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Ver.73 発行 2008.12.26  日本原子力研究開発機構 広報部

原子力機構メールマガジンを御愛読頂きありがとうございます。

今年も残り5日ばかりとなりました。2008年の世相を表す漢字として今年は「変」が選ばれました。日常生活において、ガソリン価格、日用品価格の変動や気候、景気の変動など身近に変化を感じた方も多かったことと思います。また、世界経済の危機的状況が現実のものとなり、日本を代表する企業の雇用問題まで発展し、変化などという表現では済ませられない混沌とした状況に陥っています。このような社会情勢の中ですが、原子力機構では、新たな段階に変化を遂げたプロジェクトがあります。平成13年度より建設を進めていたJ-PARC(大強度陽子加速器施設)の物質・生命科学実験施設が完成し、中性子を利用した研究を開始しました。難病治療薬の開発や、環境を考えた新しい技術の開発に貢献できる成果を出し、将来のわたしたちの生活をより豊かに変えていけるように努めていきたいと思います。

広報部広報課 上野 信行

さて、今回の「研究開発現場から」は、地層処分研究開発部門です。

【研究開発現場から】 地層処分研究開発部門 知識化グループ 大澤英昭

今回は、地層処分研究開発部門で行っている「知識マネジメントシステムの開発」について紹介します。

高レベル放射性廃棄物の地層処分は、果たして安全なのでしょうか?どのようにすれば、放射能が漏れ出て来て、人間や環境に悪影響を及ぼすことがないようにできるのでしょうか?

地層処分システムが、数万年もの間、放射性廃棄物を人間と環境から安全に隔離することができるかどうかを論ずるためには、現在の人類が持てるありとあらゆる知恵を活用する必要があります。

地層処分は、処分場候補地の選定から、建設、操業を経て、閉鎖に至るまでが数10年から100年に及び、数世代にまたがる、長期の事業です。そのため、現時点で100年先までのことを全て決定してしまうのではなく、事業の節目、節目で、すべて順調に進んでいるかを見極め、何か予期せぬことが起きてはいないかを確かめ、さらに改善すべきことはないかを考え、そうしてようやく次のステップに進むべきかどうかの意思決定をしていくことになります。

これまでは、技術的な問題について結論を下すには、生き字引と呼ばれるような有識者を集めて、議論をしてもらっていました。ところが、これからはそれだけでは困難になりつつあります。なぜでしょうか?

まず、第一に情報量の指数関数的な増加があります。これまで四半世紀にわたる研究開発によって得られたデータ、ソフトウェア、情報、知見、知識(ここでは、これらを総称して知識と呼びます)の量は膨大になっています。そして、この「知識の爆発」と呼ばれる現象は今後もますます顕著になると考えられています。

次に、地層処分には、地球科学分野や原子力分野など、多くの学問分野にわたる多様な知見や技術が必要であり、ある分野の専門家だけでは、カバーしきれないということがあげられます。

さらに、地層処分事業を前に進めるかどうかの意思決定は、事業者や規制機関だけではく、政治家や一般国民といった幅広い人たちによってなされます。ステークホルダーと呼ばれるこのような人々の判断材料となるような中立的な知識を理解しやすい形で提供することが研究者の役割です。

もちろん、これまでの研究成果は、論文や報告書といった形で保存され、公開されています。しかし、論文や報告書を、ただ保存して検索できるようにしておくだけでは不十分です。有識者や専門家に聞けばよいという考え方もありますが、今まさに、団塊の世代の集団退職時代を迎え、それらの知識が失われていくという危機に直面しています。それらの知識を、将来の世代が、使いやすい形にしなければなりません。

たとえば、地層処分の安全性についてステークホルダーの間で意見が分かれている事柄があるとしましょう。そんな場合に、賛成意見と反対意見を列挙し、それらの直接の根拠となる研究成果や実験結果、間接的に参考となるような事例をも即座に示せるシステムがあれば、迅速かつ的確な意思決定を下すために大いに役立つでしょう。また、そのような地層処分の安全性について、これまで専門家がどのような考え、手順、方法で確認を行っているのかを示してくれるシステムがあれば、次の世代の専門家が実際にそれらを行うときのヒントになるでしょう。

そのために、まず、多様な知識源から知識を収集し、系統的に整理をします。また、専門家の頭の中だけにある知識(暗黙知)を取り出し、誰もが使える形にすることも重要な課題です。

そして、これらを多様なステークホルダーが使いやすい、いわゆるユーザーフレンドリーなシステムにすることと、今わかっている形態の知識だけではなく、新たに創生された知識を無理なく取り込めるような柔軟性のある構造にします。これらは、国際レビューワークショップなども開催しながら、国内外の関係機関の方々の意見を聞きながら進めています。

これらを実現するため、知識マネジメントシステムの開発では、最新の知識工学、情報技術(IT)、人工知能(AI)、エキスパートシステムなどを積極的に利用することが有効と考えています。もちろん、これらの技術に頼って全てを自動化することは不可能であり、人間が行うべきことは、人手で行うことを忘れてはなりません。そのため、トレーニングコースなど、人を介して知識を伝承する取り組みもはじめています。

この知識マネジメントシステムについては、2010年頃までにプロトタイプを開発し、関係者の方々にも見ていただく予定としています。

地層処分研究開発部門ホームページをリニューアルしました。http://www.jaea.go.jp/04/tisou/toppage/top.html

【プレス発表】

  1. 平成20年12月16日、高速増殖原型炉もんじゅの新燃料(初装荷燃料)の輸送について
    http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/2008/12/p081216.pdf

【お知らせ】

  1. 平成20年12月1日、成果展開事業に関する開発提案の募集について(ご案内)
    http://sangaku.jaea.go.jp/4-information/info081201.html
  2. 平成20年12月16日、J-PARC物質・生命科学実験施設利用開始合同記念式典開催
    http://j-parc.jp/ja/topics/2008/kinen-j.html
  3. 平成20年12月17日、「もんじゅ」屋外排気ダクト腐食孔関連を掲載
    http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/duct.html
  4. 平成21年1月24日、アクアトム(敦賀)では第3回サイエンスカフェを開催します。
    http://www.jaea.go.jp/09/aquatom/event.html#science_cafe

【採用情報】

  1. 平成22年度新卒採用情報(勤務条件、採用スケジュール、採用説明会・施設見学案内)を掲載しました。
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/new/index.html
  2. J-PARCセンターでは、任期付研究員を募集します。
    書類提出期限:平成21年1月6日(火)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment88.html
  3. 量子ビーム応用研究部門では、特定課題推進員を募集します。
    書類提出期限:平成21年1月6日(火)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment89.html
  4. 量子ビーム応用研究部門では、特定課題推進員を募集します。
    書類提出期限:平成21年1月7日(水)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment90.html
  5. 原子力機構では、平成21年度特別研究生を募集します。
    書類提出期限:平成21年1月9日(金)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/internship/internship08.html
  6. 量子ビーム応用研究部門では、特定課題推進員を募集します。
    書類提出期限:平成21年1月9日(金)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment91.html
  7. 量子ビーム応用研究部門では、特定課題推進員を募集します。
    書類提出期限:平成21年2月13日(金)
    http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment92.html

【調達情報】

  1. 一般競争(指名競争)参加資格の定期審査受付について〔物品の製造・販売・役務の提供等〕締切り:平成21年1月31日
    http://www.jaea.go.jp/02/format/index.html

■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。

■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
 http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html

【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
 http://www.jaea.go.jp/

【お問い合わせ】お問い合わせフォームより → http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml
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