原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

147 発熱性放射性廃棄物の資源化

掲載日:2025年11月25日

原子力科学研究所 NXR開発センター
研究主席 高野 公秀

1996年日本原子力研究所(現・原子力機構)入所、専門は核燃料工学。Amなど超ウラン元素を含有した核燃料の研究開発に長年従事している。東京電力福島第一原子力発電所事故以降は、燃料デブリの性状研究にも携わってきた。24年発足したNXR開発センターで、Am半永久電源の開発責任者を務めている。

宇宙探査に国内製電源を

月面探査の長い夜間や木星以遠の深宇宙探査では太陽光発電が利用できず、「原子力電池」が必要になる。これは放射性物質の発熱を熱電変換デバイスで電力に変える電源だ。数十年以上にわたるメンテナンスフリー稼働が求められる。米国は半世紀以上前、プルトニウム(Pu―238)を発熱体とした原子力電池を実用化。アポロ月面実験や惑星探査機ボイジャーなどに搭載してきた。

寿命は半永久

日本においても「国内の資源と技術」で構築した宇宙用原子力電池のニーズが高まっている。しかし、米国のようにPu―238を使うのは現実的ではない。これに代わる有望な発熱性核種がアメリシウム(Am―241)だ。

Amは保管中Puから核崩壊で自然に生成・蓄積するので、化学分離で回収できる。Puと比べ重量当たり熱出力は5分の1ほどだが、寿命(半減期432年)は5倍と長く「半永久電源」といえる。欧州宇宙機関もAmを用いた電源開発を進行中だ。

日本原子力研究開発機構では、放射性廃棄物の再資源化と減容化に向けた研究開発を進めている。Am分離回収法を開発したが、主眼は廃棄物減量にあった。Amは放射性同位元素として法規制を受け、「使い道のない放射性廃棄物」と揶揄されてきた。それが非原子力分野でエネルギー資源として利用できる意義は大きい。

効率的で堅固

原子力機構は基礎的な実証試験も踏まえ、宇宙戦略基金事業(第一期)の「半永久電源システムに係る要素技術」に応募。産業技術総合研究所と連携して採択された。

熱源として約10㌘のAm酸化物をセラミックペレットに焼き固め、金属製ピンに溶接封入した密封線源を作製。実用時は最大8本で発熱体にする想定にした。最重要課題は効率よく熱電変換デバイスに熱を伝え、かつ、万一の事故の衝撃や高温でAmを漏洩させない堅固な設計の実現だ。加えて、ペレット作製やピンへの溶接封入、発熱体組み立てなどの全工程は放射線遮へい設備で行う。遠隔操作で精密作業を遂行する点も技術的課題だ。

まず搭載レベル

基金事業での開発期間は2025年3月~29年2月までの4カ年。目指すゴールは、Am封入ピン1本を挿入した半永久電源のプロトタイプ機で発電を実証し、探査機に搭載可能な状態に引き上げることだ。並行して、極地や海底など、地球上の容易に人が近づけない領域でのニーズ開拓も行い、実用化を推進する。