129 仮想3D空間での線量低減解析
掲載日:2025年7月8日
環境要素反映で精緻予測
詳細にモデル化
原子力災害による環境汚染地域の空間線量率(線量率)は、地形の起伏、建物などで放射線が散乱・遮蔽され、極めて複雑かつ非一様になる。また、放射性物質は地表や構造物に不均質に沈着、時間とともに移行するため、分布の正確なモデル化は困難だった。
日本原子力研究開発機構では、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故後、生活環境の線量低減に向けた課題を解決するため、新たな線量率評価システムを開発。段階的に高度化を進め、帰還困難区域の除染対策を評価できるところまで歩みを進めている。
他機関の協力のもと開発したシステム「3D―ADRES」は、汚染地域の現実的な線量率分布を、3次元仮想空間で高精度に再現する。最大の特長が、現実の線量率を決定づける複雑な環境要素を詳細にモデル化した点だ。地形の高低差や建物・樹木によるガンマ線の遮蔽と散乱効果、地表・地中の放射性物質の分布状況、建物や樹木表面への沈着、土壌や建材の物理特性によるガンマ線の減衰までを反映。1F事故後の線量率の実測値との比較でも高い一致性を確認、精度と信頼性が実証されている。
除染効果を検証
事故から10年以上が経過し、環境中の放射性セシウム分布は顕著に変化。除染が進む一方、未除染区域では粘土鉱物粒子に強く吸着されたセシウムが土壌表層に留まっている。
我々は福島県大熊町の耕作地を対象に、3D―ADRESを用いて除染・耕作活動の放射線低減効果を定量的に解析した。
除染前後の実測値と解析推計との比較では、モデルの回帰係数は0・94、決定係数は0・96と高い相関を示し、解析モデルの妥当性を確認できた。
また、除染手法別に地上1㍍地点の線量率の低減効果を解析すると、表土5㌢の削り取りで約79%、削り取り後に客土を施すと約86%低減。一方、表土から深さ30㌢分の土壌を攪拌した場合は約33%に止まるが、除染後の攪拌で約83%まで下がる。さらに除染効果は対象耕作地のみならず周辺環境にもおよび、面的な線量低減も確認された。
即時予測も視野
本システムが帰還住民の被ばく線量予測や除染計画の立案などで有効な手段になると考えている。今後、放射性物質の時間的移行を考慮した動的評価や、リアルタイム線量予測システムへの発展も視野に入れており、環境モデルのプラットフォームとしてさらなる応用拡大と技術向上を進めていく。

