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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(令和2年度分)

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全項共通(国内・国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内・国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
棚井憲治、望月陽人、花室孝広、清水麻由子、三原守弘

廃止措置と廃棄物の処理処分を目指して(2) 地層処分に関する最新の研究開発の動向

日本原子力研究開発機構ではバックエンド関連の研究・技術開発として、実際の地質環境への地層処分技術の適用性確認、地層処分システムの長期挙動の理解を目標に地層処分の基盤的研究開発を進めてきており、これらに関する研究・技術開発の最前線を紹介する。

日本原子力学会誌 Vol.62 No.12 pp.727-731 2020
濱克宏

地層処分の技術基盤のさらなる強化を目指して

日本原子力研究開発機構は、わが国の地層処分事業と国による安全規制上の施策などのための技術基盤を整備し提供するため、北海道・幌延町の幌延深地層研究計画と岐阜県・瑞浪市の超深地層研究所計画の2つの深地層の研究施設計画を進めてきた。本報告では、これまでにURL計画で得られた研究成果および今後の計画の概要を示す。

原子力の新潮流 臨時発刊号 No.1 pp.31-37 2020
平野史生

地層処分の工学技術および性能評価研究

本講演では、地層処分の工学技術および地層処分システムの性能評価についての研究開発の概要と、使用済燃料直接処分に関する最近の研究事例について解説した。

原子力バックエンド研究 Vol.27 No.1 pp.37-39 2020
仙波毅

「深地層の研究施設におけるこれまでの成果と今後への期待」 -バックエンド部会活動報告1  原子力機構における深地層の研究施設計画の成果の概要

日本原子力研究開発機構は、地層処分を実施するために必要な技術や方法の信頼性を実際の地質環境において確認するため、地元自治体と協定などを締結し、北海道・幌延町と岐阜県・瑞浪市に設置した2つの深地層の研究施設計画を進めている。深地層の研究施設において地層処分事業の段階的な進展に先行して段階的に研究開発を進め、研究成果を発信している。本報告ではこれまでに得られた成果の概要を紹介する。今後とも地元自治体と締結した協定などを遵守し、地層処分の技術基盤の整備を目指して、研究開発に取り組んでいく。

日本原子力学会誌 Vol.62 No.4 pp.186-190 2020

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
高山裕介、菊池広人

塩水条件での緩衝材の力学挙動に対する弾塑性構成モデルの適用性に関する研究

本研究では、処分施設設計等において緩衝材の力学挙動を解析する際に重要となる構成モデルについて、様々な塩水条件での緩衝材の力学挙動に対する既存の弾塑性構成モデルの適用性を検討した。まず、試験データが比較的少ない塩水条件での圧密非排水三軸圧縮試験を実施し、得られた試験結果と既往の標準圧密試験と圧密非排水三軸圧縮試験の結果から蒸留水条件と塩水条件での緩衝材の力学挙動の違いを分析した。特に、試験溶液条件の違いによって標準圧密試験での除荷時の変形量に大きな差異が生じることを確認した。続いて、これらの試験の再現解析により、蒸留水および塩水条件での緩衝材の力学挙動に対する修正カムクレイモデルの適用性を検討した。その結果、蒸留水条件でのパラメータの内、膨潤指数を変化させることで、塩水条件での緩衝材の力学挙動を概ね再現できることを確認した。

原子力バックエンド研究 Vol.27 No.1 pp.12-21 2020

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
S. Fujimoto, H. Tsuchiya, S. Ogawa, Y. Iida and N. Taniguchi

Stress corrosion cracking of copper in swollen bentonite simulating nuclear waste disposal environment

ベントナイト中の純銅の応力腐食割れ(SCC)を低速ひずみ速度試験(SSRT)により調ベた。ベントナイトを純水又は0.05M及び0.1MのNH3を含む水溶液で膨潤させたところ、銅表面に厚い腐食膜と微粒子状の析出物が形成された。膨潤ベントナイト中の純銅表面には、NH3を添加した場合と添加していない場合とで、典型的な変色破断型SCCが発生した。き裂進展速度はNH3により向上した。塑性変形の際に銅上に厚い酸化物層が形成され、その結果として、変色き裂型SCCが発生することが確認された。また、表面に観察された多くの微粒子堆積物は、Cu2+が急速に溶解して変形部位に多孔質のCuOを形成した結果として形成されたものと考えられる。

Materials and Corrosion Vol.72 No.1-2 pp.333-338 2021
A. Gens, J. Alcoverro, R. Blaheta, M. Hasal, Z. Michalec, Y. Takayama, C. Lee, J. Lee, G. Y. Kim, C-W. Kuo, W-J. Kuo and C-Y. Lin

HM and THM interactions in bentonite engineered barriers for nuclear waste disposal

放射性廃棄物を地層処分した際に、廃棄体やその周囲で起こる熱-水理-力学-化学が連成する現象を表現する連成モデルの開発と確証を目的に、国際共同研究「DECOVALEX 2019(DEvelopment of COupled models and their VALidation against EXperiments 2019)」が実施された。DECOVALEX-2019の一つのタスクでは、スイスのモン・テリ岩盤研究所およびグリムゼル試験サイトで実施されている原位置試験(それぞれ、EB試験およびFEBEX試験)を対象とした解析課題であり、廃棄体定置後のベントナイト材料からなる緩衝材等の人工バリア及び岩盤を対象に緩衝材が不飽和から飽和に至る状態までの熱-水理-力学連成現象のモデル化に関する検討が行われた。このタスクでは4つのチームが様々なコンピューターコード、構成則を使用して水理-力学および熱-水理-力学の連成解析を実行し、計測データと解析結果の比較が行われた。本論文は、DECOVALEX-2019プロジェクトのこのタスクで得られた成果や課題等について取りまとめた論文である。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.137 pp.104572_1-104572_19 2021
Y. Takayama

Impact of non-linear elastic behavior on bentonite density evolution at the FEBEX

地層処分施設の力学挙動を評価するためには、信頼性の高い数値解析技術が必要となる。このような解析技術においては、ベントナイトの力学挙動を評価できる構成モデルが必要となる。本研究では、既存の熱/水/力学連成モデルに適用されている膨潤項が付加された線形弾性構成モデルをFEBEX原位置試験に適用し、特に密度の不均一性に着目した構成モデルの適用性を検討した。その結果、この構成モデルは密度変化を過少評価することが明らかとなった。そのため、不飽和弾塑性構成モデルを用いた力学挙動の再解析を実施した。この力学解析では、力学から水理や熱に与える影響を考慮していないが、二次元的な応力変化や密度分布を再現することができた。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.136 pp.104538_1-104538_8 2020
A. Gens, J. Alcoverro, R. Blaheta, M. Hasal, Z. Michalec, Y. Takayama, C. Lee, J. Lee, G. Y. Kim, C-W. Kuo, W-J. Kuo and C-Y. Lin

