原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

131 大深度地下トンネルの地圧評価

掲載日:2025年7月22日

幌延深地層研究センター 堆積岩工学技術開発グループ
グループリーダー 青柳 和平

専門は岩盤力学、トンネル工学。学生時代から岩石の破壊に関する研究に携わる。原子力機構入構後は、専門を活かしてトンネル周辺の岩盤の破壊やそれに伴う地下水の流れの変化に関する研究に従事。高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現を目指し、処分場の設計や施工に役立つ技術開発に貢献していきたい。

掘削時、弾性変形で推定

広範囲に予測

高レベル放射性廃棄物の地層処分における処分場の設計や閉鎖後の安全評価では、処分場周辺の広い範囲の岩盤に作用する力(地圧)のかかり具合を評価する必要がある。しかし、従来の手法は1回の計測で比較的狭い範囲でしか地圧を評価できない課題があった。そこで日本原子力研究開発機構では、幌延深地層研究センターの調査坑道を活用し、従来法より簡便かつ広域で地圧の作用を推定する新たな手法を考案した。地下空間開発で展開できる成果だ。

地圧が作用する状態で坑道を掘削すると、坑道がつぶれるような変形をすることが直感的に分かる。このとき変形の情報が得られれば、坑道周辺の約数百㍍の範囲に作用する力の状態を、簡便、低コストかつ信頼性をもって推定できるのではないかと考えついた。

内空変位に着目

変形の計測手法として、トンネル施工時の支保工の健全性確認で一般的に用いられる「内空変位計測」に着目した。坑道の両端に設置した計測ピンの間に鉄製テープを張り、その長さの変化を計測するもので、簡単で計測コストも低い。

坑道は実際に掘削する岩盤に割れ目が発達していたりすることで、変形が場所によってバラつき、地圧の推定精度が下がることが想定される。そこで、トンネル掘削初期に見られる現象で、力を加えると圧縮変形するが、取り除くと元に戻る「弾性変形」の値を利用し、各測定箇所の変形のバラつきを抑えた。

さらに、幌延深地層研究センターの深さ350㍍に掘削した周回坑道で、さまざまな方向の坑道で計測した弾性変形情報を活用し、より信頼性の高い地圧の情報を確保した。こうした工夫を施して水平方向に作用する広い範囲の地圧情報を逆解析で推定すると、過去に地下施設周辺で実施した狭い範囲を対象とした計測結果と矛盾がないことが示された。

地下開発にも

今回考案した手法は、堆積岩で比較的よく確認される弾性変形に着目した技術だ。このため、幌延のみならず、広く堆積岩を対象とした地下空間開発事業においても適用が可能だ。また、地層処分事業では処分場の設計や人工バリアの設置場所の判断、安全評価に役立つ手法として適用が考えられる。

さらに、トンネル掘削後の健全性確認や地盤沈下の評価など、土木分野においても役立つ成果として幅広く活用されることを期待したい。