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超深地層研究所計画

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トピックス

瑞浪超深地層研究所の深度500mにおける円錐孔底ひずみ法による初期応力測定結果について

ポイント
  • 深度500mの研究坑道における測定の結果、水平面内における最大主応力方向は南北方向であり、これは地表からのボーリング調査における測定結果(水圧破砕法)および深度100~300mでの研究坑道の測定結果(円錐孔底ひずみ法)とほぼ一致していることが分かった。
概要

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として、岐阜県瑞浪市にて超深地層研究所計画を進めています。この計画は、①地表からの調査予測研究段階、②研究坑道の掘削を伴う研究段階、と段階的に進めています。岩盤力学に関する調査研究の主要な課題として、岩盤の初期応力*1状態の評価手法の開発に取り組んでいます。表1は瑞浪超深地層研究所で実施した初期応力測定の実績を示しています。

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大規模な地下空間利用の際には、地下空洞の合理的かつ安全な設計や施工にあたって、事前に岩盤内の応力状態を把握することは非常に重要です。岩盤の初期応力状態を評価するための測定方法にはいくつかありますが、本研究では、水圧破砕法と、応力解放法の1つである円錐孔底ひずみ法という方法で測定してきました。

これまで、①の地表からの調査では、深いボーリング孔での測定実績が多い水圧破砕法を実施しました。次の段階である②の深度100~300mの研究坑道の掘削時には、完全な3次元応力状態が把握できる利点がある円錐孔底ひずみ法を実施してきました。ここでは、深度500mの研究坑道で実施した円錐孔底ひずみ法による初期応力測定の結果を紹介します。この測定結果により、①の地表からの調査において推定した初期応力状態の妥当性の確認を行います。

内容

測定場所は図1に示す瑞浪超深地層研究所の深度500mの主立坑と換気立坑の間に掘削された予備ステージと呼んでいる研究坑道です。この地点は,白亜紀後期の土岐花崗岩と呼ばれる黒雲母花崗岩が分布します。初期応力測定は、図1に示す13MI34号孔で8測点、13MI35号孔で8測点の2孔で計16回実施しました。そのうち、各孔6測点、計12測点で3次元応力を評価できました。

初期応力は、最大主応力(σ1)、中間主応力(σ2)、最小主応力(σ3)で表されます。図2に測定孔の平均値から求めた主応力の大きさと方向を示します。各測点の主応力の関係を見ると、σ2とσ3は近い値で、σ1はこれらに比べ1.5倍程度大きな値となっていることが分かりました。また、最大主応力の方向については34、35号孔ともほぼ南北方向を示し、水平に近いことがわかりました。図3は、深度と水平面内の最大主応力および鉛直応力の関係について、地表からの水圧破砕法の測定結果1)と研究坑道からの円錐孔底ひずみ法による測定結果2)に今回の測定結果をプロットしたグラフです。水平面内の最大主応力は15.0MPaで、これは地表からの測定結果よりは若干小さいものの、坑道からの測定結果の傾向とほぼ一致しています。また、鉛直方向の応力は10.5MPaとなり、深度500mの土被り圧*211.6MPaより若干小さいものの、ほぼ等しい結果となりました。図4に示すように、最大主応力の方向については、地表からの測定結果は北西-南東の傾向を示しますが、今回の結果は南北方向を示すものの、傾向は大きく変わりませんでした。

最大主応力値およびその方向が地表からの測定結果と若干異なった原因としては、測定場所の岩盤等級(電中研式)がCH~CM級が主体であることや、主立坑に近いことから、主立坑に沿って分布する断層の影響を受けていることが考えられます。

以上のことより、今回の測定結果は測定地点の応力状態を反映していると考えられます。

表1 初期応力測定の実績
初期応力測定の実績の表
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坑道とボーリング孔の配置図
図1 坑道とボーリング孔の配置
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初期応力測定結果の画像
図2 初期応力測定結果
(主応力の下半球投影図)
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深度と水平面内最大主応力および鉛直応力の大きさを示す画像
図3 深度と水平面内最大主応力および鉛直応力の大きさ
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水平面内最大主応力の方向を表す画像
図4 水平面内最大主応力の方向
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用語解説
*1 初期応力
岩盤の自重および地殻運動によって岩盤内に作用している力(初期地圧あるいは岩盤応力とも呼ばれる)。
*2 土被り圧
地表から任意の深さにおいて、その深さまでの岩盤の自重によってかかる力。
参考文献