DECOVALEX-2019 Task D: INBEB Final Report

放射性廃棄物を地層処分した際に、廃棄体やその周囲で起こる熱-水理-力学-化学が連成する現象を表現する連成モデルの開発と確証を目的に、国際共同研究「DECOVALEX 2019(DEvelopment of COupled models and their VALidation against EXperiments 2019)」が2016年4月から2019年12月までの期間で実施された。DECOVALEX-2019のタスクDは、スイスのモン・テリ岩盤研究所およびグリムゼル試験サイトで実施されている原位置試験(それぞれ、EB試験およびFEBEX試験)を対象とした解析課題であり、廃棄体定置後のベントナイト材料からなる緩衝材等の人工バリア及び岩盤を対象に緩衝材が不飽和から飽和に至る状態までの熱-水理-力学連成現象のモデル化に関する検討が行われた。タスクDの参加チームは、IGN(チェコ)、KAERI(韓国)、NCU/TP(台湾)、JAEA(日本)の4チームである。本報告書は、DECOVALEX-2019プロジェクトのタスクDの最終レポートであり、得られた成果や課題等について取りまとめたものである。

LBNL-2001267 (Internet) DECOVALEX-2019 Task D: INBEB Final Report (210Pages) 2020

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安全評価手法の高度化に関する研究

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国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
木本和志、河村雄行、牧野仁史

粗視化分子動力学法による水和モンモリロナイトの組織構造シミュレーション

本研究は、モンモリロナイトの締固めをシミュレートするための、2次元粗視化分子動力学法を提案するものである。この方法では、モンモリロナイト分子の単位構造と水和水を一つの粒子に粗視化して、変形するモンモリロナイト分子を1次元的に連結された粗視化粒子で表現する。粗視化粒子間に働く力には、分子内の結合力と分子間ファンデルワールス力を考慮し、前者は調和振動子として、後者はレナードジョーンズポテンシャルでモデル化する。このようなモデルを用いて締固めの数値シミュレーションを行った結果、大きく変形したモンモリロナイト分子が、締固めの結果4から6分子程度積層することが明らかとなった。また、シミュレーション結果からX線回折パターンを合成したところ、実験でも観測される回折ピークが得られることが明らかとなった。

Journal of Computer Chemistry, Japan Vol.19 No.2 pp.46-49 2020
A. Kitamura, Y. Yoshida, T. Goto and S. Shibutani

Methodology Development and Determination of Solubility-limiting Solid Phases for a Performance Assessment of Geological Disposal of High-level Radioactive and TRU Wastes

高レベル放射性廃棄物および地層処分相当のTRU廃棄物の地層処分における地層処分システムの性能を評価するためには、地下水や緩衝材間隙水中における放射性核種の溶解度評価が必要である。その溶解度評価のためには、溶解度を制限する固相(溶解度制限固相)を選定する必要がある。本報告では、透明性の高い選定過程が示せるように、熱力学データベースを用いて溶解度制限固相の候補となる固相の飽和指数を算出することで溶解度制限固相を判断する選定手法を構築した。本手法では、飽和指数が大きい固相ほど溶解度制限固相の候補になることを基本とするものの、当該固相の生成や溶解度制限が現実的であるかどうかについて、文献調査により判断することとした。併せて、わが国における最新の安全評価報告書で定義された緩衝材およびセメント間隙水組成に対し、種々の組成を類型化した上で性能評価対象元素の溶解度制限固相を選定した。

原子力バックエンド研究 Vol.27 No.2 pp.58-71 2020
山口正秋、加藤智子、鈴木祐二、牧野仁史

地層処分における隆起・侵食影響評価のための地形・処分場深度変遷解析ツールの開発

地層処分の性能評価における隆起・侵食の影響の検討では、地下水流動や処分場から地表への核種移行経路などへの影響の観点から、地形と処分場深度の変化が重要となる。本研究では、初期の地形や隆起速度等の条件や評価期間の想定に対して地形と処分場深度の変化を効率的に評価するためのツール(地形・処分場深度変遷解析ツール)を、簡易的な地形発達シミュレーションモデルを組み込んだArcGISのモデルとして構築した。このような評価は、性能評価における隆起・侵食に起因する地下水流動や地表への核種移行経路への影響の評価に向けて、条件や評価期間に応じた地形や深度の変化についての定量的情報を提示するとともに、性能評価の実施においてどの影響に重点をおくことが効果的・効率的かなどを判断するためにも重要となる。

原子力バックエンド研究 Vol.27 No.2 pp.72-82 2020
加藤智子

スウェーデンの短寿命放射性廃棄物処分場安全評価における生活圏被ばく線量評価パラメータの考え方

我が国の生活圏被ばく線量評価パラメータ設定及びそれに資するデータベース作成にあたって参考となる知見を抽出するため、事業の段階にあるスウェーデンの放射性廃棄物処分安全評価において、生活圏被ばく線量評価の元素固有パラメータをどのように設定しているかを調査した。本調査では、特に、スウェーデンにおける短寿命放射性廃棄物処分の安全評価に関するプロジェクトSR-PSUの生活圏被ばく線量評価での取り扱いを対象とした。

京都大学複合原子力科学研究所「放射性廃棄物処分に係わる生活圏被ばく線量評価パラメータ」専門研究会 (オンライン開催) KURNS-EKR-11 令和2年度「放射性廃棄物処分に係わる生活圏被ばく線量評価パラメータ」 pp.19-28 (2021/3) 2020

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Kitamura and Y. Yoshida

Prediction of thermodynamic data for radium suitable for thermodynamic database for radioactive waste management using an electrostatic model and correlation with ionic radii among alkaline earth metals

高レベル放射性廃棄物地層処分の性能評価のためのラジウムの熱力学データについて、静電モデルおよびアルカリ土類金属間のイオン半径の関係を用いて推定した。ラジウムの溶存化学種および化合物のギブズ標準自由エネルギー変化および標準モルエントロピーについて、イオン対生成モデルをもとにストロンチウムおよびバリウムの熱力学データを外挿することで推定した。これらの推定値を用いて、標準モルエンタルピーも推定した。ストロンチウムとバリウムの熱力学データとして原子力機構(JAEA)が整備した熱力学データベース(JAEA-TDB)を用いることで、JAEA-TDBに組み込むのに適切なラジウムの熱力学データを算出した。得られた熱力学データを既往の文献値と比較した。

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry Vol.327 No.2 pp.839-845 2021
T. Ohkubo, A. Yamazaki, Y. Fukatsu and Y. Tachi

Pore distribution of compacted Ca-montmorillonite using NMR relaxometry and cryoporometry: Comparison with Na-montmorillonite

Ca型モンモリロナイト中の間隙分布が、乾燥密度(0.8-1.6g/cm3)、間隙水塩濃度(脱イオン水、0.1及び1M CaCl2)、温度(233-303K)の条件下で、1H NMR測定によって調査された。圧縮Ca型モンモリロナイト中の2層及び3層水和を含む層間間隙と層間外間隙の体積割合が、緩和時間T1及びT1/T2分布の分析に基づくNMR緩和時間測定法によって定量評価され、さらに、NMR凍結間隙測定法及びX線回折法による結果と比較された。これらの分析によって、Na型モンモリロナイトと比較可能な、Ca型モンモリロナイト中の間隙分布の状態を把握することができた。圧縮Ca型及びNa型モンモリロナイト中の間隙分布に影響を及ぼす主要な因子は圧縮密度であり、間隙水塩濃度の影響は相対的に小さい結果となった。CaとNaの層間陽イオンの影響は高密度条件では小さいが、低密度ではその影響は顕著であった。

Microporous and Mesoporous Materials Vol.313 pp.110841_1-110841_11 2021
Y. Sugiura, T. Ishidera and Y. Tachi

Surface complexation of Ca and competitive sorption of divalent cations on montmorillonite under alkaline condition

In the geological disposal system, increase of Ca concentration with the alteration of cementitious materials would affect the retention of other radionuclides by competitive sorption. Batch sorption experiments were performed to investigate sorption behavior of Ca and competition with other divalent cations (Sr and Ni) on the edge site of montmorillonite under alkaline conditions. Ca and Sr formed surface complexation with the edge site at higher pH region compared to Ni. Sr sorption decreased with Ca concentration in alkaline pH region, whereas Ni sorption was not affected by Ca concentration. These results indicate that Ca and Sr sorb onto the same site while Ca and Ni sorb onto different sites, and competitive sorption depends on the chemical similarity such as hydrolysis behavior. Sorption model parameters obtained from the single element batch sorption experiments successfully reproduced the results of competitive sorption experiments.

