独立行政法人日本原子力研究開発機構/大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構/J-PARCセンター

平成25年7月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

セラミックコンデンサ中の水素不純物が絶縁劣化を引き起こすメカニズムを解明

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦 祥次郎)先端基礎研究センターと大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木 厚人)物質構造科学研究所、およびJ-PARCセンター(センター長 池田 裕二郎)の研究グループは、代表的なセラミックコンデンサ材料であるチタン酸バリウム(BaTiO3)に混入した微量の水素不純物が絶縁劣化を引き起こすメカニズムを明らかにしました。

チタン酸バリウムは、電子機器の小型化において欠かすことのできない積層セラミックコンデンサの主原料として広く用いられている誘電材料です。チタン酸バリウムの電気的性質は微量の不純物によって大きく変化することが知られており、そのメカニズムを理解し、コントロールすることは応用上非常に重要な課題となっています。

本研究では、積層セラミックコンデンサの焼成過程において混入する可能性が高い水素に着目しました。ただ、ごく微量の水素不純物を直接とらえるのは困難です。そこで、水素に代わって検出が容易な正ミュオン1)をチタン酸バリウムの結晶に打ち込み、これを模擬的な水素不純物とみなして局所的な電子状態を調べました。実験の結果、正ミュオンに対する電子の束縛は極めて弱く、そのためにこの電子は室温付近における熱エネルギーによって容易に結晶中を動きまわれる状態になり、電気伝導に関与することが分かりました。実際の水素不純物も同様のメカニズムにより電子を放出し、絶縁性の低下を引き起こすと考えられます。

本研究により得られた知見に基づいて、チタン酸バリウム系セラミックコンデンサの製造過程から水素混入の可能性を排除することにより、コンデンサの性能向上が期待されます。

本研究成果は、米科学雑誌「Applied Physics Letters」に 近日中に掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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