(別添1)

市有地における超深地層研究所計画の概要
 市有地での超深地層研究所計画における地層科学研究は、以下の3つの段階で進めます。
 研究坑道(立坑および水平坑道)の建設に先立って、物理探査や地表からのボーリングなどにより地質環境を予測する研究を行います(第1段階)。その後、研究坑道の建設を行いながら、地表から予測した結果を地下の調査で確認します(第2段階)。さらに、掘削された研究坑道を利用して研究者が直接地下に入り詳しく研究を行います(第3段階)。この間、地質環境に関する予測とその予測結果の確認を段階ごとに繰り返して行い、地上や地下から、高い精度で、かつ効率よく、地質環境を調査・評価する手法の有効性を段階的に確認します。このような総合的かつ計画的な研究は、人工的な地下構造物の影響を受けていない自然の状態の地質環境を出発点とする超深地層研究所計画において初めて可能となります。
 超深地層研究所計画においては、他の地層科学研究で得られた成果や研究資源をあわせて活用することにより、研究を効率的に進め、また、成果をより充実させます。

1.研究計画
 正馬様用地では、これまでに、電磁探査や反射法弾性波探査などの物理探査、表層水理調査、深い4本のボーリング調査を実施し、調査技術の開発と、地質環境の情報の蓄積およびそれに基づく地質環境のモデル化手法の検討を実施してきました。市有地の地下には、正馬様用地に分布する花崗岩と同一の花崗岩が連続していることが既往の調査結果から推測されることから、今後は、正馬様用地での知見や他の地層科学研究での知見を活用して、市有地で第1段階の研究を行います。その結果を踏まえて第2段階以降の研究を実施し、あわせてこれらの研究に必要な調査技術の開発を行います。
@地表からの調査予測研究段階(第1段階)
 第1段階では、地表からの地質調査、表層水理調査、物理探査およびボーリング調査で、本来の地質環境の状態を、できるだけ乱さずに正確に把握することが課題となります。これらの調査の結果に基づき地質環境のモデル化を行い、地層の分布などの地質環境を予測するとともに、研究坑道の建設が地質環境に与える影響を予測します。また、予測された地質環境に基づいて、第2段階で建設される立坑等の研究坑道の詳細な設計、第2段階の研究内容の具体化を行います。
A坑道の掘削を伴う研究段階(第2段階)
 第2段階では研究坑道の建設と研究を並行して進めます。この段階では研究坑道内から岩盤の直接的な観察や調査を行い、第1段階と比べ詳細な情報を系統的に取得します。
 第2段階では、第1段階に掘削したボーリング孔などに設置された機器での観測に加え、研究坑道内において、坑道周辺の地層や割れ目の調査、坑道内での地下水の調査および坑道を掘削する時の地層の歪みや地層にかかる力の調査などを行います。これらの結果に基づいて、地質環境のモデル化手法の信頼性を確認します。これら第2段階における研究の成果を、地質環境に関する信頼性の高い情報として整理するとともに、第1段階の調査や評価で用いた手法の有効性の確認に必要な情報としても利用します。また、研究坑道の施工に伴い、坑道等の設計技術や施工技術などの有効性が確認されます。さらに、この段階において、第3段階の研究計画を具体化します。
B坑道を利用した研究段階(第3段階)
 第3段階は地下約1,000 mまで展開した研究坑道を利用して、坑道周囲の地層にかかる力、地下水の流れ方や性質についての調査、地質環境での物質の動きに関する調査および地質環境のモデル化などを行い、地質環境における物質の移動などの現象を詳しく研究していきます。また、深地層における工学技術の基礎に関する研究も主としてこの段階で進めます。さらに、地震などの天然現象が地質環境に与える影響についても研究を進めていきます。それらにより、本来の地質環境と、坑道の掘削や地震などの天然現象が地質環境に与える影響などを、高い精度で効率よく調査・予測・検証することのできる総合的な技術を確立していきます。

2.施設計画
@主要施設
 市有地での超深地層研究所計画の主要な施設は、地上施設と研究坑道に大別できます。地上施設としては、立坑の掘削に必要となる櫓(やぐら)を収納した掘削タワーと巻上機、掘削に伴い必要となる給排水設備、換気設備、コンクリートプラント、排水処理プラントなどの付帯設備、そして、作業全体に係わる設備としての受変電設備、非常用発電機、資材置場、火工所、現場事務所などを設けていきます(図1)。研究坑道は、深度約1,000 mの主立坑と換気立坑の2本の立坑、両立坑を深度約100 m毎につなぐ予備ステージ、主に第3段階の研究を行う中間ステージと最深ステージの水平坑道から構成されます(図2)。
A施設計画の進め方
 立坑等の研究坑道の工事は、まず造成工事を行い、立坑坑口部分に掘削タワー等を設置し、その後、研究坑道の本格掘削を行います。主立坑と換気立坑の掘削を同時に進め、深度約100 m毎に予備ステージを掘削して両立坑をつないでいきます。立坑の途中には第3段階の研究のための中間ステージを設けます。中間ステージでの研究を開始しつつ、最深部に向け両立坑の掘削を続けていきます。深度約1,000 mまで到達した後、換気立坑においては、それまでの掘削用の巻上設備から第3段階の本格的な研究に備えた昇降設備に更新していきます。主立坑では、掘削用の巻上設備を用いて、引き続き中間ステージの追加掘削と最深ステージの掘削を行いながら研究を行っていきます。

3.スケジュール
 研究期間は、正馬様用地においてはこれまで20年間を予定しておりましたが、今回の超深地層研究所計画の全体的なスケジュールは表1のように予定しています。なお、研究計画は、研究の進捗状況などを考慮して、必要に応じて見直していきます。

図1 地上施設イメージ
図2 超深地層研究所イメージ
参考 超深地層研究所の位置図