Applied Clay Science Vol.200 pp.105910_1-105910_10 2021
P.C.M. Francisco and Y. Tachi

Impacts of Si on Se(W) Immobilization on Ferrihydrite: An in Situ ATR-IR Spectroscopic Study

Immobilization of Se(W) by adsorption on iron oxides exerts a key control on its mobility in a number of natural and engineered settings; however, the presence of other coexisting ligands may influence the extent and stability of adsorption. In this work, we investigated the impacts of Si, which is an abundant component of many natural waters, on Se(IV) adsorption and retention on ferrihydrite. Using in situ ATR-IR spectroscopy, we obtained time-resolved information on Se(IV) adsorption on ferrihydrite in the presence of Si at pH 5, 7, and 9. The results show that Si inhibited the adsorption of Se(IV) at all pH if Si was initially adsorbed on ferrihydrite. This was attributed to the oligomerization of Si on ferrihydrite, which blocked Se(IV) from binding to ferrihydrite. In experiments where Se(IV) was initially adsorbed, Si was found to induce Se(IV) desorption. Competitive adsorption experiments, where Se(IV) and Si were present in the same solution, showed that Si negligibly affected Se(IV) adsorption at pH 5 and 7, likely because of lower Si adsorption and the lack of considerable oligomerization. On the other hand, at pH 9, Se(IV) was initially adsorbed and then subsequently desorbed with increasing Si adsorption and oligomerization. Hence, Si affects Se(IV) adsorption over a narrower pH range than when it is preadsorbed on ferrihydrite. These results show that Si can enhance Se(IV) mobility and highlight the influence of pH and the timing of Si adsorption in inhibiting Se(IV) adsorption on ferrihydrite. This work offers the first direct insights into the dynamic processes underpinning Se(IV) and Si competitive adsorption, which may be useful in understanding Se(IV) behavior in a broad range of environmental settings.

ACS Earth and Space Chemistry (Internet) Vol.4 No.12 pp.2366-2377 2020
R. Méheust, C. J. Castelle, P. B. Matheus Carnevali, I. F. Farag, C. He, L-X. Chen, Y. Amano, L. A. Hug and J. F. Banfield

Groundwater Elusimicrobia are metabolically diverse compared to gut microbiome Elusimicrobia and some have a novel nitrogenase paralog

We reconstructed 94 draft-quality, non-redundant genomes from diverse anima1-associated and natural environments. Genomes group into 12 clades, 10 of which previously lacked reference genomes. Groundwater-associated Elusimicrobia are predicted to be capable of heterotrophic or autotrophic lifestyles, reliant on oxygen or nitrate/nitrite-dependent respiration of fatty acids, or a variety of organic compounds and Rnf-dependent acetogenesis with hydrogen and carbon dioxide as the substrates. Genomes from two clades of groundwater-associated Elusimicrobia often encode a new homologous group of nitrogenase-like proteins that co-occur with an extensive suite of radical SAM-based proteins. We identified similar genomic loci in genomes of bacteria from the Gracilibacteria and Myxococcus phyla and predict that the gene clusters reduce a tetrapyrrole, possibly to form a novel cofactor. The animal-associated Elusimicrobia clades nest phylogenetically within two groundwater-associated clades. Thus, we propose an evolutionary trajectory in which some Elusimicrobia adapted to animal-associated lifestyles from groundwater-associated species via genome reduction.

The ISME Journal Vol.14 pp.2907-2922 2020
Y. Sugiura, T. Tomura, T. Ishidera, R. Doi, P.C.M. Francisco, H. Shiwaku, T. Kobayashi, D. Matsumura, Y. Takahashi and Y. Tachi

Sorption behavior of selenide on montmorillonite

Batch sorption experiments were performed to investigate the sorption mechanism of Se on montmorillonite under reducing conditions in deep geological environments. Based on Eh-pH diagrams and ultraviolet-visible spectra, Se was dissolved as selenide (Se(-II)) anions under the experimental conditions. The distribution coefficients (Kd; m3 kg-1) of Se(-II) indicated ionic strength independence and slight pH dependence. The Kd values of Se(-II) were higher than those of Se(IV), which also exists as an anionic species. X-ray absorption near edge spectroscopy showed that the oxidation state of Se-sorbed on montmorillonite was zero even though selenide remained in the solution. These results suggest that Se(-II) was oxidized and precipitated on the montmorillonite surface. Therefore, it is implied that a redox reaction on the montmorillonite surface contributed to high Kd values for Se(-II).

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry Vol.324 No.2 pp.615-622 2020
M. Terashima, T. Endo and K. Miyakawa

Determination of humic substances in deep groundwater from sedimentary formations by the carbon concentration-based DAX-8 resin isolation technique

Concentrations of humic substance (HS) in deep sedimentary groundwater were determined by the carbon concentration-based DAX-8 resin isolation technique. The groundwater samples were collected from test galleries at different depths in the Horonobe Underground Research Laboratory (URL) of Hokkaido, and two subsidence observation wells of Niigata in Japan. The analytical condition was optimized for the groundwater samples with a high salinity and a high concentration of DOM. The analytical results showed that the HS concentrations vary with the depth and the area. The HS proportions to DOM slightly varied with the depth. The regression analysis showed that the HS concentrations are positively correlated with the DOM concentrations. The low deviation of the HS proportions from the slope in the regression indicated that the slight variation of HS proportion can be trivial in the prediction of the concentration of HS. These results can provide a useful information on the HS concentration and its prediction from the DOM concentration in sedimentary groundwater.

