【用語解説】

1)CTBT(包括的核実験禁止条約、Comprehensive Nuclear- Test- Ban Treaty)
CTBTは、核兵器廃絶の重要なステップとして、全ての締約国に対してあらゆる場所における核兵器の実験的爆発および他の核爆発を禁止するとともに、これらの実験的爆発および他の核爆発が行われた場合には、国際的な検証活動による核爆発の事実確認をする仕組みを規定することにより、核兵器の拡散防止を目指すもの。
2)国際監視制度(IMS:International Monitoring System)
条約に定められた地震学的監視170カ所、放射性核種監視80カ所(内40ヶ所で希ガス観測も実施)、水中音波監視11カ所、微気圧振動監視60カ所、及び公認実験施設16カ所からなる計337カ所の監視観測施設とウィーンにある国際データセンター(IDC)、各国の国内データセンター(NDC)6)をネットワークで結ぶ国際的な監視制度。既に80%以上の観測施設が稼働しており、IDCを通じて各国NDCにデータ配信が日常的に行われている。国際協力のもとでIMSから得られるデータは、地球規模で収集され品質管理の確立したものであり、核実験抑止力としての国際的監視体制に寄与するのみならず、早期津波警報網や原子力災害監視等への利用の他、種々の科学研究目的にも応用されている。
3)地下核実験の検知・同定
「検知」とは何らかの事象があったことを把握することを意味し、「同定」とは、検知された事象が、最近行われた核実験を起源とするものであると判別することを意味する。
4)移動型希ガス観測装置(TXL: Transportable Xenon Laboratory)
CTBT国際監視ネットワークでは、核分裂生成核種である4つの放射性キセノン(131mXe、133Xe、133mXe、135Xe)を測定する。本装置は、12時間を1サイクルとして約15m3の大気を捕集し、Xeガスを分離・精製した後、β-γ同時計数法により放射性キセノンを測定するもので、検出器内のキセノン吸着によるメモリ効果を除去するため2台の検出器で試料とバックグラウンドを交互に測定している。全プロセスはコンピュータにより自動制御され24時間連続運転される。これまでの試験による最低検出可能濃度は133Xeに対して約0.2mBq/m3である。装置一式はコンテナ(6.1m 長 x 2.4m 幅 x 2.4m 高、重量:約10.5トン)に収められ、非常用発電機、気象観測センサー等が付属している。
5)CTBT機関準備委員会(Preparatory Commission for the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization)
条約に規定された国際検証体制を整備するため、1996年11月、ウィーンに設立された国際機関。現在の組織は、CTBT署名国(2012年4月現在、183カ国)をメンバーとして、最高意志決定機関であるCTBT機関準備委員会の下に執行機関としての暫定技術事務局(PTS:2011年12月31日現在、職員数252人、2012年予算規模:約1.2億ドル)を置き、検証体制の整備が進められている。
6)国内データセンター(NDC:National Data Center)
CTBT国際監視ネットワークから得られるデータをIDCから受信して解析評価し、各締約国が責任を有する条約遵守に係わる判断に関し、技術的評価を行う各国の機関。その規模や役割に関しては、各国の裁量に任されており、各国の判断に応じて整備することとなっている。原子力機構では、放射性核種データに関して、スペクトル解析技術や大気拡散バックトラッキング、データベース整備等、NDCに必要な研究技術開発を行うとともに、国際監視制度から得られるデータの解析評価を日常的に実施している。

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