『第1回 原子力機構報告会』理事長開会挨拶

 本日は、お忙しい中、『第1回 原子力機構報告会』に、多数のご来駕を賜りましたこと、心から御礼申し上げます。
 開会にあたり一言ご挨拶申し上げます。
 原子力機構が、昨年10月1日に誕生してから、早いもので9ヶ月が経ちました。新法人が無事に船出できましたことは、ひとえに、本日、ご臨席を賜りました皆様をはじめ、各界各位のご指導とご支援の賜物と深く感謝致しております。私どもは、原子力に関する基礎・基盤的研究から実用化を目指したプロジェクト的研究開発に至るまで、言い換えれば科学(サイエンス)から技術(テクノロジー)の分野に至るまでの研究開発を行なう我が国で唯一の総合的な研究開発機関であります。その運営に当たりましては、『原子力の未来を切り拓き、人類社会の福祉に貢献する』ことをミッションとして、『高い志 豊かな発想 強い意志』を持って成し遂げていくことをスローガンに掲げ、職員の融合と協力を図りつつ、選択と集中による効率的運営に努め、社会に還元できる成果を目に見える形で出せるよう役職員一丸となって業務に邁進しているところでございます。

 さて、原子力機構が発足後、原子力を取りまく社会情勢は急速に動いてきております。まず、国内に目を向けますと、昨年10月に国の原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」が閣議決定され、核燃料サイクル路線を堅持することが改めて確認されました。また、本年3月には、政府の総合科学技術会議がまとめた第3期科学技術基本計画が閣議決定され、「高速増殖炉サイクル技術」が「国家基幹技術」に選定されるとともに、国際熱核融合実験炉(ITER)計画や高レベル放射性廃棄物の処分技術が「戦略重点科学技術」として、またJ−PARCなどの量子ビームをはじめとする原子力機構の研究開発の、そのほとんどが我が国にとって「重要な研究開発課題」として位置付けられました。さらに、青森県における日本原燃(株)六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の開始、さらには、九州電力 玄海原子力発電所、中国電力 島根原子力発電所、四国電力 伊方原子力発電所におけるプルサーマル計画に関する地元理解の進展など、核燃料サイクルを前進させる動きが出てまいりました。
 海外に目を向けますと、石油価格の高騰など燃料の需給逼迫傾向は顕著となっており、また、今後エネルギー消費の急速な増大が見込まれるアジアを含む、いわゆるBRICs諸国のエネルギー確保に対する取り組みや、イランなどの核問題をはじめとする核不拡散に関する国際的な動き、さらには温暖化防止などの地球環境問題への対応など、世界的規模で原子力推進に関する動きが急速に進展しつつあります。特に、アメリカは、「グローバル・ニュークリア・エネルギー・パートナーシップ(GNEP)」構想を発表し、近年における原子力政策を転換して、30年ぶりに、リサイクル路線に復活する構想を打ち出し、わが国をはじめ、フランス、イギリス、ロシア、中国などと協力のための外交活動を活発化させております。
 このような情勢の中で、原子力機構が負託された研究開発への期待と責任の重さが、ますます大きくなって来ていることを、強く感じております。

 原子力機構は、先ほど申し上げましたように、総合科学技術会議等で、国家的に重要な課題とされた高速増殖炉サイクルの確立に向けた研究開発、高レベル放射性廃棄物処理処分の研究開発、ITER計画などの核融合に係る研究開発、量子ビーム利用の研究開発に重点を置きつつ、安全研究、基礎・基盤研究等さまざまな研究開発を進めてまいりました。
 高速増殖炉サイクルの中核である「もんじゅ」の改造工事は、着実に、かつ安全に進められており、また、実用化に向けた研究開発計画等を検討してきた実用化戦略調査研究については、本年3月、研究開発の重点化の考え方等をまとめ、現在、国において評価していただいているところであります。量子ビーム利用の研究開発においては、世界の最先端をいく大強度陽子加速器施設の運営を高エネルギー加速器研究機構と一体となって行うため、本年2月「J−PARCセンター」を設立致しました。この体制の下で、本年度末にはいよいよ、リニアックのビームテストの段階に入る予定です。一方、業務運営上の長年の懸案であった人形峠のウラン残土に関しましては、関係各位のご尽力により、5月31日に「方面ウラン残土の措置に関する協定書」を鳥取県及び三朝町と締結するに至り、解決に向けて大きく前進をさせることができました。
 このように、私どもの様々な事業を進展できましたのも、ひとえに立地地域をはじめ関係機関の皆様、国民の皆様のご支援・ご協力があってのことと改めて深く感謝申し上げる次第であります。

 今回は原子力機構の第1回目の報告会として、「原子力・未来への挑戦−サイエンスからテクノロジーまで−」と題して、開催させて頂くこととしました。
 まずは、原子力機構におけるこれまでの研究開発の現状と将来展望について、副理事長の岡アより総括報告させて頂きます。次に、特定テーマ報告として「次世代原子力システム研究開発部門」、「量子ビーム応用研究部門」、「地層処分研究開発部門」、「核融合研究開発部門」の4つの研究開発部門からそれぞれ研究開発の現状等について報告させていただきます。
 また、本日は、ジャーナリストであり、また、科学評論家として幅広くご活躍されておられます 立花 隆先生をお招きし、「科学と日本」と題しました特別講演をいただくこととしております。立花先生の幅広いご見識と、専門的視点から、日本の科学技術の将来にとって、また、私ども機構におけるこれからの研究開発の実施にあたり、貴重なお話を拝聴できるものと楽しみに致しております。

 最後になりますが、これからも、原子力機構の歩みは、社会の発展とともにあることを役職員一人ひとりが胆に銘じ、安全の確保を大前提に、世界第一級の研究開発機関、Center of Excellence(COE)を目指してまいる所存でございます。
 本日ご来駕賜りました皆様方をはじめ、研究開発拠点の地元や関係の大学、産業界の皆様に対し、これまでに賜りましたご理解とご支援に重ねて心より感謝申し上げますとともに、引き続き、皆様の一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。 本日は誠にありがとうございました。
以 上

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