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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

研究開発課題ごとの報告書(平成17〜19年度)

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全項共通/人工バリア等の信頼性向上に関する研究安全評価手法の高度化に関する研究地質環境特性調査・評価手法に関する研究地質環境の長期安定性に関する研究

全項共通

著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
佐々木康雄、虎田真一郎、沼田良明

第2回地層処分研究開発検討委員会(会議報告)

地層処分研究開発部門が実施している地層処分研究開発のうち、主として東海研究開発センターにおいて実施している研究課題について審議検討を頂き、客観的な助言を得て計画に反映し、優れた成果を効率的に得るとともに、これを処分事業や安全規制等に時宜よく反映していくため、大学や関連研究機関における専門家による「地層処分研究開発検討委員会」を設置している。本資料は、2007年3月に開催した第2回委員会の会議報告を行うものである。

JAEA-Review 2008-016 2008
梅田浩司、大井貴夫、大澤英昭、他

地層処分技術に関する知識基盤の構築 平成18年度報告

本報告書は、2006年度(平成18年度)の地層処分技術に関する各々のプロジェクトにおける研究開発の現状とトピック報告を示した年度報告書である。

JAEA-Review 2007-050 2007
梅木博之、大澤英昭、内藤守正、他

地層処分技術に関する知識管理システムの基本的概念

処分事業の実施主体や安全規制機関など、地層処分計画にかかわるステークホルダーは、安全性を示す論拠の構築や地層処分計画のさまざまな時期における意志決定において、地層処分にかかわる多様な技術的情報やデータ、知見を用いる。これらは、地層処分の長期的な安全確保と長期間に渡る事業全体に対する信頼を支えるうえでの知識基盤として体系化し、常に最新の科学技術の知見を取り込みながら、次世代へ継承できるようにしておくことが必要である。これまで段階的に行ってきた研究成果の取りまとめが示すように、時間に伴いこのような知識は多様化するとともに、その量は激増している。このため、日本原子力研究開発機構では、地層処分のセーフティケースに関する一般概念に基づいてシステムの安全評価などにおいて必要となる多様かつ大量な情報を知識として構造化し、ステークホルダーの要望に応じて提供するとともに、新たな知識の創造や次世代への知識継承などの機能を備える知識管理システム及び知識ベースの開発を進めている。本報告書では、平成17年取りまとめに示されたナレッジ・ヴィジョンに基づき、地層処分技術に関する知識管理システム及び知識ベースを具体的に設計・開発していくための基本的概念を明らかにし、今後の当面5年程度(平成21年度まで)の計画を示す。

JAEA-Research 2006-078 2006
核燃料サイクル開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築 —平成17年取りまとめ—地層処分技術の知識化と管理

本報告書では、第2次取りまとめの成果に加え、これらの研究開発成果を処分事業の実施と安全規制の策定に資する技術基盤としてより確かなものとすることができるよう、必要な科学技術情報を今後継続的に整えていく(知識基盤化)ための考え方を提示することに主眼を置いた。はじめに、地層処分事業の実施と安全規制の策定に必要な科学技術基盤を知識として管理していく必要性について述べた後、その基本的な考え方を示すうえでセーフティケースの概念を視軸として取り入れていくことを提言した。また、セーフティケースを構成する一般的な要素について、OECD/NEAの報告書に沿って、それぞれの内容を説明した。次に、セーフティケースの主要な要素である安全評価基盤に関し、これまでの研究開発成果に基づく知識ベースについて述べた。最後に、以上までの内容をまとめたうえで、今後新法人において展開していていく知識マネジメントシステムの方向性について述べた。

JNC TN1400 2005-020 2005
核燃料サイクル開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築 —平成17年取りまとめ—分冊3 安全評価手法の開発

本報告書は、第2次取りまとめ以降処分事業や安全規制に関する動向を踏まえ、核燃料サイクル開発機構が実施してきた安全評価手法の開発の成果を取りまとめたものである。その内容は、核燃料サイクル開発機構が課題評価委員会による評価を受けながら策定した「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の全体計画」(以下、「全体計画」という)に示された目標および課題に対応したものになっている。全体計画で示された第2次取りまとめ以降の安全評価手法の高度化に関する目標は、これまで整備してきた安全評価に関連する様々なモデルや手法を、実際の地質環境へ適用することを通じて、その信頼性を確認していくこと(実際の地質環境への地層処分技術の適用性確認)および処分システムに関連する現象への理解を深め、評価の信頼性を高めていくこと(地層処分システムの長期挙動の理解)である。第2次取りまとめ以降の安全評価手法の高度化については、核種移行のデータベース整備、安全評価モデルの高度化、安全評価手法の整備・高度化、安全評価手法の適用性確認の4つの課題について取り組むこととした。なお、本報告書で取扱う課題は、第2次取りまとめと異なり安全評価関連の全分野を網羅的にカバーするのではなく、安全評価の基盤として現象理解、モデル開発、データベース開発、手法開発などの中から、重要な課題を選択して実施している。

JNC TN1400 2005-016 2005
核燃料サイクル開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築 —平成17年取りまとめ—分冊2 工学技術の開発

本報告書は、第2次取りまとめ以降の処分事業や安全規制に関する動向を踏まえ、核燃料サイクル開発機構が実施してきた工学技術の研究開発の成果を取りまとめたものである。その内容は、核燃料サイクル開発機構が課題評価委員会による評価を受けながら策定した「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の全体計画」(以下、「全体計画」という)に示された目標および課題に対応したものになっている。全体計画で示された第2次取りまとめ以降の処分技術の信頼性向上に関する目標は、これまで整備してきた地層処分に関連する様々な技術や手法を、実際の地質環境へ適用することを通じて、その信頼性を確認していくこと(「実際の地質環境への地層処分技術の適用性確認」)および処分システムに関連する現象への理解を深め、評価の信頼性を高めていくこと(「地層処分システムの長期挙動の理解」)である。第2次取りまとめ以降の処分技術開発については、人工バリアと周辺岩盤を含むニアフィールド環境における長期的な個別現象や連成現象の理解向上により、処分システムの長期性能に関する評価の信頼性向上に焦点を当てて研究を進めた。そのため、地層処分基盤研究施設(ENTRY)での工学試験や国際共同研究により、炭素鋼オーバーパックの腐食挙動や緩衝材の基本特性に関するデータベースの整備、熱-水-応力-化学連成モデルの開発などを進めるととともに、ナチュラルアナログ研究により人工バリア材料の長期挙動に関するデータの蓄積と評価手法の妥当性確認を進めた。また、海外の地下研究施設を活用した閉鎖技術の開発や低アルカリ性セメントの開発などの工学技術開発を進めた。さらに、深地層の研究施設を対象とした地表からの調査段階における地質環境条件の設定に基づく設計手法の適用性確認を行った。これら、個別課題に対する研究の遂行により、個別の設計手法やデータベースについて常に最新の知見が取り込まれ、最新技術への更新が可能となる。第2次取りまとめと異なり工学技術関連の全分野を網羅的にカバーするのではなく、工学技術の基盤として設計を中心とした現象理解、モデル開発、データベース開発、材料開発などの中から、重要な課題を選択して実施している。

JNC TN1400 2005-015 2005
核燃料サイクル開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築 —平成17年取りまとめ—分冊1 深地層の科学的研究

第2次取りまとめ以降、サイクル機構では、地層処分技術に関する研究開発の「全体計画」を2001年度に策定し、これに沿って、処分技術の信頼性向上や安全評価手法の高度化を目指した「地層処分研究開発」と、その基盤となる「深地層の科学的研究」を進めてきた。全体計画では、「実際の地質環境への地層処分技術の適用性確認」と「地層処分システムの長期挙動の理解」という大きく2つの研究目標を設定した。「深地層の科学的研究」においては、上記の2つの研究目標の達成に向けて4つの研究課題、すなわち「地質環境特性に関する研究」、地質環境の長期安定性に関する研究」、「深地層における工学技術の基礎の開発」、および「ナチュラルアナログ研究」を設定して調査研究を展開した。分冊1では、この「深地層の科学的研究」の第2次取りまとめ以降の進捗を示した。分冊1は、全6章の構成とし、第1章「はじめに」と第2章「深地層の科学的研究の役割」に続き、第3章で「地質環境の長期安定性に関する研究」、第4章で「地質環境特性に関する研究」と「ナチュラルアナログ研究」、第5章で「深地層における工学技術の基礎の開発」について報告する。第6章の「おわりに」では、第3章から5章の研究成果を簡潔にまとめるとともに、今後の研究課題について記した。

JNC TN1400 2005-014 2005
核燃料サイクル開発機構

平成16年度地層処分技術に関する研究開発報告会 —わが国の地層処分計画を支える技術基盤の継続的な強化—要旨・スライド・ポスター

平成16年度の地層処分技術に関する研究開発報告会を開催するにあたり、報告要旨、スライドおよび縮刷ポスターを冊子としてまとめた。報告会は、本社バックエンド推進部による全体概要、東濃地科学センターによる深地層の科学的研究についての現状報告、幌延深地層研究センターによる深地層の科学的研究および処分技術の信頼性向上に関する研究についての現状報告、東海事業所処分研究部による処分技術の信頼性向上および安全評価手法の高度化に関する研究についての現状報告が行われた。また、特別講演として、スイス放射性廃棄物管理協同組合(Nagra)の上席相談役であるマッキンレー博士より、「高レベル放射性廃棄物処分対策:21世紀における研究開発における挑戦」と題した講演を行った。ポスターセッションにおいては、東濃、幌延、東海の各事業所から個別研究成果の報告を行った。

JNC TN1400 2004-015 2005

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
林真紀、吉川英樹

大型鉄遺物のX線CT測定法の比較

これまでに国内17遺跡から出土した約40点の鉄製品の腐食状況を調査し、1000年間の腐食量は、核燃料サイクル開発機構が、我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-で見積った炭素鋼の腐食量:31mmより十分に低いことを明らかにした。しかし、埋蔵環境は大半が酸化性雰囲気で、地層処分で想定される還元性雰囲気に埋蔵されていたと推定されたものは数点にすぎず、この雰囲気におけるデータの蓄積が必要と考えられた。ここでは、つくば市小田地区の国指定史跡である小田城より発掘された「鋤」を含有する土壌固体試料について、腐食量を調査することを目的とした。また、X線CT測定の効率化を図るために、日本原子力研究開発機構で所有する医療用X線CTスキャナ(東芝製AsteionVI)を金属ナチュラルアナログ研究に活用することを考えている。同試料のX線CT測定を高出力工業用X線CTで行い、それぞれのX線CT像、断面物質密度及び錆厚測定結果についての比較を行ったので報告する。

JAEA-Research 2008-024 2008
藤ア淳、鈴木英明、藤田朝雄

熱–水–応力連成試験設備(COUPLE)を用いた室内試験結果に基づく熱–水連成モデルの信頼性確認

人工バリア定置後のニアフィールドの挙動を評価するためには、そこに生じる連成現象をモデル化し、その時間的、空間的変遷を把握することが必要である。しかしながら、ニアフィールドにおける連成現象は熱–水–応力–化学が相互に影響を及ぼしながら進行する複雑なものであるから、適用した連成モデルが現象を適切に表現可能か否かの判断は実現象との比較なしには困難である。したがって、室内あるいは原位置において、実際に連成現象を生起させて取得した結果に基づき、モデルの確証を行うことが必要である。このような観点から、室内において実施した工学的規模の熱–水–応力連成試験設備(COUPLE)を用いて連成試験を実施した。その結果、温度及び緩衝材中の水分量について、有意なデータを得ることができた。さらに、連成モデルを用いて計算した緩衝材中の温度及び水分量の変遷は試験結果と良い一致を示し、今回適用した連成モデルの妥当性が示された。

JAEA-Research 2008-020 2008
平本正行、小林保之、青柳茂男、他

ニアフィールド岩盤の長期力学挙動予測評価手法の信頼性向上に関する検討(I) —緩衝材の膨潤圧とオーバーパックの腐食膨張圧がニアフィールド岩盤の長期安定性に与える影響に関する研究—

本研究では、ニアフィールド岩盤の長期力学挙動予測評価手法の信頼性向上に関する検討として、緩衝材の膨潤圧とオーバーパックの腐食膨張圧がニアフィールド岩盤の長期安定性に与える影響について検討した。緩衝材の膨潤挙動を温度荷重で、オーバーパックの腐食膨張挙動を強制変位でモデル化し、ニアフィールド岩盤の長期力学挙動の予測解析を行った。その結果、緩衝材の膨潤圧やオーバーパックの腐食膨張圧が内圧としてニアフィールド岩盤に作用することで、ニアフィールド岩盤の長期安定性が向上し、緩衝材の膨潤圧やオーバーパックの腐食膨張圧を考慮していない従来の評価手法が保守側の結果を与えることを示した。ただし、例外として、緩衝材の剛性が高く、岩盤の初期応力が小さな場合においては、処分孔壁面近傍に引張破壊による緩み領域が発生する可能性が示された。そのような場合、緩衝材が岩盤中に発生した亀裂に流出することで、人工バリアの機能低下が起こる可能性が懸念される。

JAEA-Research 2008-013 2008
川崎学、谷口直樹、内藤守正

炭酸塩水溶液中における純銅のアノード分極挙動

銅は代替オーバーパック材料の一つとして挙げられている。処分後初期の酸化性雰囲気における銅の腐食挙動に及ぼす環境因子の影響を把握することを目的として、炭酸塩水溶液を用いて地下水中の代表的な化学種濃度をパラメータとしたアノード分極試験を行った。動電位法及び定電位法によるアノード分極試験の結果、純銅のアノード分極挙動は以下のようにまとめられる。(1)炭酸イオン及び炭酸水素イオンは純銅の不動態化を促進し、皮膜破壊を抑制した。(2)塩化物イオンは純銅の活性溶解を促進し、皮膜破壊を促進した。(3)硫酸イオンとpHの影響は明確ではなかったが、硫酸イオンは塩化物イオンに類似した作用を有することがわかった。pHは値が高いほど不動態化をもたらし、皮膜破壊を抑制する傾向が示唆された。(4)皮膜破壊電位Ebは[Cl-]⁄[HCO3-]、[SO42-]⁄[HCO3-]など皮膜破壊型の化学種と皮膜破壊抑制型の化学種の濃度比で整理され、これが高いほどEbは卑化した。しかし、この濃度比がある値以上では活性溶解型の領域となり、皮膜破壊は起こりえない。不動態型の領域におけるEbの下限値は約-200mV vs. SCEと求められた。(5)定電位試験の結果、皮膜破壊電位付近における腐食形態は多くの場合に全面が均一な溶解であったが、条件によっては孔食や不均一な腐食を生じた。

JAEA-Research 2008-012 2008
谷口直樹、川崎学、内藤守正

緩衝材中における炭素鋼の腐食挙動の実験的検討–1 —10年間の浸漬試験結果に基づく腐食進展挙動の検討—

オーバーパックの置かれる地下深部は酸素濃度の低い還元性雰囲気と考えられる。炭素鋼オーバーパックの腐食寿命を評価するうえでそのような還元性環境での炭素鋼の腐食挙動を把握することが必要である。本研究では酸素ガス濃度が1ppm以下に制御された窒素雰囲気下において10年間に渡る緩衝材中での炭素鋼の浸漬試験を実施した。模擬地下水として人工海水及び炭酸水素イオンと塩化物イオンを含む水溶液を用いた。炭素鋼の腐食量を試験片の重量減少量より算出し、その経時変化を調べた。実験結果は以下のようにまとめられる。(1)ベントナイト純度、気相部の雰囲気による腐食進展挙動への影響は小さいことがわかった。(2)腐食速度はいずれの条件でも時間とともに低下する傾向があり、浸漬初期の腐食速度が大きいほど長期的な腐食がより抑制される傾向があった。(3)炭酸塩濃度の高い条件(0.1M)では他の条件よりも試験期間を通じて腐食量は小さくなった。(4)10年間の腐食量Yの経時変化はべき乗則、 Y=AXBにより近似された。人工海水系における係数AとBを緩衝材密度ρ(g⁄cm3)とけい砂混合率 r(0≦r≦1)及び温度T(K)の関数として表す経験式を求めた。(5)浸漬期間1〜10年間の腐食量変化の傾きより腐食速度を算出した結果、0.055〜1.4μm⁄yの値が得られた。(6)従来のオーバーパック寿命評価において用いられた腐食速度の値(10μm⁄y)は10年間の室内試験データ、ナチュラルアナログデータと比較して十分に安全側であることが確認された。

JAEA-Research 2008-011 2008
齋藤雄也、棚井憲治、菊池広人、他

断層ずれに伴う人工バリアの力学的挙動評価(I)

我が国の地層処分概念では、地震・活断層の影響等、地層処分システムに著しい影響を及ぼす可能性のある天然現象については、サイト選定によってその影響を避けることを基本としている。これに対し、万が一断層によるずれ変位が生じる場合を想定して、人工バリア性能の限界状態を把握することも重要であると考えられる。そのため、本研究では発生頻度、規模が小さいため事前調査で発見することが困難であるC級断層が人工バリアを直撃した場合を想定し、模型実験とシミュレーション解析を行い、人工バリアに及ぼす影響について検討してきた。本稿では、断層変位速度の影響を評価するため、速度を変えた実験を行い、実験データの拡充を図るとともに、シミュレーション解析の精度向上のための検討を行った。その結果、断層変位速度を100mm⁄sから1⁄10の10mm⁄sにした結果、緩衝材外周部で観測される土圧が20%程度減少することがわかった。また、数値解析においては、周辺岩盤の透水係数を適切に評価することが重要であることが明らかとなった。

JAEA-Research 2008-010 2008
鈴木英明、藤ア淳、藤田朝雄

坑道周辺における不飽和領域の生起に伴う地球化学反応を考慮した水理–物質移行連成解析 —高レベル放射性廃棄物の地層処分における熱–水–応力–化学連成挙動モデル⁄解析コードの適用—

高レベル放射性廃棄物の地層処分システムにおける人工バリア定置後のニアフィールド挙動のより現実的な予測を行うためには、処分場建設に伴って生じる応力場、水理場、化学場などの変化を解析評価の初期条件として考慮する必要がある。例えば、坑道掘削に伴う処分坑道周辺における不飽和領域の発生は、酸化還元電位の変化や、地下水へのガスの溶解あるいは脱ガスによる溶液組成の変化など、オーバーパックの腐食や核種移行の環境条件などに影響を及ぼすことが予想される。本報告書は、幌延等の具体的地質環境における熱–水–応力–化学連成挙動モデル⁄解析コードの適用事例の提示に向け、坑道周辺における不飽和領域の生起に伴う地球化学反応を考慮した水理–物質移行連成解析を実施した。そして、岩盤内に大気が侵入することによる間隙水の酸化還元電位の変化や、間隙水中に高い濃度で溶解している二酸化炭素が脱ガスすることによる間隙水pHの変化など、これまでに開発した連成挙動モデル⁄解析コードで表現できることを確認した。

JAEA-Research 2008-003 2008
平本正行、小林保之、大久保誠介

岩石の強度回復特性・一般化応力緩和挙動に関する研究 (委託研究)

岩石の強度回復特性及び一般化応力緩和挙動に関する研究を行った。使用した供試体は、幌延深地層研究計画におけるボーリング調査(HDB–10、 HDB–11)で採取した稚内層硬質頁岩である。強度回復特性に関する試験では、荷重の保持時間が長いほど強度回復が大きく、一軸圧縮強度が小さいHDB–10孔の方が強度回復が大きい結果となった。ただし、試料としてまだ2地点のみの結果であるため、試料の採取場所による影響を定量的に評価することは現段階では困難であり、今後さらなるデータの蓄積が必要であると考える。この強度回復特性は、長期に渡る地下構造物の安定性にとって極めて重要であり、原位置試験を含む本格的な検討を早期に実施する必要があると考える。一般化応力緩和挙動に関する試験では、稚内層硬質頁岩は、三城目安山岩及び河津凝灰岩の示す挙動と定性的には同じであったが、試験結果のばらつきが大きく定量的に評価することは現段階では困難であり、今後さらなるデータの蓄積が必要であると考える。この一般化応力緩和挙動は、従来のクリープ試験や応力緩和試験では得られない情報を追加し、コンプライアンス可変型構成方程式の検証及び高度化に役立つと考える。

JAEA-Research 2008-002 2008
平本正行、小林保之、中間茂雄、他

地層処分施設における多連設坑道の設計手法に関する検討

本検討では、地層処分施設における多連設坑道の設計手法について、第2次取りまとめの考え方に基づき、さらに詳細化・実用化を図ることを目的とし、EDZの発生挙動に関する検討(2章)、ピラーの安定性評価に関する検討(3章)を行った。2章では、一処分パネル規模の坑道群をモデル化した「多連設坑道モデル」を対象に解析的検討を実施し、EDZの発生挙動について検討した。解析モデルの違いによる影響を把握するため、第2次取りまとめの解析モデルを地表面まで考慮した「簡略化モデル」についても検討した。その結果、両モデルはEDZの発生挙動が大きく異なることから、EDZの発生挙動を正確に予測評価するには、多連設坑道モデルを用いて解析領域を十分に確保することが重要であると考える。3章では、「ピラー強度」と「ピラーに作用する荷重」の2つの観点から、類似構造物におけるピラーの安定性評価に関する考え方をもとに、地層処分施設におけるピラーの安定性評価方法について検討した。その結果、多連設坑道モデルによる数値解析を実施すれば、ピラー強度及びピラーに作用する荷重をともに適切に評価できることから、地層処分施設におけるピラーの安定性評価方法を提案した。

JAEA-Research 2008-001 2008
陶山忠宏、上野健一、笹本広

炭素鋼と10年間接していた圧縮ベントナイトの変質挙動調査

圧縮ベントナイト中での炭素鋼の長期的な腐食挙動を評価するため、窒素雰囲気下において人工海水及び人工地下水を用い、50℃及び80℃での10年間に渡る浸漬試験が行われた。本調査では、この浸漬試験後の圧縮ベントナイトを対象とし、鉄–ベントナイト相互作用によるベントナイトの変質挙動を調査した。これまでに、鉄共存下でのベントナイトの変質挙動を把握するため、温度、溶液条件及び試験期間等を変え、バッチ系での試験を実施してきた。それらの結果では、初期のNa型スメクタイトのFe型化や微量の非膨潤性粘土鉱物への変化など、何らかの変化が認められた。しかしながら、今回調査を行った圧縮系での試験後試料では、圧縮ベントナイトへの鉄の移行は確認されたものの、初期のNa型スメクタイトに変化は生じていないと推定された。したがって、処分環境のような圧縮系における鉄–ベントナイト相互作用による影響を評価するうえでは、バッチ系での試験結果をそのまま適用するのではなく、圧縮系で生ずる現象を十分に理解したうえで評価することが重要である。

JAEA-Data⁄Code 2008-007 2008
K. Tanai and K. Matsumoto

A Study on extrusion behavior of buffer material into fractures using X–ray CT method

高レベル放射性廃棄物の地層処分における人工バリアシステムの一つである緩衝材は、地下水の浸潤により膨潤し、それによって周辺岩盤に存在する開口亀裂に侵入する。仮に亀裂への侵入が長期間に渡り継続される場合には、緩衝材密度の低下を招くことになり、低透水性、核種移行抑制機能及びコロイドろ過性などといった緩衝材に期待されている性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。本研究では、岩盤亀裂中への緩衝材の侵入挙動を明らかにするために、X線CT測定を併用した侵入試験を行った。侵入試験については、亀裂中への侵入距離がベントナイト配合率や地下水のイオン強度に影響されることがわかった。X線CT測定に関しては、緩衝材の侵入挙動の把握、特に侵入モデルの開発の観点からも重要な役割を果たすものとなる。

JAEA-Research 2007-094 2007
立川博一、川久保文恵、清水亮彦、他

オーバーパックの長期耐食性に関する調査 平成18年度 (委託研究)

オーバーパックの腐食寿命については、これまで、日本の幅広い地質環境条件を想定した実験データや既往研究等に基づいて検討が行われてきた。しかしながら、高pH環境での挙動、ニアフィールド環境条件の時間的な変化に伴う挙動、溶接部の腐食挙動等、長期的な信頼性を向上させるとともに、オーバーパック設計を具体化するうえでの課題がある。このような状況を考慮して、(財)原子力安全研究協会内に国内の金属の腐食科学分野の専門家からなる「オーバーパックの長期安定性に関する調査専門委員会」を設置し、既往の研究成果と安全評価上の考え方について、金属の腐食科学の観点から長期耐食性に関する調査検討を行った。

JAEA-Research 2007-086 2007
上野健一、柴田雅博

スメクタイトと2:1型粘土鉱物の標準生成自由エネルギーの推定手法による誤差について

粘土鉱物の熱力学データは、実験的アプローチでの整備が容易ではない。このため、計算手法の検討が行われている。しかし、計算により熱力学データを推定する場合、どの手法を用いたら信頼性が高い値(推奨値)を得ることができるのか、どの程度の誤差が存在するかの議論は行われていない。本報告では、熱力学データのうち、ΔGf°について、スメクタイトと2:1型粘土鉱物を対象として、ΔGf°推定手法の選定手順を示し、選定された手法から求めた、ΔGf°推奨値にどの程度の誤差が存在するかを把握することを目的として、手法のレビューと相互比較を行った。その結果、実験値と推定値の差の平均値、標準偏差(σ)が小さい手法を信頼性の高い手法とし、その手法から計算されるσを推奨値とする考え方を示した。

