(用語解説)
 
1)量子ビーム
 高エネルギー陽子を標的核に衝突させると、2次粒子として中性子、パイ中間子、K中間子、ミュオン、ニュートリノなどが発生します。J-PARCの実験施設では、これら「量子」と総称される粒子をビームとして利用します。


2)核破砕
 約100MeV以上の高エネルギーの陽子を水銀、鉛ビスマス、鉛、タングステン、タンタル、ウラン等の標的に入射することにより、標的の原子核から陽子及び中性子などの多数の二次粒子を放出する反応を指します。


3)微小試験片専用の試験機
 原子炉などでの照射とは異なり、高エネルギー陽子ビームの直径は数cm程度であり、一般的に照射する試料は1〜2cm程度と小さくならざるを得ません。原子力機構と(株)米倉製作所は共同して、長さ16mm、幅2mm、厚さ0.4mm程度の微小試料に対して繰り返し力を加えて材料特性を測定する試験機を開発しました。


4)放射性廃棄物処理・処分の負担軽減に貢献することを目指した技術
 原子力機構では、原子力発電の結果生じる高レベル放射性廃棄物を長寿命核種と短寿命核種*とに分離し、長寿命核種を多く含む新しい燃料を作り、より寿命の短い核種や放射線を発生しない核種(安定核種)に積極的に変換する「核変換技術」の基礎的な研究を行っています。本研究協力で得られる成果は、核破砕中性子源を用いた核変換技術の研究に役立つことが期待されます。


*長寿命核種と短寿命核種
 放射性核種は不安定な状態にあり、放射線を放出して崩壊し、より安定な物質に変わろうとします。放射性核種が崩壊して原子の数が元の半分に減衰するまでの期間を半減期と呼び、放射性核種はそれぞれ固有の値を持っています。一般的に半減期が概ね30年を超える核種を長寿命核種、30年程度以下の核種を短寿命核種と呼びます。

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