原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

158 放射性核種アクチノイド自動分析

掲載日:2026年3月3日

原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター 原子力化学研究グループ
研究員 柳澤 華代

専門は分析化学。24年に日本原子力研究開発機構に入構後、福島第一原子力発電所の廃炉や放射性廃棄物の処理・処分に関連する放射性核種の分析技術開発を進めている。本件は原子力機構での初仕事。六ケ所再処理工場で分析に従事していた経験を生かし、現場のニーズを取り込みながら、より迅速・簡便で安全性の高い分析技術の整備を目指している。

25分で完了、工程負荷減

日本原子力研究開発機構は、アクチノイドと呼ぶ放射性核種の分析で、試料の前処理から計測までを一連で行う「自動分析システム」を開発した。対象は難度が高いネプツニウムで、分析時間は従来比百分の一に短縮できた。廃炉や再処理など、時間と人手を要する分析現場の負担軽減につなげる方針だ。

計測に時間要す

「測れるものは測り、測れないものは測れるようにせよ」。近代科学の父、ガリレオ・ガリレイの言葉で、私の好きな一節だ。原子力分野でも、廃炉や放射性廃棄物の処理・処分方法を検討する上で、放射性核種を正確に分析することが欠かせない。先人の努力で多くの核種は測れるようになった一方、測れるけれど「時間がかかる」核種は今なお残る。

例えば、ネプツニウム237は化学状態(価数)の幅広さに加え、共存するウランなどが「偽の信号」となって測定を妨害する。質量分析前には、妨害物質を除去する前処理を手作業で行うため、測定結果を得るまでに4日程度かかる。

東京電力福島第一原子力発電所事故以降、こうした核種をより迅速に分析したいとのニーズが一層高まり、新たな分析法の開発が求められている。

妨害物質を除去

そこで、私たちはネプツニウム237の迅速・簡便な自動分析を目指した。だが、ネプツニウムの価数制御が導入への壁になった。

突破のため、電解還元法で電気化学的に処理するフロー電解還元技術を開発。ここでネプツニウムを4価に揃えた後、自動で固相抽出剤を詰めたカラムに送り、ウランなどの妨害物質元素を除去した。

さらに、検出器のタンデム四重極型高周波誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP―MS/MS)にも工夫を施した。酸化反応を利用し、わずかな阻害物質も分離して、ネプツニウム237だけを検出する。その結果、1リットル当たり0.1㌨㌘(㌨は10億分の1)という極微量でも測定でき、従来法と比べて十分な性能を有することを確認した。

普及目指す

同システムは試料吸引から約25分後には結果が出る。全自動なので被ばくリスクを減らし、熟練者の勘に頼りがちな分析を誰でも再現できるメリットもある。

特許は出願済みだ。今後は、運用条件の最適化や他の放射性核種への展開を通じて、普及を目指したい。また、システムの構成要素は、分析対象物に応じて組み換えができる。原子力分野に限らず、さまざまな産業分野で応用が可能だと期待している。