原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

146 劣化ウラン蓄電池システムの開発

掲載日:2025年11月18日

原子力科学研究所 NXR開発センター 大容量蓄電池開発特別チーム
研究副主幹 大内 和希

専門はアクチノイド化学、分析化学。15年に日本原子力研究開発機構に入構し、ウランなどアクチノイドの溶液内基礎反応や基礎的知見に基づく分析手法の研究・開発に従事してきた。現在は、ウランの新たな資源価値創出に向け、蓄電池の開発に取り組んでいる。

「燃えない副産物」有効利用

価値ある資源に

日本原子力研究開発機構は、ウランを蓄電池の活物質に利用する「ウラン蓄電池」の基礎実証に世界で初めて成功した。原子力発電の燃料製造副産物「劣化ウラン」を資源化する道を開くもので、実用化を目指し、大容量化の研究を進めている。

天然ウランには主に2種類の同位体が存在し、質量数235のウランは核分裂するので原子炉(軽水炉)の燃料に使う。一方、質量数238のウランは燃料には使えない。ウラン濃縮でウラン―235の含有率を高めた結果、副産物として生じるのが劣化ウランだ。燃料にできない「燃えないウラン」とも呼ばれ、国内に約1万6000㌧を貯蔵中だ。

劣化ウランの資源化を目的に、ウランを活物質に使う蓄電池の概念が2000年代初頭に提唱された。ウランが3価から6価まで幅広い酸化数を取る性質に着目したもので、有望視されてきた。しかし、実際に蓄電池を組み上げるなど性能に関する研究報告例はない。

足元の社会状況をみると、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、蓄電池ニーズは急拡大した。太陽光や風力などによる発電は時間や天候に左右され、発電量が変動する。不安定さを解消するにはエネルギー貯蔵デバイスを介した出力調整が必要で、蓄電所の新設も相次ぐ。新たな蓄電技術の開発も渇望されている。

正極を鉄に

こうした背景から、原子力機構ではウラン蓄電池の開発に着手。概念提唱では正極・負極とも活物質はウランだったが、活物質の組み合わせなどを徹底的に研究し、正極の活物質を鉄に変更した。

試作ウラン蓄電池の起電力は1.3㌾と、一般的なアルカリ乾電池(1.5㌾)に近い値を示した。充電と放電を10回繰り返したが蓄電池の性能はほとんど変化せず安定し、電解液中への析出物もない。一連の成果を基に、ウラン蓄電池システムとして特許出願した。

大容量化探る

今後は、電解液を循環して蓄電池容量を増強する「ウランレドックスフロー電池」の開発研究に着手し、実用化を目指す。具体的には、循環させる電解液量や活物質濃度を増やすと大容量化ができるのか、蓄電池を構成する電極や隔膜の最適材料は何かなども検討する。ウラン蓄電池の大容量化に成功し、国内で貯蔵する劣化ウランを蓄電池として社会実装に至れば、再生可能エネルギー由来の電力供給網の調整機能として活用ができる。脱炭素社会の実現へ貢献することが期待できる。