用語説明

1) 幅広いアプローチ(BA:Broader Approach)活動
BA活動とは、核融合エネルギーの早期実現を目指して、イーター計画の効率的・効果的な研究開発を支援・補完するとともに、将来の核融合原型炉実現のために必要な炉工学研究やプラズマ物理研究などの先進的核融合研究開発を行う活動で、欧州(EU)と締結した幅広いアプローチ協定の下、3つの事業を共同で実施しています。今回は、その中の1つである国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業での研究成果です。その他の2つは、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動とサテライト・トカマク計画です。
 幅広いアプローチ(BA)活動に関するホームページ http://www.naka.jaea.go.jp/BA/index.html(日本語)
 IFERC事業のホームページ http://www.iferc.org/(英語)
2) ベリリウム金属間化合物(ベリライド)
ベリリウムとその他の金属によって構成される化合物で、成分元素とは異なる特有の物理、化学及び機械的特性を有しています。核融合炉ではトリチウム生産性向上等の観点から、ブランケット内温度をより高くする必要があり、高温下で安定な中性子増倍材として、Be12Ti等のベリリウムより高融点材料のベリライドが注目され、製造技術開発及びその特性評価が進められています。
3) トリチウム
原子核が陽子1個と中性子2個からなる水素の放射性同位体。和名は三重水素。半減期12.3年で最大18.6keV、平均5.7keVのβ線を放出し、3Heに壊変します。自然界では宇宙線と大気構成元素の核反応によって生成し、その評価量は年間160〜200g程度と大変希少です。
4) 中性子
英語ではニュートロン(nとも書く)といい、素粒子の一つで、陽子とともに原子核を構成します。電荷は0、質量は1.6749×10-27kgです。単独では不安定で、半減期12.5分でβ-崩壊して陽子に変わります。電気的に中性で原子核内に容易に入ることができるので、核反応を起こすのに使われます。
5) 中性子増倍材
核融合ブランケットでは、燃料であるトリチウムを効率よく生産するために、核融合反応で発生した中性子をブランケット内で増倍します。その中性子を増倍する材料を中性子増倍材と称します。中性子増倍材としては、ベリリウムがその候補で、ベリリウム原子に1個の中性子があたると、核反応によって2個の中性子を発生します。
6) ベリリウム
ベリリウム(Be:Beryllium)は、原子番号4 でII 族の元素。常温常圧では銀白色の固体金属で細密六方晶の結晶構造をとり、軽く(1.85 g/cm3)、融点が比較的高く(1285℃)、高い熱伝導率などの特徴があります。また、核的特性の観点からは、原子個数密度が1.2x1023 n/cm3と、鉛の3.7倍高く、かつ、中性子吸収断面積及び捕獲断面積が小さいことなどから、ベリリウムは、中性子増倍材として有用でかつ、核融合においては必要不可欠の機能材料です。
7) 粉末冶金法
原料粉末を成型して焼結し、材料を造る製法です。ベリライド合成の場合、均質な組成を得るために、成型、焼結、粉砕を繰り返し行うため、工程が複雑化し、また不純物の混入を抑制することが困難でした。
8) プラズマ焼結法
原料粉末にパルス電流を与え、原料粉末表面を活性化して、焼結(粉末を成形し融点よりも低い温度で加熱して固めること)する手法で、簡便、短時間、低温度、高密度で延性があって脆くない材料を成型できる手法です。焼結処理のみでは、ベリリウムのように表面が酸化し易いために表面に酸化層を含む材料の場合、それを巻き込んで焼結するために、どうしても脆い材料しか焼結できませんでした。そこで原料表面を活性化(清浄)できる手法を検討した結果から、本法を適用し、プラズマ焼結条件を最適化することによって、原料表面の酸化層の影響を受けずに脆くないベリライドを効率よく合成するとともに、接合も同時に行うことに成功しました。
9) 回転電極法
原材料製の電極棒(今回の場合はベリライド)を回転させ、一方の金属電極棒(タングステンを使用)との間に放電を起こし、遠心力によって溶融滴(ベリライド)を飛ばして球にする手法で、ベリリウム金属の微小球の製造法として採用されている手法です。今回のようにベリリウムよりも硬いベリライドを原料の電極棒として用いた場合、放電を突然開始すると電極棒が破損してしまうため、前処理として十分に予備加熱し、放電時においても回転速度やアーク電流などの造粒条件を最適化することによってベリライドの微小球を製造することに成功しました。
10) イーター(ITER、国際熱核融合実験炉)
制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性を実証することを目指したトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉。1988年に日本・米国・欧州・ロシアが共同設計を開始し、2005年にフランスのカダラッシュに建設することが決定しました。2007年に国際機関「ITER国際核融合エネルギー機構(ITER機構)」が発足し、日本、欧州連合、ロシア、米国、中国、韓国、インドの7極が参加しています。現在、イーターが格納される建家の基礎工事を行っているところで、各極が調達する、イーターを構成する様々な機器の調達取り決めが、順次締結されている段階です。2020年からのプラズマ実験の開始を目指しています。イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500MW、エネルギー増倍率10を目標としています。
 ITER計画に関するホームページ http://www.naka.jaea.go.jp/ITER/index.html(日本語)
 ITER機構のホームページ http://www.iter.org/default.aspx(英語)

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