平成20年7月17日
J-PARCセンター

J-PARCの中性子回折実験装置が世界最高の分解能を達成

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木厚人 以下「高エネ機構」)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄 以下「原子力機構」)の共同運営組織であるJ-PARCセンター(センター長 永宮正治)は、大強度陽子加速器施設J-PARC1)の今年12月の一部施設利用開始を目指して調整運転を進めています。

このうち、物質・生命科学実験施設(MLF)の「超高分解能粉末中性子回折装置SuperHRPD2)」が、機器調整過程の平成20年6月末、世界最高の分解能3)を達成したことを、データ検証の結果、確認いたしました。

今年12月に中性子利用実験を開始するJ-PARCは、SuperHRPDを初めとする高性能実験装置が幅広いユーザーに利用され、最先端研究の進展に大きく貢献することが期待されています。

●概要

J-PARCは、光速近くまで加速した高エネルギー陽子をターゲットに衝突させることにより生み出される大強度量子ビーム4)を利用して多様な実験を行う研究施設であり、このうちMLFは核破砕反応5)により強力なパルス状中性子を生み出す施設です。

SuperHRPDはMLFの中性子利用ビームライン、BL-08に設置された実験装置です。粉末にした物質に様々な角度からパルス状の中性子を照射し、通過する中性子線の強さを解析することにより物質中の原子の位置や並びなどを調べることができます。今回SuperHRPDが達成した世界最高の分解能となる0.037%という値は、英国ラザフォード・アップルトン研究所が持つ同種装置の分解能0.05%を上回る値で、SuperHRPDが世界有数の高性能な実験装置であることを意味します。今回の成果は、高エネ機構と原子力機構における高性能パルス中性子源の開発と、100メートルに及ぶ長尺ビームラインで中性子を輸送する技術、高性能計測技術等を結集して達成したものです。

本成果により、物質の原子レベルでの構造をより詳細に知ることが可能となります。SuperHRPDは世界最高性能の実験装置として、磁性や誘電性等を併せもつマルチフェロイック物質6)や強相関電子系物質7)などに関する、最先端の物質構造科学研究への貢献が期待されています。

以上

参考部門・拠点:J-PARCセンター

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