125 全面マスク作業者向けメガネ
掲載日:2025年6月10日
磁力固定で気密性確保
防護性に課題
全面マスクは、有害物質の吸入や付着による人体影響を防ぐ。原子力施設でも放射性物質を取り扱う作業の必需品だ。ただ、眼鏡をかけるとマスクの防護性が落ちてしまう課題があった。そこで日本原子力研究開発機構は、高い安全性と汎用性を両立した全面マスク用「マグネット固定方式メガネ」を開発。市販化を果たし、幅広い業界で眼鏡着用者と現場の安全を担っている。
全面マスクは顔にピタリと密着させて使う。ところが、眼鏡着用者はそれが難しい。眼鏡のテンプル部(つる部分)が邪魔をして隙間を作るからだ。このため気密性が損なわれ、有害物質を吸引する危険性もあるのではないか。JIS規格に基づく漏れ率測定試験で確認してみると、眼鏡着用の場合は非着用と比べ、防護性能が約百分の一以下に落ちていた。
良好な視界確保
労働安全の観点から全面マスク着用時に使える眼鏡の確保が急務と考え、開発に着手した。できた「メガネ」は専用眼鏡と把持機構で構成。テンプル無しでフレーム一体型の形状は特撮ヒーローの変身アイテム、あの「赤いメガネ」がヒントだ。度数は近視・老視の7種類、曇り止め加工を施して良好な視界を確保した。
把持機構はシールドを内側と外側のマグネットで挟み、磁力で固定する。これは水槽内側のガラス汚れを手は濡らさずに掃除するマグネット付きスポンジから着想を得た。外側のマグネットを動かせば眼鏡位置が調整できる。眼鏡クリップの関節を任意の角度に曲げれば、見え方も最適に調節可能だ。マグネットはシリコンやフェルトでカバーし、シールドの損傷防止と滑らかな動きを実現した。
多分野に応用
一連の開発で令和4年1月に特許出願、同年4月には科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞した。そして5年3月、販売(コクゴ、東京都千代田区)を始めた。様々な形状の全面マスクに簡単に装着できることから、原子力分野だけでなく化学・生物関連、研究施設や消防などの防災機関、医薬品・電子部品・半導体製造、建物解体など、幅広い分野・業界で好評を得ている。
日本人の3~7割が眼鏡使用者ともいわれる。全面マスクの防護性能を損なうことなく眼鏡使用者が作業に従事できれば、人的資源を最大限に活用でき、現場安全性や作業効率も向上できるだろう。全面マスク作業の安全対策強化を通じ、社会貢献を果たせると期待している。

