独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年3月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

直流100万ボルト超高耐電圧の絶縁変圧器の開発に成功=世界初=
〜ITER用中性粒子入射装置の電源製作技術を確立〜

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。)核融合研究開発部門NB加熱開発グループの渡邊和弘研究主幹らは、株式会社日立製作所と協力して、小型碍子(がいし)ブッシング1)と絶縁ガスを封入した繊維強化プラスチック(FRP)絶縁管を組み合わせた2重複合型絶縁ブッシングを世界で初めて開発し、直流100万ボルトを超える超高電圧を絶縁できる変圧器2)の開発に成功しました。これにより、ITER(イーター:国際熱核融合実験炉)計画3)で日本が開発を担当している中性粒子入射装置(Neutral Beam injector:NB)4)電源の製作技術を確立しました。

ITER用NBは、高エネルギーに加速した負イオンを中性化してプラズマ5)に入射し、核融合反応が起きる温度までプラズマを加熱します。負イオンを高エネルギーに加速するための電源は、直流100万ボルトの超高電圧を発生させることが必要です。この時、負イオンを作り出す電源部にも100万ボルトの超高電圧を印加して、電力を供給することが必要なため、電力を供給する変圧器には100万ボルトの電位差を絶縁できる性能が要求されます。これまでは碍子製コンデンサーブッシングによる直流50万ボルトおよび10秒間の絶縁が最大であり、従来の方法を用いて直流100万ボルトの絶縁を行うためには大きな碍子が必要となり、その製作が技術的に困難でした。

そこで原子力機構では、従来技術とは全く異なるアイデアに基づき、小型の碍子製コンデンサーブッシングと絶縁用ガスを封入したFRP絶縁管を組み合わせ、両者に絶縁を分担させる2重複合構造を考案しました。構造の決定に際しては、電界解析を実施して、可能な限り一様な電界分布となるように考慮しました。その結果、従来手法と比べ大幅に碍子ブッシングを小型化でき安価に超高電圧の絶縁を実現しました。これにより、従来の電圧と比較し2倍以上、時間では360倍となるITERの使用電圧を超える直流120万ボルトを1時間安定に絶縁することに成功し、ITER用NB電源のための直流100万ボルト絶縁変圧器の製作技術を確立しました。

本研究で開発した直流100万ボルトの絶縁技術は、今後普及が期待される100万ボルト級直流送電技術への応用も期待されます。なお、本研究成果は、平成25年3月22日に名古屋大学で開催された電気学会全国大会で発表しました。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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