121 高温ガス炉の出力分布測定
掲載日:2025年5月13日
容器外の中性子に着目
脱炭素に貢献
次世代革新炉の高温ガス炉は、脱炭素社会実現の一翼を担うべく実証炉設計が進む。運転技術やシステムには新規開発が必要な部分も多い。そこで日本原子力研究開発機構では、高温ガス炉向けに炉内の出力分布測定法と計測機器を開発。国際特許も出願し、今後、高温耐性の向上を目指す。
原子炉内の出力分布測定は発電用軽水炉では月1回、安全管理や燃料管理を目的に行われる。炉内に検出器を直接挿入し、核分裂状態が設計通りかを確認するのだ。ただ、高温ガス炉は炉内が400~950度と高く、耐熱問題から検出器を入れて確認する術はなかった。
解決策の検討中、減衰材が黒鉛の高温ガス炉は中性子の飛程が軽水炉より長いことに思い至った。圧力容器外側に出る中性子を使い、コンピュータ断層撮影(CT)の原理を応用すれば出力分布測定ができるのではないか―。こんな着想から発明の可能性に気づき、開発を始めることにした。
公募資金を調達
発明を核計装システムとして成立させるには資金が必要だ。外部資金に応募しても、獲得のためには完遂するだろうと信頼されるチームの構築が必要だ。
そんな時、高温工学試験研究炉(HTTR)の核計装改良の際、放射線計測機器メーカーのANSeeN(静岡県浜松市)の技術者が、直接発注につながらないような技術的な相談にも親身なってくれたことを思い出した。この縁がつながり、同社と、検出器素子に強い静岡大学電子工学研究所の青木徹教授を迎えた産学官チームが誕生。公募資金(文部科学省の原子力システム研究開発事業)を得たテーマは「炉外検出器システム」で、将来的に1000度の耐熱性獲得を目指す「耐高温炉内検出器」も加えた。
600℃耐性期待
炉外測定法では、圧力容器から漏れ出た中性子を捕捉し、出力元を推定することになる。数理解析や京都大学臨界集合体実験装置KUCAでの実験を経て実証は成功。ガス炉に実装する検出器システムの骨格設計に至り、日本、英・仏・ポーランドで特許を出願した。
耐高温炉内型ではホウ素窒化ガリウム(BGaN)半導体を採用した検出器を開発。600度までの高温耐性を期待できそうだ。
3年間の研究開発を終えて、今後は国内の実証炉計画だけでなく、英国の実証炉計画とも連携し、実用化を目指す。実装を果たすことで、安全性のさらなる向上に貢献していきたい。

