133 セシウムの土壌吸着解明
掲載日:2025年8月5日
粘土鉱物の層間構造カギ
陽イオンに影響
粘土鉱物は風化などの自然現象で生成される層状の鉱物だ。主にケイ素などで構成され、地球表層に豊富に存在する。特筆すべき能力が多くの陽イオンを吸着すること。これが環境中のさまざまな陽イオンの挙動に大きな影響を与えている。
例えば、原子力発電所事故で放出された放射性セシウム(Cs)は土壌表層に固定された。これはCsが粘土鉱物に強く吸着したためだ。また、粘土鉱物は放射性廃棄物の地層処分などさまざまな分野で吸着材に使われる。
しかし、粘土鉱物の構造は複雑で、吸着反応は未解明な点が多く残る。特に、Csの吸着濃度に応じて吸着時の構造が変化すると指摘されていたが、詳細は不明だった。
このため日本原子力研究開発機構では、Csが粘土鉱物に吸着するメカニズムをナノメートルレベル(ナノは10億分の1)で解明することに取り組んだ。
スパコンで検証
まず、さまざまな濃度で粘土鉱物にCsを吸着させた試料を作製。広域X線吸収微細構造法やX線回折法など、複数の手法を駆使して吸着部を測定した。その結果、粘土鉱物内の層と層の間の構造がCsの吸着濃度に応じて変化する様子を確認できた。
変化を起こすメカニズムに二つの仮説が浮かんだが、実験で3次元的な構造を詳細に捉えるのは難しい。どちらが適切なのか、スーパーコンピュータによる第一原理計算で検証し、一方に絞った。
粘土鉱物の層間は水和した陽イオンが吸着した「膨潤な層間」と脱水した陽イオンのみが吸着する「収縮した層間」がある。両者をつなぐのが「ほつれたエッジ」だ。検証の結果、Cs濃度が低い場合は「ほつれたエッジ」にCsが吸着し、濃度上昇につれ「ほつれたエッジ」が移動しながら「収縮した層間」を作る。高濃度では「収縮した層間」が主流となった。
予測正確に
さらに、高分解能蛍光検出-X線吸収端近傍構造法での測定と第一原理計算から、Csは粘土鉱物とイオン結合で吸着することも判明。つまり、Csは比較的弱い結合状態でありながら、粘土鉱物の持つナノスケール構造とCsの脱水のしやすさの影響で強く吸着することが明らかになった。
今回の成果で、Csの環境動態をより正確に予測できるようになるだろう。また、安全な放射性廃棄物の地層処分法の検討や効果的な放射性物質の除染など、社会的な重要課題の解決に貢献できると期待している。