JAEA-Research 2007-069 2007
棚井憲治、山本幹彦、関義孝

TRU処分システム中のガス移行に関する感度解析評価

放射性廃棄物処分場内では金属の腐食等によって発生するガスにより、処分場内の地下水が排出される、あるいは処分場内の圧力が上昇する可能性が指摘されている。これにより、生物圏に至るバリア中での放射性核種の移行や人工バリア又は岩盤の構造力学的安定性に影響を与える可能性があり、長期的な処分の安全性に及ぼす影響が懸念される。このような問題点を踏まえて、今後のモデル開発及びデータ取得計画に資するために、気液2相流モデルを用いて処分システム中のガス移行について感度解析を行い、各パラメータの影響度に関する検討を行った。その結果、廃棄体/充填材(セメント系材料)に対しては、絶対透過係数及び残留間隙水飽和度の影響が大きく、緩衝材に対してはガスの絶対透過係数、毛管排除圧及び残留間隙水飽和度の影響が大きいことが明らかになった。

JAEA-Research 2007-057 2007
杉田裕、高橋美昭、浦上学、他

処分システムに求められる閉鎖性能の考え方 —処分場パネル規模の水理に関する試解析—

高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価においては、処分場の閉鎖性能が極めて重要である。原子力発電環境整備機構と日本原子力研究開発機構は、地層処分システムに求められる閉鎖性能の考え方を示し、そこで示される坑道の埋め戻し材や粘土プラグ等の閉鎖要素の設計要件を明らかにするとともに今後の技術開発等の方向性を導出することを目的に、協力協定に基づき、共同で検討していくための場として2004年度から「処分場の閉鎖技術に関する検討会」を設置した。2005年度である本件等は、初年度に坑道交差部を対象として得られた知見をもとに、水理解析の対象を坑道交差部から処分場パネル規模へと拡張を行った。処分場パネル規模での水理解析では、処分パネルを構成する35本の処分坑道をモデル化する必要があり、モデルの構造が複雑になることから、坑道周囲に対して等価透水係数の考え方を適用した。解析では、粘土プラグの設置位置、埋め戻し材の透水係数、処分坑道の透水係数、動水勾配の方向をパラメータとした。その結果、処分坑道の流量は、動水勾配の方向、処分坑道への粘土プラグの設置の有無、主要坑道の透水係数の大きさが影響することがわかった。

JAEA Research 2007-023 2007
谷口直樹、川崎学、内藤守正

低酸素濃度環境における純銅の腐食挙動に及ぼす硫化物の影響と銅オーバーパック寿命の超長期化の可能性

銅は一般的に、低酸素濃度条件では熱力学的に安定であり、水の還元反応をカソード反応とした腐食を起こさない。しかし、硫化物が存在する環境ではこの性質が失われて腐食することが知られており、銅をオーバーパックとして使用する場合には硫化物による腐食挙動への影響を把握する必要がある。本研究では、硫化ナトリウムを含む人工海水中において純銅の浸漬試験及び応力腐食割れ試験を実施するとともに、銅オーバーパックの超寿命化の可能性を検討した。その結果は以下のようにまとめられる。(1)低酸素濃度条件において緩衝材中における浸漬期間2年間までの浸漬試験を行った結果、硫化ナトリウム濃度の高い条件ほど腐食速度は大きくなった。硫化ナトリウム濃度0.001Mでは0.55μm⁄y、0.005Mで2.2μm⁄y、0.1Mでは15μm⁄yと推定された。(2)銅試験片表面には黒色〜黒灰色の皮膜が形成されており、X線回折によりCu2S(Chalcocite)が同定された。(3)低歪速度試験による応力腐食割れ試験の結果、硫化ナトリウム濃度が0.001Mではほとんど割れ感受性を示さなかったが、0.005M以上の濃度条件では明瞭な亀裂が観察された。(4)浸漬試験及び応力腐食割れ試験結果から、処分環境において硫化物濃度が0.001M以下であれば腐食速度は非常に小さく、かつ応力腐食割れを起こさないため1000年を大きく超える寿命を期待できる可能性がある。

JAEA-Research 2007-022 2007
藤田朝雄、陶山泰宏、戸井田克

結晶質岩における閉鎖要素に期待すべき性能要件

本報告書では、第2次取りまとめ以降の地層処分場の閉鎖技術に関する課題に基づいて、地下実験施設における止水プラグの原位置適用性試験結果などを踏まえ、結晶質岩における閉鎖要素に対して期待すべき性能要件及び閉鎖システムの考え方を取りまとめた。その結果、止水プラグ、強度プラグ及び粘土グラウトに関して、現状技術を組合せることにより施工が可能であり、止水プラグ周辺部での低透水性能を把握することができた。また、結晶質岩を対象に処分場で考えられる閉鎖にかかわる事象を抽出し、その事象が発生する部位、要件及びその対策について整理するとともに、これらに対して原位置試験結果から得られた知見と今後個々の閉鎖要素の設計で検討すべき課題を抽出した。さらに、そのように性能が期待できる個々の閉鎖要素を処分場レイアウト規模に適用していく閉鎖システムとしての考え方を整理し、課題を抽出した。

JAEA-Research 2007-021 2007
藤田朝雄、油井三和、鈴木英明、他

塩濃縮シミュレーションに関する研究 (共同研究)

本報告書は、財団法人産業創造研究所と日本原子力研究開発機構との共同研究「塩濃縮シミュレーションに関する研究」の成果を報告するものである。室内において塩濃縮実験を実施した結果、加熱部近傍で、Na2SO4やCaSO4が濃縮することが確認され、この事実に基づいて塩濃縮現象のメカニズムを仮定し、モデルを作成した。次に、既存の地球化学解析コード、PHREEQCを用いて、飽和系での塩濃縮に関するシミュレーションを実施した結果、定性的な挙動の評価は可能であったが、定量的な挙動の評価のためにはさらなるモデル化の検討が必要であることがわかった。さらに、熱-水-応力-化学連成解析コードを用いた解析評価を実施した。この解析は、gypsumの濃縮に着目して実施し、その結果、濃縮現象の傾向は実験結果のそれと一致した。しかし、gypsumの緩衝材中の分布形状に関しては、一致していない部分もあり、境界条件設定の再検討や連成解析モデル⁄コードが有する課題検討が必要であることが明らかになった。

JAEA-Research 2007-017 2007
西村繭果、棚井憲治、高治一彦、他

ニアフィールドの長期力学連成解析手法の構築

本稿ニアフィールドにおける力学的相互作用を評価する連成解析手法を構築した。連成解析モデルは、人工バリア、処分坑道、周辺岩盤を含む3次元解析モデルで、オーバーパックの自重沈下、腐食膨張及び岩盤クリープ挙動を考慮してニアフィールドの力学的挙動を評価する。連成解析モデルへの拡張に際して生じる問題点と新たな課題として、(1)岩盤の力学モデルをコンプライアンス可変型構成方程式として導入、(2)コンクリート支保の劣化挙動モデルの導入、(3)オーバーパックの腐食膨張模擬方法の検討、(4)岩盤内水圧挙動の影響検討、及び(5)埋め戻し材の構成モデルパラメータの設定を行い、これらの成果を反映して連成解析のプロトタイプを作成した。作成したプロトタイプによる解析を行った結果、従来の2次元モデルの解析結果と比べて、岩盤及び埋め戻し材モデルの挙動や拘束条件を適切に反映した挙動を示しており、本解析手法により、ニアフィールド全体の力学挙動を把握できることが示された。

JAEA-Research 2007-004 2007
平本正行、小林保之、青柳茂男、他

ニアフィールド岩盤の長期力学挙動予測評価手法の信頼性向上に関する検討

ニアフィールド岩盤の長期力学挙動予測評価手法の信頼性向上に関する検討として、おもに以下の2つの内容について検討を行った。(1)では、既存の山岳トンネルの計測データをもとに、ニアフィールド岩盤の長期健全性評価を行う際の初期期間を対象としたコンプライアンス可変型構成方程式の適用性を検証した。その結果、岩盤や支保工の物性の一部について仮定した部分があるものの、内空変位や支保工軸力に関する計算値は、計測値とおおむね一致し、コンプライアンス可変型構成方程式を用いた解析手法は、ニアフィールド岩盤の長期安定性評価のみならず、トンネル掘削時の挙動を表現することにも適用可能であることがわかった。(2)では、地山の時間依存性挙動に配慮して最適な支保パターンや変形余裕量を定量的に評価した修正設計手法が現状では見あたらない中、コンプライアンス可変型構成方程式を用いた情報化施工方法を提案した。この方法は、実際の処分場建設の際にも利用することができ、初期の段階で地山の挙動に応じた支保工に修正することで、閉鎖以降の千年、万年といった長期評価の信頼性を向上させることに大きく繋がると考える。

JAEA-Research 2007-003 2007
山田勉、平本正行、小林保之、他

処分場建設の際に持ち込まれる材料の長期性能評価の観点からの留意点

フィンランドのPOSIVAでは、地下研究施設ONKALOの建設及び操業によって誘発される擾乱の評価を行っている。本報告書は、POSIVAが示した評価と幌延における深地層の研究施設の建設時に持ち込まれる工学材料を参考に、実際の地層処分場施設の建設や操業に必要な技術を選定するうえで考慮すべき閉鎖後のシステムの長期性能に影響すると考えられる工学材料を抽出するとともに、使用した場合の影響の低減方法や今後の課題を取りまとめたものである。

JAEA-Review 2007-008 2007
小林保之、山田勉、中山雅、他

低アルカリ性セメントを用いたコンクリートに関する原位置試験計画案

高レベル放射性廃棄物の地層処分施設では、建設・操業中の安全性を確保するため、吹付けや覆工コンクリート等、さまざまなコンクリート材料が使用される。コンクリートは、骨材、セメント、混和材等から構成される複合材料であり、これに含まれるセメントの高アルカリ成分がバリアシステムの長期安定性へ影響を及ぼすことが懸念され、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)では、HFSCと呼ばれる低アルカリ性セメントの研究開発を進めてきている。また、原子力機構では、北海道幌延町にて地下研究施設(Underground Research Laboratory、以下URL)を建設中である。本書は、地層処分施設の建設に用いられるセメント系材料の要求性能について整理するとともに既往の低アルカリ性セメントの研究開発についてのレビューを行いHFSCを用いた吹付けコンクリートのURLにおける原位置試験計画を示したものである。計画の立案に際しては、これまでHFSCを使用したコンクリートの施工実績がないことから、施工性能、力学的性能を十分確認したうえで実施工に適用する計画とした。また、実環境でのポゾラン反応の進行度、劣化外力への抵抗性等、耐久性能についても調査する計画とした。

JAEA-Review 2007-007 2007
三井裕之、高橋里栄子、谷口直樹、他

オーバーパック溶接部の耐食性評価に関する研究–III (共同研究)

溶接部(溶接金属及び熱影響部)と母材は材料の性状が異なるため、溶接部の耐食性も母材と異なる可能性がある。本研究ではTIG、 MAG及びEBWによる溶接試験体から切り出した試験片を用いて、炭素鋼溶接部の耐食性について母材との比較を行った。腐食試験は以下の4つの項目に着目して行った。(1)不動態化挙動と腐食形態、(2)酸化性雰囲気における全面腐食、孔食・すきま腐食進展挙動、(3)応力腐食割れ感受性、(4)還元性雰囲気における全面腐食進展挙動、水素脆化感受性。その結果、TIG及びMAG溶接金属部において全面腐食と孔食・すきま腐食に対して耐食性の劣化が示唆された。この原因として、溶接で使用された溶加材の成分による影響を受けた可能性がある。溶加材を使用しないEBWについてはいずれの腐食形態に対しても耐食性の低下は認められなかった。応力腐食割れについては、高炭酸塩溶液中では、いずれの溶接方法においても溶接金属部、熱影響部ともに母材に比較して感受性が低下する傾向が認められた。

JAEA-Research 2006-080 2006
立川博一、川久保文恵、清水亮彦、他

オーバーパックの長期耐食性に関する調査 (委託研究)

オーバーパックの腐食寿命については、これまで、日本の幅広い地質環境条件を想定した実験データや既往研究等に基づいて検討が行われてきた。しかしながら、高pH環境での挙動、ニアフィールド環境条件の時間的な変化に伴う挙動、溶接部の腐食挙動等、長期的な信頼性を向上させるとともに、オーバーパック設計を具体化するうえでの課題がある。このような状況を考慮して、(財)原子力安全研究協会内に国内の金属の腐食科学分野の専門家からなる「オーバーパックの長期安定性に関する調査専門委員会」を設置し、既往の研究成果と安全評価上の考え方について、金属の腐食科学の観点から長期耐食性に関する調査検討を行った。

JAEA-Research 2006-058 2006
谷口直樹、甲川憲隆、前田一人

幌延地下水環境における炭素鋼の腐食挙動の予察的検討

幌延地下研究施設におけるオーバーパックの原位置試験計画の策定と、幌延での地質環境条件を想定したオーバーパック設計・寿命評価を行ううえで、幌延地下研究施設における地下水条件でのオーバーパック候補材料の腐食挙動を把握することが必要である。そこで、オーバーパック候補材料である炭素鋼を対象として、幌延の模擬地下水及び実際に採取された地下水を用いて腐食試験を実施し、腐食挙動を予察的に検討した。幌延地下水条件における炭素鋼のアノード分極測定の結果、緩衝材中では活性溶解型の分極挙動を示し、炭素鋼の腐食形態はほぼ全面腐食であると推定された。また、大気雰囲気下及び窒素雰囲気下において浸漬試験を行った結果、既往のデータに比較して顕著な腐食局在化、著しい腐食速度の増加は観察されず、幌延の地下水条件においても第2次取りまとめにおける炭素鋼オーバーパックの腐食量評価モデル、腐食速度の設定値が適用可能であると推定された。

JAEA-Research 2006-051 2006
小西一寛、中山雅、三原守弘、他

幌延深地層研究計画における低アルカリ性セメントを用いた吹付けコンクリートの施工性に関する研究

本研究では、支保工の施工方法として吹付コンクリートを対象にHFSCを用いたコンクリートの配合を検討するとともにその施工性について評価を行った。幌延深地層研究施設における支保工の設計基準強度は28日材齢で36N⁄mm2が求められており、この強度を満足するコンクリートの配合を検討した。急結剤添加前のベースコンクリートとして、普通セメントを用いる場合には水セメント比を0.4、早強セメントを用いる場合には水セメント比を0.45とすることにより、設計基準強度を満足する可能性のある2配合を選定し、模擬トンネルにおいて急結剤を用いた吹付施工試験を行った。従来、水セメント比は吹付コンクリートの施工性の観点から0.5程度が限界であったが、HFSCにおいては0.45及び0.4でも良好であった。吹付けコンクリートの表層部では空隙が多く認められたが、内部ではほぼ一定の単位体積質量であった。吹付けコンクリートのコアの28日材齢の平均強度は48N⁄mm2程度あり、支保工の設計基準強度を上回る高強度となった。したがって、28日材齢のセメントペースト硬化体の浸漬液のpHは12.4程度であり、シリカフュームやフライアッシュのポゾラン反応はまだ十分ではないと考えられるものの、施工性は良好なことが明らかとなった。今後は、幌延で調達できる材料を用いて吹付けコンクリートの配合を確認するとともに、浸漬液のpHの長期的な低下挙動について評価を行っていく必要がある。

JAEA-Research 2006-040 2006
棚井憲治、神徳敬、菊池広人、他

緩衝材の性能保証項目に関わる評価ツールの現状

国が策定する緩衝材にかかわる安全基準、指針等に資するため、廃棄体支持性、オーバーパックの保護、放射性核種の移行抑制、岩盤の保護という緩衝材の性能保証項目に対し、現状の評価方法を確認し、ツールの整備状況として一覧表形式でまとめた。また、一覧表に記載した評価ツール内容の具体例を示した。示している内容は、緩衝材の基本特性(緩衝材膨潤特性、力学特性、透水特性)、緩衝材の変形・変質の長期挙動に関する現象(クリープ現象、緩衝材の流出、岩盤への侵入、緩衝材の変質に関する長期安定性)、緩衝材のガス透気回復挙動、コロイド影響評価、岩盤の力学的変形挙動であり、それぞれの項目で確認する具体的内容、評価方法(実験による確認により評価がなされるもの、実験式及びデータベースから推定されるもの、モデル計算より導出するもの)の種類、研究の概要及びその最新の結果を示した。

JAEA-Research 2006-035 2006
三井裕之、谷口直樹、大槻彰良、他

オーバーパック溶接部の耐食性評価に関する研究–II (共同研究)

炭素鋼オーバーパック溶接部の長期健全性評価に資するため、溶接部において想定される腐食現象を想定して腐食試験計画を策定した。また、この計画に基づいて腐食試験を開始し、炭素鋼溶接部の電気化学特性について母材との比較を行った。EBW溶接材、TIG溶接材について、母材部、熱影響部及び溶接金属部のアノード分極曲線の測定を炭酸塩(0.1M及び0.01M CO3)溶液中で行ったところ、以下の結果を得た。EBW材については、母材、熱影響部及び溶接金属で金属組織が異なるが、アノード分極曲線に顕著な違いは現れなかった。TIG材については、溶接金属の電流値が全般的に高くなった。0.01M CO3-pH10の溶液中では、急激な電流値の立ち上がりを伴う、局部腐食的な変化も認められた。

JAEA-Research 2006-031 2006
川上進、藤田朝雄、油井三和

埋め戻し材、プラグ、坑道および処分孔等の性能保証項目に関わる評価ツールの現状

国が策定する緩衝材にかかわる安全基準、指針等に資するため、埋め戻し材、プラグ、坑道及び処分孔等の性能保証項目に対し、現状の評価方法を確認し、ツールの整備状況として一覧表形式でまとめた。また、一覧表に記載した評価ツール内容の具体例を示した。示している内容は、埋め戻し材、緩衝材の基本特性(膨潤特性、力学特性、透水特性)、埋め戻し材の変形・変質の長期挙動に関する現象(流出、岩盤への侵入)、コンクリート材料によるアルカリ影響(緩衝材、岩盤の変質・劣化、オーバーパックの腐食挙動)、岩盤の力学的変形挙動であり、それぞれの項目で確認する具体的内容、評価方法(実験による確認により評価がなされるもの、実験式及びデータベースから推定されるもの、モデル計算より導出するもの)の種類、研究の概要及びその最新の結果を示した。

JAEA-Research 2006-015 2006
青柳茂男、油井三和、棚井憲治、他

幌延深地層研究計画第2段階(平成17〜21年度)を対象とした工学技術の適用性検討に関する計画案

日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という)では、北海道の天塩郡幌延町にて、堆積岩を対象とした幌延深地層研究計画を進めている。幌延深地層研究計画は、平成17年度より、地下研究施設の建設に伴い、地上からの調査段階(第1段階)から坑道掘削時の調査研究段階(第2段階)へと移行していく。一方、原子力機構では、これまで工学技術の基盤技術開発として、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性; 地層処分研究開発第2次取りまとめ」で示した一連の工学技術をベースとしつつ、幌延地区の地上からの調査段階で得られた地質環境条件を対象として工学技術の具体的な地質環境への適用性検討を行ってきた。今後は、工学技術の基盤技術開発として、幌延深地層研究計画の進捗に併せて、第2段階を通じた工学技術の具体的な地質環境への適用性検討を進め、それらの成果を体系的に整理し提示していく必要があると考える。よって、本報告書では、現時点の幌延の地下施設の建設工程及び「幌延深地層研究計画; 地下施設を利用した第2、第3段階における調査試験計画案」に基づき、幌延深地層研究計画の第2段階のうち、平成17年度から平成21年度までの5年間に焦点をあてた工学技術の適用性検討に関する研究計画を、個別研究課題ごとに整理し立案した。なお、本計画は、今後、幌延の地下施設の施工状況や最新の動向を踏まえ随時変更する可能性があるとともに、今後より詳細化していく必要がある。

JAEA-Review 2006-014 2006
小田好博、鈴木英明、川上進、他

熱–水–応力連成試験設備(COUPLE)における熱–水–応力–化学連成試験(Ⅱ)

高レベル放射性廃棄物地層処分システムにおける人工バリア設計評価や性能評価の信頼性向上のためのニアフィールド環境条件のリアリティ向上に向けて、熱的、水理学的、力学的、化学的なプロセスが相互に影響を及ぼし合うニアフィールド連成挙動の数値解析に関する研究が進められている。その一環として、人工バリアおよびその周辺岩盤における熱–水–応力-化学の連成現象を定量的に把握することを目的に、熱–水–応力連成試験設備(COUPLE)を用いて連成試験を実施した。試験は、モルタルで製作した模擬岩体中に緩衝材を設置し、廃棄体を模擬したヒーターを100℃に、模擬岩体周囲を70℃に加熱した。緩衝材中に浸潤する水は、モルタルと反応した高pHの溶液である。本報は、連成試験で得られた結果のうち、第1報以降に得られた緩衝材の化学的特性の変化を調べるために組成分析結果を、また2次鉱物の生成状況等を調べるためにX線回折、SEM観察⁄EDS分析を行った。これらの分析の結果、今回の熱–水–応力–化学連成試験終了後の緩衝材において、大きな化学的変質が生じていないことが分かった。

JNC TN8400 2004-024 2005
菊池広人、棚井憲治

幌延地下水を用いた緩衝材・埋め戻し材の基本特性試験

「核燃料サイクル開発機構(以下、サイクル機構)では、「第2次取りまとめ」までに地層処分場における人工バリア、地下施設の設計および性能評価に資するため、圧縮ベントナイトの基本特性について降水系地下水(蒸留水で模擬)を想定したデータの拡充を行ってきた。本報告書においては、これまでに得られた成果を踏まえ、実際の地質環境条件下における緩衝材および埋め戻し材の基本特性を把握するため、幌延深地層研究計画の一環として、幌延地下研建設サイト近傍のボーリング孔HDB-6、GL-300m以下の地下水を用いて、緩衝材仕様および埋め戻し材仕様における膨潤特性(膨潤力測定試験・隙間体積膨潤試験・膨潤応力測定試験)、透水特性(透水試験)、熱特性(熱物性測定試験)、力学特性(一軸圧縮試験・一次元圧密試験・三軸圧縮試験)試験を実施し、データを拡充するとともに、関係式の一般化を図ったので報告する。試験の結果を以下に示す。1)緩衝材仕様および埋め戻し材仕様における膨潤特性、透水特性、力学特性に関しては、海水系地下水条件下(幌延地下水、人工海水、NaCl溶液)の場合、降水系地下水条件下に比して、求められる機能が低下することが示された。また、塩濃度をイオン強度にて整理し、比較した結果、各特性ともに、ある一定濃度以降、求められる機能は変らなくなる傾向を示した。さらに、有効粘土密度を用いて膨潤特性、透水特性、力学特性に関する関係式の一般化を図った。・膨潤特性として、有効粘土密度と膨潤応力の関係式を一般化した。・透水特性として、有効粘土密度と固有透過度の関係式を一般化した。・力学特性として、有効粘土密度と一軸圧縮強度の関係式を一般化した。2)緩衝材仕様における熱特性に関しては、海水系地下水の場合においても降水系地下水条件下と同等の値が得られ、塩濃度の影響を考慮する必要がないことが示された。また、熱伝導率、比熱ともに、これまでに得られた含水比を用いた関係式にて評価できることが示された。

JNC TN8430 2004-005 2005
千々松正和、福留和人、浦野和彦、他

人工バリア性能確認に関する基盤情報取得方法の調査研究(I)

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、処分場の閉鎖の判断情報を与えるものとして、人工バリアが所期の性能を確保することにより、処分場が要件を満たして機能しており、その結果、安全が担保されていることを示す必要がある。この安全担保を示す一つの手法として、人工バリアにおける実現象が予測される挙動範囲内にあることを示すことが考えられる。そこで、「人工バリア性能確認に関する基盤情報取得方法の調査研究(平成15年度)」(以下、平成15年度研究と呼ぶ)においては、性能確認における計測項目の抽出、計測技術の現状の調査、および計測技術の開発計画の立案を行った。継続となる本研究では、幌延などの地下研究施設を想定して、人工バリア性能等の基盤情報取得に関わる検討を行うとともに、情報取得に適用可能な計測手法の調査・開発を継続して行った。

JNC TJ8400 2004-027 2005
戸井田克、笹倉剛、渥美博行、他

シーリング性能挙動に関する評価研究

わが国の地質環境条件に適応し得るこれら閉鎖システムの確立に資するため、室内試験及び原位置試験を通じてこれらの性能に関連するデータの取得、および、これらのデータを活用し評価手法を確立することが必要である。サイクル機構とカナダAECLとの共同研究としてこれまで実施してきた、カナダAECLにおけるトンネルシーリング性能試験が最終段階に至り、シーリング性能に関する基礎データが取得された。本年度は、これまでに実施した試験の総合的なデータ整理・解釈、トレーサー試験結果に対する数値解析的検討・評価を実施した。また、堆積岩を対象としたトンネルシーリング性能の確認を行うための試験計画の概念設計を行った。

