141 「常陽」の新規制基準への適合
掲載日:2025年10月14日
安全確保、火災防護を確立
運転再開目指す
日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」は、新規制基準に適合する基本設計許可を取得。今は2026年度の運転再開を目指し、手続きや安全対策工事を段階的に進めている。高速炉自体の技術開発のみならず、運転に向けて新規制基準への適合性を示していくことも、高速炉の社会実装への重要なステップとなっている。
高速炉は次世代革新炉の一つに挙がる。それは高速炉を活用することで、さまざまな原子力をめぐる課題解決の手段を提供できるからだ。たとえば放射性廃棄物問題では、高レベル放射性廃棄物を減容し、潜在的有害度の低減を実現し得る。また、エネルギー安全保障に対しては、国内の劣化ウランなどを再利用することができ、核燃料サイクルの効果をより高めることが期待できる。
これらの特徴は、高速炉が冷却材にナトリウムを用い、中性子を減速せずに運転する設計によってもたらされている。その分、安全上のポイントは軽水炉と異なる。従って、高速炉を社会に実装するには、特徴を踏まえた解析コードの整備、適用を含む安全評価の方法や具体的な安全対策などの構築が必須になる。
多様な対策検討
運転再開を目指す「常陽」では、新規制基準に適合するため、共通要因故障をもたらす自然現象や火災などへの対策強化や、設計基準を超える事象への対策を求められている。
我々のチームは火災防護対策への対応を担っている。一例をあげると、火災感知器については、耐震補強による冷却材・ナトリウムの燃焼発生防止や、ナトリウム燃焼を含む火災の早期感知を強化するため、感知方式の多様化を図る補強策を導入。対策の妥当性はナトリウム燃焼の解析コードを使い評価した。
また、設計基準を超える事象への対応も検討。軽水炉は水を活用した対策を適用できるが、「常陽」で同じ手段をとればナトリウムと水が反応した爆発を誘発する。ナトリウム燃焼を視野に大規模火災への対応をいかに行うかに苦慮し、さまざまな方法を検討。結果、空気より重いアルゴンガスによる消火法などで対応できるものとしている。
技術確立に貢献
実機高速炉として「常陽」が新規制基準適合性審査と安全対策工事を経て、運転を再開することは日本の高速炉開発において大きな意義を持つ。今後は安全性確保を最優先に再稼働し、照射試験を通じて高速炉の特徴を生かす技術の確立に貢献していきたい。

