平成19年2月8日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
独立行政法人日本原子力研究開発機構東海研究開発センター原子力科学研究所
放射性廃棄物処理場焼却・溶融設備における火災について

 
 原子力科学研究所の焼却・溶融設備で発生した火災の原因と対策について本日、報告書を国及び茨城県並びに関係自治体に提出いたしましたのでお知らせいたします。報告の概要は以下のとおりです。
 
1. 経緯
 平成18年2月13日(月)15時33分頃、独立行政法人日本原子力研究開発機構東海研究開発センター原子力科学研究所放射性廃棄物処理場焼却・溶融設備のプラズマ加熱式の溶融炉(以下「プラズマ溶融炉」という)において、放射性廃棄物を模擬した非放射性の廃棄物を溶融試験中、プラズマ溶融炉の溶融物排出口とチャンバの間に接続されている蛇腹付近から火災が発生した。直ちに消火活動を行い、同日18時00分東海村消防署により鎮火が確認された。火災による環境並びに作業員等への影響はなかった。(既発表済み)

 
2. 原因
(1)発火の過程
 プラズマ溶融炉の蛇腹は、5枚の膜を重ねた構造となっており、その内部には、内側を溶融物の飛沫から保護するためのスリーブが取り付けられている。(図−1)
 自主点検の一環として蛇腹内部の点検を実施していたが、スリーブの損傷の進行に伴い、今回の試験運転開始前に損傷箇所の補修のため、炭化アクリル繊維布(以下「補修シート」という)を取り付けた。(図−2)
 火災は、溶融物飛沫の付着及び輻射熱により補修シートが発火・燃焼、その熱が外層に伝わることで、蛇腹の外層のシリコンゴムコートテトロン布が発火・燃焼したものと推定した。(図−3)

(2)発火に至る原因の特定
 発火に至る原因として、以下の事項を特定した。
 ・ 補修シートとして黒色で耐熱性の低い素材を選択し、かつ、溶融物の飛沫及び輻射熱を受けやすい取り付けを行い、また、そのことを報告しなかったこと。(不適切な保守管理)
 ・ 実験条件を変えてこれまでより溶融物の流動性を高めたことにより、飛沫の飛散量が増加したことに対して適切な措置が採られなかったこと。(不適切な運転管理)

(3)原因を招いた要因
 原因を招いた背景について、以下の要因を挙げた。
 ・ 運転停止中に異状を認めた場合の措置及び経験のない補修に対する情報の共有意識がなかった。
 ・ 試験条件に対応した注意事項、確認事項等に着目した要領の定めがなかった。
 ・ 運転停止中の巡視点検要領及び経験のない補修実施時の措置並びに試験運転管理への対応に係る定めがなかった。(施設品質保証計画の不備)
 ・ 高温溶融物取扱に関して、反復教育訓練実施不足により意識が低下していた。


3. 対策
再発防止対策として、今後、不適切な保守管理及び運転管理が発生しないように、以下の処置を実施する。
運転停止中の巡視点検要領及び経験のない補修実施時の措置を運転手引に定める。
課内工程会議を品質保証上の内部コミュニケーションの手段として位置付け、情報交換が積極的に行われるように会議を運営する。
試験運転に関し、試験目的、試験内容、注意事項等を明確にした試験計画実施要領を作成する。
上記保安活動に関する対応要領を施設品質保証計画において明確化する。
高温溶融物取扱に関する教育訓練用テキストを作成するとともに、定期的に当該教育訓練を実施し、高温溶融物取扱施設に従事する運転員には、当該教育を受けた者を配置する。


 また、これらの対策について他の施設への水平展開を適切に実施する。(参考資料

添付資料:
 図−1 プラズマ溶融炉概要図
 図−2 補修前のスリーブの損傷状況及び補修シートによる補修状況
 図−3 蛇腹部外層膜(シリコンゴムコートテトロン布)の焼損状況
 
以 上

もどる