公 開 番 号

2024―01

関連公開番号

 

件     名

プルトニウム燃料第三開発室におけるグローブボックス缶体の腐食

公  開  日

2024724日(令和6年)

不適合の発生日

202398日(令和5年)

発 生 拠 点 名

核燃料サイクル工学研究所

発生施設・設備名等

プルトニウム燃料第三開発室 グローブボックスNo.FPG-08a

問 合 せ 先

プルトニウム燃料技術開発センター 燃料技術部 処理技術課

不適合の内容

グローブボックス設備(グローブボックスNo.FPG-08a)の年次点検において、グローブボックスの缶体(ステンレス鋼(SUS304)製)の表面に汚染を検出したため、周辺を調査したところ、腐食(底面外側に錆と腐食痕、内部表面の相対する位置に孔食及び応力腐食割れ)を確認しました。

原因の調査・特定

 グローブボックス缶体の腐食の発生原因を特定するために実施した調査の結果、次の事項を確認しました。

 

(1) 腐食の観察結果

グローブボックス缶体底面外側に確認した錆を除去したところ、外表面に分枝状の腐食痕を確認しました。また、外側の錆部に相対する内側の表面にも腐食(孔食)とともに分枝状の腐食痕を確認しました。

内側表面に孔食を確認した場所には、グローブボックスの内部に設置した装置部品に発生した錆がこぼれ落ちたと思われる錆の粉が堆積している状況を確認しました。この錆の発生した内装装置の部品の材質がグローブボックス缶体のステンレス鋼とは異なる鋼材(例えば炭素鋼)であり、缶体と接触した状態であることを確認しました。

そのほか、内部装置の構成部品として使用している塩化ビニル製のホースやケーブルに可塑剤の染み出しを確認しました。更に、これら部品の近傍の缶体表面に、液だれ状の汚れを確認しました。

(2) 腐食の発生原因の推定

グローブボックス缶体内部に孔食を確認したことから錆粉や液だれ状の汚れを採取し分析したところ、高濃度の塩素を含有していることを確認しました。また、内装装置の部品に確認された錆は、ステンレス鋼と材質の異なる鋼材の接触による自然電池の作用によって発生したものと推定しました。

これらの状況からグローブボックス缶体内部で確認された孔食及び分枝状の腐食痕の発生原因について、次のように推定しました。

@  塩化ビニル材から生じた塩素成分がグローブボックス缶体の内部表面に生じた微小な結露水に溶け込み、缶体表面に塩化物イオンが発生。

A  発生した塩化物イオンが、缶体内部のステンレス鋼表面の不働態皮膜を破壊し、孔食が発生。また、錆粉による塩化物イオンの濃縮作用によって濃度が高くなり孔食が発生しやすい環境が形成された可能性が高い。

B  塩化物イオン濃度が高い環境下において、ステンレス鋼表面に発生した孔食を起点に応力腐食割れが発生した可能性が高い。

C  このようにグローブボックス内部に発生した孔食及び応力腐食割れが時間の経過とともに進行し、缶体の外表面に至る微細な欠陥が形成され、外表面に錆を発生させた。

参考資料「グローブボックス缶体の腐食の発生原因と再発防止について」

是正処置の必要性の評価

(システムへの影響)

従来、塩素成分や異種金属との接触によりステンレス鋼が腐食するとの知見があったため、グローブボックス缶体と塩化ビニル製品や異種金属が直接接触することがないよう処置していました。今回、塩化ビニル製品や異種金属が直接接触していない状態でも、塩化ビニル製品の劣化により発生した液だれ状の汚れや錆粉の存在によってグローブボックス缶体のステンレス鋼表面に孔食や応力腐食割れの発生・進行を促進するおそれがあることが新たな知見として得られました。この新たな知見に対する対応を含め、グローブボックス缶体の腐食の発生・進行を抑制するため、是正処置を行い、再発を防止する必要があると判断しました。

是正処置(計画)の内容

 

是正処置として、以下に示す2件を実施しました。

(1) グローブボックスFPG-08aに対する処置

@ 腐食が確認された部位は、錆等を研磨、除去し、清浄したのち、内面外面に錆止め塗料を塗布し、また、外表面には、金属テープで養生しました。

A グローブボックス内部に設置した機器の外観を点検し、グローブボックス床面に落下するおそれのある錆があれば撤去、研磨、養生、その他の適切な処置を行いました。

B グローブボックス内で使用する塩化ビニル製品の外観を点検し、べたつき(劣化によるもの)があれば缶体に触れるおそれのないよう隔離処置を行いました。

(2) 定期点検項目の追加

プルトニウム燃料技術開発センターが所掌するグローブボックスを対象とした点検マニュアルに、次の点検項目を追加するとともに、追加した点検項目及びステンレス鋼の発錆機構を点検作業者に教育することとしました。

@ 塩化ビニル製品の変質・劣化に伴う液滴がグローブボックス缶体に付着していないこと。また、そのおそれがないこと。

A グローブボックス内部に設置した機器から発生した錆がグローブボックス缶体に付着していないこと。また、そのおそれのないこと。

B グローブボックス缶体に、ステンレス鋼と異なる金属が接触していないこと(異種金属の接触を避けること)。

備   考