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.57 No.4 pp.380-387 2020

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
木本和志、岡野蒼、斎藤隆泰、佐藤忠信、松井裕哉

超音波計測に基づく花崗岩中の表面波伝播特性に関する研究

本研究は、ランダム不均質媒体における表面波の伝播挙動、超音波計測と波形解析によって調べたものである。超音波計測実験には、粗粒結晶質岩である花崗岩をランダム不均質媒体として用い、線集束型の圧電探触子で励起した表面波をレーザードップラー振動計で計測する。計測波形の解析は周波数領域で行い、フェルマーの原理に基づいて各波形観測点での到達時間を求める。この方法で得られた到達時間のアンサンブルから、到達時間が従う確率分布を伝播距離の関数として評価する。次に、確率分布の標準偏差を到達時間の不確実性(ゆらぎ)の指標として用い、伝播距離に応じたゆらぎの伝播挙動を調べる。以上の波形解析結果から、本研究に用いた花崗岩試料における到達時間のゆらぎは、概ね伝播距離の1/2乗と平均到達時間の積に比例することを明らかとする。このことは、ランダム不均質媒体における統計的波動伝播モデリングにおいて有用な知見となる。

土木学会論文集 A2(応用力学)特集号 Vol.76 No.2 pp.I_97-I_108 2021
望月陽人

分析試料の正しい取り扱いかた;環境(陸水)

日本分析化学会の学会誌「ぶんせき」の入門講座「分析試料の正しい取り扱いかた」において、陸水、堆積物および懸濁物質試料の取り扱い方について解説する。

ぶんせき Vol.2021 No.1 pp.2-7 2021
鎌田健人、奈良禎太、松井裕哉、尾崎裕介

破壊した幌延泥岩の透水係数測定

放射性廃棄物処分のようなプロジェクトを考える場合には、岩盤が有する物質の閉じ込め性能を評価することが重要であり、それに関して、岩盤内のき裂が透水性に及ぼす影響を調べることが必要不可欠である。しかし、き裂を含む泥岩の透水性の変化については未だ十分に研究されていない。そこで本研究では、北海道幌延地域に分布する泥岩の円柱形供試体に巨視き裂を導入し、透水性への影響を調べた。まず、圧裂引張試験によりき裂を導入した供試体に対して変水位透水試験を行い、透水係数を測定した。その後、トランジェントパルス法により測定したインタクトな供試体の透水係数と比較した。その結果、き裂導入により1オーダー程度の透水係数の上昇が確認された。本研究の結果から得られた透水係数の上昇の程度は、花崗岩や玄武岩などを用いた先行研究と比較すると小さい値であった。

第15回岩の力学国内シンポジウム 吹田市+オンライン
第15回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.205-209
2021
三嶌星輝、緒方奨、乾徹、安原英明、岸田潔、青柳和平

損傷モデルによる珪質泥岩を対象とした坑道掘削解析

高レベル放射性廃棄物地層処分施設の安全性を評価する上で、廃棄体処分坑道掘削時の天然バリア中の亀裂発生挙動の把握が不可欠である。そのためには、日本の地質の大半を占める結晶質岩及び堆積岩中の亀裂発生挙動を数値解析により正確に記述する必要がある。そこで本研究では、損傷モデルを用いて、日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターの深度350mの調査坑道で実施された珪質泥岩への坑道掘削を模擬した数値解析を行い、実測された亀裂の発生範囲、破壊モード、坑道の内空変位に対する解析結果の整合性を検証した。解析結果より、坑道周辺に引張による無数の亀裂発生が確認され、その発生範囲及び破壊モードは実際の観察結果とよく合致していることが確認された。更に坑道の内空変位に関しても、解析値は実測値と比較して概ね妥当性のある結果を示した。

第15回岩の力学国内シンポジウム 吹田市+オンライン
第15回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.215-220
2021
K. Miyakawa, K. Aoyagi, T. Akaki, H. Yamamoto

Numerical simulation of oxygen infusion into desaturation resulting from artificial openings in sedimentary formations

高レベル放射性廃棄物の地層処分場の掘削により、坑道周辺岩盤の損傷や溶存ガスの発生等による不飽和領域の形成といった掘削影響領域が生じる。当該領域では、坑道内の大気が岩盤内に侵入し、岩盤や地下水が還元状態から酸化状態に変化する可能性がある。北海道幌延地域に位置する幌延深地層研究センターの地下施設ではこれまでに、坑道周辺の掘削影響領域における酸化の兆候は確認されていない。その理由として、地下水中の溶存ガスが遊離することで、岩盤内への酸素の侵入を抑制している可能性が指摘されている。本研究では、溶存ガスや地下水の移流・拡散を考慮した気液二相流解析を実施し、岩盤中への酸素の侵入メカニズムについて検討した。その結果、地下水中に含まれる溶存ガス量と岩盤の透水性が酸素の侵入に及ぼす影響は、同程度であることが分かった。坑道内の湿度が低下した場合、掘削損傷領域中の飽和度が大きく低下し、溶存ガスが多く含まれるような条件においても、岩盤中に比較的多くの酸素が侵入する結果が得られた。幌延の地下施設では、吹付コンクリートが岩盤壁面の湿度を高い状態で維持し、さらに酸素との接触を低減させていると考えられる。吹付コンクリートが無い場合は、坑道内の湿度は季節変動や換気状況により低下し、酸素が岩盤内に侵入すると考えられるが、実際の地下環境では黄鉄鉱の酸化反応などにより酸素が消費されると考えられる。

第15回岩の力学国内シンポジウム 吹田市+オンライン
第15回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.609-614
2021
岡野蒼、木本和志、松井裕哉

表面波計測による花崗岩の音響異方性評価に関する研究

花崗岩がマイクロクラックの配向のために音響異方性を示すこと、そのため、音響異方性の測定結果からマイクロクラックの配向性や密度を非破壊的に評価できる可能性があることはよく知られている。従来の岩石コア弾性波試験は、弾性波透過試験により音響異方性の評価が行われてきたが、この方法は現場計測や不整形な供試体への適用が難しい。そこで本研究では、表面波を使った花崗岩の音響異方性評価を試みた。具体的には、円柱状の花崗岩供試体端面に設置した超音波探触子で、供試体直径方向に伝播する表面波を励起させる。この方法により、送信方向を一定の角度で段階的に変化させたときの表面波振幅や速度、周波数の変化を見ることで、音響異方性の程度を調べた。その結果、マイクロクラックによる見かけの剛性変化に起因すると考えられる音響異方性が、表面波を計測することによって検出できることが示された。

第15回岩の力学国内シンポジウム 吹田市+オンライン
第15回岩の力学国内シンポジウム講演論文集 pp.633-636
2021
佐藤伸、大野宏和、棚井憲治、山本修一、深谷正明、志村友行、丹生屋純夫

熱・流体・応力連成解析による水蒸気が及ぼす再冠水時のバリア性能への影響

本検討は、幌延深地層研究センターで実施中の人工バリア性能確認試験を対象に、熱・水・応力連成解析を実施した。再冠水時の熱・水・応力連成挙動は、間隙水の加熱により生じる水蒸気や、間隙圧の上昇により生じる気相の液相への溶解等の相変換の影響を受けると考えられる。そこで、相変換可能な熱・水・応力連成解析を実施し、水蒸気の発生や間隙空気の間隙水への溶解が再冠水挙動にどのような影響を及ぼすのか考察した。その結果、水蒸気を考慮することにより、ヒーター周辺の間隙率が増大し、乾燥密度の分布が生じた。さらに、気液二相流パラメータを変化させると緩衝材の応力状態が変化し、それに伴い、膨潤による緩衝材の膨出量にも影響を及ぼした。このため、緩衝材の長期挙動評価のうち再冠水挙動を模擬するには、相変換を考慮する必要があり、さらに、精緻な予測を行うためには、気液二相流パラメータの評価が重要であることが分かった。