JNC TJ8400 2004-023 2005
石原義尚、千々松正和、雨宮清、他

熱–水–応力–化学連成挙動に関する研究(IV) –成果報告書–

本研究は、地層処分システムのニアフィールドにおける連成解析を実現させるため、既存の現象解析コードTHAMES、Dtransu、phreeqcを用いた熱–水–応力–化学連成解析コードの開発を実施した。(1)本研究では、熱–水–応力解析の安定化を目的として、THAMESにおいて8節点要素が使える様、解析コードの改良を行なった。(2)本研究では、物質移行解析モデルの高度化を目的として、Dtransuにおいてガス拡散計算機能を追加した。(3)本研究では、地球化学解析モデルの高度化を目的として、含水状態に応じた表面サイト密度変化の導入、C⁄S比に応じたCSH固相の変化の導入、速度論モデルにおける時間刻みの設定方法、層間水の分離方法について検討した。(4)本研究では、熱–水–応力–化学連成解析コードの構築として、Multi_phreeqc並列化処理機能の高度化、連成解析プラットホームCouplys連続処理機能の追加、物性・連成モジュールの拡張に関する検討を実施した。これらの成果に基づき、熱–水–応力–化学解析コードを構築として、リスタート機能の追加、エラー処理機能の追加、各モジュールの統合、検証を行った。(5)本研究では、連成解析結果のポスト処理ユーティリティーの整備として、図化処理支援機能の作成、地球化学解釈支援機能の作成を行った。

JNC TJ8400 2004-015 2005

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安全評価手法の高度化に関する研究

著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
高須民男、前川恵輔、澤田淳

多孔質媒体均質層及び二層不均質層を対象にした塩淡境界面の挙動

高レベル放射性廃棄物の地層処分における安全評価では、地層中の地下水流動などの地質環境条件を実際の現象に即して評価することが重要である。沿岸地域などでは、塩水と淡水が混在する地層中の地下水流動を把握する必要があることから、均質層及び二層不均質層を対象に、模擬した地層中での塩水の淡水中への進展過程や塩淡境界面の挙動を観察するための室内試験を、多孔質媒体中水理・物質移行現象可視化装置を用いて2005年12月から2007年6月まで実施した。ビーズ粒径が異なる3種類の均質層及び二層不均質層での各試験における塩水楔浸入量を整理した結果、今回の動水勾配と塩水濃度が同様の条件下においては、ガラスビーズ粒径によらず、動水勾配と塩水濃度で塩水楔浸入量の分類ができる可能性が示された。塩水の浸入長さは塩分濃度に比例し、動水勾配が低い場合には塩分濃度の増加によって浸入長さが著しく大きくなった。なお、3種類の異なるビーズについて、媒体槽の間隙率は測定方法やガラスビーズ充填後時間経過に大きく影響を受けていないことを確認した。

JAEA-Research 2008-030 2008
下茂道人、熊本創、唐崎健二、他

亀裂を有する堆積岩の水理・物質移行評価のためのデータ取得・解析 (委託研究)

高レベル放射性廃棄物の地層処分サイトの性能評価にあたっては、天然バリアを構成する岩盤中における水理・物質移行特性を適切に評価することが重要である。しかし、これまでの知見から、特に幌延地域の亀裂の発達した堆積岩では、亀裂性媒体と多孔質媒体の双方の特徴を併せ持った性質を有することが明らかとなってきている。本件では、亀裂を有する堆積岩中における水理・物質移行パラメータの拡充を目的とした室内試験を実施するとともに、特に岩盤中の物質移行現象の評価で重要となる亀裂内の実流速について、その違いが亀裂を有する堆積岩内の物質移行現象に与える影響について数値解析的な検討を行った。また、幌延地域は、地下水中に塩水及び溶存ガスが含まれるとともに、地下深部において高い間隙水圧が認められる場所が確認されている。本件では、この高圧箇所の形成要因を把握することを目的とした数値解析的検討を行った。

JAEA-Research 2008-029 2008
栃木善克、吉川英樹、青木和弘、他

地層処分における微生物影響評価に関する研究 (2) (共同研究)

本報告では、(独)日本原子力研究開発機構及び(財)産業創造研究所による共同研究「地層処分における微生物影響評価に関する研究」の平成18年度における成果をまとめた。同研究は、地層処分場のバリア性能に及ぼす微生物活動の影響評価技術を高度化し、処分技術の信頼性向上に資することを目的として実施した。数値解析コード(MINT)による解析に供することを目的として、幌延深地層研究センターの調査フィールドに設けた地下水化学・微生物影響評価目的の観測井から地下水・岩石試料を採取し、地下水組成・微生物量の安定性を評価するための解析を実施した。解析の結果、地下水化学・微生物量への影響は比較的低いことを示唆する結果が得られた。特に、溶存メタン・メタン生成菌・硫酸還元菌(SRB)及び硫酸イオンにその傾向が見られることから、評価対象の掘削井は浅い環境にもかかわらず、微生物共存によって低い酸化還元電位の環境が安定であることを示唆するものである。

JAEA-Research 2008-025 2008
大井貴夫、稲垣学、川村淳

シナリオの重要度をわかりやすく提示可能なシナリオ解析手法の整備

本研究においては、「重要度」と「わかりやすさ」、「汎用性」を考慮してシナリオ解析の結果を提示する「シナリオの重要度をわかりやすく提示可能なシナリオ解析手法」の概念の検討を行った。本手法を用いてシナリオ解析を行うことにより、重要なシナリオは何か?なぜ、その評価で安全性が主張できるのか?などの評価の信頼性の確保にかかわる情報がよりわかりやすく明示されるようになるだけでなく、個々の研究の役割や研究の関連が示され、地層処分の総合的な性能評価に資する有用な情報が提供されるものと考える。

JAEA-Research 2008-023 2008
稲垣学、蛯名貴憲

処分環境や設計オプションに対応した性能評価手法の構築(1)

高レベル放射性廃棄物の処分事業では、公募に応募された地域の概要調査地域から精密調査地域が選択される段階的な進捗が想定されている。その際、概要調査地域から適切な精密調査区域を選定する必要があり、概要調査区域で実施される地上からの調査から得られる限られた情報と、ジェネリックな地質環境でこれまで想定されてきた設計条件や処分オプションとを組合せ、処分場の総合的な性能を評価することが必要となる。精密調査地域の選定要件としては、地質環境の長期安定性の確認とともに、破砕帯や地下水流動の及ぼす処分施設への影響について評価することが求められ、設計・施工での対応やシステム全体の性能との関連で論ずる必要がある。そのためには、これまで検討されてきたジェネリックな環境下での地質調査情報や設計条件、性能評価で用いられたシナリオやモデル及びデータを初期条件として、具体的地質情報や設計オプションを組合せた場合に生じるシナリオやモデルの相違を明らかにし、これを設計や地質調査にフィードバックできるようなフレームを構築することが合理的であると考えた。

JAEA-Research 2008-022 2008
加藤智子、鈴木祐二

地層処分生物圏評価における感度解析による重要パラメータの抽出に関する検討

地層処分生物圏評価に関するすべてのデータを実際の処分サイトにおいて整備するのは多大な労力である。したがって、重要度の高いパラメータとその変動特性を把握し、実際の地表環境において重点的に整備すべきパラメータについて見通しを持てるように準備しておくことが重要である。そこで、本研究においては、実際の地表環境において重点的に整備すべきパラメータリストを整備するために、以下の3つのアプローチをとることとした。(1)処分場からの核種移行率を人間が受ける放射線量に変換するための係数に対する生物圏評価上重要度の高いパラメータの抽出、(2)今後実際の地表環境におけるデータ取得を必要とするかどうかを判断するために、パラメータデータの引用元などを整理した、現時点におけるパラメータの設定状況の確認、(3)実際の地表環境における生物圏データ取得にかかわる優先事項リストの作成。本報告書では、(3)に示した実際の地表環境における生物圏データ取得にかかわる優先事項リストを作成するための準備として、(1)及び(2)を実施した結果をまとめた。

JAEA-Research 2008-021 2008
江橋健、小尾繁、大井貴夫

人工バリアと天然バリアのパラメータに関する感度解析 —高レベル放射性廃棄物の地層処分性能評価への包括的感度解析手法の適用—

本検討においては、高レベル放射性廃棄物の性能評価に包括的感度解析手法を適用し、一方のバリアのパラメータを保守的に設定した条件下において、一方のバリアの分析対象パラメータに関する重要度や成立条件を抽出することができるかどうかについて検討した。検討の結果、人工バリア及び天然バリアのパラメータに関する重要度や成立条件をそれぞれ例示した(例えば、降水系間隙水及び天然バリアが保守的な条件の場合に、ガラス溶解速度が2.5g⁄m2⁄y以下であれば、Cs-135の最大線量は10μSv⁄yを下回る)。本検討を通じて、包括的感度解析手法が、保守的な条件下において、それぞれのバリアのパラメータに関する重要度や成立条件の抽出に適用可能であることを示した。本検討における手法の有用性の検討や抽出された感度特性は、地層処分計画の初期段階におけるシナリオ解析や頑健なバリアの構築に資するものと考える。

JAEA-Research 2008-019 2008
川村淳、大井貴夫、新里忠史、他

高レベル放射性廃棄物地層処分における天然現象影響評価に関する研究

本報告では、総合評価体系の一環として作業フレームの高度化を図り、地質環境条件(THMCG)と天然現象の特性との関係の定量化と処分環境における性能評価パラメータとTHMCG条件との関係の定量化に関する情報整理の考え方について検討した。また、上記の考え方に基づく情報整理手法をすべての天然現象へ適用し、その手法の適用性の確認を実施した。その結果、上記情報整理については、THMCGの変化に関する情報から、地層処分の安全評価において重要な天然現象研究や地質環境に関するデータや知見などについて、その過不足も含めた情報を効率的に整理できる見通しを得た。また、急激かつ局所的な現象である火山・熱水活動及び地震・断層活動のみならず、緩慢かつ広域的な現象である隆起・侵食/気候・海水準変動にも総合評価体系の考え方に基づく情報整理の手法が適用可能であることを確認できた。また、シナリオのスクリーニング技術に関しては、情報整理により適切なシナリオの選択が可能となる見通しを得た。

JAEA-Research 2008-018 2008
M. Ochs, S. Kunze, Y. Saito, et al.

Application of the sorption database to Kd–setting for Horonobe rocks

本報告書では、JNC-SDBを適用して、幌延岩石に対するTh、Np、Cs及びSeのKd設定を試み、その適用性に関する検討を行った。JNC-SDBから関連するKdデータの抽出を行い、このKdデータ取得された実験条件と適用条件の違いを、半定量的なスケーリングファクターとして変換することでKdが導出された。このスケーリングファクターによる設定手法と関連する不確実性が、Kd設定に及ぼす影響を評価するため、評価対象となる岩石の鉱物組成、表面特性、核種の溶存化学種等の条件を考慮したスケーリングファクターを段階的に導出し、Kd設定に及ぼす影響を詳細に評価した。このKd設定手法は、実際の地質環境条件でのKdの大きさを予測する手法として有効であるが、評価対象条件への関連付けが可能な実験データの存在に依存するなど、その適用範囲はある程度限定される。また、今回のKd設定への適用を通じて、JNC-SDB及びその信頼度評価が、利用可能な関連データ集を速やかに抽出し、参照すべきデータを適切に選定するうえで、有効な手法であることが確認された。

JAEA-Research 2008-017 2008
久野義夫、笹本広

地下水中のコロイドの特性評価に及ぼす水質擾乱影響の予察的検討

この研究では、幌延地区において地下水コロイドの特性評価を実施することにより、原位置と大気環境の化学的条件の相違が地下水中の無機コロイドの特性に与える影響について検討した。HDB-10孔から採水した地下水において、おもにCaを含む有意な量の懸濁成分が観察された。そのため、大気に開放することによる地下水の組成やコロイドの特性に与える影響を確認するために、この地下水を用いた補足的な室内試験を実施した。大気環境下では、おもにCaCO3から成る生成物が、沈殿だけではなく浮遊性の粒子として確認された。しかしながら、この浮遊性の粒子については、本地下水中で分散安定性を有していないことがDLVO理論による評価により予測された。この浮遊性の粒子の生成は、化学的条件の変化に起因する一時的な挙動と推定され、原位置の地下水中では存在していなかったものと考えられる。

JAEA-Research 2008-016 2008
吉田泰、吉川英樹

核種移行評価モデルにおけるRaの共沈現象の検討

Raが他の元素に伴って共沈反応する際に、従来は例えばCa塩との共沈に際しては、モル比を保ったまま液相から固相に変化するとの仮定でモデル化や評価がなされていた。本報では、共沈実験により得られた元素分配比と固液のCa⁄Ra存在比(モル比)が異なる点に着目して、共沈反応によるRa分配比を分配係数に換算して表現する分配モデルを提案するとともに、例として降水系還元性高pH(FRHP)地下水反応間隙水条件における分配係数の換算値を示した。分配係数の換算値を考慮して降水系還元性高pH(FRHP)地下水反応間隙水の条件において4n+2系列核種の人工バリアからの核種移行率を計算した結果、226Raの人工バリアからの移行率が4n+2系列で最も高くなることが示されたものの、人工バリアからの核種放出率が最も高い135Csの約25分の1であった。

JAEA-Research 2008-015 2008
大井貴夫、加藤智子、河内進、他

信頼性のレベルを提示可能な体系的な検討結果のとりまとめ方法の整備

個々の研究者のレベルでの信頼性向上やプロジェクト全体における情報や知識の整理に反映できる方法を構築することを目的とし、国際的な品質マネジメントシステム(ISO9000s)を参考とし、「信頼性のレベルを提示可能な体系的な検討結果のとりまとめ方法」を整備した。本手法に基づき研究成果をまとめ、提示することにより、読者に研究の目的や意図、内容、要求事項及びそれらの実施方法・プロセスが明示される。また、それらに関する適合性評価を通じて、研究の透明性、追跡性が確保されるとともに、得られた結果や研究の妥当性に関する研究者の主張が展開され、結果として、読み手の理解と信頼性の向上に資するものと考える。

JAEA-Research 2008-014 2008
北村暁、戸村努、佐藤治夫、他

海水系地下水中におけるベントナイト及び堆積岩に対するセシウムの収着挙動

海水系地下水中におけるベントナイト及び堆積岩(砂岩及び泥岩)に対するセシウムの収着分配係数を取得した。これらの固相に対するセシウムの収着挙動を明らかにすることを目的として、種々の濃度における塩化ナトリウム水溶液及び塩化カリウム水溶液においても、セシウムの収着分配係数を取得した。得られた分配係数はpHには大きな依存性を示さなかった。また、イオン強度依存性を調べたところ、ベントナイトに対する収着ではナトリウムイオンとカリウムイオンのいずれの濃度に対しても依存性を示したのに対し、堆積岩に対する収着ではナトリウムイオンに対する依存性を示さず、カリウムイオンとのみ競争的に反応することがわかった。これらの結果をもとに、イオン交換モデルを用いてセシウムの収着挙動を検討した。なお、本研究は、平成14〜15年度に、当時の核燃料サイクル開発機構東海事業所で実施されたものである。

JAEA-Research 2008-004 2008
Y. Saito, M. Ochs, S. Kunze, et al.

Evaluating and categorizing the reliability of distribution coefficient values in the sorption database (2)

本報告書においては、JNC-SDBに含まれるKdデータのうち、特に幌延岩石を対象にしたKd設定検討への活用を念頭に、泥岩系のKdデータを主な対象(1,056データ)として、前報告書にて設定した手法に従って信頼性評価を行った。この信頼度評価の手法は、Kdデータ設定において、利用可能な関連データ集を速やかに抽出し、参照すべきデータを適切に選定するうえで、有効な手法である。

JAEA-Technology 2008-018 2008
林真紀、笹本広、吉川英樹

ガラスの溶解に関するデータベースの改良

地層処分システムにおいて、ガラス固化体は放射性核種の放出を防ぐ第一障壁として長期に渡り核種を保持する性能が求められ、その性能評価技術の高度化は地層処分システム全体の安全評価の信頼性向上につながる。このためには、溶解⁄変質メカニズムの科学的理解をさらに深める現象論的研究、及びその成果に基づく堅固な溶解⁄変質モデルの構築が不可欠である。ガラスの溶解挙動に関する情報を集約したガラスの溶解に関するデータベース(以下、「ガラスデータベース」という)は、これらの研究を支援するためのツールの一つとして開発を進めている。ここでは、以前作成したプロトタイプのガラスデータベースの改良点について報告する。また、ガラス浸出モデルの検証の観点からデータベース利用例の検討を行ったので、その結果についても報告する。

JAEA-Data⁄Code 2008-008 2008
河内進、大井貴夫、川村淳、他

品質管理及びプロジェクト管理機能を考慮したJGISの機能高度化

これまでサイト固有の地質環境条件の調査・研究等から数多くの情報やデータが収集されている。そのため、このような情報を共有化して統合管理し、研究者間のコミュニケーションを推進することを目的に、技術情報統合システム(JGIS)を開発してきた。本稿では、従来のJGISの機能に加えて研究開発の品質管理、プロジェクト管理の視点を組み込むために以下の概念設計を行った。研究プロジェクトをWBS(Work Breakdown Structure)項目に設定し、それを研究者がポータルサイトとして利用して、全体計画の中での研究の位置づけを確認できるようにシステムの検討を行った。また、国際的な品質マネジメントシステムで採用されている適合評価の概念を用いた適合性評価シートによって、研究の品質管理を行うことを検討した。

JAEA-Data⁄Code 2008-006 2008
蛯名貴憲、大井貴夫

人工バリア・天然バリア中の核種移行解析コード「TIGER」を不確実性解析に用いるための特性把握

多種多様な地質環境において、処分システムの安全性に関する情報を網羅的に把握するためには、時間・空間的な不均一性や知識・情報の不十分さに起因するパラメータの不確実性を考慮した解析が必要となる。核種移行解析コード「TIGER」は、ある時間で物性値を変化させつつ、ガラス固化体から断層までの核種移行解析を行うことができる解析コードであり、より複雑な条件での不確実性解析を行うために、このようなコードの特性を把握しておくことが重要になる。そこで、本報告書では、まずガラス固化体から断層までの核種移行解析をTIGERで行う場合に考えられる代表的な処理方法を複数作成し、それぞれの解析を実施し、前処理・後処理の作業量、解析時間などについて比較検討を行い、最適な処理方法に関する知見を整備した。その後、最適と考えられる処理方法を用いて、数百から数千ケースの不確実性解析を想定し、計算精度にかかわるパラメータと解析時間との関係についての検討も行った。これらの検討の結果、複雑な地質環境を考慮した天然現象の影響評価解析において、TIGERを用いた不確実性解析を実施する場合に最適な処理方法、計算精度、ツールに関する知見を整理することができた。

JAEA-Data⁄Code 2008-002 2008
J.A. Berry, M. Yui and A. Kitamura

Sorption studies of radioelements on geological materials

ベントナイト、花崗閃緑岩及び凝灰岩へのU、Tc、Cm、Np、Ac、Pa、Po、Am及びPuの収着を研究するためにバッチ収着試験を行った。溶液は蒸留水及び人工海水(U、Tcのみ)を使用し、温度は25及び60℃で行った。人工海水についてのUとTcの化学種及び岩石平衡水についてのNp、AmとPuの化学種を予測するためにHARPHRQプログラムとHATCHESデータベースを使用した数学的モデリングを行った。Cm、Np、Ac、Pa及びPoについての熱力学データの文献調査を行った。ここでは幾つかのデータを入手でき、化学種及び溶解度の予測を行っていた。この報告書は1991年4月〜1998年3月の間にAEA Technologyによって行われた試験結果をまとめたものであり、主な結果はMaterial Research Society Proceedingsで公開されている。

JAEA-Research 2007-074 2007
稲垣学、加藤智子、吉田英爾、他

表層での水理・物質移行を考慮した生物圏における評価に関する検討

高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価では、処分事業が立地の段階を迎えている。そのためこれまでのジェネリックな地質環境での評価から得られた成果の実地層への適用性の検討が第2次取りまとめ以降進められている。生物圏評価においても、被ばく経路の特定や環境中の核種濃度の推定方法に対して、具体的な地質環境の反映が必要となる。本研究では、特定された地質環境において生物圏における核種の挙動評価と被ばく経路を特定するための検討を進める端緒として、(1)生物圏における諸外国の評価に関する文献調査、(2)地下深部から地下水により運ばれる放射性核種の利水環境への放出地点の推定手法の検討、(3)利水環境での核種の希釈・分散効果を評価するための水収支の推定に必要となるデータの検討、を実施した。

JAEA-Research 2007-029 2007
栃木善克、甲川憲隆、向井悟、他

花崗岩質岩石のマトリクスにおける拡散深さに関する研究

高レベル放射性廃棄物地層処分の安全評価において、母岩中の放射性核種の拡散挙動を理解することは、核種の遅延効果を評価するうえで重要である。本研究では、複数種類の拡散深さを想定した花崗岩質岩石のサンプルを用いて非収着性イオンの非定常拡散試験を行い、マトリクス拡散深さを実験的に評価した。試験の結果、花崗岩質岩石中の未変質部において非収着性イオンが少なくとも200mm程度の深さまで拡散し得ることを確認するとともに、試料の長さに依存しない、ほぼ一定の拡散係数が得られることがわかった。このことから、核種は花崗岩質岩石のマトリクス部を数100mmの深さまで拡散する可能性があることが示唆された。

JAEA-Research 2007-024 2007
陶山忠宏、柴田雅博、上野健一、他

鉄型化ベントナイト水熱試験(II) —低酸素雰囲気、150℃ における鉄型化ベントナイトの変化の同定—

雰囲気制御グローブボックス(酸素濃度1ppm以下、N2雰囲気)内において、Na型ベントナイト(クニピアF)にFeCl2溶液を混合することによりあらかじめ鉄型化したベントナイトを温度制御した条件(150℃)において、長期間(1年及び1年8か月(20か月))静置させ、鉄型化スメクタイトの長期挙動を把握するための実験を実施した。その結果、Fe型化したスメクタイトが溶解することにより、膨潤を妨げる物質が生成してスメクタイトに付着するものの、スメクタイトの構造(2:1型の2–八面体構造)や特性(膨潤特性及び陽イオン交換能)は維持されていたことを確認した。250℃における試験で同定された非膨潤性粘土鉱物の生成は、XRD分析等では確認されなかった。

JAEA-Research 2007-018 2007
下茂道人、熊本創、前川恵輔

亀裂を有する軟岩の水理・物質移行特性データの取得・解析

高レベル放射性廃棄物の地層処分サイトの性能評価にあたっては、天然バリアを構成する岩盤中における水理・物質移行特性を適切に評価することが重要である。これまで軟岩における物質移行現象は、粒子間間隙を主な移行経路と考えてきた。しかし亀裂が発達した軟岩では、亀裂が卓越した水みちを形成する可能性がある。本研究は、亀裂を有する軟岩中における水理・物質移行特性の解明を目的とし、軟岩試料を対象とした室内試験及び解析を行った。幌延深地層研究センターの試錐孔(HDB-9〜11孔)で採取されたコア試料を対象とした室内試験(透水試験、トレーサー試験、拡散試験)を実施し、深度、地層の種類や年代、続成作用等が試験結果に与える影響を検討した。さらにブロック型の自然亀裂試料を用いた透水試験、トレーサー試験を実施し、試験規模の違いによる水理・物質移行パラメータの変化について検討した。また、実スケールの岩盤を想定した亀裂を有する軟岩中の流れと物質移行現象の概念モデルに関する数値解析的検討を行い、岩盤のモデル化手法に関する考察を行った。なお、本研究は旧核燃料サイクル開発機構の成果である。

JAEA-Research 2007-016 2007
原彰男、星一良、加藤新、他

前進的モデルを用いた不均質性堆積岩評価手法の研究Ⅲ (委託研究)

堆積岩の不均質場の特性を実測データに基づき定量的に把握する手法を開発することは、高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるサイト特性調査及びそれに基づく性能評価解析において重要な課題となる。本研究では、堆積岩の不均質性評価手法を開発する目的で、幌延地域の珪質泥岩を対象に、堆積過程とその後の埋没過程とを考慮した堆積モデリングソフトウェアを開発し、機能の追加と操作性の向上を図った。具体的には、二次堆積物の堆積様式の追加及び、海岸線移動の計算時に堆積盆の基盤岩の隆起・沈降の影響を考慮できる機能並びに、市販の図化ソフトウェアに適応した書式で計算結果を出力する機能を追加した。操作性の向上としては、入力データ構築支援用のGUI(Graphic User Interface)の開発を行った。改良した同ソフトウェアを用いて、幌延地域を対象としたシミュレーションを実施し、2つのリアライゼーションを示した。その結果、実ボーリング孔から離れた地域での砂質堆積物の堆積の可能性を示唆する結果が得られた。これらの結果に基づき、前進的モデリング手法の優位性及び同ソフトウェアの汎用性の検討を行った。

JAEA-Research 2007-015 2007
栃木善克、吉川英樹、青木和弘、他

地層処分における微生物影響評価に関する研究(1) (共同研究)

本報告では、日本原子力研究開発機構及び産業創造研究所による共同研究「地層処分における微生物影響評価に関する研究」の平成17年度における成果をまとめた。同研究は、地層処分場のバリア性能に及ぼす微生物活動の影響評価技術を高度化し、処分技術の信頼性向上に資することを目的として実施した。平成17年度は、幌延深地層研究センターの調査フィールドに設けた新規の観測井を利用した地下水・岩石試料採取と化学分析、並びに微生物影響を考慮した数値解析コード(MINT)を使用して既存の観測データを用いた感度解析を実施した。前者の成果として、水質・微生物代謝活性等の分析を行い、数値解析コードに反映・活用するためのデータを取得したことが挙げられる。後者では、既存の測定データを初期値として感度解析を行い、微生物影響による地下水水質の変化や、地下水水質の変動による微生物活動への影響を評価するための結果を得ることができた。

JAEA-Research 2007-010 2007
土井玲祐、X. Xia、柴田雅博、他

幌延堆積岩へのCs収着挙動に対するイオン交換反応に基づくモデルの適用性検討

高レベル放射性廃棄物の地層処分システムの性能評価に対する信頼性向上の観点から、地層処分環境下での放射性核種等の移行評価が重要である。収着は核種移行を遅延させる主要なメカニズムの一つであり、その指標として分配係数(Kd)が用いられる。地層処分システムの性能評価において、このKdの予測が不可欠で、その予測方法の確立が必要である。本研究では、Cs収着が試料中のイライトにおけるイオン交換反応に支配されるというモデルを幌延堆積岩へのCs収着試験結果に対して適用し、このモデルの適用可能性を検討した。イライトへの収着に関してCsと競争する陽イオン(K+、NH4+、Na+)とのイオン交換反応に基づき、平衡時の液中Cs濃度をモデルに基づく計算により求めることでKdを算出した。このKdについて実験値とモデル計算値で比較した。KdのCs濃度依存性については、平衡Cs濃度が高くなるとKd値が減少する実験結果をモデル計算で説明できた。しかし、Kdの実験値と計算値には一桁程度の差が認められた。

JAEA-Research 2007-007 2007
佐藤久、肖俊、澤田淳

光学的手法を用いた亀裂開口幅測定及び亀裂内濃度分布測定手法の開発

亀裂内の透水・物質移行特性は、亀裂内の不均質な開口幅分布に強く影響を受けることから、その影響を検討するためには、亀裂開口幅分布を詳細に測定する必要がある。開口幅測定手法には幾つかの手法があるが、光学的手法は測定解像度が高い、亀裂内のトレーサー移行を観察できる等の利点があることから、光学的手法による亀裂開口幅及び亀裂内のトレーサー濃度の測定装置を開発し、透明レプリカ試験体を対象に、開口幅測定及び亀裂内トレーサー濃度分布の測定を行った。その結果、光学的手法による亀裂開口幅測定の有効性を確認できた。また、亀裂内のトレーサー濃度分布も亀裂開口幅分布の不均質性による影響を除去した濃度分布を取得できることが確認できた。

JAEA-Research 2007-006 2007
M. Ochs, Y. Saito, A. Kitamura, et al.

