132 「ほこり」で分かる核兵器開発
掲載日:2025年7月29日
国際平和に貢献する技術
保障措置に参画
原子力の平和利用を推進し、核の脅威から世界を守るためには、各国での原子力(核物質)を利用する活動が平和目的に限られていることを担保する必要がある。この確認活動が保障措置だ。日本原子力研究開発機構では、技術開発を進めながら国際原子力機関(IAEA)と連携し、査察時に原子力関連施設から採取された試料の分析などを通じて保障措置へ貢献している。
原子力機構は2003年、運用する分析施設がIAEAの求める技術水準にあるとして「IAEAネットワーク分析所」の認定を受けた。翌04年からは、世界各国の原子力施設から採取された「ホコリ」の分析を行ってきた。
プルトニウムやウランなど核爆弾の原料となる核物質は、重さの異なる複数の同位体を持つ。同位体の割合は原子炉燃料や核兵器などの用途によって異なるため、ごくわずかな「ホコリ」に含まれる核物質粒子の同位体組成を調べれば、秘密裏に行われた核兵器製造などの活動の有無を確認できる。
千兆分の1判別
近年、我々のグループでは、粒子の形状が認識できないほど非常に微小なプルトニウム粒子や、ウランとプルトニウムが混在している粒子について、両元素の存在の有無を視覚的に判別する技術を開発。さらに、千兆分の1㌘の超極微量元素の同位体組成を化学分離なしで精度良く分析する技術も開発した。
我々は保障措置への展開を目指し、IAEAから受領した評価用の試験試料をこれらの技術で分析。結果の精度と信頼性が認められ、IAEAによる分析能力の評価試験に合格した。これは、従来法では難しかった微小な核物質微粒子の分析を可能としたことに加え、我が国が原子力を平和利用に限って使っていることを自ら証明する能力を向上させたことを意味している。
自動化も視野
開発した極微小核物質粒子の同位体組成分析技術は、今後IAEAから依頼される試料分析に適用していく予定だ。また、原子力機構の研究用原子炉JRR―3を利用した粒子探索技術や、核物質粒子の判別と測定試料作製の自動化技術の開発を進め、その成果を保障措置で必要となる核物質の分析に適用していく方針だ。
IAEAは分析能力の向上が査察能力の強化につながるとして、原子力機構に大きな期待を寄せている。世界の原子力平和利用の検査役として一層貢献していきたい。

