独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年6月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

核融合炉での燃料生産に必要な材料の新しい製造技術を開発
−幅広いアプローチ活動のもと核融合炉に向けた燃料生産技術が大きく前進−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。)核融合研究開発部門ブランケット照射開発グループの中道勝グループリーダーらは、欧州と進める幅広いアプローチ(BA)活動1)において、核融合炉の燃料を効率よく生産するために必要な材料として高温で安定なベリリウム金属間化合物2)(以下、「ベリライド」という。)を量産化できる新たな合成技術を確立し、これを用いて核融合炉で使用可能なベリライドの微小球を世界で初めて製造することに成功しました。この成果はBA活動のもと、将来の核融合原型炉に向けた燃料生産技術の確立に大きく進展したことを示すものです。

核融合炉燃料のトリチウム3)は核融合反応で生じる中性子4)をリチウムにあてて生産します。このとき、より効率よく燃料を生産するために中性子の数を増やす中性子増倍材5)が不可欠です。これまでの候補材であるベリリウム6)は、高温域で化学的に不安定になる欠点があり、より安定なベリライドの製造技術開発を進めてきました。しかしベリリウムは表面が酸化しやすいため、従来の粉末冶金法7)では脆くて加工が困難なベリライドしか得られませんでした。そこで、原料粉末表面を放電で清浄にしたのち合成するプラズマ焼結法8)に着目し、BA活動の一環として青森県六ヶ所村の国際核融合エネルギー研究センターの原型炉R&D棟で合成条件の最適化を図った結果、加工性に優れた棒状のベリライドを製造することに成功しました。このベリライドを回転電極法9)の電極に用いて核融合炉で使用する目標形状である直径1mmのベリライド微小球を世界で初めて製造することに成功し、大量製造技術を確立しました。

この成果は、イーター10)での燃料生産試験をより確実にするとともに、核融合原型炉に向けた燃料生産技術の確立に大きく貢献するものです。また、本合成法は、軽量耐熱耐摩耗材の機械部品のアルミニウム系合金の合成(例えば車の高性能エンジン)など、広く一般産業分野への適用も期待できます。本成果については、特許申請中であり、6月28日から神戸で開催される第9回核融合エネルギー連合講演会で発表予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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