用語説明

1)ITER
「イーター」と読み、国際熱核融合実験炉の意味。核融合炉の科学的及び工学的実証をめざす大型国際プロジェクト「ITER計画」として、現在、日、米、露、EU、中国、韓国、インドの7極の協力のもと国際機関「ITER機構」がフランスのカダラッシュに建設を進めている。ITER計画については文部科学省等の次のWebページに記載されている。
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021.htm (文部科学省のWebページ)
 http://www.naka.jaea.go.jp/ITER/ (ITER機構のWebページ)
2)JT-60SA
茨城県那珂市の臨界プラズマ試験装置JT-60を超伝導化改修して建設する新しい核融合実験装置。日欧が共同出資するサテライト・トカマク計画の中で、現在、超伝導化改修が進められている。
3)超伝導コイル
超伝導体の抵抗が極低温でゼロになる性質を活かして作ったコイル。エネルギーのロスが無く,ジャイロトロンの動作に不可欠な強力な磁場を効率よく作ることができる。ただし,電流を急に変えると超伝導状態が失われる場合があり、磁場の強さの変化速度には制約がある。
4)マイクロ波推進式ロケット
マイクロ波推進は、飛んでいるロケットに地上からマイクロ波ビームを照射して飛行エネルギーを供給する、研究中の新しいロケット推進方式。ロケットに取り付けた軽いミラーでマイクロ波ビームを集光し空気を燃焼させて推進エネルギーを得るため、ロケット本体に重いエンジンや燃料を搭載する必要がない。このため、ロケットの打ち上げ費用を大幅に低減できる。また、ジャイロトロンを使用したビーム発生源を一度建設すれば、地上設備として繰り返し用いることができ、打ち上げコストは電気代だけとなるため、打ち上げにかかるコストを大幅に下げることができる。
5)プラズマ中で発生した乱れ
核融合炉においては圧力の高いプラズマを定常的に維持する必要があるが、プラズマの圧力の増加とともに磁気的乱れ(「不安定性」)が発生しやすくなる。磁気的乱れがない時は、プラズマは入れ子状になった磁力線により閉じ込められている。磁気的乱れが現れると「磁気島」と呼ばれる構造が現れる。そうなると、熱や粒子が外に逃げ、その結果プラズマの圧力が低下してしまう。これは、容器にお湯(熱や粒子)を注いで蓄えるとき、穴が空いてしまいお湯が漏れ出すような状況に似ている。プラズマの圧力を維持するためには、この乱れを抑制することが必要になる。

6)乱れの抑制
磁気島が現れた場所(幅およそ10 cm)にピンポイントで電磁波を入射して電流を流すことにより磁気島を縮小・消滅させることができる。JT-60では、4基のジャイロトロンを用いて約3000キロワットの電磁波を入射することにより、プラズマ内部の数cm程度の領域に数万アンペアの電流を流して磁気島を消滅させている。磁気島を消滅させるためには、磁気島めがけて高い精度で電磁波を入射する必要がある(ずれが±2cm程度以内)。JT-60では、実時間で磁気島の発生位置を見つけ、反射鏡を自動的に動かして磁気島を消滅させることに成功している(平成15年5月25日プレス発表)。国際熱核融合実験炉(ITER)でも同様の反射鏡駆動方式により磁気島を消滅させることが計画されている。JT-60はこのような磁気島の抑制に関する研究で世界トップレベルにある。


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