補足説明資料

全体背景

これまで、カザフスタン国立原子力センター(NNC)と原子力機構(JAEA)は、口上書の取り交わしに基づき、EAGLE及びEAGLE-Uの契約を結び、高速増殖炉の安全性に関する研究開発を実施してきた。また、NNCが行うISTC活動について、「核融合炉増殖ブランケット材料の照射試験」をコラボレータとして支援するとともに、昨年10月から開始された「試験研究炉で照射された使用済ベリリウムのリサイクルに関する研究」に関してもコラボレータとして支援している。

一方、上記研究協力の成功により裏付けられた信頼関係を土台に、今後も、両機関が、「それぞれ優れた専門知識と技術を有する両機関間のより一層の協力が、相互にとり有益であり、原子力の世界的な研究開発に対して堅実な貢献をすることを認識し、より一層の協力に向けて具体的な手続きをとる意図を共有する」という視点から、平成19年4月30日に「原子力研究開発における将来の協力のための覚書」を締結した。

本研究協力覚書に基づき、高温ガス炉に関する研究協力、試験研究炉技術及び核融合に関する研究協力について平成19年度からNNCと原子力機構で協力する実施内容について検討し、各研究分野でより具体的・詳細な内容を協議してきた。また、同国政府機関及び原子力委員会、在カザフスタン日本大使館にも訪問し、口上書に関する情報交換を行ってきた。

これらの検討・議論、及び情報交換により、NNCと原子力機構は、エネルギー分野における長期的な協力を継続することを希求し、高温ガス炉、試験研究炉及び核融合分野での協力のさらなる発展のため、研究開発協力の実施取決めを締結するに至った。

原子力科学分野

(1) 高温ガス炉及びその応用技術

カザフスタン政府は、現在策定中の国家原子力計画において、 「高温ガス炉の成立性検討」、「小型高温ガス炉の実現」、「中型高温ガス炉」を計画している。これに対しNNCは、国家原子力計画発効後の「高温ガス炉の成立性検討」を予定しており、原子力機構はそのための技術協力を要請されている。これまでに、原子力機構は図2.1に示す特長を有する熱電併給小型高温ガス炉の技術的検討を進めてきている。また、カザフスタン高温ガス炉計画への支援活動の一環として、図2.2に示すように、カザフスタン原子力委員会との高温ガス炉の安全性研究に関する情報交換のための覚書、国立カザフスタン大学との高温ガス炉技術に関する将来の人材育成のための覚書を締結してきた。今回、開始する高温ガス炉とその応用技術に関する研究開発協力は、カザフスタンに設置する小型高温ガス炉の成立性評価に役立つとともに、我が国における高温ガス炉の実用化のためにも有益である。

図2.1 カザフスタン共和国における熱電併給小型高温ガス炉

図2.2 JAEAとカザフスタンとの国際協力

(2) 試験研究炉に関する原子力技術

NNCの核物理研究所(INP)と試験研究炉技術に関する研究協力の検討及び協議を行い、炉内計測技術に関する情報交換(タスク1)として、基本的照射技術の標準化と新たな照射技術の開発、試験研究炉でのRI製造に係る照射技術に関する情報交換(タスク2)として、99Mo製造技術の開発、試験研究炉で使用したベリリウム製中性子反射体のリサイクル等に係る情報交換(タスク3)の3つの実施内容を絞るとともに、各タスクの実施担当者について協議した。なお、高温ガス炉用燃料の健全性に関する照射試験のためのin-situの破損検出技術開発についても情報交換を行い、協議することになった。

各タスクの課題、協力内容及び協力のメリット及び本協力による期待される成果を図3.1〜図3.3に示す。

図3.1 炉内計測技術等の標準化

図3.2 試験研究炉でのRI製造に係る照射技術

図3.3 試験研究炉で使用したベリリウム製中性子反射体のリサイクル

核融合エネルギー及び技術分野

NNCでは、小型トカマク装置(KTM)を建設中である。KTMは、特にダイバータ注)部が大きく、かつ真空を維持したままダイバータ材料の取り替えが可能な構造になっている。このため、ダイバータ板が損傷を受けても簡単に交換でき、実験の継続が可能である。さらに、熱負荷抵抗性を向上させるために、世界で初めて液体リチウムをトカマクのダイバータに使用する計画を進めている。これらの特徴を生かして、ダイバータ物理や原型炉の大きな熱負荷に耐えられる新しいダイバータ概念に関する研究協力等を進める予定である。

また、核融合炉からエネルギーを取り出すとともに燃料であるトリチウムを製造するブランケットについて、カザフスタンが有しているベリリウムに係る取扱技術、製造技術を活用してより効率のよいブランケットの開発に関する研究協力も進める予定である。

ダイバータ注)トカマク型核融合炉では,炉心プラズマから流出する熱および粒子の処理は,ダイバータとよばれる領域によって行われる.すなわち炉心プラズマで発生した熱および排気される粒子は,磁力線に沿って周辺プラズマを通ってダイバータ領域へと導かれる。このダイバータは高い熱流束や粒子束を受け止めるため、優れた除熱機能、排気機能が必要である。

KTM装置、ブランケットの構造


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