にあわせ、臨機応変に地元のご要望に応じていきたいと考えております。

【給水器クランセール®開発の背景と目的】

福島第一原発事故により被災した地域では、環境修復のための除染活動が随時進められ、その効果が着実に示されてきています。これにより、今後避難解除地域が拡がることが予想され、住民が安心して帰還できる条件を整える必要があります。被災した多くの地域には、上水道等の公共施設が少なく、沢水や井戸水だけを生活用水とする家庭では、より安心して水を利用できる環境が必要とされています。そこで、倉敷繊維加工では、この要望を受け、原子力機構と共同で開発したセシウム捕集材を充填した給水器を販売することにしました。セシウム捕集材は、倉敷繊維加工製の、酸やアルカリに強く、かつ軽量で加工性の良いポリエチレン製の不織布素材に、原子力機構が保有する電子線グラフト重合という技術でセシウムに親和性が高いリンモリブデン酸基を導入したものです。この捕集材は、平成24年11月7日にプレス発表した研究を展開させ、飲用水に適合するよう高度化した後、さらに数種のフィルターを組み合わせ、給水器として製作しました。給水器の性能は、平成25年3月から1年間の実地モニター試験により、水中に存在する全てのセシウムを除去できるという効果を示したことで、平成26年3月27日に原子力機構と共同でプレス発表を行いました。

以上の経緯から、倉敷繊維加工はセシウム除去用給水器として、商品名「クランセール®」を7月から販売を開始することとしました。

今後は、大規模な飲用水への適応に向けて、酪農業や浄水システムなどへの適応評価を進める予定です。

【プレス発表】

●平成24年11月7日発表「水中の放射性セシウム除去用カートリッジを製品化」
http://www.jaea.go.jp/02/press2012/p12110701/index.html
●平成26年3月27日発表「被災地域の復興の推進に向けた給水器の開発」
http://www.jaea.go.jp/02/press2013/p14032701/index.html

【用語説明】

1)電子線グラフト重合技術

プラスチックの様な高分子基材に電子線を照射した後、試薬と反応させて、接ぎ木のように分子の枝を導入し、プラスチックの特性を改良することができる原子力機構が開発した技術。不織布材料を基材として用いることで、金属イオンを吸着して捕まえる材料を作製することができる。

参考部門・拠点: 量子ビーム応用研究センター
福島環境安全センター

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