平成18年11月22日
J−PARCセンター
 
J−PARCリニアックのビーム加速試験を開始
 
 独立行政法人 日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一)及び大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木 厚人)の共同組織であるJ−PARCセンター(センター長 永宮正治)は、この度、建設を進めている大強度陽子加速器施設J−PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)の初段加速器であるリニアックにおいて、平成18年11月21日に負イオン化した水素(※)ビームを発生・加速させることに成功したことを確認し、本格的なビーム調整試験の段階に入りました。
    (※) リニアックは水素原子に電子を付着させた「負水素イオン」という特殊な状態にして加速しています。次段加速器である3GeVシンクロトロンへ入射する際に電子がはぎ取られ、陽子になります(用語解説参照)

 J−PARCは、両機構が平成13年から茨城県東海村の日本原子力研究開発機構原子力科学研究所内において建設を進めてきたものであり、10月はじめからリニアックの調整運転を実施してきました。リニアックは全長約330mの直線型の加速器ですが、第1期分として整備した約120mの装置でエネルギー約180MeV(1億8千万電子ボルト、光速の約50%のスピード)、ピーク電流30mAまで加速します。今回はこのうちリニアックの最初段部分(高周波四重極型リニアック(RFQ))において、約3MeV(3百万電子ボルト)、ピーク電流5mAまでの加速に成功したものです。今後さらにビーム調整試験を行い、来年夏頃には所期の性能である180MeVまで陽子を加速させる予定です。

 その後、更に陽子を加速する3GeVシンクロトロン加速器や50GeVシンクロトロン加速器のビーム調整試験を行い、平成20年秋以降には、中性子や中間子、ニュートリノなどを用いた種々の最先端科学分野の様々な研究者による研究利用を開始する予定です。

 J−PARCは、中性子を利用した研究施設としては米国オークリッジ国立研究所のSNS(Spallation Neutron Source) などと並ぶ世界最高性能の研究施設となります。またK中間子を利用した研究施設としては世界唯一、さらにニュートリノ研究施設としても世界有数の性能を誇る、我が国の21世紀の科学や技術の研究・発展に大きく貢献する最先端の研究施設です。大強度陽子ビームから発生する中性子や中間子などの様々な二次粒子を利用して、原子や原子核、素粒子の極微の世界を探求する研究は、物理学、化学、生物学などの基礎科学の発展に貢献するとともに、ライフサイエンス、工学、情報・電子、医療など、広範な研究分野への利用が期待されています。


 【用語解説
 【補足説明
以 上

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