156 〝常識外〟誘電体の精密分析
掲載日:2026年2月10日
電子機器小型化へ貢献も
電子部品の一つで受動素子のコンデンサーはスマートフォンや充電器など電子機器に用いられ、日常生活には欠かせない。一方で、性能向上や省電力化には新たな受動素子の開発が必須だ。日本原子力研究開発機構では、受動素子開発に向けて電気特性の解析手法を開発。電子部品の点数削減など、電子機器小型化への貢献が視野に入っている。
非絶縁を逆手に
コンデンサーには誘電体と呼ばれる材料が使われ、外部電場に対し電気分極の応答(誘電応答)を示す。誘電体は絶縁体の一種で、通常は電気を通さない。
しかし、特に電子誘電体と呼ばれる希土類―鉄酸化物RFe2O4という物質群では、二価と三価の鉄イオンが同数存在。隣り合う二価鉄と三価鉄の間で電子が移動することで、鉄イオンの位置交換が起こり、誘電応答を示す。この鉄イオン交換が誘電体の常識に反して電気を通す原因となるので、コンデンサーとしての適用が難しい。だが見方を変えれば、コンデンサーと電気抵抗が並列した新しい受動素子と見なせるのではないか―。新材料開発への手がかりを得た。
物理モデル選定
ところが、この素材は電極との接触面が作る不要な効果や不均質な構造の影響を受けるため、誘電率や電気抵抗率の高精度計測は困難だった。
そこで私たちは、独自開発した解析手法とインピーダンス(交流の電気抵抗)測定を組み合わせた新たな手法を確立。具体的には不均質性を考慮した「ミクロな物理モデル」から得たインピーダンスを、実測データに当てはめる。物理モデルは「抵抗とコンデンサーの並列回路」が直列に多数つながる電気回路で表現した。この物理モデル選定に時間を要したが、誘電率と電気抵抗率を高精度に評価することができた。
新素材を探索
前述の通りRFe2O4は隣り合う二価と三価の鉄イオンの交換が誘電応答と電気伝導の起源だ。このため、隣接ペア数を制御すれば誘電率と電気伝導率の制御が可能になる。現在、二価鉄イオンの一部を二価のコバルトイオンに置き換え、隣接ペア数の調整による誘電率と電気伝導率の制御に挑戦中だ。
またRFe2O4だけでなく、異なる価数を持つ材料であれば同じ現象の発現が期待できる。磁石の材料マグネタイト(磁鉄鉱)がその代表例だ。今後も異なる価数イオンの交換が起こす誘電応答研究を進め、コンデンサーと電気抵抗が複合した新たな受動素子の開発につなげたい。

