155 固体熱量効果で冷凍材料の探索
掲載日:2026年2月3日
磁気利用、環境負荷を低減
人類が生活する上で、モノの冷凍・冷蔵・冷却は必要不可欠な技術だが、冷媒冷却は限界が見えつつある。そこで日本原子力研究開発機構では、高効率で環境にも優しい、新たな冷凍材料の探索に取り組んでいる。ターゲットは磁場や圧力など外部の力を受けると吸熱する固体化合物だ。
人工冷気の恵み
冷凍技術は人類の発展とともにある。古くは紀元前の天然氷に始まり、18世紀は液体の気化熱、19世紀にはガスの圧縮膨張を用いた手法が提案された。20世紀前半に電気装置が登場。先人たちの知恵のおかげで、暑い夏でもスイッチ一つで快適な温度で生活できる。
しかし、世界の冷凍での消費電力は全使用量の15―20%とも言われている。近年は猛暑続きだ。人類の持続的な発展を考えると、エネルギー消費を減らす環境負荷低減の取り組みは必須だ。
こうした観点から、温暖化の原因となるガス冷媒による冷凍ではなく、固体物質の「熱量効果」を用いた手法が注目されている。熱量効果とは、物質に電場・磁場・圧力などの外場を加えて起きる、物質と外部との熱のやり取りのこと。ガスの圧縮膨張よりも効率の良い冷凍が可能なことから、近年の環境意識の高まりとともに研究が盛んになった。原子力機構でも大学などと連携し、研究を進めている。
希土類を回避
その一つが鉄をベースにした磁気冷凍物質(バリウム―鉄―酸素系)だ。磁気冷凍は磁場による磁性変化で起こる熱の出入りを冷凍に用いる。一般的には磁気構造の変化が大きいガドリニウムやイッテルビウムなど希土類元素を使う。だが我々は鉄をベースに選んだ。鉄は希土類より豊富に存在し、200度Cほどの低温で合成できるので環境にも優しい。
さらに、大型放射光施設SPring―8のビームラインも活用し、複数の外場を利用できる冷凍物質の探索も行っている。例えば、銅とクロムをベースにした酸化物は、磁場と圧力の二つの異なる外場によって熱量効果を発現することがわかった。磁場と圧力の二つの場を同時に加えれば、より高効率な冷凍が行える可能性を秘めている。
持続可能性探る
とはいえ研究はまだ道半ばで、ガスを使わず高効率な冷凍をもたらす物質ついて、世界中を見ても現実的な解は出ていない。持続可能な社会の達成に必須となれば注目は一層高まる。今後も合成と評価を行いながら、環境問題の解決に寄与できる新規冷凍材料の探索を進めていく。

