(用語解説)

1) 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設中の陽子加速器施設と利用施設群の総称。
加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端研究及び産業利用が行われる予定。

 
2) 水銀循環設備(→補足資料1
水銀ターゲットに水銀を循環・供給するための設備で、水銀ターゲットの陽子ビーム進行方向後ろ側に設置される。主な構成機器は、ポンプ、熱交換器、及びサージタンクで、これらの機器が、直径150mmの配管でつながれ、放射化水銀を封じ込めた状態で循環させる。

 
3) 永久磁石回転式電磁ポンプ(→補足資料2
永久磁石回転式電磁ポンプは、円筒状のマグネットローターと呼ばれる機器の周囲に水銀流路を設置する。マグネットローターの表面には永久磁石のN極とS極を交互に配置し、マグネットローターの回転により発生するローレンツ力(電磁力)によって水銀を流動させる。
電磁ポンプではポンプ効率が悪いため、高効率化が重要な課題である。流路構造材に関しては、板厚を厚くすると電磁発熱によるエネルギー損失が大きくなりポンプ効率が低下し、薄くすると構造強度が不十分となる。
原子力機構と助川電気工業(株)では、試作機を製作し、ポンプ特性を評価するとともに数値解析を実施して、最適な磁場分布、水銀流路構造材の板厚などのポンプ形状について検討を行ってきた。

 
4) 中性子ビーム
陽子を核破砕ターゲットに入射させると中性子等が放射状に発生する。
この中性子を、最適なエネルギーに減速し、ある一定方向に取り出したものを中性子ビームという。この中性子ビームは、中性子散乱等の実験に用いられる。J-PARCにおける中性子ビーム強度は、同種の中性子発生装置としては、これまで世界最高性能だった英国のISISと比較して約6倍以上の強度を持つ。

 
5) ターゲット
高い原子番号の原子核(重金属等)を入射標的にして中性子発生効率を高めた標的システムを(核破砕)ターゲットと呼ぶ。
従来の標的システムでは、タングステンやタンタルなどの重金属固体ターゲットを水で冷却しており、陽子ビームの最大出力は160kW(ISIS:英国)である。陽子ビームの出力が高くなると、冷却のための水の量を増やさなければならず、相対的に標的システム内での重金属固体ターゲットの割合が減り、中性子の発生効率が悪くなる。

 
6) 核破砕
高いエネルギーの陽子ビームが原子核に入射すると、原子核がバラバラになり多量の中性子などが放出される。この核反応を核破砕反応と言う。また、この反応の際に熱の発生を伴う。
 

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