Evaluating and categorizing the reliability of distribution coefficient values in the sorption database

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の第2次取りまとめにおいて、人工バリア及び天然バリアでの遅延能力を評価するうえで重要な放射性核種のベントナイトや岩石への分配係数(Kd)を収着データベース(SDB)として整備した。SDBに登録されているKdは、約20,000件に及んでいる。このような膨大なデータを有するSDBには、さまざまな試験条件で得られたKd及びそれに付随する重要なデータが含まれている。そこで、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Cs、Ra、Se、Tcのベントナイト固相に対してのKdについて、信頼度のレベル付けを実施した。合計すると、3740件のKd値について、信頼性評価を実施した。

JAEA-Technology 2007-011 2007
高須民男、前川恵輔

多孔質媒体中水理・物質移行現象可視化装置(小型MACRO)の開発及び予察試験結果

高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、安全評価上地下深部の地下水の挙動を適切に把握することが必要である。沿岸地域などに見られる淡水である地下水と塩水である海水とが混在した領域では、地下水の挙動は複雑であると考えられている。また、人工バリアの一つとして考えられているベントナイトは海水系地下水においては降水系地下水に比べ膨潤せず、自己シール性が十分に発揮されないことも懸念されている。そのため、地下深部に塩分濃度の高い地下水が存在する場合の塩水の挙動を把握することが重要となっている。多孔質媒体中水理・物質移行現象可視化装置(以下「小型MACRO」と呼ぶ)は、淡水である地下水と塩水との密度差により生じる塩水楔の進展過程を把握するため、地層をガラスビーズにより模擬した媒体層中に食紅で着色した塩水により塩水楔を再現するものである。同装置は、既存の多孔質媒体水理試験設備(以降「MACRO装置」と呼ぶ)の1⁄4スケールの寸法の媒体槽を有し、装置の分解・組み立て作業の合理化、試験効率の向上を図るとともに、本体を透明板で構成することで、試験の経過観察、試験結果の可視化によるデータ取得を十分行える装置である。本報告書は小型MACROの整備内容やその考え方及び塩水楔予察試験の結果をまとめ、今後の本装置による試験の効率的な実施に資するものである。

JAEA-Technology 2006-061 2007
斎藤好彦、M. Ochs、陶山忠宏、他

収着データベースの更新; 信頼性評価に伴う収録データの訂正と公開文献データの追加

核燃料サイクル開発機構は、これまでに高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の第2次取りまとめにおいて、人工バリア及び天然バリアでの遅延能力を評価するうえで重要な放射性核種のベントナイトや岩石への分配係数(Kd)を収着データベース(JNC-SDB)として整備した(澁谷ほか、1999)。また、同整備以降の1998〜2003年の間に公開された文献をもとにデータを追加した(陶山、笹本、2004)。今回、日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)として、JNC-SDBを拡充・更新するため、過去に公開された文献を広く再調査・データ収集を行い、Kdデータを追加した。また、使用者の利便性を考慮して、JNC-SDBの機能を改良した。さらに、今回、「収着データベースを用いた収着分配係数の信頼性評価」作業に基づきデータベースを見直し、データの再入力を行った。今回の更新作業により、全体で23元素に対し、3,205件のKdデータが増加した。また、一部の元素については、これまでより分配係数の頻度分布がより明確になり、データの分布を把握しやすくなった。

JAEA-Data⁄Code 2007-014 2007
栃木善克、柴田雅博、佐藤治夫、他

主要岩石及び緩衝材中の核種の拡散係数データベースシステム(2007年公開版⁄仕様)

地層処分研究開発第2次取りまとめにおける活用を目的として整備された、岩石マトリックス中における核種の実効拡散係数のデータシート及び新規に文献調査の実施を通じて得た緩衝材中における核種の実効拡散係数のデータを管理・利用するためのデータベースシステムを構築した。本データベースシステムは、2006年初旬に開発済みのデータベースシステムをもとに構築し、おもにデータ検索・抽出機能及びデータ登録機能に大幅な改良を加え、利用性の向上を図った。なお、構築したデータベースシステムは、Microsoft-Access上で動作するファイルとして、原子力機構が管理するWebサーバにおいて公開する。

JAEA-Data⁄Code 2007-010 2007
吉田泰、北村暁

OECD⁄NEAで選定された熱力学データの利用環境の整備(その3) —Ni、Se、Zrおよび有機物配位子の熱力学データベースファイルの作成—

OECD⁄NEAのTDB(Thermodynamic Data Base)プロジェクトでは、放射性廃棄物の地層処分における性能評価上重要なアクチニド及び核分裂性生成物などの熱力学データベースの開発が行われている。本報告では、これらのデータベースのうち、2005年に公開されたNi、Se、Zr及び有機物配位子の熱力学データを地球化学計算コードで利用可能な熱力学データベースファイルとして整備した。整備された熱力学データベースファイルは、主要な地球化学コードである、PHREEQE、PHREEQC、EQ3⁄6及びGeochemist's Workbenchで利用可能である。また、TRU第2次取りまとめにおいて作成された熱力学データベースについても地球化学計算コードに対応した熱力学データベースファイルを作成した。

JAEA-Data⁄Code 2007-009 2007
牧野仁史、川村淳、若杉圭一郎、他

高レベル放射性廃棄物地層処分安全評価のシナリオ解析のための計算機支援ツールの開発

本稿では、改良された手法に基づくFEPの相関関係の整理の効率的な実施を支援するために開発した計算機支援ツール(FepMatrix)について報告する。なお、本ツールはシナリオ解析研究の専門家を主な対象とした。本ツールにより、膨大な数のFEPを相関関係マトリクス等として計算機上に構造的に整理し、かつ多面的な切り口からスクリーニングやグルーピングなどの分析を行うことが可能となった。これにより、追跡性と透明性を確保したFEPの相関関係とその関連情報の体系的な取り扱いが可能となると同時に、膨大な数の情報を扱う際に発生しがちなヒューマンエラーの低減を図ることができ、目的に応じたシナリオ解析の作業効率を向上させる環境を整備することができた。

JAEA-Data⁄Code 2007-005 2007
佐々木康雄

地層処分研究に対する外部のご意見と研究の方向性

日本原子力研究開発機構東海研究センター核燃料サイクル工学研究所の「エントリー(地層処分基盤研究施設)」及び「クオリティ(地層処分放射化学研究施設)」は、年間千人以上の来訪者を受け入れ、高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発について、直接施設を案内することによって、理解促進の役割も果たしている。本資料は、これまでエントリー・クオリティへの来訪者による、地層処分等にかかわる貴重なご意見・ご質問を分類し、今後の地層処分研究に関する理解促進及び今後の研究活動に資するものになるよう、とりまとめたものである。

JAEA-Review 2007-016 2007
前川恵輔、澤田淳、太田久仁雄、他

地質環境調査・物質移行評価に関する研究の基本的な方針

日本原子力研究開発機構が進めている地層処分技術に関する研究開発のうち、地上からの調査研究段階を対象として、地質環境調査から水理・物質移行の解析・評価に至る一連の評価手法の整備を目的とした研究テーマである「地質環境調査・物質移行評価に関する研究」について、今後5年程度を見通した研究の目標と進め方を示したものである。

JAEA-Review 2007-011 2007
川村淳、大井貴夫、牧野仁史、他

高レベル放射性廃棄物地層処分に係わる天然現象影響評価に関する研究計画書 (当面5カ年の計画:平成18年度版)

本計画では、高レベル放射性廃棄物地層処分にかかわる地質環境の長期安定性研究から天然現象影響評価に関する研究を対象として、研究の必要性や反映の意義に基づいた目的と「我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性; 地層処分研究開発第2次取りまとめ(第2次取りまとめ)」までに実施された研究成果、「高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築(H17レポート)」までになされた研究成果とをまとめて、「研究とこれまでの経緯」として記述するとともに、今後の当面5年程度の計画を「フェーズ2における研究目的」、「研究内容」として記述し、それを実施するために必要となる天然現象に関する知見及び影響評価に必要となる個別現象にかかわる知見等を案としてまとめた。

JAEA-Review 2006-039 2007
佐々木康雄、虎田真一郎

第1回地層処分研究開発検討委員会(会議報告)

地層処分研究開発部門が実施している地層処分研究開発のうち、主として東海研究開発センターにおいて実施している研究課題について審議検討を頂き、客観的な助言を得て計画に反映し、優れた成果を効率的に得るとともに、これを処分事業や安全規制等に時宜よく反映していくため、大学や関連研究機関における専門家による「地層処分研究開発検討委員会」を設置している。本資料は、2006年7月に開催した第1回委員会の会議報告を行うものである。

JAEA-Conf 2007-004 2007
陶山忠宏、柴田雅博、笹本広

鉄型化ベントナイト水熱試験 —低酸素雰囲気での高温条件下における鉄型化ベントナイトの変化の同定—

処分システムの長期挙動の把握の一つとして炭素鋼腐食生成物-ベントナイト相互作用の理解は重要である。既往の研究から鉄と接触したベントナイトは層間に鉄を取り込み鉄型化することがわかっている。しかしながら、それ以上の変化は現在のところ明確ではない。したがって、本試験では鉄型化スメクタイトを出発物質として、その後に発生する鉱物学的変化を確認することを目的とした実験を実施した。雰囲気制御グローブボックス(酸素濃度1ppm以下、Ar雰囲気)内において、Na型ベントナイト(クニピアF)にFeCl2溶液を混合することにより鉄型化ベントナイトを作成した。この鉄型化ベントナイトと蒸留水を金チューブに入れて、オートクレーブを用いて反応を加速することを目的として処分環境で想定されている温度より高い温度(250℃)で各任意期間(1か月及び6ヶ月)静置した。その結果、250℃で6ヶ月間静置した試料においては7Åに非膨張粘土鉱物(バーチェリン)と思われるピークが確認できた。さらに、試料250℃で6ヶ月間静置した粉末試料に1MのNaCl溶液を加えることによりベントナイトの再調整を行った。この試料の湿度制御条件下でのX線回折分析結果は、Na型ベントナイトに戻った結果となったことから、250℃で6ヶ月間静置した試料の大部分は単にスメクタイト層間の陽イオン交換反応に留まり、大きなスメクタイト構造の変化や特性の変化までは至っていないことが確認できた。

JAEA-Research 2006-064 2006
土井玲祐、柴田雅博

緩衝材間隙水中溶解度計算への適用における放射性元素の熱力学データベースの比較評価

地層処分の性能評価において重要なパラメーターである放射性元素の溶解度を計算するため、熱力学データには最新の知見に基づいた最も確からしいデータを整備することが求められる。本報告では、第2次取りまとめにおいて設定された緩衝材間隙水の条件に基づき、代表的な放射性元素の溶解度計算をJAEA、OCED⁄NEA、Nagra⁄PSIのそれぞれの熱力学データベースを用いて計算を行うことで、データベースによる差異を確認し、その原因を検討した。

JAEA-Research 2006-038 2006
原彰男

堆積岩の水理・物質移行特性に関するデータ取得Ⅱ —幌延地域に産する泥岩の孔径分布・化学組成・空気浸透率と物質移行特性の検討—

核燃料サイクル開発機構(現、日本原子力研究開発機構)が、幌延地域で掘削したボーリング孔(HDB-1孔、HDB-2孔、HDB-5孔)のコアより採取した声問層及び稚内層の試料について、細孔径分布、全岩化学組成、空気浸透率を測定し、声問層及び稚内層の浸透率の特徴について、珪藻化石の相変化と関連付けた検討を行った。SiO2を主成分とする珪藻化石がオパールA相に属する声問層においては半径1000Å程度の細孔の集中が見られ、浸透率も稚内層と比較して高い。一方、珪藻化石がオパールCT相に相変化する稚内層においては、半径20〜40Åの細孔が間隙中に集中するようになり、浸透率は急激に低下する。半径20〜40Åの細孔の集中の程度は、SiO2成分の含有率の高い試料ほど大きくなる。また、SiO2成分の含有率の高い試料ほど浸透率が低くなる傾向が認められた。半径20〜40Åの細孔の集中は、浸透率の低下に寄与している可能性がある。今回の分析の結果、声問層・稚内層を通じて、オパールA-CT境界から200〜300mの深度の地層において浸透率が最も低くなる傾向が認められた。声問層と稚内層の地層境界から600m程度の深度において採取した稚内層の試料においては、半径100Å程度の細孔の集中が見られ、上位層に比べて高い浸透率が測定された。オパールA-CT境界から200〜300mの深度にある稚内層は、圧力の保持や流体の移動を妨げるシール層としての機能や核種移行遅延性能を有している可能性がある。

JAEA-Research 2006-020 2006
佐藤治夫

Na型スメクタイトの精製及び拡散試験用定方位試料の作製

クニピアPベントナイトを出発物質としてNa型スメクタイトの精製を行い、板状(膜状)の定方位試料を作製するとともに、それらを用いて、スメクタイト粒子の配向方向と層間距離を水分子2層に制御した拡散試験用圧縮スメクタイト試料の試作を行った。定方位試料及び粉末試料に対するXRD測定から、精製スメクタイトはほぼ均一に配列したNa型スメクタイトであることが確認された。また、スメクタイト粒子の配向方向と層間距離を制御した拡散試験用圧縮スメクタイト試料を試作した結果、水分子2層のみの層間を持つ乾燥密度で約1.8Mg⁄m3の試料を作製することができた。

JAEA-Research 2005-004 2006
磯貝武司、笹本広、柴田雅博

圧縮ベントナイト中の間隙水組成の測定 —間隙水pHの空間変化に関する追加試験の結果—

圧縮ベントナイト中に埋め込んだ低脱色性のpH試験紙及び高吸水性パットを用い、間隙水組成を測定する手法を開発している。これまでに、蒸留水を用いた圧縮ベントナイト中の試験において、溶液との接触面近傍の間隙水pHが時間の経過とともに低下することを報じた。予察的な熱力学的解析では、蒸留水系における接触面近傍での間隙水pHの低下は黄鉄鉱の酸化によるためと考えられた。しかしながら、このような解釈は随伴鉱物として黄鉄鉱を含まないクニピアFを用いた試験による検証はなされていなかった。また、他の要因として、実験に用いられた材料(セラミックフィルター)による影響や試験条件(ベントナイトと接する試験溶液が静置されていた)による影響も接触面近傍での間隙水pHの変化に影響を与え得ると考えられた。そこで、蒸留水系において以下の試験を行い、間隙水pHの変化に影響を与え得る要因について検討した。(1)クニピアFを用いた試験、(2)代替フィルター(プラスチックフィルター+メンブランフィルター)を用いた試験、(3)代替試験条件(ベントナイトと接する試験溶液を攪拌)での試験。試験の結果、クニピアFを用いた場合でも接触面近傍での間隙水pHの低下が認められた。またフィルターの違い、試験溶液攪拌の有無による違いでは、間隙水pHの変化の違いは認められなかった。したがって、間隙水pH低下の原因はこれらの要因によるものではなく、他の要因が影響していると考えられる。

JAEA-Data⁄Code 2006-017 2006
仲島邦彦、牧野仁史

決定木分析を用いた核種移行解析結果の感度分析の検討(II)

地層処分の安全評価では、天然の地質環境が有する場の不均質性、時間の経過に伴う地質環境条件の変化、あるいは理解や情報の不十分さから生ずるデータ不確実性が内在し、それらを完全に排除することは困難である。このようなデータ不確実性を網羅的に考慮したモンテカルロシミュレーションの結果を対象に、どのパラメータの不確実性の影響が大きいかなどの知見を得ること(感度分析)は、地層処分の安全評価上重要である。ここで、多変量解析手法の一つである決定木分析(ベリー・リノフほか、1999)の感度分析への適用性については、上述した核種移行に関するモンテカルロシミュレーションの結果(総線量の最大値)を対象にした予察的な分析により見通しを得ている(仲島・牧野、2005)。本検討では、感度分析を実施するにあたってのさまざまな切り口について検討し、総線量の最大値を含むさまざまな結果(総線量の最大値の発生時刻、支配核種など)を対象とした決定木分析を行うことにより、決定木分析の精度や適用範囲の確認を行った結果を示す。その結果、ほとんどのケースにおいて「良好な分析が行えた分析ケース」または「比較的良い分析となった分析ケース」という結果が得られ、決定木分析が感度分析を行う際のさまざまな目的に適用可能であることを示すことができた。

JAEA-Data⁄Code 2006-013 2006
M. Hayashi, K. Satake and H. Sasamoto

Measurement of the Forward Dissolution Rate of LRM Glass using a Single-Pass Flow-Through(SPFT) Test Method at 70℃

ホウ珪酸ガラスの初期溶解速度の測定で用いられるSPFT試験法の精度や偏りを評価するため、アルゴンヌ国立研究所(ANL)により国際的な研究所間での試験研究が企画された。本報告では、ANLで準備されたLRMガラスを用い、70Cで行った試験結果について報告する。浸出溶液中のガラス構成成分(すなわち、Si、 BやNa)の濃度測定結果及び溶液の流速をもとに、ガラスからの浸出成分が定常状態に達した状態でのガラス溶解速度を算出した。浸出溶液中にガラス構成成分が存在しない状態での速度は、実験結果をもとに、溶液中のガラス構成成分がゼロになる場合に外挿し、推定した。試験の結果、浸出溶液の平均的なpHは、室温(21.78±4.03℃、4.03は標準偏差)において、11.68±0.23(0.23は標準偏差)であった。溶液中に存在するガラス構成成分による影響を排除した場合のSi、 B及びNa濃度の変化に基づき推定されたLRMガラスの溶解速度は、各々、2.11、1.99及び1.93(g⁄m2d)であった。しかしながら、溶液中のガラス構成成分濃度にはバラツキが認められ、これら推定値の信頼性は低い。今回の試験結果に基づけば、SPFT試験法により信頼性の高いデータを得るためには、試験溶液の流速を注意深く制御し、一定の流速を保つことが必要であると考えられる。

JAEA-Data⁄Code 2006-012 2006
鈴木祐二、加藤智子、牧野仁史、他

TRU廃棄物処分に特有な放射性核種を考慮した生物圏評価データセットの整備と線量への換算係数の算出

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発第2次取りまとめでは、レファレンスバイオスフィアの考え方を導入し線量の評価を行った。その後、放射線防護に関する法令が改訂され、新法令に基づく線量への換算係数の整備を高レベル放射性廃棄物処分の生物圏評価対象核種について実施した。一方、超ウラン核種を含む放射性廃棄物の中の地層処分相当の廃棄物(「TRU廃棄物」という)の安全評価では、レファレンスバイオスフィアとは別の生物圏評価モデルに基づく評価が行われていた。TRU廃棄物処分に関しては、高レベル放射性廃棄物の地層処分場にTRU廃棄物も併置して処分する概念が検討され、高レベル放射性廃棄物と安全評価におけるモデル、評価体系の整合性の確保が求められてきている。また、気候変動などを踏まえた将来の生物圏における環境条件が考慮されるなど、生物圏システムの変動を考慮した検討を行う重要性が指摘されている。これらの背景に基づき、高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価と整合性のあるTRU廃棄物の地層処分の安全評価を行うため、TRU廃棄物処分に特有な放射性核種についても新法令に基づき設定された実効線量係数を用いたデータセットを準備し、線量への換算係数を算出した。また、気候変動による生物圏システムへの影響を生物圏モデルに取り入れた場合の影響の程度を把握するために、寒冷化した気候状態を想定して線量への換算係数を算出した。

JAEA-Data⁄Code 2006-011 2006
栃木善克、笹本広、柴田雅博、他

主要岩石中の核種の拡散係数データベースシステム(2006年版⁄仕様・CD-ROM)

地層処分研究開発第2次取りまとめにおける活用を目的として整備された、岩石マトリックス中における核種の実効拡散係数のデータシートをもとに、一般的な運用を前提としたデータベースシステムの開発を開始した。本資料では、その第1段階としてデータシート構造の見直し・拡張とデータベースシステムの構築及び既存データシートの全データ移行の過程に関して記す。本データベースシステムは、今後データの充実を図るとともに、データ処理用のインターフェースを見直して利用性を向上していく予定である。構築したデータベースシステムは、Microsoft-Access上で動作するファイルとして、本資料に添付のCD-ROM上に記録した。

JAEA-Data⁄Code 2006-008 2006
宮原要、加藤智子

地層処分の安全規制に関する動向 —原則、基準と適合性に関する主な論点を中心に—

我が国の高レベル放射性廃棄物の地層処分計画は、現在事業段階にあり、実施主体により「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に定められた最終処分施設建設地の選定に関するプロセスに沿った作業が進められているところである。一方、日本原子力研究開発機構でも、事業あるいは規制に反映するための技術・知見を整備するため、深地層の研究施設(瑞浪、幌延)や地層処分基盤研究施設、地層処分放射化学研究施設を活用した研究計画を着実に進めているところである。本報告書では、安全規制に関する国際的な動向を調査・整理したうえで、地層処分の長期の安全性について幅広い関係者や公衆の信頼や納得を得られるようにするため、地層処分の安全規制に関する議論がどのように深まってきたかを概観しつつ、国際的な考え方や米国など各国の規制に関するまとめを試みる。今後、我が国において安全規制を策定するうえでは、このような国際的な考え方や各国の事例を我が国へどのように適用していくかについて検討することが重要と考えられる。

JAEA-Review 2006-030 2006
宮原要、吉川英樹、大井貴夫、他

高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価に関する研究計画書(当面5ヵ年の計画:H17年度版)

高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価に関する研究を対象として、これまでの研究成果を踏まえ、今後5年を目途に実施すべき研究の項目とその内容等を研究計画書としてまとめた。本計画書では、高レベル放射性廃棄物地層処分に関する国の基盤的研究開発を対象に体系的かつ中長期的にまとめられた研究開発計画である「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発全体マップ」の性能評価分野の研究開発要素の枠組みを参考とし、「日本原子力研究開発機構の中期計画」を踏まえ、「日本原子力研究開発機構に期待する安全研究」を勘案して、これまでの研究によって示された課題等を対象とし、今後5年を目途に実施すべき研究の項目とその内容等を記述した。個々の研究の計画では、研究の必要性や反映の意義に基づいた目的と「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ(第2次取りまとめ)」までに実施された研究成果、「高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築(H17レポート)」までになされた研究成果とをまとめて、「目的とこれまでの成果」として記述するとともに、今後の当面5年程度の計画を「当面5年程度(平成22年度頃まで)の計画」として記述した。

JAEA-Review 2006-015 2006
加藤智子、鈴木祐二、牧野仁史、 他

生物圏評価データの重要度に関する検討(研究報告)

