原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

123 隠れ活断層 地上探索の手がかり

掲載日:2025年5月27日

東濃地科学センター ネオテクトニクス研究グループ
研究員 西山 成哲

大学では地球科学を専攻。温泉などの「特異な地下水」を対象に、野外調査を中心とした調査・研究を行ってきた。東濃地科学センターに着任し、活断層に関する調査研究テーマにも従事している。専門的知見(シーズ)と、社会的要求(ニーズ)とをつなぐ研究を進めていきたい。

岩盤の滑り痕から逆推定

忍び寄る脅威

地震を引き起こす活断層には地上に未達で確認が難しい“隠れ活断層”がいる。マグニチュード6~7程度の地震を起こしたこともあり、長期間の地質環境の安定が求められる地層処分にとって、脅威となり得る、決して無視できない存在だ。

日本原子力研究開発機構では精緻な地質調査などから、隠れ活断層の直上周辺に、活断層の存在を示す「地上の目印」として使える痕跡を発見した。今後、データ収集と検証を続け精度を向上し、地質調査の新手法として確立を目指す。

活断層探索は地形をつぶさに観察し、地層のズレの発見から始まる。断層運動に伴って割れ目が形成されるなど影響を受ける領域を「ダメージゾーン」と呼び、これは断層周辺に発達する。

さて、隠れ活断層は地上に地層のズレもない。しかし、断層である以上はダメージゾーンが存在し、地上に到達している可能性はある。もし、地上でダメージゾーンを発見できれば、その直下に隠れ活断層がある、と逆推定できるのではないか―。我々はこんな仮説を立て、地上の地質調査からダメージゾーンを見つけ出すことが可能か、検証を始めた。

2地域で検証

調査は「隠れ活断層がある」長野県王滝村を選んだ。1984年長野県西部地震(マグニチュード6.8)の震源域で、地震解析から深さ約1㌔地点に活断層が推定されている。

岩盤が露出した川や崖を選び、岩盤の割れ目を注意深く観察する(写真)。高光量ライトで照らすと、割れ目に沿って直線状の痕跡が見えてくる。こうした滑り痕の方向や岩盤の傾斜などを計測し、痕跡を生んだ力を算出。複数の地震波から震源地を特定するように、滑り痕データ344個を解析した。結果から、これらがダメージゾーン領域に特徴的に残る滑り痕と判明。また、97年鹿児島県北西部地震の震源域地域でも検証を行い、ダメージゾーン分布を推定できた。

社会活用見据え

この手法である種の滑り痕が隠れ活断層発見の手がかりになると実証できた。手法確立後は、大規模地質調査の区域絞り込みや防災マップなど、社会活用も見込める。

一方、検証2例のダメージゾーン判定に要した材料が両地域で異なるなど、課題も見えている。隠れ活断層発見手法の開発までには事例のさらなる蓄積が必要で、現場での地道なデータ集めと机上での解析・検討が不可欠だ。研究成果を積み上げ、難題解決に向けて前進を続ける。