160 都市鉱山からの白金族資源
掲載日:2026年3月17日
抽出剤使い分け相互分離
日本原子力研究開発機構は、電子部品や触媒など産業利用が多い白金族3元素を、混合液中から高効率で分離回収する溶媒抽出法を開発した。3元素は別々に取り出せる。この開発は、使い終わった原子力発電用燃料(使用済み燃料)の再処理研究が軸となったものだ。
溶媒抽出を応用
白金族元素はパソコンのメモリーや自動車の排ガス洗浄用触媒などに使われる。資源量は少なく、廃棄物からの回収は社会要請だ。
一方、使用済み燃料はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)といった白金族を含む。他の有用金属も存在するので、再処理工程で発生する廃液から分離回収する技術開発が進む。主力は溶媒抽出法で、新しい分子構造を持つ抽出剤も積極的に開発されている。
そこで我々は、原子力分野で開発した溶媒抽出技術を、同じ白金族回収に応用できないかと考えた。
使用済み燃料の溶解には硝酸を、産業界では白金族溶解に塩酸を使う。この、硝酸と塩酸という溶解液の違いは大きい。白金族は塩酸系では陰イオンの形をとるため、通常の溶媒抽出法での抽出は難しいのだ。
アミン系に着目
手元には原子力機構で開発したアミン窒素を持つ抽出剤があった。これらも、例えばアンモニアがアンモニウムイオンになるように、酸性溶液中なら水素イオンと反応し、陽イオン性抽出剤として振る舞うのではないか―。この仮説でアミン窒素系抽出剤を塩酸溶液環境で使ってみると、陰イオン化した白金族元素を効率よく抽出した。
これは「イオン対(つい)抽出反応」と呼ばれ、酸性条件で陽イオンとなる抽出剤と、(金属)元素と塩酸で形成した陰イオンが、ペアになって抽出される。これまで一部の金属で報告例はあったが、今回、白金族でも成り立つことを明らかにした。
効率10倍実現
原子力機構で開発した抽出剤3種を使い分けることで、混合液からPd、Ru、Rhの順で取り出す一連の相互分離法としてまとめた。抽出剤が白金族元素と直接結合しない点が特徴で、白金族元素イオン特有の不活性や遅い反応といった困難も克服できる。抽出効率はRuで従来法比10倍、3元素ともに単離した油層から水溶液への逆抽出も確認。抽出剤ロスもなく、回収後の白金族加工も容易だ。
今後は応用面での課題を洗い出し、都市鉱山から白金族を“救出”する一助となるよう、社会実装へのステップを進めていきたい。