地盤工学ジャーナル(インターネット) 2020
望月陽人、笹本広、馬場大哉、生垣加代子

少量試料に適用可能な簡易分析法に基づく深部地下水中の溶存有機物の特性評価

地下水中の腐植物質の特性評価は一般的に、大量の地下水から分離精製された腐植物質を利用して実施される。しかし、腐植物質の分離精製には多大な時間と労力を要するうえ、地下水量が少ない地域には適用困難である。そこで、少量の試料にも適用可能である簡易特性分析法として、三次元蛍光分析、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)およびイオンクロマトグラフィー(IC)を北海道・幌延地域の地下水と地表水に適用し、腐植物質をはじめとする溶存有機物(DOM)の特性評価を試みた。少量の地下水試料から取得された三次元蛍光スペクトルは、大量の地下水から分離精製した腐植物質のものと類似しており、深度差も小さい一方で、地表水とはピーク位置が異なっていた。GPCにより、地下水中のDOMの大部分を分子量1,200~2,000Da程度の腐植物質が占め、その分子量は深度とともに減少することが示された。これらは、分離精製した腐植物質の特性とも調和的であった。また、地下水中のDOMに占める低分子量有機物の割合は小さいことがICにより示され、GPCの結果とも整合していた。以上より、本研究で適用した分析方法は、地下水中のDOMの特性を簡易に評価するのに有効な方法であることが示唆された。

陸水学雑誌 Vol.81 No.2 pp.153-166 2020

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Ueno, S. Tamazawa, S. Tamamura, T. Murakami, T. Kiyama, H. Inomata, Y. Amano, K. Miyakawa, H. Tamaki, T. Naganuma and K. Kaneko

Desulfovibrio subterraneus sp. nov., a mesophilic sulfate-reducing deltaproteobacterium isolated from a deep siliceous mudstone formation

幌延深地層研究計画における地上からのボーリング調査孔であるHDB-6の深度288.7-303.0m区間から採水された地下水中から、新種の嫌気的硫酸還元菌を単離した。これをHN2T株と呼ぶ。採水深度の地質は新第三紀堆積岩の稚内層であり、上位の珪藻質泥岩である声問層から珪質泥岩である稚内層への遷移帯に当たる。単離されたHN2T株は、温度5-43℃及びpH6.5-7.5の環境において成長が確認された。HN2T株は、硫酸塩や亜硫酸塩、Fe3+、マンガン酸化物等を電子受容体とし、硫黄元素や硝酸塩、亜硝酸塩は電子受容体として使用しない。HN2T株は、NaClを必要としないが、最大でNaCl濃度4%(w/v)の高塩濃度環境において生息できた。表現型・分子的遺伝情報から、HN2T株を新種と判断し、Desulfovibrio subterraneus sp. nov. と命名する。

International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology Vol.71 No.2 (https://doi.org/10.1099/ijsem.0.004683) 2021
Y. Ozaki, E. Ishii and K. Sugawara

Poroelastic hydraulic-response of fractured mudstone to excavation in the Horonobe URL: as an indicator of fracture hydraulic-disconnectivity

本研究では、幌延深地層研究センター周辺の地下深部に存在が推定されている低透水性領域の存在の検証を目的として、坑道掘削に伴うHDB-6号孔の水圧変動の再現解析を行った。地下深部では亀裂の水理的連結性が乏しいために健岩部相当の透水性が推定されている一方で、浅部においては水理学的亀裂の連結性が高いため透水性が健岩部よりも高い水理地質構造が推定されている。水理-力学連成挙動を考慮したシミュレーションを実施したところ、観測されている水圧データには水理-力学連成挙動の影響であるMandel-Cryer効果の影響を受けていること、この効果が数年単位で継続するためには深部の透水性が健岩部相当に低いことが必要であることが確認された。これらの結果より、数値シミュレーションにより、既往研究により存在が予測されていた地下深部における健岩部相当の低透水領域の存在が検証された。

CouFrac 2020 Seoul (Korea) 2020
H. Ohno, M. Takeda and E. Ishii

Does fault activation affect hydraulic disconnectivity of faults in mudstone?

Low-permeability mudstone is a candidate host rock for radioactive waste disposal, but thermal-hydro-mechanically induced shear stresses and thermal pressurization due to the release of heat from radioactive waste may cause activation of faults in the host rock. Previous studies revealed that hydraulic connectivity of fractures in the deeper part of the Wakkanai Formation (siliceous rnudstone) is limited and hence its effective permeability is very low. We performed an injection test on a fault in the deeper part to induce fault activation, and investigated the effect of fault activation on the hydraulic disconnectivity of the fault by analyzing pressure derivatives obtained by repetitive packer tests before and after the injection. The injection test successfully induced a remarkable dilational-shear failure within the fault, and the log-log plots of pressure derivatives changed after the failure from an upward-trend-type indicating a limited extent of flow-paths to a horizontal-trend-type suggesting well-connected flow-paths. The test-section pressure had already recovered when the horizontal-trend-type was observed. After the borehole had been open for 6 weeks, the pressure derivatives were restored to the upward-trend-type We consider that self-sealing such as fracture closure by creep recovered the hydraulic disconnectivity of the fault after the failure.

CouFrac 2020 Seoul (Korea) 2020
N. Hatano, K. Yoshida, S. Mori and E. Sasao

Major element and REE compositions of Pliocene sediments in southwest Japan: Implications for paleoweathering and paleoclimate

東アジアモンスーンの履歴や、モンスーン気候の発達とテクトニクス、地球規模の気候との関係は複雑で議論が多い。本研究では、西南日本の湖成堆積物の主成分元素と希土類元素の組成に基づいて化学風化条件を検討した。その結果、380~340万年前には主成分元素組成から推定される変質強度の指標や希土類元素組成、試料の鉱物組成から、化学風化が強まったことがわかった。既往研究成果との比較から、西南日本におけるこの時期の強風化条件は、黒潮の流入による温暖湿潤気候と東アジア夏季モンスーンに起因する可能性が考えられた。

Sedimentary Geology Vol.408 pp.105751_1-105751_13 2020
D. Savage, J. Wilson, S. Benbow, H. Sasamoto, C. Oda, C. Walker, D. Kawama and Y. Tachi

Using Natural Systems Evidence to Test Models of Transformation of Montmorillonite

高レベル放射性廃棄物の地層処分において、粘土を主体とする緩衝材の長期的な安全機能は、モンモリロナイトが存在することによる高膨潤性と低透水性が維持されるかどうかに影響される。多くの場合、安全評価ではモンモリロナイトのイライト化(非膨潤性鉱物)への変質が懸念され、半経験的な速度論モデルによる評価が行われている。一方、近年、化学反応だけでなく、反応と輸送の2つの現象をカップリングしたモデルでの評価もなされている。本研究では、反応-輸送モデルでの評価を行い、既往の半経験的な速度論モデルによる評価と比較した。その結果、反応-輸送モデルでは、半経験的な速度論モデルに比べて、保守側の評価にはなるものの、天然の事例を再現するという観点では課題があることが示唆された。このため、地層処分におけるニアフィールドの長期変遷評価において、反応-輸送モデルを用いた評価を行う場合は、解析結果の解釈にあたり注意を要することが必要である。

