『第2回 原子力機構報告会』理事長開会挨拶
 
 原子力機構が、平成17年10月に発足してから2年を経過しました。この間、円滑に業務が進められ、着実に研究開発の成果をあげることができたのも、ひとえに、本日、ご臨席を賜りました皆様をはじめ、各界各位のご指導とご支援の賜物と深く感謝いたします。
 この間、原子力を巡る情勢は大きく進展して参りました。昨年のロシアのサンクトペテルブルグG8サミットに引き続き、本年のドイツ・ハイリゲンダムサミットにおいても、エネルギー安定供給と地球温暖化問題の解決に原子力の果たす役割の重要性が強調され、来年、北海道 洞爺湖サミットの重要テーマになると確信するところです。特に地球温暖化問題は、今年のノーベル平和賞を頂いた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の本年発表した第4次報告において、地球温暖化はこれまでの予測を遙かに超える速さで進展し、今世紀中にも深刻な影響をもたらすことが確実になっていることが言われています。また、エネルギー問題は中国、インド等の経済成長を背景に石油価格が高騰し、我が国はもちろん世界の持続的発展にとって喫緊の課題となっております。 このような中、エネルギーの安全確保を図りつつ、我が国が提唱した「Cool Earth 50」は、世界全体の温室効果ガスの排出量を2050年までに半減することを全世界に共通する目標とするものであり、原子力委員会におかれても、これらの課題に如何に取り組むべきかの検討に着手されたところです。もちろん、我が国における原子力政策については、原子力政策大綱や原子力立国計画において核燃料サイクルの確立を堅持することをはじめとする基本方針が定められております。

 原子力機構は、これらの基本方針の下、原子力の総合的研究開発機関として、果たすべき役割と責務の重要さを認識し、社会や国民の負託に応えるべく、事業を進めてきております。
 「もんじゅ」の運転再開をはじめとする国家基幹技術としての高速増殖炉サイクル技術開発の展開、長年の懸案であった国際熱核融合実験炉(ITER)計画や原型炉作りに向けた幅広いアプローチ計画の開始、大強度陽子加速器完成J−PARCの完成など、世界最先端のプロジェクトが今まさに進もうとしているところであります。また、原子力を進めていく上で大きな課題である高レベル放射性廃棄物、安全・核不拡散に関する研究や自らの放射性廃棄物の処理処分の業務を着実に推進するとともに、産業界、地域の大学の皆さまとの連携の強化を図りながら、多くの素晴らしい成果も出てきています。このように、私どもの様々な事業が進展できましたのも、社会や国民の皆様のご理解・ご協力、そして立地地域をはじめ関係機関の皆様のご支援があってのことと改めて深く感謝申し上げます。
 他方で、上半期に実施した安全確認調査において、過去の研究活動に伴って発生したものの中に、いくつかの安全管理上不適切な事例を確認いたしました。原子力開発に携わる者として、この事を深く反省し、再発防止の仕組みの整備やコンプライアンスの徹底へ、全役職員が一丸となって全力で取り組み、今一度、安全確保の徹底を図っていく所存です。
 また、本年7月16日に新潟県中越沖地震が発生し、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所では原子炉の基本的な安全の確保は成されたものの、多くの教訓を得ることとなり、この経験を広く活かしていくことが重要と認識しております。原子力機構の原子炉施設等の地震に対する安全性については、今回の地震を受けて、地震に対する安全確保への意識を新たにし、必要に応じて施設の耐震安全性強化等の追加的措置を行い、機構業務の大前提である安全確保をより着実なものとしてまいります。

 本日は原子力機構の第2回目の報告会を「−エネルギー安全保障と地球温暖化防止に向けて−」と題し開催いたします。まずは、原子力機構におけるこれまでの研究開発の現状と将来展望について、副理事長の早瀬より総括報告し、次に、特定テーマ報告として原子力機構の主要事業から、本報告の主題にもっとも関連深い高速増殖炉システム研究開発及び核融合エネルギーの研究開発の2つのテーマに絞り、「もんじゅ」改造工事の着実な進展、FBRサイクル技術開発の将来展望や世界が協力して核融合エネルギー研究センターを目指したITER計画および幅広いアプローチ(BA計画)への取り組みについて、それぞれの研究開発部門長から報告いたします。
 また、ジャーナリストとして国内のみならず、国際舞台でもご活躍の米国ハドソン研究所首席研究員である、日高 義樹(ひだか よしき)先生をお招きし、「世界的に見たエネルギー政策における原子力発電の役割」と題しました特別講演をいただくこととなっております。日高先生の幅広いご見識と、グローバルな視点に基づき、日本の科学技術の将来にとって、また、私ども機構におけるこれからの研究開発の実施にあたり、ホットな貴重なお話を拝聴できるものと楽しみにしております。

 最後に、これからも、原子力機構の歩みは、社会の発展とともにあることを役職員一人ひとりが胆に銘じ、安全の確保を大前提に、世界第一級の研究開発機関を目指してまいります。本日ご来駕賜りました皆様方をはじめ、研究開発拠点の地元や関係の大学、産業界の皆様に対し、これまでに賜りましたご理解とご支援に重ねて心より感謝申し上げますとともに、原子力機構の業務につきまして皆様にご理解をいただけるよう情報発信にも努めてまいります。引き続き、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。

以 上


もどる