136 微小液滴の形成過程を3D可視化
掲載日:2026年9月2日
燃料デブリ詳細理解に貢献
炉内解析に応用
日本原子力研究開発機構は、液体が微小な液滴に大量分裂する現象について、内部の流動構造までを3次元で可視化できる手法を開発した。東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故時の燃料デブリ形成過程の一部も解明し、今後は原子力安全の向上を目指し炉内現象の解析に応用する方針だ。
原子炉の過酷事故では、炉内燃料は溶けて下部の冷却材プールに落下、微小な液滴へと大量に分裂して広がる。その後、溶融燃料や分裂した液滴が冷え固まったものが燃料デブリだ。ただし、プール水深が浅い場合、溶融燃料は底に衝突しながら分裂するため、非常に複雑な状況で燃料デブリが形成されることになる。
燃料デブリの形成過程を詳細に明らかにできれば1F廃炉への貢献につながる。しかし、液滴への分裂現象は実験による可視化計測が非常に難しく、詳細な理解は得られていなかった。
そこで我々は、筑波大学と共同で、浅いプールで溶融燃料が底面へ衝突しながら液滴に分裂する現象について、細部にわたる状況把握を目指した。
形成経路は2種
液体の断面形状データはレーザー誘起蛍光(LIF)法で取得できるが、断面の前後に広がる液滴や大きさの計測はできなかった。そこで、反射鏡(ガルバノスキャナー)を組み込んだ装置を独自開発。発光位置を高速かつ任意に選べて、内部の流動構造も3次元で可視化する「3D―LIF」法を実現した。データを計算機処理すれば液滴の大きさや速さを高精度で計測できる。
同手法を用いて、過酷事故で溶融した燃料が浅い冷却材プールに落下する状況を模擬した実験を行った。代替の冷却材にシリコーンオイルを、溶融燃料にはグリセリン水溶液を用いた。
解析の結果、模擬溶融燃料の液滴への分裂は、①二つの液体の速度差や遠心力によって渦状の流れにできた波の先端が引きちぎられる「サーフィンパターン」②底面に落ちて巻き上がった後に重力に引かれ落ちる「液膜破断パターン」――があると分かった。
二相流の解明へ
今後は、開発した手法を改良・応用することで、溶融燃料に関する現象だけでなく、原子炉内で起こる複雑な二相流現象(液滴や気泡の分裂・合体など)の解明に挑戦する。二相流現象の理解に向けて実験データを積みあげて、炉心設計コードの妥当性確認やモデル改良を促進。原子炉の安全性と経済性のさらなる向上へ貢献していきたい。