Applied Clay Science Vol.195 pp.105741_1-105741_11 2020
E. Ishi

A conventional straddle-sliding-packer system as a borehole extensometer; Monitoring shear displacement of a fault during an injection test

従来のダブルパッカーシステムを用いて定圧段階注入試験を珪質泥岩中の正断層を対象に実施した。同試験は、注入中の孔内試験区間の軸変位をスライド式パッカー内の圧力と試験区間の圧力を計測することによりモニタリングする新たな方法を適用した。計測された圧力と軸変位、および注入流量レートから試験中の断層の水理開口幅、せん断変位、垂直コンプライアンス、垂直応力、せん断靭性および水理学的膨張角が見積もられた。注入により最大で13.3~49.5mm(推定誤差含む)の大きなせん断変位(正断層センス)を発生させることができ、特徴的なせん断すべりのイベントがあった後、2.8~10.4mmの残留せん断変位が残された。せん断中のせん断靭性は2.3×10-7~ 8.4×10-7 Pa m-1(推定誤差を考慮)と見積もられ、この値は既往研究から経験的に推定される値と整合的である。残留せん断変位は何らかの水理開口幅の増加を残さなかったので、水理学的膨張角は実質的にゼロであったと推定された。本試験方法は特別な専用装置を必要とせず、地下の亀裂や帯水層の水理力学挙動の調査に有効と考えられる。

Engineering Geology Vol.275 pp.105748_1 - 105748_12 2020
T. Yuguchi, A. Usami and M. Ishibashi

Analysis of the distribution of microfractures and micropores within granitic rock using simultaneous polarization-fluorescence microscopy

微小割れ目や微小孔の分布を知ることは、岩盤中の物質移行特性を特徴づけるために重要である。本論では、顕微鏡スケールの微小空隙の分布を把握する方法として、偏光蛍光同時観察法を提案した。この方法は、蛍光染料を使って作成された岩石薄片に対し、蛍光ランプを装着した偏光顕微鏡観察を行うことによって、微小空隙の分布と岩石学的特徴を同時にかつ効率的に把握するものである。なお、この方法で把握した微小空隙の分布は、電子顕微鏡観察の結果と一致することを確認した。

Heliyon Vol.6 No.8 pp.e04815_1 - e04815_6 2020
H. Matsui, R. Yahagi, H. Ishizuka and T. Toguri

IN-SITU BACKFILLING EXPERIMENT OF THE SMALL SCALE DRIFT BY SPRAY METHOD IN MIZUNAMI UNDERGROUND RESEARCH LABORATORY, JAPAN

原子力機構が掘削した瑞浪超深地層研究所の深度500m研究坑道において小断面坑道における全断面吹付け施工による埋め戻し材の施工試験を実施した。埋め戻し材の透水性は、周辺岩盤の透水性と同等以下を目標とし、原子力発電環境整備機構(NUMO)が示した有効粘土密度と透水係数の関係から原位置で施工した埋め戻し材の密度は0.4Mg/m3以上の有効粘土密度となるように考え、その品質管理手法も含めた実証的原位置試験を実施した。その結果、本試験で用いた品質管理手法により目標となる埋め戻し材の有効粘土密度を確保でき、地下深部においても適用可能な方法を示した。この試験は、経済産業省資源エネルギー庁からの受託研究の一部として実施したものである。

Waste Management 2020 Madrid (Spain) (online)
Waste Management and the Environment X vol.247 pp.145-159 (2020/9)
2020

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
中西利典、奥野充、山ア圭二、W.Hong、藤田奈津子、中村俊夫、堀川義之、佐藤鋭一、木村治夫、堤浩之

島原半島北部の唐比低地における湿地堆積物の形成過程

雲仙火山の約13km西方にある唐比低地には泥炭層や泥層からなる湿地堆積物が厚く分布しており、それらの堆積物には千々石断層や雲仙火山の活動履歴が記録されていることが期待される。それらの履歴を精度よく検知するために、複数本のボーリングコアを掘削して放射性炭素年代値を測定した。それらの結果を地中レーダ探査断面と対比して湿地堆積物の形成過程を検討した。その結果得られたすべての14C年代値は層序関係と矛盾がなく、堆積曲線は若干のずれが認められるが概ね一致する結果となった。本研究の年代測定の一部はペレトロン年代測定装置による施設供用利用で行われたものである。

名古屋大学 年代測定研究5 pp.38-43 2021
野田篤、宮崎一博、水野清秀、長田充弘

池田地域の地質

本図幅は著者の一人長田が博士課程前期から後期修学中に関与し、作成にかかわったものである。香川県と徳島県にまたぐ池田地域は中央構造線(中央構造線活断層系を含む)が分布していることで知られている重要な地域である。中央構造線の北側には領家帯の深成岩類・変成岩類とそれを覆う上部白亜系和泉層群、中新統瀬戸内火山岩類、下部更新統三豊層群が、南側には三波川変成岩類や下部更新統の土柱層が分布する。これらの他に段丘堆積物などが分布し、活断層はこれらの堆積物を変位させている。本図幅は上述した地質の詳細な解説だけでなく、温泉や鉱床などにも触れられている。

池田地域の地質(地域地質研究報告:5万分の1地質図幅) (150pages) 2021
長谷部徳子、末岡茂、田上高広

フィッション・トラック年代測定の基礎 -これまでの経緯と今後の発展の可能性-

フィッション・トラック(FT)法は、多くの放射年代測定が同位体化学分析を用いているのに比し、ウランの核分裂によって生じる物質中の線状損傷を可視化し観察するユニークな年代測定法である。年代測定法としてだけでなく、その特徴を利用して地質試料の300℃以下の熱履歴の復元にも利用されている。本稿ではFT法の歴史を再訪し、今後のFT法の発展にどのような方向性がありうるかを紹介する。

RADIOISOTOPES Vol.70 No.3 pp.117-130 2021
小形学、末岡茂

光ルミネッセンス(OSL)を用いた超低温領域の熱年代学

光ルミネッセンス(OSL)熱年代法は、閉鎖温度にして数十度以下の超低温領域の熱史を推定できる手法である。一般的な地温構造を仮定すると、削剥深度にして数百メートルに相当するため、地殻浅部のより詳細な削剥史復元への利用が期待できる。本稿では、OSL熱年代法の原理や閉鎖温度、現在における最新の熱史解析法、応用研究例について紹介する。

RADIOISOTOPES Vol.70 No.3 pp.159-172 2021
福田将眞、末岡茂、田上高広

フィッション・トラック法を利用した島弧山地の熱年代学

主要な造山帯における、フィッション・トラック(FT)法等による熱年代学は、1970年代以降世界各地で進展してきた。従来の主要研究対象だった大陸造山帯や安定陸塊に加え、最近30年の低温領域の熱年代学の進展により、対象地域が拡大しつつあり、これまで研究が困難だと考えられていた島弧においても精力的に研究が展開中である。本稿では、熱年代学的手法に基づく山地形成過程の推定方法を概観し、弧-海溝系の山地を対象とした熱年代学研究の現状、特に島弧山地における研究事例を紹介する。