生物圏評価は、地表に流入する放射性核種の移行率を人間への影響の尺度(例えば、放射線量)に変換するものとして安全評価の重要な要素の一つとして位置付けられる。一般に生物圏評価では数多くのデータを取り扱い、その多くは評価対象となるサイトの特徴に関連する。このため、限られた資源を有効に活用し、効率的に生物圏評価を行うためには、対象とするパラメータを絞って検討を進めることが合理的である。以上のことから、サイクル機構および原環機構は、協力協定に基づき、今後の生物圏評価データベースの整備における方向性や優先度を明らかにすることを目的として、双方のこれまで蓄積している知見を活用し、共同で検討していくための場として「生物圏評価データに関する検討会」を設置した。本検討会では、生物圏評価データの設定の考え方に関する検討として、今後選定される特定のサイト(概要調査地区など)の性能評価に向けて整備していく必要のあるデータを明らかにするとともに、その優先度を評価するための方法論について検討した。この結果、線量に寄与する重要な核種移行プロセスや移行経路をKIPPs(Key Issues、 Processes and Pathways)リストとして具体化し、このKIPPsリストに対応するパラメータについて、その特性に基づくタイプ分類を行うことにより、今後データ取得が必要なパラメータを特定する作業フローを構築した。さらに、この作業フローに基づき、第2次取りまとめなどの既存の生物圏データベースの情報を部分的に用いて、適用性の確認のための試行を実施した。この結果、生物圏で取り扱う膨大なデータをデータ出典の信頼性や重要度などの複数の観点から類型化できること、さらにわが国の環境条件やその取得方法を勘案しながら優先的に検討すべきデータを把握できる見通しを得た。

JNC TN1400 2005-024、
NUMO-TR-05-01
2005
牧野仁史、澤田淳、前川恵輔、他

地質環境の調査から物質移行解析にいたる一連の調査・解析技術 —2つの深地層の研究施設計画の地上からの調査研究段階(第1段階)における地質環境情報に基づく検討—

実際の地質環境を対象とした物質移行解析に係わる技術基盤の検討として、2つの深地 層の研究施設計画から得られた地質環境情報を活用して一連の作業の枠組みを検討した。この検討を通じて、枠組みとなる作業のフローを作成しその有効性を確認した。さらに、そのフローに従った作業を実際の地質環境の情報を用いて行うことにより、作業 内容の具体化とともに、個々の作業および作業全体の向上に必要となる課題を明らか にすることができた。

JNC TN1400 2005-021 2005
吉川英樹、本田卓、郡司英一

宇和奈辺陵墓参考地陪塚大和六号墳出土鉄ていの腐食調査

高レベル放射性廃棄物のナチュラルアナログ研究の一環として、宮内庁書陵部が所蔵する鉄ていに関して腐食調査を実施した。この鉄ていは1945年に大和六号墳(奈良市宇和奈辺参考地陪塚、5世紀中葉)より出土したものの一部で、埋蔵環境が弱酸化雰囲気であろうと推定される。本鉄ていは母材の鉄が原型に近い形を保っており、これら鉄遺物を材料という観点から見た場合、埋設期間約1500年間に渡る鉄の地中での長期腐食挙動に関して貴重な情報を提示している。調査の結果、腐食深さは最大で1.6mmであった。なお、本報告書は調査の概要を記しており試料提供の宮内庁に報告・提出するものである。

JNC TN8400 2005-031 2005
佐治慎一、伊藤雅和、柴田雅博、他

河川水と接触したベントナイト鉱床の化学特性変化 —試料採取と分析結果— (研究報告)

緩衝材間隙水組成は、高レベル放射性廃棄物処分場のオーバーパックの腐食挙動評価および緩衝材中の核種の溶解度・収着挙動等を決定する最も重要な基礎情報である。第2次取りまとめでは、この間隙水組成をバッチ試験の結果に基づくモデル計算により導出している。しかしながら、実際の間隙水組成は、処分場埋設後、拡散場を確保しつつ時間および空間変化を伴いながら変化すると考えられる。第2次取りまとめ以降、緩衝材間隙水水質の長期の時空間変化の評価を行うため、実験による変化の把握とそれに基づくモデル化を進めている。しかしながら、長期の評価は実験室による短期の試験結果に基づき得られた結果の外挿となるため、一般に天然類似現象の観察結果の比較によるモデルの信頼性確認が必要となる。本研究では、時空間変化モデルの検証データの取得を目的とし、天然類似条件下のベントナイト層からの試料の採取およびその化学特性変化の確認を行った。ベントナイト試料は、河川付け替え工事により、1987年以降ベントナイト層が河川水と接触している地点で深度(河川水との距離)をパラメータとして採取した。化学特性変化の確認は、ベントナイト中の鉱物組成、化学組成、層間陽イオン組成等について実施した。その結果、系統的な変化として河川水との接触による流出の可能性、pHの低下、硫酸イオン濃度の低下が確認されたが、ベントナイト含有率が低い層であったこと、および天然のベントナイト生成時点の不均一性から、明確な傾向の把握までにはいたらなかった。

JNC TN8400 2005-017 2005
R. C. Arthur, H. Sasamoto, C. Oda, et al.

Development of Thermodynamic Databases for Hyperalkaline, Argillaceous Systems

本報告書では、超ウラン(TRU)元素を含む廃棄物や他の放射性廃棄物の地層処分におけるベントナイトとセメントとの反応に関連する鉱物、ガス、水溶液化学種についての3種類の熱力学データベースについて報告する。これらデータベースは、地球化学コードであるSUPCRT、 PHREEQCおよびGWBで用いることができる。各データベースの名称は、SPRONS.TRU(SUPCRT)、JNC-TDB.TRU(PHREEQC)およびTHERMO_JNCTRU(GWB)である。これらデータベースの信頼性については、高アルカリ-粘土系における現状の知見の限界を踏まえ検討する。高アルカリ-粘土系で重要な鉱物は複雑で、非常に多様な組成を持つ準安定固相の傾向がある。このような準安定固相は、実験的にも熱力学的にも明確にされていない。また高アルカリ-粘土系において重要な水溶液化学種についても、現状では関連する実験データが不足しており、データの不確実性が大きい。このように利用できるデータが限られているという現状を考慮すると、本研究で開発したデータベースは、高アルカリ-粘土系で重要あるいは代表的であると認識されている鉱物を含んでおり、また計算値と実験値の比較が行われているデータについては概ね妥当であることが示されている点で信頼できるものと言える。今回開発したデータベースは、理想的な内部整合性のとれたものではない。むしろ、内部整合性よりもデータの精度や完全性を重視し、開発されたデータベースである。本報告書の中で報告したデータベースの将来的な改良・改訂に向けて推薦するアプローチとしては、信頼性のある実験データが不足している場合、熱力学的特性を慣例的に評価できる一貫した経験的手法を開発することである。またこのような手法開発にあたっては、ベントナイト-セメント間での長期挙動モデルにおける概念やパラメータの不確実性の重要度を評価する不確実性解析と連携して行なうことが必要である。

JNC TN8400 2005-010 2005
黒澤進

高レベル放射性廃棄物地層処分システムにおける核種移行評価に及ぼすコロイド影響に関する研究 —第2次取りまとめ以降の検討—

本報告では、放射性廃棄物の地層処分の環境を人工バリア、天然バリアおよびその境界部に区分して、そこに生成あるいは元々存在するコロイド等の核種移行に及ぼす影響に関して、2次取りまとめ以降の検討結果を示した。なお、本報告は、著者が東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻 田中知教授の師事のもと、核燃料サイクル機構において得られた成果(投稿論文)を主に学位論文としてまとめた際の主な論題をまとめたものである。

JNC TN8400 2005-007 2005
斎藤好彦、M. Ochs、神徳敬、他

JNC収着データベースを用いた収着分配係数の信頼度評価手法の開発 (技術報告)

核燃料サイクル開発機構(JNC)は、高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の第2次取りまとめにおいて、人工バリアおよび天然バリアでの遅延能力を評価する上で重要な放射性核種のベントナイトや岩石への分配係数(Kd)をJNC収着データベース(JNC-SDB)として整備した。JNC-SDBに登録されているKdは、約20,000件に及んでいる。この様な膨大なデータを有するJNC-SDBには、様々な試験条件で得られたKdおよびそれに付随する重要なデータが含まれている。そこで、個々のKdに対し、信頼度をレベル付けするために下記のクライテリアとクラス分けシステムを開発した。・クライテリアI:文献情報の網羅性とKdの情報タイプについて・クライテリアII:登録Kdデータの技術的および科学的観点からの信頼度について・クライテリアIII:Kdと他の関連する信頼できる文献のKdとの整合性について・Kdの信頼度を総合評価するためのクラス分けシステムクライテリアIIのチェックポイントでは、固相、pHの調整と制御、酸化還元状態、最終の溶液組成、温度、固液比と粒子サイズ、収着率、核種の初期濃度、固液分離、反応時間、攪拌方法、核種の添加量、反応容器、不確実性の評価、パラメータ変化について信頼度レベルを評価する。

JNC TN8410 2005-011 2005
川村淳、牧野仁史、梅田浩司、他

高レベル放射性廃棄物処分における天然現象影響評価技術の高度化

高レベル放射性廃棄物処分における天然現象影響評価技術の「第2次取りまとめ」に対する高度化として、事例研究成果を適切にシナリオに取り込み、その上で「影響のバリエーションを適切に整理した上でシナリオを現実の特徴を失わない程度に適切に単純化すること」及び「影響の伝搬等の因果関係を明らかにすること」に着目した「作業フレーム」を構築した。本論で検討した「作業フレーム」により、シナリオの「現実性」のみならず「透明性」、「追跡性」、「整合性」を向上させることができた。また、シナリオ構築あるいは影響解析の作業向上の観点から必要となる、天然現象に関するデータ・知見の種類や量あるいは品質情報、及び現状におけるそれらの過不足などについて作業を通じて明らかにできると考えられる。このことは今後、天然現象の研究者が現象理解の研究フレームを効率的かつ適切に構築することにも役立ち、さらには将来の現実性や精度の高い評価の実施へつながっていくものと考えられる。

サイクル機構技報 No.28 pp.53-64 2005

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
渋谷旬、鈴木隆、黒田英高

瑞浪超深地層研究所研究坑道 予備解析(平成17年度) (委託研究)

平成16年度までにMIZ-1号孔の削孔と各種試験が終了し、超深地層研究所研究坑道(立坑及び水平坑道)工事の花崗岩最深部(深度1,000m)までの岩盤の状況が明らかになった。昨年度には、これらの試験結果を反映し、堆積岩部2深度、花崗岩部4深度について支保の妥当性を確認するための修正解析を実施している。本研究では、これに引き続き深度1,000mまでの立坑と、深度500mまでの水平坑道を対象とした修正解析を実施するとともに、湧水抑制のために計画されている立坑周辺のグラウトの効果と覆工コンクリートへの水圧負荷による影響について解析的な検討を行い、構造物の健全性や施工の安全性を確認した。

JAEA-Research 2008-052 2008
黒崎幸夫、山地宏志、勝沼好夫、他

超大深度立坑の連接部における崩落機構に関する調査 (委託研究)

瑞浪超深地層研究所の研究坑道は、超大深度の立坑と水平坑道から計画されている。この超大深度立坑と水平坑道の連接部は3次元の地盤構造を形成し、掘削過程では複雑な力学的挙動を呈することが予測されるが、超大深度立坑連接部の支保部材を定量的に設計する手法は確立されていない。このような状況に鑑み、超大深度立坑連接の崩壊機構を検討するため、過去の立坑工事に関する文献調査と工事従事者からの聞き取り調査を実施し、立坑連接においてどのような崩壊や変状が発生したかを調査し、調査結果を有識者のレビューを交えて考察した。その結果、超大深度立坑連接の崩壊機構は立坑連接部の施工過程と地質条件のいずれにも依存することが明らかとなった。一方、超大深度連接部が大きな角度で断層や破砕帯に交差する地点では、「高抜け」と呼ばれる崩壊の発生や覆工に異常な土圧作用する現象が見られる。これらの現象の機構を解明するためには、連接部周辺地山の挙動を再現することのできる数値計算による研究を実施する必要がある。このために、既往数値解析手法の中で可能な有限差分法が最も適切であることを、有識者のレビューを踏まえて示した。

JAEA-Research 2008-048 2008
小島圭二、大西有三、渡辺邦夫、他

深部地質環境の調査解析技術の体系化に関する研究 —平成18年度— (委託研究)

地表から地下深部にいたる地質環境を把握するための調査・解析技術の体系化を目標に、(1)「第2次取りまとめに基づく深部地質環境の調査・解析技術の実用化に向けた課題に関する研究」、(2)「調査・解析手法の高度化・体系化に関する研究」を実施して次のような成果を得た。(1)に関しては、処分技術、安全評価、地質環境の各分野の課題のうち、具体的な試験・計測と解析・分析を実施した。またその成果を踏まえて、それぞれの中間分野の研究課題を抽出し、各課題の連携の仕方についての検討を行った。本年度は、各分野の中間領域に関する要素研究とともに、NFC構築の具体的な検討を実施した。(2)に関しては、日本原子力研究開発機構の調査研究計画の中から抽出された課題に基づき、調査・解析の高度化・実用化の研究開発の観点から、当研究会のメンバーが実施している基礎的な要素技術の研究・開発の成果を取り込み、より具体的な現場の技術課題に資する研究を実施した。さらに、研究・開発について、その成果の評価と実用化への道を議論した。また、これらの調査研究の進展と併せて、日本原子力研究開発機構が実施中の超深地層研究所計画の第2段階の当面の問題に関する意見交換を行った。

JAEA-Research 2008-042 2008
延藤遵、見掛信一郎

瑞浪超深地層研究所におけるグラウト技術の開発及び高度化(その2) (委託研究)

坑道掘削時に遭遇する水みちに対する対策工法であるグラウトについて、グラウトに関する止水性能を確認し、さらに亀裂入り口におけるグラウト材料の浸透特性について実験等を実施した研究内容について報告する。

JAEA-Research 2008-039 2008
本多眞、桜井英行、鈴木誠、他

地盤統計学的手法を用いた地質環境モデル構築手法に関する研究 (共同研究)

本研究は、幌延深地層研究計画における「地上からの調査研究段階(第1段階)」で取得された調査データを利用して、堆積軟岩を対象に地盤統計手法を利用した地質環境モデルの構築手法の確立と情報量とモデルの信頼度の関係を客観的に評価する技術の開発を目的としたものであり、平成15年度から平成18年度の4年間で実施された清水建設株式会社との共同研究である。平成15年度から平成17年度の3年間は、年度ごとに得られたデータを用いて、比抵抗値分布の三次元モデルとその比抵抗値モデルとの相関関係を利用した地下水溶存濃度分布の三次元モデル、透水係数分布の三次元モデルの構築と更新を行い、データ量とモデルの信頼度の検討を行った。平成18年度は、最終年度のまとめとして、本研究で用いたモデル構築方法の有効性を確認するため、従来から用いられている地球統計解析に基づくモデルとの比較を行った。また、調査手順とモデルの信頼性との関係を検討するため、実際とは異なる調査手順を想定し、調査進展に伴うモデルの信頼度の比較を行った。

JAEA-Research 2008-038 2008
延藤遵、見掛信一郎

瑞浪超深地層研究所におけるグラウト技術の開発及び高度化 (委託研究)

坑道掘削時に遭遇する水みちに対する止水を目的としたグラウト技術の研究開発を行った。具体的な項目としては、(1)止水性能に着目したグラウト注入方法の整理、(2)高圧注入時の浸透性能確認試験方法の検討、(3)より微小な亀裂に浸透可能なグラウト材料の調査、を実施した。

JAEA-Research 2008-037 2008
戸井田克、須山泰宏、瀬尾昭治、他

東濃地域における地質環境の不確実性評価 —平成18年度— (委託研究)

東濃地科学センターにおける地層科学研究では、地表から地下深部までの水理特性や地下水の地球化学特性を把握するために、各種の調査・検討を行っている。これらの研究では、調査の各段階において構築される各種モデルの不確実性をできるだけ定量的に記述し、それを効率よく低減する調査の進め方を明らかにすることが重要な課題である。一般に岩盤においては、それに伴う不確実性が均質な媒体に比較して大きいため、調査量と調査結果に含まれる不確実性との関係を評価することが極めて重要となる。この両者の関係を数学的に解析する手法の一つとして地球統計学的手法があり、これは地下に埋蔵する資源量の評価など他分野において用いられてきた実績がある。本研究では、地球統計学とファジー理論を応用し、不確実性を定量化し、その不確実性を低減するという新たなアプローチを考案した。平成18年度は、これまでに実施した2次元と3次元の地質構造のモデル化及び地下水流動解析結果を踏まえ、不確実性評価手法の体系化を行った。そして、体系化した手順に沿って一連の評価事例を整理した。また、本手法を効果的に活用できるように適用すべき原位置調査手法を提案するとともに、地質環境の不確実性の観点から地下施設設計時に考慮すべき事項を整理した。

JAEA-Research 2008-035 2008
柴野一則、尾留川剛、安江健一、他

換気立坑掘削深度50mまでの湧水量解析

本報告では、立坑掘削に先立って立坑近傍に掘削した深度30m程度の数本の浅層ボーリング孔を利用したコア観察や透水試験結果を用いて、表層付近の水理地質構造モデルを構築し、換気立坑を対象とした掘削解析を実施した。解析結果を深度50mまでの実測の湧水量と比較して表層付近の水理地質構造モデルや立坑周辺に設置した止水壁が十分な性能を持つことを検証した。その結果、止水壁が十分に機能していること、止水壁より下部の掘削においては声問層の新鮮部の透水係数が湧水量に対して直接的に影響を及ぼすことが明らかとなった。本報告のような簡易なモデルでの予測解析は、地下施設の施工への反映に対して有益である。

JAEA-Research 2008-033 2008
渋谷旬、鈴木隆、黒田英高

瑞浪超深地層研究所研究坑道予備解析 —平成16年度— (委託研究)

瑞浪超深地層研究所研究坑道の設計検討は、平成14年度に実施設計が、平成15年度に深さ300mまでを対象とした予備解析が、それぞれの検討時点までに得られている地質調査結果を反映して実施されてきた。本業務では、MIZ-1号孔の調査が終了し、深度1,000m付近までの地質データが得られたことから、これに基づき、地質モデル、岩盤物性・初期地圧などを見直すとともに、それに伴う修正解析(二次元)の実施、応力集中等が懸念される連接部については三次元解析を実施し、設計の妥当性を評価した。

JAEA-Research 2008-027 2008
森岡宏之、山崎雅直、松井裕哉、他

幌延深地層研究計画における地下施設の支保設計 (実施設計)

本報告書は、幌延深地層研究計画における地下施設の建設に先立って、平成16年度に実施した最終の支保設計(実施設計)の内容について、「幌延深地層研究計画 地下施設実施設計」のうち、地下施設空洞安定性の検討及び耐震性能照査の結果に関する部分を要約し取りまとめたものである。

JAEA-Research 2008-009 2008
市川康明、瀬野康弘、中間茂雄、他

結晶質岩を対象とした長期岩盤挙動評価のための理論的研究 (委託研究)

本報告書は、平成18年度に実施した成果をまとめたものであり、長期挙動予測評価手法の開発として行った「石英の溶解に関する試験的研究」及び「石英の溶解拡散に関する均質化解析」と、第3段階の調査研究計画の基礎情報としての「土岐花崗岩の一軸圧縮試験と応力緩和試験」の3点について報告するものである。本報告書の構成は、以下の通りである。第2章では、土岐花崗岩の微視的変形状況を一軸圧縮試験及び応力緩和試験条件下でレーザー共焦点顕微鏡によって観察している。すなわち、時間依存の巨視的な変形・応力挙動を測ると同時に、顕微鏡画像で結晶及びその境界面の特徴的なポイントを探して四角形メッシュを組み、そのメッシュ群の時間的なひずみ変化を算定した。第3章では、多結晶質岩石の微視レベルの破壊機構に深くかかわっている各鉱物の圧縮応力下の化学反応による溶解現象を確認するために、石英単結晶供試体及びガラスビーズを用いた圧縮試験を試み、溶解及び再沈殿した石英表面の形状をレーザー共焦点顕微鏡で観察している。第4章では、石英の圧力溶解反応現象についての理論的な取り扱い法、並びに均質化法をベースにした数値解析法を開発している。

JAEA-Research 2008-005 2008
F. Lanaro and H. Matsui

BEM-DDM modelling of rock damage and its implications on rock laboratory strength and in-situ stresses

本研究は、超深地層研究計画の一環として、土岐花崗岩を対象として室内試験から得られる強度に関するコアの損傷の効果を決定することを主目的として実施した。室内試験結果の分析により、ボーリング孔軸方向に力学特性の変化が認められるとともに、室内試験で得られた強度と初期応力状態に相関があることが推定された。これを確認するため、FRACOD 2Dと呼ばれるBEM-DDM解析コードによる数値解析を行い、室内試験時などに発生する割れ目のパターン等を検討するとともに、花崗岩体中で見られる割れ目帯の成因についても考察した。

JAEA-Research 2007-093 2008
松井裕哉、中山雅、真田祐幸

幌延深地層研究計画 平成18年度調査研究成果報告

幌延深地層研究計画は、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの段階に分けて実施している。平成18年度は、平成17年度から開始した第2段階の2年目に当たる。平成18年度は、「幌延深地層研究計画 平成18年度調査研究計画」に従って、調査研究及び地上施設と地下施設の建設を進めた。研究開発は、従来通り、「地層科学研究」と「地層処分研究開発」に区分して行った。具体的には、「地層科学研究」では、地質環境調査技術開発、地質環境モニタリング技術開発、深地層における工学的技術の基礎の開発、地質環境の長期安定性に関する研究という研究課題を設定し、「地層処分研究開発」では、処分技術の信頼性向上として、人工バリア等の工学技術の検証、設計手法の適用性確認を、安全評価手法の高度化として、安全評価モデルの高度化と安全評価手法の適用性確認という研究課題を設定している。

JAEA-Research 2007-092 2008
松田武、納多勝、入矢桂史郎、他

幌延深地層研究計画における低アルカリ性セメントの適用性に関する研究 (委託研究)

幌延深地層研究センターでは、地下施設の一部において低アルカリ性セメント(HFSC)を用いたコンクリートの施工性確認試験(原位置試験)の実施を計画している。それまでにHFSCが実工事で施工可能な性能を持つことを確認しておく必要がある。本年度は、幌延地下施設内での原位置試験計画を検討するとともにHFSCコンクリート材料のpH低下挙動の把握を実施した。また、HFSCを用いた原位置試験計画では、HFSC424N(普通ポルトランドセメント:シリカフューム:フライアッシュ=4:2:4)を吹付けコンクリートとして使用することを前提とした原位置試験計画を検討した。実施場所は地下施設の140m坑道、試験期間は10年程度を目安とし、普通コンクリート支保工との比較が可能な計画とした。また、現地で調達する材料を使用した場合もその強度を満足できることを確認するため、平成17年度に選定した配合に基づき、現地調達の細骨材・粗骨材を使用して強度試験などを実施した。HFSCコンクリート材料のpH低下挙動の把握に関しては、長期間の密封浸漬試験の供試体について、浸漬液のpH測定及び成分分析並びに固相の成分分析を行った。

JAEA-Research 2007-089 2008
大久保誠介、瀬野康弘、中間茂雄、他

結晶質岩を対象とした長期岩盤挙動評価のための現象論的研究 (委託研究)

本報告書は、平成17年度と18年度に実施した研究をまとめたものである。第2章では、長期挙動予測評価手法の開発として行った研究として、(1)平成9年度から継続している田下凝灰岩の長期クリープ試験の結果、(2)稲田花崗岩の中間温度領域におけるマルチステージクリープ試験結果、(3)一般化応力緩和試験に関する検討、(4)大久保が提案した構成方程式中のパラメータを求めるための新しい試験方法に関する考察、について報告した。とりわけ田下凝灰岩の長期クリープ試験は、試験を開始して9.5年が経過し、試測定結果に年変動が見られるなどの問題点も見られるが貴重なデータが得られている。第3章では、第3段階における上記研究の検証の基礎となる土岐花崗岩を対象とした力学試験を行い、その結果から時間依存性を考慮した構成方程式のパラメータを取得した結果について報告した。土岐花崗岩は花崗岩として標準的な力学物性値を持っていることが判明し、また、構成方程式の三次クリープ(破壊現象)を表現するパラメータが取得された。最後に付録として「岩盤の不均一性評価技術に関する研究」、「岩石の時間依存性を考慮した新岩盤分類法の検討」を示した。

JAEA-Research 2007-088 2008
瀬野康弘、中間茂雄、佐藤稔紀、他

クラックテンソル・仮想割れ目モデルによる瑞浪超深地層研究所研究坑道の掘削影響予測解析

本報告書は、第2段階以降の調査・研究計画策定のための基礎情報を得ることを目的とし、研究坑道の深度500m付近の立坑と水平坑道の連接部を対象に、クラックテンソルモデルにより掘削損傷を考慮した3次元応力解析を行い、その応力状態を用いて仮想割れ目モデルによる透水性変化解析を行った結果について報告するものである。解析検討により得られた知見は以下のとおりである。(1)岩盤等級が下がると、立坑及び水平坑道の内空変位、支保工部材の応力は増加した。ただし、最大せん断応力、安全率、平均透水係数の増加領域の分布には変化がほとんど見られなかった。(2)連接部における立坑の内空変位は一般部の1.1倍に増加した。連接部の影響範囲は、水平坑道の代表径の2倍程度であった。また、連接部における水平坑道の内空変位は一般部の1.9〜2.2倍に増加した。(3)掘削損傷領域の存在を考慮すると、立坑及び水平坑道とも、内空変位や支保工部材の応力は増加し、平均透水係数の最大増加率は大幅に増加した。(4)3次元的な亀裂分布に基づく岩盤挙動をより適切に表現するには2次元モデルより3次元モデルが有効である。

