159 1F廃炉「基礎・基盤研究全体マップ」
掲載日:2026年3月10日
全工程俯瞰、開発を支援
日本原子力研究開発機構は廃炉環境国際共同研究センター(CLADS、福島県)で、東京電力福島第一原子力発電所(1F)廃炉の基礎・基盤研究に取り組む。その一環で各工程の解決すべき課題などを網羅した「基礎・基盤研究全体マップ」を作成、知の集積を支えている。
「この複雑な研究群をどうすれば俯瞰(ふかん)できるのか?」。その回答が「マップ」だ。
「共通言語」
1Fは事故を経ての廃炉で、行うべき事柄は多岐にわたる。汚染水対策から処理・処分・環境回復まで、廃炉全体で要する技術はいまだ影なきものもある。
そのため、マップでは数百に及ぶ研究テーマを75項目へ分類整理。現状や解決すべき課題の検索機能も持つ。
マップ開発のモチベーションは明快だ。研究者・技術者・政策立案者、そして社会全体が、廃炉研究の全体像を共有し、連携して加速させるには共通言語が必要になった。第1版の2019年以降、毎年更新し、26年版も公開済みだ。
知見融合が必要
実際に、廃炉作業で大きな力を発揮している。例えば、燃料デブリ取り出しに関する研究では材料科学、ロボティクス、放射線計測など異分野の知見を融合する必要がある。マップはそれらの接点を明示し、研究ギャップを埋めて技術開発の優先順位を明確化。現場の意思決定を下支えしている。
また、政府の公募型事業で研究の方向性を定める中核ツールとして重要な役割を果たす。応募者の大学・企業の研究者がマップを参考にテーマを立案、成果はいずれマップに反映される。この循環で研究は点ではなく面でつながり、廃炉全工程を支える「知のネットワーク」が形成される。
知の未来を創出
さらに、マップは異分野での活用が進む。放射線環境下での人工知能(AI)活用や極限材料開発、遠隔操作技術などは、宇宙開発や災害対応、医療分野にも応用は可能だ。すでに複数の共同研究も始まった。廃炉という課題が社会全体の技術革新をけん引する原動力となっている。
そして、マップはCLADSの研究活動の核となった。研究者同士の対話を促進し、新たな連携を生み、若手研究者の育成にも貢献している。マップを囲んで議論が生まれ、アイデアが飛び交う。それはまさに、科学の熱気が立ち上る瞬間だ。
マップは1F廃炉という困難な挑戦に対し未来の可能性を可視化した“知の羅針盤”。
希望と創造の場へ変える力を持つ地図を手に、廃炉の完遂、科学の未来へと歩み続ける。
(※詳細マップ)

