平成21年11月16日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

核融合炉用マイクロ波発生装置で従来の1.5倍の世界最高出力を達成
−ITERにも適用可能な新方式−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」)は、世界最大級の核融合実験装置「臨界プラズマ試験装置(JT-60)」のプラズマ加熱用マイクロ波発生装置「ジャイロトロン」の高出力化に向けて研究開発を進めてきましたが、このたび、マイクロ波出力を従来の1.5倍に改善できる新方式を開発しました。その結果、プラズマを加熱するための実用的な出力維持時間(1秒以上)において、マイクロ波出力の世界最高記録を従来の1000キロワットから1500キロワットに更新しました。今回の成果は、現在建設中の国際熱核融合実験炉(ITER1))やJT-60SA2)(JT-60の後継装置)の加熱装置の高性能化に大きく貢献するものです。

マイクロ波は、核融合反応が効率よく起こる温度にプラズマを加熱するため等に用いられます。「ジャイロトロン」は、電子ビームを強磁場中で加速し、そのエネルギーをマイクロ波に変換する大型真空管であり、現在、高出力マイクロ波を1秒以上発生できる「ジャイロトロン」の開発が世界中で進められています。原子力機構は、これまでにマイクロ波への変換効率を改善することにより、エネルギー変換後の電子ビームを受け止めるコレクターの発熱を大幅に低減できる「高効率動作」を実証していました。しかしながら、超伝導コイル3)により磁場強度を変化させるこれまでの方法では「高効率動作」へ移行するまでに数10秒を要し、その間にコレクターにかかる熱負荷が更なる高出力化を妨げていました。そのため、「高効率動作」への移行に要する時間を短縮する技術開発が、より高出力のマイクロ波を発生させるための最重要課題となっていました。

このたび、原子力機構は、磁場強度と同様に電子ビームの軌道に作用し、かつ高速に制御可能な「電場強度」に着目して開発を進めました。その結果、電子ビームを引き出す電極の電圧を僅かに変化させるだけで、「高効率動作」へ約0.1秒(従来方式の約1/100)で移行できる新しい運転方式の開発に成功しました。これにより、「高効率動作」へ移行するまでのコレクターの温度に裕度を確保できたため、従来の1.5倍のマイクロ波出力が可能となったものです。

この技術開発により、「核融合炉用プラズマ加熱装置の高出力化」が実現します。また、研究中の「マイクロ波推進式ロケット4)」地上設備の高出力化/小型化など、様々な波及効果が期待できます。

本成果は、12月に京都で開催されるプラズマ・核融合学会で発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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