JAEA-Research 2007-081 2008
瀬野康弘、中間茂雄、佐藤稔紀、他

MBCモデルによる瑞浪超深地層研究所研究坑道の掘削影響予測解析

本報告書は、第2段階以降の調査・研究計画策定のための基礎情報を得ることを目的とし、研究坑道の深度500m付近の立坑と水平坑道の連接部を対象に、MBCモデルによる掘削損傷を考慮した3次元予測解析結果について報告するものである。解析検討により得られた知見は以下のとおりである。(1)岩盤挙動は初期応力の作用方向、亀裂の幾何学的方向の影響を受ける。また、B級やCH級に比べ強度が劣るCL級では、変位や支保にかかる応力は大きくなる。(2)解析ステップの細分化が解析結果に与える影響は少ない。(3)掘削損傷域の有無による岩盤挙動に対する影響は比較的小さい。(4)立坑連接部では一般部に比べ支保の応力が1.3〜1.6倍になる。(5)3次元的な亀裂分布に基づく岩盤挙動をより適切に表現するには2次元モデルより3次元モデルが有効である。

JAEA-Research 2007-080 2008
熊谷恭人、舟木泰智、山崎雅直、他

幌延深地層研究計画平成18年度地下施設計測データ集

幌延深地層研究計画は、原子力政策大綱に示された深地層の研究施設計画の一つであり、堆積岩を対象として、日本原子力研究開発機構が北海道幌延町で進めているプロジェクトである。この計画では、「深地層の科学的研究」と「地層処分研究開発」を、第1段階「地上からの調査研究段階」、第2段階「坑道掘削時の調査研究段階」、第3段階「地下施設での調査研究段階」の3段階で20年程度をかけて進める。第2段階調査が始まるにあたり、第1段階の調査結果に基づき、(1)安全かつ合理的な坑道建設のための計測、(2)坑道の設計・施工技術の高度化に向けた研究開発のための計測、及び(3)掘削前に予測した深部地質環境を検証するための計測を取りまとめ、「幌延深地層研究計画における立坑掘削時の計測計画及び情報化施工プログラム」を策定した。本データ集は、この計測計画に基づき平成18年度に実施した換気立坑深度約50m、東立坑深度約40mまでの調査結果を取りまとめたものである。

JAEA-Data⁄Code 2007-025 2008
平賀正人、石井英一

幌延深地層研究計画(第1段階)において採取されたボーリングコアの鉱物組成・全岩化学組成及び地表ガスの化学組成

地層処分研究開発部門幌延深地層研究ユニット堆積岩地質環境研究グループでは、幌延深地層研究計画の第1段階において、研究所設置地区周辺の岩石の鉱物学的・地球化学的特徴及び地表付近のガス組成を把握するため、幌延町北進地区及び上幌延地区において、以下の3種類の分析を実施した。(1)ボーリングコアの鉱物組成分析、(2)ボーリングコアの全岩化学組成分析、(3)地表ガスの化学組成分析。本資料は、上記分析結果についてまとめたものである。

JAEA-Data⁄Code 2007-022 2008
西尾和久、弥富洋介、尾方伸久

「平成19年度東濃地科学センター地層科学研究情報・意見交換会」資料集

独立行政法人日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、「地層処分技術に関する研究開発」のうち深地層の科学的研究(以下、地層科学研究)を実施している。地層科学研究を適正かつ効率的に進めていくため、研究開発の状況や成果、さらに今後の研究開発の方向性について、大学、研究機関、企業等の研究者・技術者等に広く紹介し、情報・意見交換を行うことを目的とした「情報・意見交換会」を行っている。本資料は、平成19年10月19日に岐阜県瑞浪市で開催した「平成19年度東濃地科学センター地層科学研究情報・意見交換会」にて用いた発表資料を取りまとめたものである。

JAEA-Review 2008-026 2008
西尾和久、尾方伸久、弥富洋介

「平成18年度東濃地科学センター地層科学研究情報・意見交換会」資料集

独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構)東濃地科学センターでは、「地層処分技術に関する研究開発」のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)を実施している。地層科学研究を適正かつ効率的に進めていくため、研究開発の状況や成果、さらに今後の研究開発の方向性について、大学、研究機関、企業等の研究者・技術者等に広く紹介し、情報・意見交換を行うことを目的とした「情報・意見交換会」を行っている。本資料は、平成18年10月19日、20日に岐阜県瑞浪市で開催した「平成18年度東濃地科学センター地層科学研究情報・意見交換会」にて用いた発表資料を取りまとめたものである。

JAEA-Review 2008-010 2008
青木謙治、水戸義忠、南将行、他

ボーリングコアを用いた堆積軟岩のAE特性の分析及び原位置測定手法に関する研究 (共同研究)

新第三紀堆積軟岩を対象とした空洞掘削影響に対するAE測定とDEM解析を併用した評価システム技術の適用性を、先行基礎工学研究として3か年間行った。本研究は、幌延のボーリングコアを用いた原位置応力状態下の高剛性三軸圧縮試験から新第三紀堆積軟岩のEDZ評価に有効なAEパラメータを抽出し(平成16年度)、その有効なパラメータを中心とした原位置AE計測システムや個別剛体要素法による岩盤内の亀裂の発生・進展状況の予測結果から想定される掘削影響の発生メカニズムの検討を行うことにより(平成17年度)、幌延深地層研究計画第2段階以降で計画されている掘削影響試験などで必要な計測・評価システムの概念を構築した(平成18年度)。

JAEA-Research 2007-077 2007
戸井田克、須山泰宏、森孝之、他

東濃地域における地質環境の不確実性評価 —平成17年度— (委託研究)

東濃地科学センターにおける地層科学研究では、地質環境特性を明らかにするために必要な調査・解析技術並びにその妥当性を評価する手法の開発を進めている。この研究では、岩盤の不均一性推定に伴う不確実性を定量的に把握するための手法を明らかにし、その不確実性を低減するための合理的な地質環境調査手法の確立を一つの大きな目標としている。平成17年度は、新たに掘削されたボーリング孔などのデータを用い、本評価手法をより高度化することを目指して、知識・情報の整理を進めるとともに、概念モデルの体系的整理と地下水流動解析を行い、本手法の実用化に向けた評価・検討を行った。また、地質環境の不確実性の評価結果を効果的に施設設計に反映するための情報抽出を試行した。本研究成果を取りまとめると、以下のようになる。(1)ボーリング調査により取得された割れ目本数と透水量係数との相関を整理し、NW方向の割れ目系が最も透水量係数との相関が高いことを示した。これは広域の応力場の影響を受けているものと考えられる。(2)概念モデルの体系的整理と地下水流動解析を行うことにより、地質環境の不均一性評価方法の検討手順を取りまとめた。(3)施設設計を高度化する情報として、「不確実性に応じた複数の設計オプションを保有すること」と、「地質環境の不均質性に応じた設計を行うこと」が重要であることを示した。

JAEA-Research 2007-071 2007
高瀬博康、稲垣学、野口俊英、他

幌延深地層研究計画における不確実性を考慮した安全評価手法の検討 (委託研究)

深部地質環境の空間的不均質性に起因する不確実性の存在を前提として、安全評価の信頼性を向上するための手法構築を行い、種々の証拠によって最尤と考えられる選択肢のみではなく、可能性は低いが否定することのできない選択肢についても明示的に検討に含めることにより、各調査段階で残されている不確実性の種類や大きさを顕在化することが可能となった。また、このような選択肢を網羅的に抽出し、複数の証拠を用いて包括的に評価を行うための体系的な方法論を明らかにした。さらに、過去数か年に渡って実施した地下水流動解析や物質移動解析等の関連する研究成果を統合することにより、幌延の地質環境を事例とした不確実性を考慮した安全評価手法を具体的に示した。

JAEA-Research 2007-066 2007
戸井田克、須山泰宏、森孝之、他

東濃地域における地質環境の不均一性評価 —平成16年度— (委託研究)

東濃地科学センターにおける地層科学研究では、地質環境特性を明らかにするために必要な調査・解析技術並びにその妥当性を評価する手法の開発を進めている。この研究では、岩盤の不均一性推定に伴う不確実性を定量的に把握するための手法を明らかにし、その不確実性を低減するための合理的な地質環境調査手法の確立を一つの大きな目標としている。本研究においては、これまでにファジー地球統計を基本とした不確実性解析手法を用い、調査の各段階で想定し得る(あるいは否定できない)モデルやパラメータの全体集合を考えることにより不確実性を定量化でき、調査結果に基づき蓋然性が低いと考えられる選択肢を絞り込むことによってその不確実性を低減できるという新たなアプローチを考案している。平成16年度は、平成17年度に行う研究成果の取りまとめに向け、これまで東濃地域で行われた調査結果に基づき、本手法の実用化に向けた評価・検討を行った。本研究成果を取りまとめると以下のようになる。(1)東濃地域の事例を対象とした統合化データフローを活用し、本手法を適用するための知識・情報を整理した。(2)これまでの課題であったパラメータの設定方法とスクリーニング方法を整備した。(3)適用事例を用いて評価・検討を行い、本手法の実用化の目処を得た。(4)本手法(確率的手法)とこれまでに適用されてきた決定論的手法との統合方法を整備した。

JAEA-Research 2007-065 2007
戸村豪治、操上広志、柴野一則、他

幌延深地層研究における表層水理調査の現状

日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターでは、幌延深地層研究計画の一環として、表層水理調査を実施している。表層水理調査では、広域地下水流動解析の境界条件や初期条件の設定に必要な地下水涵養量及び表層部における地下水流動系の把握を目的として、これまでに気象観測、河川流量及び水質の観測、土壌水分観測、浅層地下水位観測等を継続して行っている。本報告は、幌延深地層研究計画における表層水理調査の現状を取りまとめたものであり、表層水理調査結果の概要やそれに基づく表層付近の地下水流動特性に関する検討結果を示したものである。

JAEA-Research 2007-063 2007
小島圭二、大西有三、渡辺邦夫、他

深部地質環境の調査解析技術の体系化に関する研究 —平成17年度— (委託研究)

地表から地下深部に至る地質環境を把握するための調査・解析技術の体系化を目標に、(1)「第2次取りまとめに基づく深部地質環境の調査・解析技術の実用化に向けた課題に関する研究」、(2)「調査・解析手法の高度化・体系化に関する研究」を、前年度に引き続き実施した。(1)に関しては、前年度抽出した処分技術、安全評価、地質環境の各分野の課題のうち、具体的な試験・計測と解析・分析を実施した。またその成果を踏まえて、それぞれの中間分野の研究課題の抽出と各課題の連携の仕方についての検討を行った。そして、これら3分野を関連づけたニアフィールドコンセプトの再構築に関する検討を行った。(2)に関しては、日本原子力研究開発機構の調査研究計画の中から抽出される課題に基づき、調査・解析技術の高度化・実用化の研究開発の観点から、当研究会のメンバーが従来より実施している基礎的な要素技術の研究開発の成果を取り込み課題の解明に資する研究を実施した。研究開発について、その成果の評価と実用化への道を議論した。またこれらの調査研究の進展と合わせて、日本原子力研究開発機構が実施中の瑞浪超深地層研究所の第2段階の調査・研究課題に関する意見交換を行い、処分技術の実用化への検討を行った。

JAEA-Research 2007-060 2007
森岡宏之、山口雄大、舟木泰智、他

幌延深地層研究計画における立坑掘削時の計測計画及び情報化施工プログラム

本報告書は、幌延深地層研究計画における地下施設(立坑)の本格的な建設に先立ち、事前設計に基づく立坑掘削時の計測計画及び計測データを当該切羽や後続施工箇所の設計・施工にフィードバックするための情報化施工プログラムについて取りまとめたものである。ここで示す計測計画は、安全かつ合理的な坑道建設のための計測、坑道の設計・施工技術の高度化に向けた研究開発のための計測及び地層科学研究の一環として地質環境モデルの検証のために坑道内で実施する計測を対象とした。このうち、工学技術の基礎の開発の一環として実施する坑道の設計・施工技術の高度化に向けた研究開発のための計測については、現状の研究計画のアウトラインについても記述し、研究上の計測の位置づけを明確に示した。併せて、地下施設建設時の工事請負会社に対する設計・施工監理計画についても記述した。

JAEA-Research 2007-050 2007
松井裕哉、中山雅、真田祐幸、他

幌延深地層研究計画 平成19年度調査研究計画

本計画は、独立行政法人日本原子力研究開発機構が堆積岩を対象に北海道幌延町で実施しているものである。本計画は、調査研究の開始から調査研究の終了まで20年程度の計画とし、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの段階に分けて実施することとしており、平成19年度は第2段階の3年目にあたる。平成19年度は、地層科学研究として、地質環境調査技術開発、地質環境モニタリング技術開発、深地層における工学的技術の基礎の開発及び地質環境の長期安定性に関する研究を、地層処分研究開発として、処分技術の信頼性向上及び安全評価手法の高度化についての調査研究を継続する。また、地下施設の建設については、換気立坑と東立坑の掘削を継続するとともに、先行ボーリング調査を実施する。地上施設については、平成18年度に引き続き、PR施設の建設工事及び展示物の製作を行い、平成19年5月末に竣工、夏頃に開館する予定である。また、国際交流施設については、実施設計を行う。

JAEA-Research 2007-048 2007
太田久仁雄、阿部寛信、山口雄大、他

幌延深地層研究計画における地上からの調査研究段階(第1段階)研究成果報告書 分冊「深地層の科学的研究」

幌延深地層研究計画は、北海道幌延町で進めている堆積岩を対象とした深地層の研究施設であり、第1段階「地上からの調査研究段階」、第2段階「坑道掘削時の調査研究段階」、第3段階「地下施設での調査研究段階」の3段階で20年程度かけて進めているプロジェクトである。本計画では、「深地層の科学的研究」と「地層処分研究開発」の二つの分野の研究開発を進めている。本報告書は、深地層の科学的研究について、第1段階における調査研究の成果を取りまとめたものである。本報告書では、「研究所設置場所の選定プロセス」、「研究所設置地区及びその周辺における調査研究」、「深地層における工学技術の基礎の開発」、及び「地下施設建設に伴う周辺環境への影響調査」に関する具体的な調査内容と結果を示し、第1段階における調査研究の目標に対する達成度を評価するとともに、今後の課題を明らかにした。また、本報告書でまとめた成果は、地層処分技術の知識基盤として整備されるばかりでなく、処分事業と安全規制の両面を支える技術基盤の強化を図っていくうえで、有効に活用されるものである。

JAEA-Research 2007-044 2007
三枝博光、瀬野康弘、中間茂雄、他

超深地層研究所計画における地表からの調査予測研究段階(第1段階)研究成果報告書

本報告書は、結晶質岩を対象として、日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている深地層の研究施設計画である超深地層研究所計画における第1段階(地表からの調査予測研究段階)の調査研究成果をまとめたものである。この報告書では、第1段階の目標に対して調査研究の成果を適切に取りまとめるとともに、課題を抽出・整理し、第2段階(研究坑道の掘削を伴う研究段階)以降の調査研究の必要性について言及した。具体的には、結晶質岩(硬岩)を対象とした調査・評価のための方法論を示すとともに、重要な調査技術や解析技術を整備した。また、処分事業の基盤技術となる技術的知見やノウハウなどを整理した。さらに、第1段階において残された課題を整理し、第2段階以降の調査研究の必要性を明確化した。ここで取りまとめる成果は、地層処分技術の知識基盤として整備されるばかりでなく、処分事業並びに安全規制の両面を支える技術基盤の強化を図っていくうえで、有効に活用されるものである。

JAEA-Research 2007-043 2007
H. Matsui, T. Niizato, Y. Yamaguchi, (eds.)

Horonobe Underground Research Laboratory Project Investigation Program for the 2006 Fiscal Year (Translated Document)

本計画は、独立行政法人日本原子力研究開発機構が堆積岩を対象に北海道幌延町で実施しているものである。本計画は、調査研究の開始から調査研究の終了まで20年程度の計画とし、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの段階に分けて実施することとしており、平成18年度はその第2段階の2年目に当たる。平成18年度は、おもに北進地区にある研究所設置地区(主たる調査研究の展開場所、2〜3km四方程度)とその周辺地域において調査研究を継続する。また、地下施設の建設を継続するとともに、第2段階の調査研究を継続する。また、第1段階の研究成果の取りまとめを行い、報告書として公開する。地上施設については、平成17年度に引き続き研究管理棟及び試験棟(コア倉庫・ワークショップ棟を試験棟に名称変更)の建設工事を行い、平成18年5月に竣工予定である。また、PR施設の建設工事を行うとともに展示物の製作を開始し、国際交流施設の基本設計を行う。

JAEA-Research 2007-041 2007
操上広志

幌延深地層研究計画における地下水流動解析 —平成17年度までの調査結果を踏まえた再解析—

日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターでは、地層科学研究の一環として岩盤の水理に関する調査研究・モデル構築を実施している。岩盤の水理モデルは、調査の進展とともに更新し、その不確実性の低減を目指している。本報告書は、平成17年度までの調査結果を踏まえて既存の岩盤の水理モデルを更新し、地下水流動解析を実施したものである。声問層、稚内層の透水係数のデータが増え、それに伴ってそれらの地層の透水係数の深度依存性の見直しを行い、また、大曲断層の透水係数についても再検討を行った。更新された透水係数データをもとにまず感度解析を実施し、その後感度解析を踏まえた最適化を試みた。今回のモデルでは、前モデルよりも実測の全水頭分布をよりよく表現できたと言えるが、HDB-4孔、7孔などの浅い箇所やHDB-10孔での低い水圧、HDB-1孔、11孔の深部での高い水圧などを表現できなかった。今後、支配方程式などの条件の見直しも考慮しつつ精度の高いモデル化を進めていく予定である。

JAEA-Research 2007-036 2007
尾上博則、三枝博光、大山卓也

ローカルスケールの地下水流動解析—サイトスケールにおけるステップ4の地下水流動解析の境界条件の設定—

日本原子力研究開発機構が、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の1つである深地層の科学的研究の一環として、東濃地域を事例として進めている広域地下水流動研究並びに超深地層研究所計画では、空間スケールに応じた地質環境の体系的な調査・解析・評価技術の整備を主な目標としている。本検討では、超深地層研究所計画の第1段階におけるステップ4の調査結果に基づいたサイトスケールでの地下水流動解析のための境界条件の設定を目的として、サイトスケールを包含する領域であるローカルスケールを対象とした水理地質構造のモデル化及び地下水流動解析を実施した。その結果、ステップ3からステップ4への調査の進展に伴いローカルスケールの水理地質構造モデル及びサイトスケールの境界条件の不確実性の低減が確認されるとともに、サイトスケールを対象としたステップ4の地下水流動解析を実施する際の境界条件となる全水頭分布を算出することができた。

JAEA-Research 2007-035 2007
尾上博則、三枝博光、大山卓也、他

繰り返しアプローチに基づくサイトスケールの水理地質構造のモデル化・地下水流動解析(ステップ4)

日本原子力研究開発機構が、岐阜県東濃地域において実施している超深地層研究所計画では、結晶質岩を対象とした深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を目標の一つとして設定している。この目標を達成するため、深部地質環境を対象とした調査から評価に至る一連のプロセスを繰り返すアプローチに基づいて調査研究を実施している。本研究では、超深地層研究所計画の地下水流動特性評価に関する調査研究の一環として、繰り返しアプローチに基づき第1段階のステップ4を対象とした水理地質構造モデルの構築・更新及びそれに基づく地下水流動解析を実施した。その結果、第1段階における各ステップの進展に伴う水理地質構造モデルの不確実性の低減が確認されるとともに、その不確実性を効率的に低減させるための技術的知見をとりまとめた。また、第2段階以降の主な課題としては、研究坑道の建設に伴う地下水流動場の変化を捉えるためのモニタリングの実施や、本研究で構築した第1段階におけるサイトスケールの水理地質構造モデルの妥当性の確認及び更新が挙げられた。

JAEA-Research 2007-034 2007
M. Kumazawa, T. Kunitomo, T. Nakajima, et al.

Development of ACROSS (Accurately Controlled, Routinely Operated, Signal System) to realize constant monitoring the invisible Earth's interiors by means of stationary coherent elastic and electromagnetic waves

本件は、アクロス(Accurately Controlled, Routinely Operated, Signal System)と呼ばれる新しい地下探査技術の開発に関する成果報告書である。アクロス研究は、1996年6月から2006年3月まで、陸域地下構造フロンティア研究プロジェクトとして、東濃地科学センターが主体となって行ってきた。アクロスは、地下の構造と物理的な状態とを探査あるいは監視するために考案された理論体系に基づいて、それを実現するためのさまざまな要素技術を一つの技術体系として統合したものである。本報告書では、東濃鉱山のテストサイトで行われたさまざまな研究を中心に紹介する。また、10年間に及ぶ開発成果を応用して、幌延深地層研究センターで地下の時間変化を捉えようとする「遠隔監視システムの開発」や静岡県における東海地震の想定震源域の常時監視研究などが進められている。アクロスの技術としての熟成は、日進月歩で進んでおり、地下の研究に加えて、建造物などのヘルスモニタリングへの適用なども開始されてきている。

JAEA-Research 2007-033 2007
本多眞、鈴木誠、桜井英行、他

地盤統計学的手法を用いた地質環境モデル構築手法に関する研究 (共同研究)

本研究は、幌延深地層研究計画における「地上からの調査研究段階(第1段階)」で取得される調査データを利用して、堆積軟岩を対象として、地盤統計手法を利用した地質環境モデルの構築手法の確立と情報量とモデルの信頼度の関係を客観的に評価する技術の開発を目的として、平成15年度より実施してきたものである。本報告書は3年目の平成17年度に実施した研究内容を報告するものである。平成17年度では具体的に、2年目までの検討で用いた調査データに加えて、平成16年度に実施されたボーリング調査(HDB-9、10、11孔)のデータを用いて、1、2年目と同様の水理地質環境モデルの構築を実施した。そして調査のステップに応じたデータ及びモデルの更新を実施し、データ量とモデルの信頼度の関係について検討した。また地下水水質モデルでは、溶存成分ごとに比抵抗値との相関関係をもとにモデルを構築し、その特徴を明らかにした。

JAEA-Research 2007-028 2007
丹生屋純夫、松井裕哉

HDB-3〜8孔における岩盤力学的調査結果及び研究所設置地区の岩盤力学的概念モデル検討

本調査は、幌延深地層研究計画として平成14、15年度に実施した試錐調査のうち力学的調査試験結果について述べるものである。主な実施目的は、研究所設置地区内の岩盤力学的特性(岩石の物理物性、力学物性及び初期応力)がどのように分布しているかを確認することと、大曲断層(推定)東西領域の岩盤力学的な観点から見た諸特性や応力場の状態を把握することにある。研究所設置地区は、大曲断層(推定)によって東西に二分された形になっているため、施工したボーリング孔を断層の西側と東側でグルーピングして各種調査試験結果を整理した。その結果、大曲断層の東西にかかわらず、各孔における物性値の深度方向変化がよく一致しており、調査したボーリング孔周辺では同じ岩盤物性値を有する地層が水平的に分布していることが想定された。ただし、急激な物性値の変化を示した遷移ZONEの厚さは大曲断層東側が西側の1.5倍ほどあった。また、力学的岩盤モデルとして考えた場合、各種特性に影響を与える割れ目の存在は確認されているが、硬岩と比べ相対的に連続体に近い挙動を示すと考えられた。これらのグループ分けによる岩盤の物理・力学物性に関する調査結果に基づいて、物性概念モデルを構築した。構築したモデルによれば、物理・力学物性に関しては3つのZONEに区分することで各ZONE内の物性分布を場所によらずほぼ統一的に説明することが可能であることが示唆された。

JAEA-Research 2006-086 2007
松井裕哉

幌延深地層研究計画 地上からの調査研究段階における深層ボーリング調査計画とその実績

原子力機構は、平成12年度より北海道幌延町において新第三紀堆積岩を対象とした幌延深地層研究計画と称する地下施設建設を伴う研究プロジェクトを実施している。同プロジェクトは、岐阜県瑞浪市において結晶質岩を対象として実施中の瑞浪超深地層研究所計画と対をなすものであり、地上からの調査研究段階、坑道掘削中の調査研究段階、坑道を利用した調査研究段階、の3つの段階から構成された全体として約20年間のプロジェクトである。本報告は、平成17年度まで実施した地上からの調査研究段階における各種の調査研究のうち、特に重要となる深層ボーリング調査計画及びその実績をとりまとめたものである。具体的には、原子力機構の地上からの調査予測段階の目標、研究実施にあたっての制約条件、社会的条件を考慮し、年度ごとに実施した検討作業及び実績を時系列的に示し、その結果からさまざまな制約条件のもとで目標を達成するために重要と考えられる事項を抽出・整理している。

JAEA-Technology 2006-054 2007
國丸貴紀、柴野一則、操上広志、他

幌延深地層研究計画における地下水、河川水及び降水の水質分析

日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターでは、地質環境特性調査及び環境モニタリングとして平成13年度よりボーリング孔の地下水、河川水及び降水などの水質分析を実施してきた。本報告は、平成13年度から平成18年度までの水質分析データを取りまとめたものである。