RADIOISOTOPES Vol.70 No.3 pp.173-187 2021
末岡茂、島田耕史、長谷部徳子、田上高広

フィッション・トラック法における近年の新たな展開 -測定技術の高度化、アニーリング特性の理解、新手法の開発-

フィッション・トラック(FT)法は、確立・普及した地球年代学/熱年代学の手法として知られるが、誕生から半世紀以上を経た現在でも発展を続けている。本稿では、2000年代以降の研究を中心に、FT法の基礎研究に係る発展と課題を概観し、今後FT法に携わる研究者達への指針としたい。具体的には、測定技術の高度化、アニーリング特性の理解、新手法の開発の3点に加え、FT解析に有用なソフトウェアについても紹介する。

RADIOISOTOPES Vol.70 No.3 pp.189-207 2021
山田隆二、木村誇、苅谷愛彦、佐野雅規、對馬あかね、李貞、中塚武、國分陽子、井上公夫

大規模土砂移動発生履歴の高精度復元に向けた埋没樹木の年代測定 -歴史時代に中部山岳地域で発生した事例-

本研究では、深層崩壊発生履歴の高精度・高分解能復元に有効な試料採取および選定方法と年代値の適切な取扱について議論した。中部山岳地域で大規模な深層崩壊が発生した2箇所(ドンドコ沢岩石流れと大月川岩屑流)の土壌埋没樹木を試料とした事例研究を行った。年代測定は加速器質量分析計による放射性炭素年代測定法と酸素同位体比年輪年代測定法で行った。ドンドコ沢岩石流れによる堰止湖沼堆積物中から採取した試料は、887年の五畿七道地震に関連する年代値を示し、それ以前に他のイベントが存在した可能性も示唆した。一方、大月川岩屑流による崩壊堆積物から採取した試料年代値は特定の時期に集中しなかった。大規模土砂移動現象の発生年を正確に知るための試料として保存状態の良い大径樹幹や枝を用いることによって、大雨や大規模地震を示した古文書との対比も可能であることがわかった。

砂防学会誌 Vol.73 No.5 pp.3-14 2021
末岡茂、島田耕史、照沢秀司、岩野英樹、檀原徹、小北康弘、平田岳史

フィッション・トラック熱年代解析およびU-Pb年代測定に基づいた南九州せん断帯に分布する破砕帯の活動時期

南九州せん断帯に分布する破砕帯の活動時期を制約するため、紫尾山花崗閃緑岩体から非加熱の試料2点と破砕帯に切られたアプライト脈沿いの試料1点を採取し、フィッション・トラック(FT)およびU-Pb解析を適用した。ジルコンU-Pb年代は14.0-13.5Ma、ジルコンFT年代は14.7-13.7Ma、アパタイトFT年代は12.6-10.0Maを示した。これらの熱年代データを基に熱履歴解析を行ったところ、紫尾山花崗閃緑岩体は14.0-13.5Maに浅所に貫入し、アパタイトFT法のPAZ(60-130℃)以下まで急冷されたと推定された。平八重型と楠八重型の岩相で、貫入時期と冷却史に大きな違いは見られなかった。破砕帯の活動時期は、アプライト脈の貫入時期である10.0±0.8Ma頃と考えられ、岩体の初期冷却に伴う収縮ではなく、岩体冷却後のテクトニックな作用に起因する可能性が高い。

地質学雑誌 Vol.127 No.1 pp.25-39 2021
末岡茂、島田耕史、菅野瑞穂、横山立憲

原子力機構におけるFTおよび(U-Th)/He分析施設の現状と展望

原子力機構における(U-Th)/He年代およびFT年代測定の分析施設について紹介する。FT法については、FT自動計測装置の導入を行い、分析の迅速化・簡便化を行った。また、ジルコンを対象とした分析環境の整備も進めている。今後の課題としては、LA-ICP-MSを用いたウラン濃度測定手順の確立などが挙げられる。(U-Th)/He法については、新たなHe質量分析計(Alphachron)を導入し、He濃度測定の自動化を行った。U-Th濃度の測定が今後の課題として挙げられる。

フィッション・トラックニュースレター No.33 pp.15-18 2020
丹羽正和

野外調査に基づく断層運動の影響に関する研究事例の紹介

地層処分などの地下空間利用においては、断層運動が周辺岩盤に及ぼす変位や破壊などの影響範囲を評価することが求められる。その際、広域的なスケールにおいて、散在する破砕帯や小断層の分布傾向や性状を把握することが重要である。本報告は、岐阜県北部、飛騨地域の跡津川断層を事例対象とした野外調査に基づき、活断層帯周辺における破砕帯の空間分布と性状について整理し、断層運動の影響を検討した事例について紹介したものである。

フィッション・トラックニュースレター No.33 pp.22-24 2020
小林侑生、末岡茂、福田将眞、長谷部徳子、田村明弘、森下知晃、田上高広

伊豆弧の衝突と南部フォッサマグナ地域の山地形成:低温領域の熱年代学による知見

本州弧と伊豆弧の衝突帯である南部フォッサマグナ地域を対象に、熱年代学の手法を用いて山地の隆起・削剥史を検討した。筑波山、足尾山地、奥秩父のアパタイトFT年代は、伊豆弧の衝突以前の冷却・削剥や岩体形成を反映した古い値を示したが、関東山地のアパタイトFT年代や、より閉鎖温度が低いアパタイト(U-Th)/He年代では衝突開始以降の新しい年代値が得られた。アパタイトFTデータに基づいた熱史逆解析の結果、関東山地の北部から中部と身延山地では約1Ma、奥秩父と関東山地の南部では約4-5Maの急冷イベントが認定された。これらの時期は伊豆ブロックと丹沢ブロックの衝突時期とそれぞれ一致しており、伊豆弧の衝突イベントによる本地域の山地形成への影響が示唆される。

フィッション・トラックニュースレター No.33 pp.25-27 2020
梶田侑弥、福田将眞、末岡茂、長谷部徳子、田村明弘、森下知晃、Barry P. Kohn、田上高広

熱年代学を用いた北上山地の隆起・削剥史の推定

東北日本弧前弧域に分布する北上山地を対象に、熱年代学的手法を用いて山地の熱史・削剥史を検討した。北上山地を東西に横断する方向にアパタイトのFT法および(U-Th-Sm)/He法を実施した結果、既報年代と併せると、FT年代では東側から西側にかけて系統的に若い年代の傾向を示すのに対し、(U-Th-Sm)/He法では西縁で最も古い年代が検出され、以東ではほぼ一様な年代を示した。今後はより詳細に北上山地の熱史の傾向を議論するため、火山フロントの位置がほぼ現在の位置にあったとされる、1千万年以降の年代が期待できる熱年代学的手法の適用を予定している。

フィッション・トラックニュースレター No.33 pp.28-30 2020
丹羽正和、植木忠正、星博幸、杉崎雄一、八木公史、斗澤皓正

岐阜県高山市高根地域に分布する安山岩質平行岩脈群のK-Ar年代

火山岩の形成年代の情報を得ることは、地層処分のサイト特性調査や安全評価などにおいて火山活動の影響を把握する上でも重要となる。K-Ar法は火山岩の形成年代を知るための代表的な放射年代測定法であるが、火山岩が変質していると、確度の高い年代値を得ることはしばしば困難となる。本研究では、中新世の西南日本の時計回り回転に係る重要な古地磁気学的情報を有している安山岩岩脈について、詳細な偏光顕微鏡観察と鉱物・化学分析により、著しい変質を被っておらず、岩脈貫入前のマグマ中で晶出したものと判断される鉱物を選定した。本論文は、それらの鉱物に対してK-Ar年代を実施し、岩脈の形成年代を推定した内容について報告したものである。

