独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.349

東濃地科学センターは、高レベル放射性廃棄物を地下深くで安全に処分するために、地
下の環境ではどのような現象が起こっているかを研究しています。その一環として土岐地球
年代学研究所では、岩石などさまざまな物質の年代測定手法の標準化をめざした研究を行
っています。http://www.jaea.go.jp/04/tono/pamph/triggerpamph.pdf

今回はその年代測定技術の開発について紹介します。

高レベル放射性廃棄物を地下深くで安全に管理するためには、地質環境が長期的にどの
ように変化するかを把握する必要があります。このため東濃地科学センターでは今後、数万
年以上にわたって地殻変動の傾向や速度の予測・評価を行っています。それらの予測や評
価の信頼性を高めるためには、過去に起こった噴火や断層運動などの地質イベントの時期
を精度良く見極めることが重要となります。

一般的に地層は当然のことながら下にあるほど、古くなります。この上下の関係によって、
時間的な地質イベントの前後関係がわかります。これを相対年代と言います。一方、放射性
同位体の壊変や，ある環境下で一定の割合で進行する化学反応を利用して、その地層の年
代を特定することができます。こうして得られた値は、数値年代または絶対年代と呼ばれま
す。

土岐地球年代学研究所ではこの数値年代のうち，主に“放射”年代測定法の技術開発に
取り組んでいます。特にウラン・トリウム・ヘリウム年代法や自生粘土鉱物のカリウム・アルゴ
ン年代法（感度法）による年代測定ができる国内で唯一の研究所です。

放射年代測定法には，

1) 放射性核種の親核種と娘核種の比を利用する方法，

2) 放射線損傷を利用する方法，

3) 宇宙線により生成した核種を利用する方法

等があります。

1) にはカリウム・アルゴン法，ウラン・鉛法等の年代測定法があり，主に数十万年より古
い時代の火成岩や鉱物の年代がわかります。

2) には光ルミネッセンス法，電子スピン共鳴法等があり，主に十万年より新しい時代の鉱
物や貝・サンゴ等の年代を測定することができます。

3) には炭素14法等があり，数百年～数百万年と核種によって測定範囲が異なり，植物片
や地下水等の年代測定にも用いることができます。

炭素14を利用した年代測定では、加速器質量分析装置を使用します。この装置を使うと
試料が少なくてすみ、また短時間で測定することができます。これらの特徴を生かして、岐阜
県加茂郡川辺町指定の文化財である阿夫志奈（あぶしな）神社に奉納された獅子頭の一部
（木材）の年代測定を行いました。その結果、獅子頭は西暦1408～1466年という値が得られ
ました。獅子頭の裏には1532年に作られたと記されており、木材の年代ともほぼ整合的であ
ることがわかりました。このほかにも土岐市埋蔵文化財センターの依頼を受け、肥田町江門
遺跡から発掘された種子および木片の年代測定を実施し、これらは14～17世紀頃のもので
あることも明らかにしました。