【補足説明資料】

1. 概要及び経緯
 日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)では、国際熱核融合実験炉(ITER)の炉内の主な構造物に付属している冷却配管を対象として、内径100mmの冷却配管の内側からアクセスし、曲がり部を通って内径50mmの枝管を溶接・切断・検査するツール(図1参照)の開発を進めてきた。この配管内アクセスによる溶接・切断ツールが任意の場所で配管の加工を行うためには、目的の場所まで配管加工のためのパワーを伝送する必要がある。また、溶接・切断前後や加工中の確認作業も必要である。しかしながら、配管内での溶接・切断作業のため、その作業状況を目視で監視することは極めて困難となる。このため、原子力機構では、配管内という狭隘な空間において、溶接・切断加工の状況や加工前後の観察を行うことを目的に、図2に示すように1系統の光ファイバとレンズ光学系で溶接・切断・観察作業を可能とする複合型光ファイバシステムの開発を行い、観察画像と1kWのYAGレーザー光の併列伝送に成功した。
 この複合型光ファイバは、ITERの遠隔保守以外にも適用可能であると考え、さまざまな分野での応用を検討している。現在、複合型光ファイバに関する特許を活用して、ライフサイエンス分野における「低侵襲型レーザー計測・治療装置」を開発することを目標とし、複数の企業および大学と連携して開発を行っている。





2. 今回の成果
 これまでに開発してきた複合型光ファイバをライフサイエンス分野において適用するため、原子力機構では、国立成育医療センターと協力して、図3に示すような先天性異常を有する胎児及び胎盤に使用可能な胎児外科治療用レーザー鉗子型内視鏡(通称:Tainai-LaMiel)を開発した。今回の開発では、複合型光ファイバの周囲に照明光をバンドルし、光ファイバ先端部のレンズの極小化(外径約φ1mm)を図った。そして、40Wのレーザー出力においてもレンズが損傷なく使用可能であることを確認した。



 図4に示すような双胎間輸血症候群(TTTS)において、これまでは母親の背側に胎盤が付着する場合には治療が比較的容易とされたが、腹側に胎盤が付着している場合には治療が困難の場合もあった。
 そこで、図5に示すように、開発したTainai-LaMielを適用することにより、腹側に胎盤がある場合でもレーザー照射が容易となる。
 また、図6に示すように、Tainai-LaMielを使用してレーザー照射を行う場合、レーザー照射と目視観察が一体化しているため、目的の場所への確実な照射が可能であり、より高い治療効果が期待できる。






 今後は、対象血管の血流計測及び画像処理による視野範囲の拡大等の機能が追加される。また、最初に国立成育医療センターにて動物実験を行い、その後臨床への応用が検討される予定である。

以 上

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