2007年12月19日
豊田通商 株式会社
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
 
豊田通商と原子力機構、循環型社会に向けた資源リサイクル技術の共同開発を始動
<原子力研究用に開発した高度な測定技術や真空技術を応用して「金属資源の先進的リサイクルプロセス」を共同開発する>

 
 豊田通商株式会社(以下「豊田通商」という、本社:愛知県名古屋市、社長:清水順三)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という、本部:茨城県東海村、理事長:岡撫r雄)は、このほど、原子力研究の高度技術を活用して、世界規模の経済成長とともに需給の逼迫が避けられない各種金属資源を、環境に配慮しつつ効率的・効果的かつ安全にリサイクルする先進的プロセス技術の共同開発に着手しました。
 これは、両者が先に締結した包括的な共同研究契約に基づく具体的共同作業の一つとして技術的検討の末、今回実施に踏み切ったもので、21世紀社会が必要とする重要なキーテクノロジーの一つである金属資源の先進的リサイクルプロセス技術を確立して、循環型社会構築への貢献を目指す産学連携による意欲的試みです。


1 背景
 地球規模での環境悪化とともに人口爆発の脅威が現実化している21世紀の人類社会にとって、グローバルな観点からの地球環境の負担軽減が急務となっている昨今、無駄のない資源利用を目指す「資源リサイクル」技術の速やかな確立は、国や産業の種別を問わない全人類的重要課題です。
 なかでも製造業全般を支えている金属資源の確保は最重要課題の一つと位置づけられており、最近では、鉱山からの採掘原料中心から廃棄された金属製品の再利用依存へとリサイクルの比重が飛躍的に高まってきました。
 金属製品のリサイクルは、紙や石油製品のそれと異なり、最終的には元素別回収を徹底することによって、鉱物資源からの製造と同品位の素材を生産できることに特長があります。言い換えれば、リサイクル技術の確立によって人類は廃棄物という新しい鉱脈資源を手にすることができるのです。
 しかし、これまでのリサイクル技術では、高コストのものは対象から外されているため、未回収のまま廃棄物として地表の各所に分散蓄積され、これによる土壌汚染や最終処分場確保が大きな問題となっています。また、鉱山からの原料採掘自体も自然破壊や環境破壊を引き起こすなど弊害を抱えています。これらの状況から、より広い対象を扱うことの出来る低コストの革新的なリサイクル技術を開発し、一刻も早く金属資源の精製回収プロセスに導入することが待たれていました。

 豊田通商は、トヨタグループにおける唯一の商社として、創業以来、地球環境の保全を重要な経営課題として取り組んでおり、これまでに様々な価値を提供してきました。近年では、従来型の物流・ファイナンス等の機能に加え、加工拠点を構えた製造事業に関わる機能の拡大を図っています。中でも、リサイクル事業は環境ビジネスの柱として金属を中心に注力しています。

 原子力機構は、原子力全般の総合的科学研究機関としてこれまで広汎な研究開発を行い、種々の優れた測定技術を開発してきた実績があり、とりわけ原子力研究の過程で開発した高性能ガス分析技術を応用した、多種類のガスをppmオーダーで瞬時、連続に測定できる「グラビマス」シリーズのガス分析器を開発し、金属素材中の不純物ガス測定、食品の鮮度判定、アスファルトの劣化判断、森林大気の成分検出から人体の呼気ガス測定まで幅広く各種のガス分析需要に応えてきました。


2 金属資源のリサイクルにおける課題
 金属素材のリサイクル材は、原料が多種多様な未知の不純物を含んでおり、不純物の種類も産業の展開に応じて随時変化することから、鉱物資源から精製して得た素材(ヴァージン材)と比べて一般に低品位に位置づけられています。また、未知の物質が精製プロセスと予想外の化学反応を起こしてプラントの故障につながる可能性も否定できません。
 リサイクル金属材の課題の主なものは、未知の物質の混入により不純物が一定しないため、常に対応する精製プロセスの変更を行わなければならず、これは素材産業にとって産業構造上の困難な課題となっています。


3 豊田通商と原子力機構による取り組み
 このような状況のもとで豊田通商と原子力機構は、金属資源の先進的リサイクルプロセス開発を目指して、現在自動車部品の多くに用いられているアルミ等金属素材の精製、生産について、安全な製造プロセスの確立も視野に入れた
    1) 高度ガス分析技術に基づく「先進的品質管理システム」の確立
    2) 自動車部品、自動車用蓄電池等の「金属元素別精製技術」の開発
を開始するとともに、
    3) 排出ガスの徹底管理等による「環境に配慮した生産技術」の確立
の技術検討に入ることを表明します。
また、近い将来
    4)廃車からの「ガス回収技術」の共同開発についても開始する予定です。


  添付1 アルミ資源のリサイクルフロー(PDF、371kバイト)
  添付2 共同研究開発の概要(PDF、278kバイト)
  【参考資料
以 上

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