JAEA-Data⁄Code 2007-015 2007
津久井朗太、西木司、東中基倫、他

幌延深地層研究計画における高密度反射法地震探査,マルチオフセットVSP探査,重力探査

独立行政法人日本原子力研究開発機構地層処分研究開発部門幌延深地層研究ユニット堆積岩地質環境研究グループでは、大曲断層の位置やその周辺の地質構造を把握するために、2004年に研究所用地設置地区(幌延町北進地区)において、高密度反射法地震探査、マルチオフセットVSP探査、重力探査の3種類の物理探査を実施した。本資料は、上記調査の概要と解析結果についてまとめたものである。

JAEA-Data⁄Code 2006-026 2007
小出馨、池田幸喜、竹内真司、他

超深地層研究所計画・第1段階(2002年度–2004年度)におけるプロジェクト管理の評価と得られた教訓

本報告書は、研究所建設用地変更後の研究所計画の地上からの調査研究段階を通して得られた知識及び経験をもとに、地上からの調査段階における計画の立案、現場監理、品質保証のあり方や計画を円滑に推進するためのステークホルダーとのかかわり方など、プロジェクト管理にかかわる分野の教訓を、基となった事例を含めて取りまとめたとともに、第2段階以降の研究所計画のプロジェクト管理のあり方について提言するものである。

JAEA-Evaluation 2007-001 2007
西尾和久、水野崇、大山卓也、他

超深地層研究所計画 年度計画書(2007年度)

独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原子力機構)東濃地科学センターでは、地層処分技術に関する研究のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、結晶質岩(花崗岩)を対象とした超深地層研究所計画を進めている。本計画は、「第1段階;地表からの調査予測研究段階」、「第2段階;研究坑道の掘削を伴う研究段階」、「第3段階;研究坑道を利用した研究段階」の3段階からなる約20年の計画であり、現在は、第2段階である「研究坑道の掘削を伴う研究段階」を進めている。本計画書は、2002年2月に改訂した「超深地層研究所基本計画」に基づき、2007年度の超深地層研究所計画の(1)調査研究計画、(2)施設建設計画、(3)共同研究計画等を示したものである。

JAEA-Review 2007-038 2007
西尾和久、水野崇、大山卓也、他

超深地層研究所計画 年度計画書(2006年度)

独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原子力機構)東濃地科学センターでは、地層処分技術に関する研究のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、結晶質岩(花崗岩)を対象とした超深地層研究所計画を進めている。本計画は、「第1段階;地表からの調査予測研究段階」、「第2段階;研究坑道の掘削を伴う研究段階」、「第3段階;研究坑道を利用した研究段階」の3段階からなる約20年の計画であり、現在は、第2段階である「研究坑道の掘削を伴う研究段階」を進めている。本計画書は、2002年2月に改訂した「超深地層研究所基本計画」に基づき、2006年度の超深地層研究所計画の(1)調査研究計画、(2)施設建設計画、(3)共同研究計画等を示したものである。

JAEA-Review 2007-037 2007
瀬尾昭治、操上広志、藪内聡、他

浅層ボーリング孔を利用した地下水位観測

日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターでは、幌延深地層研究計画の一環として表層水理調査を実施している。表層水理調査のうち、地下水位測定は、地下水流動解析に用いる上部境界条件の一つである地下水位の分布とその季節変動を明らかにすることを目的としている。本報告書は、2003年(平成15年)12月から2005年(平成17年)10月までの地下水位測定結果とそれに基づく表層付近の地下水流動特性に関する検討結果を示したものである。地下水位の継続的な観測により、(1)研究所設置地区を含む清水川流域とペンケエベコロベツ川流域の分水嶺が、観測測線においては地形上の分水嶺よりもやや南(清水川流域)よりに位置すること、(2)地下水位変動は積雪・融雪の影響が最も大きく、そのほかに降水による影響が認められること、(3)地下水位の変動幅は場所により異なり、大きいところで5m程度まで達し、また、沢での水位変動は小さいこと、(4)降水後の地下水位のピークは河川水位のピークよりも緩やかで、2日から3日程度遅れることがわかった。

JAEA-Research 2006-079 2006
松井裕哉、新里忠史、山口雄大、編

幌延深地層研究計画 平成18年度調査研究計画

本計画は、独立行政法人日本原子力研究開発機構が堆積岩を対象に北海道幌延町で実施しているものである。本計画は、調査研究の開始から調査研究の終了まで20年程度の計画とし、3つの段階に分けて実施することとしており、平成18年度は第2段階の2年目にあたる。平成18年度は、おもに北進地区にある研究所設置地区(主たる調査研究の展開場所、2〜3km四方程度)とその周辺地域において調査研究を継続する。また、地下施設の建設を継続するとともに、第2段階の調査研究を継続する。また、第1段階の研究成果の取りまとめを行い、報告書として公開する。地上施設については、平成17年度に引き続き研究管理棟及び試験棟(コア倉庫・ワークショップ棟を試験棟に名称変更)の建設工事を行い、平成18年5月の竣工予定である。また、PR施設の建設工事を行うとともに展示物の製作を開始し、国際交流施設の基本設計を行う。

JAEA-Research 2006-074 2006
松井裕哉、新里忠史、山口雄大、編

幌延深地層研究計画 平成17年度調査研究成果報告

地質環境データ取得のため、地表物理探査等を実施し、試錐調査を終了した。取得データに基づき、地質構造等の各分野においてモデルを更新し、地下施設建設に伴う周辺地質環境への影響予測を実施した。試錐孔を用いた調査技術やコントロール掘削技術の適用性を確認した。地質環境モニタリング技術の開発では、長期モニタリング機器による観測を継続し、遠隔監視システムの設置及び試験観測を行った。地質環境の長期安定性に関する研究では、幌延地域の地質の調査や地中レーダ探査、地震計等による観測を行った。地層処分技術の信頼性向上では、低アルカリ性コンクリート材料を用いた実規模模擬トンネルでの吹付け試験を実施した。第1段階で取得した地質環境データを用いて既存の設計手法の適用性を確認した。安全評価手法の高度化では、コアを用い物質の収着試験と物質移動に関する解析を試行した。施設建設では、造成工事完了後、研究管理棟及び試験棟の建設を行った。PR施設の建設工事に着手した。ズリ仮置場を整備し、ズリ置場と排水管路の設計を行い、換気立坑を掘削した。環境調査では、環境モニタリング調査を継続した。国内外の研究機関との研究協力を進めた。

JAEA-Research 2006-073 2006
濱克宏、國丸貴紀、操上広志、他

幌延深地層研究計画における地下水水質・水理モデルの信頼性向上に関する研究 —2005年度成果報告—(共同研究)

日本原子力研究開発機構と産業創造研究所は、地層処分技術の信頼性向上を目的とした共同研究を、2005年度より開始した。本共同研究では、幌延深地層研究計画の一環として取得した地質環境データを利用して、地下水の水質及び岩盤の水理に関する長期的変遷を考察するための解析を行った。本報告では、2005年度の実施内容及び成果を取りまとめた。水質に関する研究として、幌延町周辺に分布する地下水の水質などのデータを利用して、化学成分濃度の相関の検討、主成分分析や水質の空間分布の推定などを実施した。水理に関する研究として、幌延町周辺の陸域から海域を対象に、文献データなどを利用して、地質構造モデルの構築、水理地質構造モデルの構築、地下水流動解析を実施した。2006年度は上記のモデル化を継続するとともに、モデル化手法の適用性の検討結果などについて取りまとめる予定である。

JAEA-Research 2006-070 2006
藪内聡、操上広志、瀬尾昭治、他

幌延深地層研究計画におけるボーリング孔を用いた地下水の水圧の長期モニタリング

日本原子力研究開発機構では、幌延深地層研究計画における地質環境モニタリング技術開発の一環として、これまでに掘削したボーリング孔に地下水の水圧・水質長期モニタリング装置を設置し、地下施設建設前の地下水の長期モニタリングを実施している。HDB-1、2、3、6、7、8孔では、観測される水圧はおおむね安定した値を示しているが、一部のボーリング孔並びに観測区間では観測開始から現在に至るまで水圧の長期的な変動が認められる。また、研究所設置地区から7km程度離れたHDB-2孔では、研究所設置地区周辺と比べて高い水圧が認められる。観測される水圧から全水頭を算出した結果、研究所設置地区周辺では、深度が大きくなるにしたがって全水頭が高くなる傾向が認められることや、おおむね東から西の方向に動水勾配が生じていると推察されること等の知見が得られた。さらに、これらの観測を通じ、設置したモニタリング装置の適用性を確認することができたとともに、装置を構成する機器の一部に関して改善点等が明らかになった。

JAEA-Research 2006-056 2006
松井裕哉、佐々木学

堆積岩を対象とした地上からの深層ボーリング孔掘削事例

日本原子力研究開発機構(旧サイクル機構、以下原子力機構と称す)は、平成12年度より北海道幌延町において、地下施設の建設を伴う研究プロジェクト(幌延深地層研究計画)を進めている。幌延深地層研究計画は、全体で約20年間のプロジェクトであり、地上からの調査研究段階、地下施設建設時の調査研究段階、地下施設での調査研究段階の3つの段階で構成されている。平成12年度から開始した地上からの調査研究段階においては、北海道幌延町において調査対象領域(研究所設置地区)を設定すること及び、その領域に分布する新第三紀堆積層中の地質環境を深度1000mまでの範囲で3次元的に把握することを主目的として、計11孔のボーリング調査を実施した。本報告は、新第三紀堆積岩を対象としたボーリング孔掘削を通して得られた知見をとりまとめ、今後地層処分事業の実施にあたって地上から行うボーリング調査の計画の立案及び調査の実施に資する目的で作成したものである。

JAEA-Technology 2006-052 2006
鶴田忠彦、藤田有二、鐙顕正、他

広域地下水流動研究におけるボーリング調査 (DH-15号孔)

広域地下水流動研究の一環として、地下深部における岩盤、および断層・破砕帯等の地下水流動を規制すると考えられる地質構造や透水性把握のため、瑞浪市民公園において、深さ1,010mabh(meter along bore hole)の鉛直ボーリング孔(DH-15号孔)を実施した。同孔の51.0mabh以深において、掘削水の測定・分析、岩芯の採取・記載、ボアホールテレビ計測、物理検層、流体検層、マルチオフセットVSP探査、水理試験、揚水試料の分析、水圧水質装置の設置等を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。同孔では230.9mabh以深に黒雲母花崗岩からなる土岐花崗岩(以下、花崗岩)と、それを不整合に覆う瑞浪層群(以下、堆積岩)が認められた。ボアホールテレビ計測の結果、花崗岩中に1,744本の割れ目が認められるとともに、上部割れ目帯および低角度傾斜を有する割れ目の集中帯を確認した。物理検層や岩芯観察結果等との対比から、DH-2号孔と連続すると推定される比較的規模の大きな2区間の断層を抽出した。流体検層の結果により、花崗岩中の約50カ所において水みちが抽出された。マルチオフセットVSP探査では、花崗岩の上面や断層・割れ目帯に対比される反射イベントが確認された。水理試験は、堆積岩から花崗岩風化帯までの主要な地質層序(5点)、花崗岩中の流体検層等による水みち(7点)、および花崗岩全体を対象とした長区間(8点)において実施した。その結果、水みちにおいては透水係数として概ね10-7オーダーの透水係数が検出された。長区間では概ね10-7ないし10-8オーダーの透水係数が得られ、DH-2号孔と比較すると透水係数のばらつきが小さく、花崗岩全体の平均としては、同孔と比較して1オーダー程度小さい値を示すことが明らかになった。揚水試料の分析では、堆積岩下部層と花崗岩中に分布するNa-Cl型の地下水に関して、既往の調査では得られていない領域である標高約-800mslまでの深度データを取得し、各化学成分の深度プロファイルを検討した。その結果、Na、Ca、Cl、Br等の成分は深度とともに濃度が増加する傾向にあることを確認した。

JNC TN7400 2005-025 2005
太田久仁雄、佐藤稔紀、竹内真司、他

東濃地域における地上からの地質環境の調査・評価技術

東濃地域を事例として、主として結晶質岩を対象とした地上からの調査研究をとおして、地層処分にとって重要な地質環境特性を合理的にかつ精度良く調査・評価するための技術基盤を整備するとともに、概要調査などを進める上で有益な情報になると考えられる 技術的知見やノウハウなどについて取りまとめた。具体的には、調査研究を進めるにあたり四つの空間スケール(リージョナル、ローカル、サイト、ブロック)を設定するとともに、ローカルおよびサイトスケールでは安全評価および地下施設の設計・施工への調査研究成果の反映を念頭に置いて調査研究の個別目標と課題を設定した。この個別目標と課題に向けて、繰り返しアプローチを適用して様々な調査研究を実施し、繰り返しアプローチにおける基本的な調査・解析の道すじを、地上から実施する複数の調査と組み合わせ、取得するデータの種類、データの解釈および異なる分野で得られた情報の統合などの観点から統合化データフローとして具体的に示した。また、統合化データフローにしたがって調査研究を進める過程で採用した考え方や得られた技術的知見、失敗事例やノウハウなどとともに、一連の調査研究を実施する過程で整備してきた個別の調査技術や解析技術などに関する技術的知見を取りまとめた。

JNC TN7400 2005-023 2005
S. Takeuchi and K. Ota

Working Programme for MIZ-1 Borehole Investigations: Revision of Work Procedures after Phase IV

超深地層研究所計画では、瑞浪超深地層研究所用地における地表からの調査研究の一環として、2002年12月より、MIZ-1号孔の掘削とボーリング孔における調査を「MIZ-1号孔ボーリング調査実施計画書」に基づき進めてきている。第14フェーズ(2004年2月中旬まで)のボーリング調査をとおして、瑞浪超深地層研究所用地における地質環境特性や調査技術に関する多くの情報を取得したが、ボーリング調査に係る制約条件やコントロールボーリングにおける技術的問題のために、深度約500mでボーリングを中断し、セメントにより埋め戻した後、深度356mから再度コントロールボーリングを行うこととした。これを受け、第4フェーズまでのMIZ-1号孔ボーリング調査の実施状況、残された調査や時間などを考慮し、MIZ-1号孔のレイアウトならびに今後の調査の進め方とスケジュールについて最適化を図った。本計画書はMIZ-1号孔における第5フェーズ以降のボーリング調査について改定した実施計画を示すものである。

JNC TN7400 2005-010 2005
石垣孝一、松岡稔幸、上原大二郎

花崗岩を対象とした断層調査技術の開発 —高密度電気探査,マルチオフセットVSP探査の適用性評価—

広域地下水流動研究における研究課題として、調査手法の体系化の一環として、地下水の流動系に大きな影響を与えるリニアメントとして地表に現れるような断層破砕帯の分布・性状および各種特性の把握を目的とした一連の調査技術の構築が挙げられる。そこで瑞浪市常柄地区におけるリニアメントを対象に高密度電気探査とマルチオフセットVSP探査を実施し、各種調査手法の断層分布調査としての適用性の検討を行った。

JNC TN7400 2005-009 2005
尾上博則、三枝博光、遠藤令誕

繰り返しアプローチに基づくサイトスケールの水理地質構造のモデル化・地下水流動解析(ステップ2)

核燃料サイクル開発機構が、岐阜県東濃地域において実施している超深地層研究所計画では、結晶質岩を対象とした深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備を目標の一つとして設定している。この目標を達成するため、深部地質環境を対象とした調査から評価に至る一連のプロセスを繰り返すアプローチに基づいて調査研究を実施している。本研究では、超深地層研究所計画の地下水流動特性評価に関する調査研究の一環として、繰り返しアプローチに基づき第1段階調査のステップ2を対象とした水理地質構造モデルの構築・更新およびそれに基づく地下水流動解析を実施した。地下水流動解析では、ステップ1での地下水流動解析結果との比較による水理地質構造モデルの不確実性の変遷に関する評価およびステップ3以降の調査対象の抽出を目的として、断層の透水性および花崗岩の下部割れ目低密度帯の透水性に着目した感度解析を実施し、地下水流動解析結果に与える影響を評価した。

JNC TN7400 2005-006 2005
大山卓也、三枝博光、尾上博則

ローカルスケールにおける地下水流動解析 —サイトスケールにおけるステップ1の地下水流動解析の境界条件の設定—

核燃料サイクル開発機構が、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する基盤的研究である深地層の科学的研究の一環として、東濃地域を事例として進めている広域地下水流動研究ならびに超深地層研究所計画では、空間スケールに応じた地質環境の体系的な調査・解析・評価技術の整備を主な目標としている。このうち、広域地下水流動研究では、主に地下水の涵養域から流出域までの一つの地下水流動系を包含した領域(ローカルスケール)を調査研究の対象としている。一方、超深地層研究所計画ではサイトスケールにおいて、深部地質環境を対象とした調査から評価にいたる一連のプロセスを繰り返すアプローチに基づいて調査研究を実施している。以上のことから、本研究ではサイトスケールにおける超深地層研究所計画第1段階のステップ1の調査研究結果を反映した地下水流動特性を評価するための地下水流動解析の境界条件を設定することを目的としてサイトスケールを包含する領域であるローカルスケールを対象とした地下水流動解析を実施した。その結果、サイトスケールにおける地下水流動解析の境界条件設定に必要な水頭分布を算出することができた。

JNC TN7400 2005-005 2005
大山卓也、三枝博光、尾上博則

ローカルスケールにおける地下水流動解析 —ローカルスケールでの地下水流動特性評価およびサイトスケールにおけるステップ0の地下水流動解析の境界条件の設定—

核燃料サイクル開発機構が、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する基盤的研究である深地層の科学的研究の一環として、東濃地域を事例として進めている広域地下水流動研究ならびに超深地層研究所計画では、空間スケールに応じた地質環境の体系的な調査・解析・評価技術の整備を主な目標としている。このうち、広域地下水流動研究では、主に地下水の涵養域から流出域までの一つの地下水流動系を包含した領域(ローカルスケール)を調査研究の対象としている。一方、超深地層研究所計画ではサイトスケールにおいて、深部地質環境を対象とした調査から評価にいたる一連のプロセスを繰り返すアプローチに基づいて調査研究を実施している。以上のことから、本研究ではローカルスケールを対象としたボーリング孔を利用した調査・解析段階における地下水流動特性を評価するとともに、サイトスケールにおける既存情報を用いた調査・解析段階における地下水流動特性を評価するための地下水流動解析の境界条件を設定することを目的とした地下水流動解析(ステップ0)を実施した。その結果、ローカルスケールにおける大局的な地下水流動特性を把握することができた。また、地下水流動特性を評価するためには大局的な流動方向とほぼ直交方向の断層の透水性の評価が重要であることが明らかとなった。また、サイトスケールにおける地下水流動解析の境界条件設定に必要な水頭分布を算出した。

JNC TN7400 2005-004 2005
尾上博則、三枝博光

ローカルスケールの地下水流動解析 —サイトスケールにおけるステップ2の地下水流動解析の境界条件の設定—

核燃料サイクル開発機構が、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する基盤的研究である深地層の科学的研究の一環として、東濃地域を事例として進めている広域地下水流動研究ならびに超深地層研究所計画では、空間スケールに応じた地質環境の体系的な調査・解析・評価技術の整備を主な目標としている。このうち、広域地下水流動研究では、主に地下水の涵養域から流出域までの一つの地下水流動系を包含した領域(ローカルスケール)を調査研究の対象としている。一方、超深地層研究所計画ではサイトスケールにおいて、深部地質環境を対象とした調査から評価に至る一連のプロセスを繰り返すアプローチに基づいて調査研究を実施している。本検討では、超深地層研究所計画の第1段階におけるステップ2の調査結果に基づいたサイトスケールでの地下水流動解析のための境界条件を設定することを目的として、サイトスケールを包含する領域であるローカルスケールを対象とした地下水流動解析を実施した。

JNC TN7400 2005-003 2005
核燃料サイクル開発機構

超深地層研究所計画 年度計画書(2005年度)

超深地層研究所計画における瑞浪超深地層研究所用地および正馬様用地において平成17年度に実施する地質環境特性の研究、深地層の工学技術の基礎の開発、施設建設工事の平成17年度の実施計画書

JNC TN7410 2005-001 2005
池田幸喜、鶴田忠彦、松岡稔幸、他

広域地下水流動研究におけるボーリング調査(DH-15号孔)結果速報

広域地下水流動研究の一環として、地下水流動系に大きな影響を与えるリニアメントとして地表に表れるような断層破砕帯の分布・性状、および各種特性の把握のための調査技術の構築を目的として、DH-15号孔のボーリング調査を実施した。その結果、既存ボーリング孔と同様の方向性、規模などを有する断層・割れ目帯の存在が推定されたほか、堆積岩と花崗岩の水理・地球化学特性に関する情報を取得した。

JNC TN7430 2005-002 2005
池田幸喜、鶴田忠彦、松岡稔幸、他

広域地下水流動研究におけるボーリング調査(DH-14号孔)結果速報

広域地下水流動研究の一環として、地下水流動系に大きな影響を与えるリニアメントとして地表に表れるような断層破砕帯の分布・性状、および各種特性の把握のための調査技術の構築を目的として、DH-14号孔のボーリング調査を実施した。調査の結果、調査実施地域に卓越する北北西走向を有する規模の大きな断層岩が確認されたほか、11箇所において水みちと考えられる地下水の流入点が抽出された。

JNC TN7430 2005-001 2005
竹内真司、藤田有二

超深地層研究所計画における単孔式水理試験データ

超深地層研究所計画の一環で取得された単孔式水理試験の試験結果をデータセットとして取りまとめた。データセットには試験実施日、試験区間、区間長、地質・地質構造、試験結果(代表値)、試験手法、解析方法などの情報を一覧表に示した。

JNC TN7450 2005-011 2005
竹内真司、天野健治、藤田有二

広域地下水流動研究における単孔式水理試験データ

広域地下水流動研究の一環で取得された単孔式水理試験の試験結果をデータセットとして取りまとめた。データセットには試験実施日、試験区間、区間長、地質・地質構造、試験結果(代表値)、試験手法、解析方法などの情報を一覧表で示した。

JNC TN7450 2005-010 2005
丹生屋純夫、松井裕哉

研究所設置地区選定のためのHDB-1,2孔における岩盤力学的調査

本調査は、北海道天塩郡幌延町に分布する珪質岩を対象とした深地層研究計画の既存情報としての昭和62年度及び平成13年度に実施したものである。主な目的を以下に示す。1)深度1,000m程度までの範囲での地質構造及び岩盤物性データの取得 2)幌延町内に研究対象となる地層が十分な厚さをもって分布することと、対象地層の岩盤中に安全に地下施設が建設できることの概略確認 調査は、大きく室内試験と原位置試験に分かれている。室内試験としては、各孔のコアを用いた物理試験と力学試験、及びAE法による応力測定、熱特性試験などを実施した。原位置試験としては、水圧破砕法による初期応力測定をHDB-1、2孔にて実施した。得られた結果の概要は以下の通りである。1)D-1孔における室内物理試験及び力学試験結果から、鉛直方向に2つの異なる物性(空隙率、弾性係数など)を有するゾーンが存在することが推定された。すなわち、地表〜400m程度、400m以深である。これらは地質構造と、ほぼ対応していることがわかった(更別層、勇知層)。2)HDB-1、2孔では、鉛直方向に3つの異なる物性を有するゾーンが存在することが推定された。HDB-1孔では、地表〜320m程度、320m〜420m程度、420m以深であり、HDB-2孔では、地表〜40m程度、40m〜270m程度、270m以深と推定される(声問層、遷移帯(稚内層上部)、稚内層)。3) 幌延町内に分布する堆積岩(勇知層、更別層、声問層、稚内層)の物理・力学物性は国内に分布する新第三期堆積岩に比べ特殊なものではないと考えられるが、吸水率と有効空隙率は国内の堆積岩に比べ大きくなっている。4)HDB-1、2孔の応力測定結果から、水平面内最大主応力と最小主応力の比は1.5倍程度であり、ほぼ同様の結果となった。最大主応力方向においてHDB-1孔では深度によらずほぼ東西方向となったが、HDB-2孔では深度方向とともにボアホールブレークアウトの位置が変化しており、深度増加に伴い最大主応力方向が回転していることが示唆された。

JNC TN5400 2005-012 2005
高橋一晴、新里忠史、安江健一、他

北海道北部幌延町における地球化学的特徴を用いた侵食量の推定

石油探鉱が行われている地域では、堆積岩中に含まれる自生鉱物を利用して埋没深度の推定や削剥(侵食)量を推定する試みが行われているが(例えば、天然ガス鉱業会・大陸棚石油開発協会、1982など)、侵食速度までの推定は行われていない。ここでは、北海道北部の幌延地域を対象として取り組んでいる、シリカ鉱物による侵食速度の推定手法および有機物を用いた侵食速度の推定手法の概要とその適用事例について紹介する。

JNC TN5400 2005-011 2005
高橋一晴

幌延深地層研究計画における地表踏査およびボーリング調査の各種測定・分析データ集

本報告では、地表踏査およびボーリング調査で行った各種分析(微化石分析、粉末X線回折、全岩分析、顕微鏡観察、有機物分析)および各種測定(硬度測定、色差測定、空隙率測定)の結果について、取りまとめを行った。

