独立行政法人日本原子力研究開発機構
平成23年2月15日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

回転運動から磁気の流れを生みだす手法を発見
−ナノスケールのモーター・発電機の開発に道−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:鈴木篤之)先端基礎研究センターの前川禎通センター長、国立大学法人東北大学(総長:井上明久)の齊藤英治教授(原子力機構先端基礎研究センター客員グループリーダー兼任)、国立大学法人京都大学(総長:松本紘)基礎物理学研究所の松尾衛博士(原子力機構先端基礎研究センター協力研究員)らは、物体の回転運動によって磁気の流れを生みだす手法を発見しました。

およそ100年前にアインシュタインは「一般相対性理論注1)」を見出し、さまざまな天体現象を予言しました。人工衛星を用いたGPSによる位置計測には、加速運動注2)を精密に扱う一般相対性理論が利用されています。また同時期に、アインシュタインはドハースとともに実験を行い、物体が磁気を帯びることで回転する「アインシュタイン・ドハース効果注3)」を発見しました。この2つの発見は、量子力学注4)の成立以前になされたため、ミクロな世界への応用までは至りませんでした。

地球やコマの自転のように、電子は「自転」をしています。量子力学によって、この電子の自転が磁気の起源であることがわかりました。近年、ナノテクノロジーのめざましい発展によって、ミクロの世界の電子の自転の向きを揃えて磁気の流れを生みだす技術が注目されています。

今回、原子力機構らの研究グループは、一般相対性理論を取り入れた電子の磁気の流れを記述する基礎方程式を導き、物体の回転(加速運動)によって電子の自転の向きを揃えて磁気の流れを生みだす新しい現象を発見しました。これは一般相対性理論とアインシュタイン・ドハース効果とを融合させ、ナノテクノロジーに結びつける研究成果です。

本研究によって、従来とは全く異なる、量子力学的原理に基づいた、ナノスケールのモーターや発電機の開発への道が開かれ、次世代ナノデバイス開発への貢献が期待できます。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters(フィジカル・レビュー・レターズ)」の注目論文として、オンライン版に2月17日に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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