国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)東濃地科学センター 結晶質岩地質環境研究グループの岩月輝希主任研究員らの研究チームは、坑道の閉鎖に伴う地質環境の回復現象に関する研究の一環として、岐阜県瑞浪市にある瑞浪超深地層研究所の深度500mの研究坑道の一部(冠水坑道:幅5m、高さ4.5m、長さ約45m:総容量約900m3)を閉鎖し、地下水の水圧回復と減圧を繰り返す世界初の再冠水試験を行っています。この試験は平成28年1月に開始しており、このほど、試験開始から約1年間にわたる水質データの解析評価を行いました。特に、高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性元素と化学的な性質が似ている地下水中の天然の希土類元素(レアアース)の挙動を観察しました。
その結果、希土類元素は、地下水に溶けた状態と0.1μm~数百μmの微細な粒子に付着した状態で存在していること及び閉鎖・水没した冠水坑道内の地下水中の希土類元素の濃度は時間とともに低下していることが明らかになりました。この希土類元素の濃度低下は、地下水中に溶けている希土類元素が坑道壁面の吹付コンクリートに沈着したり、微細粒子に付着した希土類元素が粒子同士で凝集して沈殿することによって、その分が地下水から取り除かれるために起きることが判りました。このことは、坑道を閉鎖した場合、坑道内では希土類元素が移動しにくい環境が形成されることを示しています。以上の科学的知見は、実際の地下深部の坑道閉鎖環境で長期にわたって観測を行うことで得られた世界初の成果であり、高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性にとって重要な、坑道閉鎖後の物質の閉じ込め能力を示すものです。なお、本研究成果は、日本の地下の研究施設で得られた重要な研究成果として、国際論文誌「Applied Geochemistry、2017、82巻」に掲載されました。