150 高速実験炉「常陽」の照射試験計画
掲載日:2025年12月16日
次世代炉・他分野で活用期待
日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」は国内最初の高速増殖炉で、これまで高速炉用燃料・材料の照射施設として運用してきた。2024年には一般研究が目的の材料照射にも使用できる国の許可を受けるなど、利用拡大にも努めている。現在は新規制基準対応に係る工事中で、26年度の再稼働、その後の照射試験の再開に期待がかかる。
限界性能を把握
23年2月策定のグリーン・トランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針で、国は原子力の活用と、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を盛り込んだ。こうした中、次世代革新炉の一つ、ナトリウム冷却高速炉では、30年代の実証炉の詳細設計に向けて、燃料・材料の照射データ取得を進める計画だ。
「常陽」は燃料や材料の照射試験に関する幅広い許可を持ち、燃料ペレットを溶融させたり、被覆管を開孔させたりする試験も可能だ。こうした過酷試験は計画的に行うと、燃料の限界性能を精度よく把握できる。再稼働後、実証炉の初期炉心に目される太径中空燃料の照射試験を始める予定だ。
海外需要高まる
また海外でも次世代高速炉開発の動きは活発だ。経済協力開発機構(OECD)諸国でさまざまな照射試験ができる高速炉は「常陽」だけなので、海外からの受託照射も予定している。
一方、核融合炉や加速器、軽水炉など、他分野からの中性子照射ニーズもある。温度や中性子エネルギーなどの環境が高速炉と異なるため、要望に応えるには環境を模擬できることが重要だ。低温照射や高温照射の実現、減速材の使用による軽水炉環境模擬など、「常陽」の照射条件範囲の拡大に取り組んできた。
例えば、核融合炉分野は1200℃の高温環境での高速中性子照射ニーズがある。「常陽」の通常の照射温度800℃より高いため、工夫が必要となった。
中性子を利用
そこで、照射試料を収納する管を原子炉内での発熱が大きいタングステン製に替えて、内部温度上昇を計画。結果、解析上は1000℃超の達成見込みが立った。再稼働後は1100℃を目標に核融合炉材料の照射試験を行い、高温照射性能を確認する方針だ。
「常陽」での照射試験は次世代革新炉開発を加速する重要な役割を担い、その成果は安全で持続可能なエネルギー開発につながるものだ。そして高速炉開発の中核施設としての役割だけでなく、照射試験炉として幅広い分野のニーズに応え、国内外、産学界の幅広い中性子利用にも貢献していきたい。