JNC TN5400 2005-010 2005
石井英一、安江健一

幌延深地層研究計画における電磁探査を用いた断層帯調査 —大曲断層の三次元分布と水理特性—

北海道北部、第三紀堆積岩分布域においてAMT探査とともに、地表割れ目踏査、ボーリング調査(コア観察・EMI検層・比抵抗検層・水質分析)、および反射法地震探査を実施し、当域に分布する大曲断層の位置、連続性、および水理特性について検討した。その結果、以下のことが示唆された。(1)大曲断層はダメージゾーンを主体とした幅120 m程度の断層帯であり、その透水性は高く、透水性異方性は弱い。(2)大曲断層は研究所設置地区近辺において、地表部ではover-stepし、地下では収斂する形態をなす。(3)「塩水系」と「淡水系」の2種類の地層水が存在し、顕著な岩相変化を示さない全体として均質的な岩相を呈す新第三紀堆積岩においては、電磁探査を用いた調査が、断層帯の位置、連続性、および水理特性など検討する際に有効である。

JNC TN5400 2005-009 2005
石井英一、安江健一

幌延深地層研究計画における断層の解析と地質構造モデルの構築

水みちの可能性のある断層の調査手法の開発の一環として、新第三紀珪質岩中に分布する断層の地質学的特徴と形成過程を、露頭観察・ボーリングコア観察・孔壁観察の結果から検討し、その検討結果に基づいて、断層の水理特性の評価、および水理学的に重要と思われる断層を考慮した地質構造概念モデルならびに地質構造モデルの構築を試みた。

JNC TN5400 2005-008 2005
濱克宏、瀬谷正巳、山口雄大

幌延深地層研究計画報告会報告書

サイクル機構では高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発として、平成13年3月から北海道の幌延町で幌延深地層研究計画を進めてきている。平成17年度は、幌延深地層研究計画の第1段階「地上からの調査研究段階」の最終年度であり、また、第2段階「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階」の初年度に当たる。幌延深地層研究センターでは、地下施設の建設を伴う調査研究段階の計画について、地域の皆様をはじめとした多くの皆様に広くご理解を賜り、また、国内外の専門家の方々よりご意見を頂き、今後の調査研究に反映することなどを目的として、幌延深地層研究計画報告会を2日間の日程で開催することとした。本報告は、幌延深地層研究計画報告会の開催記録として、講演当日のプレゼンテーション資料や、質疑応答を取りまとめたものである。

JNC TN5400 2005-007 2005
石井英一、安江健一

幌延町における鮮新世〜前期更新世のテフラ層序とFT年代 (研究報告)

核燃料サイクル開発機構は、幌延町内の地質学的な場の理解の一環として、地域全体の層序の確立を目指している。その際に、テフラは同時間面を示す有効な鍵層として扱うことが可能である。今回、幌延町内に分布するテフラを対象に地質調査を行ない、新第三系〜第四系下部において47枚のテフラ層を確認した。これらの挟在層準・鉱物組み合わせ・ガラス形状・ガラス屈折率・ガラス組成(主成分)・ジルコンのフィッショントラック年代から、47枚のテフラ層の対比を検討すると、これらのテフラ層は21層準のテフラ層に対比できる可能性が指摘される。それらのテフラ層を上位のものからHR-1〜21とする。テフラ層は、ガラスのSiO2(wt.%)、K2O(wt.%)の含有量の違いにより、A〜Eの5つのタイプに区分が可能である。

JNC TN5400 2005-006 2005
瀬尾昭治、竹内竜史、操上広志、他

幌延深地層研究計画における水収支法による地下水涵養量の推定 —2003年8月〜2004年7月—

核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)幌延深地層研究センターでは、幌延深地層研究計画の一環として、表層水理調査を実施している。表層水理調査では、地下水浸透流解析に用いる上部境界条件の一つである地下深部への地下水涵養量を算出するための算出方法の一つとして、水収支法を採用している。水収支法とは、流域にもたらされる雨量から河川流出高と蒸発散量を差し引いた残差を地下水涵養量として算出する方法である。そのため、2002年から順次、河川流量観測および気象観測体制の整備を行い、観測を継続している。本報告書では、研究所設置地区周辺の3流域(P-1、P-2、P-3流域)について観測体制が整った2003年8月から2004年7月までの1年間の地下水涵養量を水収支法により求めた結果について報告する。その結果、当該1年間の地下水涵養量はP-1、P-2、P-3の各流域で約230mm、-20mm、340mmとなり、P-1、P-3流域は涵養域、P-2流域は絶対値は小さいものの流出域となった。また、これら3流域全体の地下水涵養量は約100mmと試算された。

JNC TN5400 2005-005 2005
操上広志、竹内竜史、瀬尾昭治

幌延深地層研究計画における地下水流動解析

本報告書は、幌延深地層研究計画における平成16年度までの水理モデル構築・更新のプロセスを示したものである。本計画における第1段階(地上からの調査研究段階)を、「既存情報に基づく調査フェーズ」と「ボーリング孔を利用した調査フェーズ」に分け、各フェーズでの水理モデルの位置づけ、解析プロセス、解析結果について記した。既存情報に基づくフェーズでは、既存情報の分析により抽出された重要な水理特性に基づいて水理モデルを構築し、感度解析によって効率的な調査の提案を行うプロセスを説明した。一方、ボーリング孔を利用した調査フェーズでは、ボーリング調査を含む一連の調査結果の総合的な説明を通じて地下水流動特性の解釈を試みた。既存情報では考慮していなかった、稚内層中の割れ目帯が水理特性に大きく影響を及ぼしているという概念のモデル化のほか、地下水中の塩分の挙動、異常高圧に対する解析的な検討結果についても述べた。

JNC TN5400 2005-003 2005
核燃料サイクル開発機構

幌延深地層研究計画 平成16年度調査研究成果報告

幌延深地層研究計画平成16年度調査研究成果を取りまとめた。

JNC TN5400 2005-001 2005
K. Yasue

Data book of the fossil diatoms after the Neogene in the Horonobe town

本データ集は、幌延町内で実施された珪藻化石分析について、核燃料サイクル開発機構が所有する2005年7月までの分析結果をまとめたものである。本データ集では、各試料に含まれる珪藻の属名と種名を示している。属名と種名は、読みやすさを考慮して、イタリックを使用していない。また、データの詳細を確認できるように、各データについて、引用元と試料採取地点を示した。分析試料は、地表地質調査で採取した露頭試料、数m〜十数mを対象にした浅層試錐のコア、長さ数百m以上の深層試錐(D1およびHDBシリーズ)のコアなどである。分析した試料数は、全部で約500試料であり、その内、空間的な分布の検討に有効な地表および十数m以浅から採取した試料は約300試料、深度方向での検討に有効な深層試錐のコアから採取した試料は約200試料である。また、層序別の分析試料数を比べた場合、おおよそ半分は珪藻質泥岩からなる声問層で実施している。その他は、順に稚内層、勇知層、更別層、および段丘堆積物で実施している。本データは、分析した年代によって試料採取方法や採取地点の精度、分析の基準が異なるため、データの品質にはばらつきがある。使用する際は、その点に留意する必要がある。今後、これらのデータを用いて、堆積物の年代や古地理などの解明が可能であると考えている。

JNC TN5450 2005-001 2005
中山雅

幌延深地層研究計画の現状

幌延深地層研究センターでは、2000年度より幌延深地層研究計画を進めている。本研究計画では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の信頼性向上に向けて、「幌延を例とした地表から地下深部までの具体的な地質環境の例示」、「地層処分技術の実際の地質環境への適用による信頼性の確認」及び「深地層を実際に体験できる場として整備」すること、を目標としている。本研究計画は、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3段階に分け、約20年間の予定で進めている。これまで、第1段階の研究として、地質・地質構造、地下水の地球化学、地下水流動、岩盤力学などの各分野に関わる調査・研究を実施してきた。本稿では、これまでの研究の成果を中心として本研究計画の現状について報告する。

サイクル機構技報 No.28 pp.1-8 2005
中間茂雄、山田淳夫、青木俊朗、他

超深地層研究所計画(第1段階)における岩盤力学調査研究

本調査研究では、超深地層研究所計画第1段階(地表からの調査予測研究段階)において、研究坑道掘削前の岩盤の物理・力学的な特性、初期応力状態を調査した。また、研究坑道掘削に伴う坑道周辺岩盤の挙動予測に関する解析・検討を行った。 調査の結果、研究所用地における岩盤は、一部風化変質などによる強度低下部が認められるものの、見かけ比重が2.30〜2.65、一軸圧縮強度が64〜212MPa、ヤング率が20〜68GPaであり、我が国における一般的な花崗岩とほぼ同様の物性であることが確認された。また初期応力状態はおおむね最大主応力方向が北〜北西方向であり、研究所用地周辺の測地学的な広域ひずみ場と同様の傾向が認められた。 これらの結果に基づいて土岐花崗岩の力学物性及び初期応力状態を設定し、第2段階以降の研究坑道の掘削による坑道周辺岩盤の挙動予測解析を実施した。予測解析では、既存き裂の伸展や新しいき裂の発生に基づいた掘削損傷領域の設定方法を検討し、その結果、既存き裂の伸展や新規き裂の発生により、変形や局所安全率、透水係数、き裂の開口量などの変化が坑道周辺に生じることが予測された。

サイクル機構技報 No.26 pp.77-86 2005
下茂道人、山本肇、熊本創、他

幌延深地層研究計画における地質環境モデル化研究

幌延深地層研究計画の第1段階では、地表からの調査と調査結果に基づく地質環境のモデル化を通じて、研究対象となる場の地質環境特性を把握するための体系的調査・モデル化技術の確立を目的としている。本研究では、調査結果を解釈するための地質環境モデルのうち、地質構造モデルと地下水の水理モデル(水理地質構造モデル)、および地球化学モデルを構築し、さらに地下施設建設に伴う水理地質環境の変化を予測する。

JNC TJ5400 2004-004 2005
池田光良、堀内康光、関根達夫

地下水位・土壌水分観測システムの設置

本業務は、幌延深地層研究計画における研究所設置地区およびその周辺の積雪を含めた降水の地下への浸透涵養量を実測によって明らかにするためのシステムを構築することを目的として実施した。地下水位・土壌水分観測孔を掘削して、土壌水分計(ADR法)、水圧式地下水位計を設置するとともに、不撹乱試料を採取して土質試験(物理試験、透水試験、pF試験、不飽和透水試験)を実施した。本報告書では、現地調査と土質試験の結果を取りまとめるとともに、pF-体積含水率関係と地下水位から地下の全水頭分布と動水勾配を求め、これと不飽和透水係数から厳冬期の幌延試験地における浸透涵養量を試算した。

JNC TJ5410 2004-014 2005
藤井和也、柴田陽介、深町泰子

河川水,地下水および雨水の水質分析

研究所設置地区周辺の河川水や地下水の地球化学的特徴を把握し、周辺地域の地下水流動に関する知見を得るとともに、定期的な水質分析により季節変動の把握を目的とする。本業務では採取された河川水・雨水・地下水を分析し、イオンバランス確認等を実施することによりデータの妥当性を確認した。

JNC TJ5410 2004-013 2005
P. Birkhäuser, C. Lacave, H. Ohara, et al.

Computation of amplification functions in the Wakkanai Formation, Horonobe area

本研究の目的は、サイクル機構が幌延町内で掘削した試錐孔B-2に設置してある2つの地震計(地表と試錐孔底:深さ138m)の地震観測記録について、地表と孔底とで観測された地震波形の応答スペクトルの比を解析することにより、地震波形の周期に依存する増幅特性を求めることである。二次元効果の影響がないと推定されたので、一次元モデル(Cyber Quake)を用いて解析を行った。本モデルによる計算結果の妥当性の評価は、類似のプログラムであるSHAKE2000にて行い、両者の結果がほぼ一致することを確認した。解析に使用した入力加速度波形は、2つの近地地震(2003⁄7⁄20、(M:0.7)、8⁄18、(M:0.8))、および地震計から430〜450km離れた遠地地震の十勝沖地震(9⁄26、(M:8.0))とその余震(9⁄27、(M:6.2))である。これらのイベント波形は、小さな加速度によって特徴づけられる。これら増幅特性はマグニチュードに依存していた。観測された増幅特性関数は非常に変わりやすく、異なる地震を比較した場合、また単発地震の異なる2成分を比較した場合には、異なる関数形を示す。観測された地震動は、解析により求めた地震動に比べて、はるかに大きくなる傾向がある。解析結果と観測記録とが異なる原因として、1)解析に用いたS波速度構造が誤っている、2)地震計自体の不良、が考えられる。上記問題点を解決するために以下を提案する。・入力したS波速度構造データを確認すること。また、可能ならば、B-2試錐孔にて直接S波速度の測定を実施し、速度構造を求めること。・サイクル機構が幌延町内に建設する地下研究施設の立坑において、高品質の地震計設置を計画すること。原位置での観測により、地震加速度の減衰特性を把握するために必要な、より信頼できるデータセットが得られると考えられる。また、それらデータセットは、日本もしくは世界におけるサイト特性調査に関連したフィージビリティ・スタディにおいて、重要な論拠になると考えられる。

JNC TY5410 2005-001 2005
大久保誠介

結晶質岩を対象とした長期岩盤挙動評価のための現象論的研究

本研究は1994年度2003年度に実施した研究を基礎としている。今年度も、田下凝灰岩のクリープ試験を引き続き行った.試験期間は7年を越え、従来の報告がほとんどない長期間のデータを採取中といえる。この結果を第2章で述べる。第3章では、中間温度領域におけるクリープ試験に関する検討結果について述べた。第4章では、比較的低い応力下でのクリープ試験結果について述べた。第5章では、時間依存性挙動のメカニズムについて検討したが、その際、試験結果のばらつきを情報の一つと考えた。第6章では、これまでの研究結果の総括と新研究結果について述べた。最後の第7章は結言である。

JNC TJ7400 2005-004 2005
市川康明

結晶質岩を対象とした長期岩盤挙動評価のための理論的研究

岩盤は様々な階層の不連続面群と非均質鉱物を内包した複合材料である。岩石レベルでみると、結晶質岩は個々の結晶と粒界および微視亀裂の集合体である。結晶質岩の変形・破壊に関わる力学挙動は、個々の結晶と粒界の微視的挙動を理解すればよい。ただし、岩石を構成する鉱物の結晶、特に、花崗岩の石英と黒雲母中には多くの微視亀裂が存在し、これが起点となって粒界を超え、長石中に破壊亀裂が進展することが多いので、理論的取り扱いは簡単でない。一方、堆積岩でも砂岩は石英や長石質の結晶の粒間を続成作用によって膠着物質が埋めており、その微視的な力学挙動は、火成岩系の結晶質岩に似ていると言える。本研究では、結晶質岩の長期挙動を解明するために、(1)レーザー共焦点顕微鏡(CLSM) 観察下における花崗岩供試体の応力緩和実験、(2)ケイ酸塩鉱物の溶解反応と岩石の時間依存変形破壊挙動に関する理論研究、を実施した。第2章では、岩石試料の微視亀裂の進展状況を応力緩和試験条件下で観察している。すなわち、応力緩和試験装置をレーザー共焦点顕微鏡のステージ上に設置し、試料端に一定の変位を与えて岩石亀裂の変化を観察・測定した。岩石中には多くのケイ酸塩鉱物が含まれている。ケイ酸塩鉱物は強アルカリの条件下でなければ、一般に、水に難溶である。しかしながら、一定以上の応力が作用すると、石英や長石等は加水分解されて水に溶け出す。この負荷応力による化学反応によって岩石の時間依存変形・破壊挙動が生ずるのは、a)微視亀裂先端部における応力集中に起因する場合、b)石英粒子等が接触した粒子間において圧力溶解反応を起こす場合、があると考えられる。これらはいずれも機械的作用と化学反応場および水の流れが複合した連成現象である。第3章では、上記の亀裂先端部反応と粒子間圧力溶解反応の両現象について、時間依存変形・破壊挙動の理論的取り扱い法を示している。

JNC TJ7400 2005-003 2005
杉田健一郎

地下水の地球化学データに関する品質分類手法の構築

本報告書は地下水の地球化学データを品質評価するために、品質分類モデルを作成して、このモデルを用いた品質評価手法の開発を行なった結果について取りまとめたものである。品質分類モデルの作成には、ESL(Evidence Support Logic)の手法を用いた。本手法には、個々の評価項目に対するデータの品質を点数化させて表現できることと、情報・データの欠如に基づく不確実性を定量的に表現できるという特徴がある。構築した品質分類モデルを用いて、既往の地上調査ボーリングで取得した地下水データの品質評価を実施した結果、ボーリング時の掘削水の残留に関わる条件・環境が、地下水試料の品質に対しては、大きな影響を与え得ることが判明した。

JNC TJ7400 2005-002 2005
戸高法文、阿島秀司、中西繁隆、他

超深地層研究所周辺の地下水水質変化に関する多変量解析

超深地層研究所計画では、地下施設建設に伴う周辺環境への地球化学的影響を把握する手法の開発を課題の一つとしている。この課題を解決するために、SKB(スウェーデン)において開発されたM3(Multivariate Mixing and Mass balance)解析コード、USGS(米国)で開発された化学平衡計算コードPHREEQC及びLBNL(米国)において開発された水理・地球化学連成解析コード(TOUGHREACT)を用いて、立坑掘削の事前段階における地球化学特性や立坑掘削影響の予測に資することを目的に、瑞浪超深地層研究所周辺の地下水水質変化に関する解析を行い、モデルの適用性を確認した。

JNC TJ7400 2005-001 2005
中間茂雄、竹内真司、天野健治、他

超深地層研究所計画 年度報告書(平成15年度)

超深地層研究所計画では、代表的な結晶質岩である花崗岩を対象に、「深部地質環境の調査・解析・評価技術の基盤の整備」および「深地層における工学技術の基盤の整備」を目標にした調査・試験研究を実施している。本計画は、瑞浪市明世町にある核燃料サイクル開発機構の正馬様用地において、平成8年度より実施してきた。その後、平成14年1月に瑞浪市と瑞浪市明世町の市有地(瑞浪超深地層研究所用地、以下、研究所用地という)の賃貸借契約を締結し、超深地層研究所の研究坑道および関連施設を設置することとなった。これを受けて、平成13年度より、研究所用地での調査研究を開始した。 平成15年度は、研究所用地において、掘削長約1,350mの深層ボーリング孔の掘削調査を継続実施した。これらの調査・研究によって取得した情報に基づき、研究坑道掘削前の深部地質環境の状態の把握を目的に、研究所用地およびその周辺の地質環境モデルの構築を行った。また、平成14年度に掘削した浅層ボーリング孔において間隙水圧や地下水のモニタリングを実施した。さらに、深地層における工学技術の調査・研究として、研究坑道の設計や施工計画の見直しおよび突発事象対策や安全を確保する技術の整備を行った。 正馬様用地では、過去に実施された地下水流動解析に基づき、不確実性要因についての分析を実施した。また、間隙水圧モニタリングならびに表層水理観測を継続した。

JNC TN7400 2005-002 2004
加藤春實

MIZ-1号孔の岩芯を用いた初期応力評価試験

瑞浪超深地層研究所における地表から深度1000mまでの岩盤の初期応力状態を把握することを目的として、MIZ-1号孔の岩芯を用いた初期応力評価試験(AE⁄DRA法、ASR法、DSCA法)を実施した。AE⁄DRA法は、291.0mabh、455.0mabhおよび494.0mabhから採取した岩芯を用いて実施した。AE法とDRA法から評価された初期応力の大きさの深度に対する変化傾向は、正馬様用地内で実施された水圧破砕試験による初期応力の測定結果と一致しなかった。また、AE法とDRA法から求められた主応力の方向はばらつきが大きく、系統的な分布傾向を見出すことはできなかった。462.7mabh、462.8mabh、502.5mabhおよび502.6mabhから採取した岩芯について実施したASR測定では、非弾性ひずみ回復量がいずれも10μひずみ以下と小さく、定量的な応力の評価は困難であった。これは、土岐花崗岩の非弾性ひずみ回復コンプライアンスが非常に小さいことによると考えられた。MIZ-1号孔の3深度から採取した岩芯にDSCA法を適用し、土岐花崗岩の力学的異方性の程度およびその要因となるマイクロクラックの3次元的分布特性を定量的に評価した。その結果、土岐花崗岩の固有線圧縮率の異方性の大きさは20%から27%であった。クラックパラメータ から最小主値を基準として求めた初期主応力比は、ばらつきはあるがσ1⁄σ3は1.5〜2.7、またσ2⁄σ3は1.2〜2.0の範囲に分布した。また、クラックパラメータ 、およびη0Iの最大主値の走向は、深度の浅い2つの試験片でNNW方向、最も深度の深い試験片でWNW方向であった。

JNC TJ7400 2004-018 2004
杉田信隆、中島雅之、中村敏明

MIZ-1号孔の岩芯を用いた室内物理・力学物性試験

本業務では、岐阜県瑞浪市で実施されている「超深地層研究計画」の中での、地表からの調査予測研究段階の一環として、深度500m近傍までの物性値を概略的に把握することを目的として、MIZ-1号孔の岩芯を用いた室内物理・力学物性試験を行い、瑞浪層群、土岐花崗岩の物理特性、力学特性の基礎的な知見を得た。

JNC TJ7450 2004-002 2004

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地質環境の長期的安定性に関する研究

著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
野原壯、梅田浩司、笹尾英嗣、他

地質環境の長期安定性に関する研究 年度報告書(平成17年度)

我が国は変動帯に位置しており、安定大陸にある欧米諸国に比べて、地震や火山活動等が活発である。地質環境の長期安定性に関する研究においては、地質環境に重要な変化をもたらす可能性のある地震・断層活動、火山活動、隆起・侵食、気候・海水準変動等の天然現象に着目して、それらの特徴を明らかにするとともに、それらが地質環境に及ぼす影響を解明するための調査技術・評価手法にかかわる研究開発を進めている。平成17年度までに、地層処分に重大な影響を及ぼすと想定される現象の存在(例えば、活断層や第四紀火山等)をあらかじめ確認するための調査技術や、過去においても地層処分システムの性能に著しい影響を及ぼすような現象が発生した痕跡がないことを確認するための調査技術の開発等を進めるとともに、三次元地形変化シミュレーション技術等の長期予測・影響評価モデルの開発等を行ってきた。本報は、平成17年度までにおけるこれらの研究開発の成果についてとりまとめたものである。

JAEA-Research 2007-087 2008
中司昇、野原壯、梅田浩司、他

地質環境の長期安定性に関する研究 年度計画書(平成18年度)

我が国は変動帯に位置しており、安定大陸にある欧米諸国に比べて、地震や火山活動等が活発である。地質環境の長期安定性に関する研究においては、地質環境に重要な変化をもたらす可能性のある地震・断層活動、火山活動、隆起・侵食、気候・海水準変動等の天然現象に着目して、それらの特徴を明らかにするとともに、それらが地質環境に及ぼす影響を解明するための調査技術・評価手法にかかわる研究開発を進めている。平成18年度においては、地層処分システムの成立性に重大な影響を及ぼす現象の存在(例えば、活断層やマグマ等)や、過去の変動の履歴をあらかじめ確認するための調査技術について調査・研究を行う。活断層・地震活動については、活断層の活動履歴と分布(移動、伸張、変形帯の発達過程)の調査技術に関する情報を整備する。火山活動については、第四紀の火山・地熱活動(特に低温領域の熱履歴)や地下深部のマグマ・高温流体等の探査技術の検討を行う。隆起・侵食⁄気候・海水準変動については、三次元の地形変化モデル等の概念モデルを作成する。

JAEA-Review 2007-047 2008
中司昇、野原壯、梅田浩司、他

地質環境の長期安定性に関する研究 年度計画書(平成19年度)

我が国は変動帯に位置しており、安定大陸にある欧米諸国に比べて、地震や火山活動等が活発である。地質環境の長期安定性に関する研究においては、地層処分の場としての地質環境に重要な変化をもたらす可能性のある天然現象に着目して、それらの特徴を明らかにするとともに、それらが地質環境に及ぼす影響を解明するための調査技術・評価手法にかかわる研究開発を進めている。平成19年度においては、以下の項目について調査・研究を行う。活断層・地震活動については、活断層の活動履歴と分布(移動、伸張、変形帯の発達過程)の調査に関する事例研究を実施する。火山活動については、第四紀の火山・地熱活動(特に低温領域の熱履歴)や地下深部のマグマ・高温流体等の基礎的な探査技術の適用性を検討する。隆起・侵食⁄気候・海水準変動については、古地形・古環境を復元する調査技術や地形変化をシミュレートする技術の開発を行う。また、これらの研究に必要なデータ取得を行うための分析技術開発の整備を行う。

JAEA-Review 2007-045 2008
金沢淳、富山眞吾、及川輝樹、他

地質温度計による熱履歴の調査手法について

火成岩や堆積岩等によって構成される地質体は、その形成以降、マグマの貫入や熱水対流系の形成等といった 局所的な熱的影響を被る場合がある。地質環境の長期安定性を評価するといった視点からは、過去数10万年あるいはそれ以前に生じた局所的な熱的影響を評価することが重要である。そのためには、対象地域やその周辺において火成岩体の貫入や熱水活動の痕跡等の存在を確認するとともに、対象地域における地温の変遷を明らかにするための調査技術が必要となる。 本報では、地質環境の長期安定性に関する研究の一環として、地質温度計の原理や適用事例についてレビューを行い、それぞれの手法の適用性や利点・問題点をまとめるとともに、対象地層等において生じた過去の熱的イベントの存在の確認や現在までの地温の変遷を明らかにするための体系的な調査手法の構築に向けた方法論を示す。

サイクル機構技報 No.26 pp.1-18 2005

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