地質学雑誌 Vol.126 No.9 pp.543-548 2020
丹羽正和、雨宮浩樹、代永佑輔、小北康弘、安江健一、岩野英樹、檀原徹、平田岳史

北海道北部、幌延地域の新第三系~第四系に挟在するテフラのジルコンU-Pbおよびフィッション・トラック年代

地層の堆積年代の決定や層序対比において有効な指標となるテフラの年代決定手法の高度化のため、北海道幌延地域の新第三系~第四系に挟在する3試料のテフラを事例対象として、ジルコンの同一粒子に対しU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代を求め、堆積年代を推定する手法を適用した。このうち2試料は、最若粒子集団のU-PbとFTの加重平均年代が誤差2σで一致し、降灰テフラの噴出年代を示すと考えられた。もう1試料についても、多くのジルコンでFT年代がU-Pb年代と同等かそれ以上に若返っており、全粒子のFT加重平均年代と最若粒子集団のU-Pb加重平均年代が誤差2σで一致するので、それらがテフラの噴出年代を示すと考えられた。また、本研究で得られた結果は、東西圧縮の地殻変動により、同一層でも西部より東部の方が年代が古くなるという本地域の新第三系~第四系における傾向を支持する結果となった。

地質学雑誌 Vol.126 No.5 pp.267-283 2020

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Miyajima, A. Saito, H. Kagi, T. Yokoyama, Y. Takahashi and T. Hirata

Incorporation of U, Pb and Rare Earth Elements in Calcite through Crystallisation from Amorphous Calcium Carbonate: Simple Preparation of Reference Materials for Microanalysis

LA-ICP-MSによる方解石の同位体分析における不確実性は、主にデータの正規化と検証のために使われる標準試料の均質性によって支配される。本研究では、元素・同位体組成の均質な方解石の標準試料を作製するために、元素をドープした試薬溶液から沈殿させたアモルファス炭酸カルシウムを経由して、熱と圧力をかけて結晶化し、U、Pbと希土類元素を方解石に取り込ませた。X線吸収スペクトルから、Uは合成された方解石中にU(Y)として存在し、水性のウラニル・イオンとは異なる構造で存在することが示唆された。本研究の方解石へのUの取り込み率は、既報研究に比べ高かった。合成した方解石中の元素濃度のばらつきは12%未満で、概ね7%以内であった。238U/206Pb比のばらつきが各元素濃度のばらつきに応じて3~24%程度である一方で、207Pb/206Pb比のばらつきは1%以下であった。この合成方解石を標準試料として用いて、天然の方解石標準試料(WC-1)の年代測定を行ったところ、3%以内の不確かさで年代が求められた。本研究で提示した合成手法は、元素濃度を任意に調整した均質な方解石の合成に有効であり、また、合成試料はU-Pb地質年代学のための天然標準試料に代わる有望なものである。

Geostandards and Geoanalytical Research Vol.45 No.1 pp.189-205 2021
Y. Takahashi, M. Mikoshiba, T. Shimura, M. Nagata, H. Iwano, T. Danhara and T. Hirata

U-Pb ages of zircons from metamorphic rocks in the upper sequence of the Hidaka Metamorphic Belt, Hokkaido, Japan: Identification of two metamorphic events and implications for regional tectonics

北海道に分布する日高変成帯は島弧地殻の断片とされ、同帯変成岩類は高変成度の下部層と低変成度の上部層とに区分される。近年の下部層のジルコンU-Pb年代測定による変成年代(約19Ma)の報告により、日高変成帯の形成史の見直しが求められていた。そのため、上部層を対象にジルコンU-Pb年代測定を行った。黒雲母片麻岩の砕屑性コアは53.l±0.9Maを、変成(再結晶)リムは39.6±0.9Maを示した。一方、董青石-黒雲母片麻岩の砕屑性コアは46.5±2.8Maを、変成リムは35.9±0.7Maを示した。これらの結果から、日高変成帯上部層の原岩は約53-47Ma以降に形成され、上部層の変成作用は40-36Maであったと解釈される。また、上部層と下部層の接合は下部層の変成年代と下部層で形成され上部層に貫入している深成岩類がいずれも約19Maであることから19Ma以降であると考えられる。

Island Arc Vol.30 No.1 pp.12393_1-12393_15 2021
E. Balkanska, S. Georgiev, A. Kounov, T. Tagami and S. Sueoka

Fission-track analysis using LA-ICP-MS: Techniques and procedures adopted at the new low-temperature thermochronology laboratory in Bulgaria

The following contribution presents fission-track experiments using LA-ICP-MS technique performed at the first low-temperature thermochronology laboratory in Bulgaria, jointly established by new Low-temperature Thermochronology Laboratory at Sofia University and Geological Institute of Bulgarian Academy of Sciences. The laboratory is established in close collaboration with Kyoto University, Japan. Here, we provide all newly adopted laboratory procedures needed to obtain fission-track ages, including sample preparation, etching, fission-track observations and measurements, LA-ICP-MS analyses of uranium contents, and age calculation. The experiments were performed on four apatite and zircon standards and samples from Upper Cretaceous and Carboniferous igneous rocks from Central Sredna Gora Zone in the central Bulgaria.

Proceedings of the Bulgarian Academy of Sciences Vol.74 No.1 pp.102-109 2021
M. Niwa, K. Amano, R. Takeuchi and K. Shimada

Rapid Identification of Water-Conducting Fractures Using a Trace Methane Gas Measurement

結晶質岩を対象とした地層処分のサイト選定や安全評価にあたっては、透水性の高い水みち割れ目の分布を把握することが非常に重要である。本研究では、キャビティーリングダウン方式による高精度の可搬型メタンガス測定装置を用いて、水みち割れ目の検出を迅速に行う手法について検討を行った。瑞浪超深地層研究所の地下坑道を事例対象とした検討の結果、高濃度のメタンが測定される位置と、坑道掘削時に把握されている水みち割れ目の位置とがおおむね一致し、本装置を用いた測定が、水みち割れ目の大局的な分布を迅速・簡便に検出する上で有用であることが示された。

Groundwater Monitoring & Remediation Vol.41 No.3 pp.41-50 2021
T. Kawakami, S. Sueoka, T. Yokoyama, S. Kagami, G. E. King, F. Herman, S. Tsukamoto and T. Tagami

Solidification depth and crystallization age of the Shiaidani Granodiorite: Constraints to the average denudation rate of the Hida Range, central Japan

Solidification pressure and crystallization age of the ca 5 Ma Shiaidani Granodiorite (Hida Mountain Range, central Japan) are determined based on Al-in-hornblende geobarometry and U-Pb zircon dating. Al-poor patchy replacements developed in amphiboles are common in this granite and petrographic study revealed that the replacements include chloritized biotite and albitic plagioclase. These are probably the hydrothermally recrystallized domains, and should not be used for solidification pressure estimates. Magmatic rim of amphibole is characterized by Si < 7.3 a.p.f.u. (AlIV > 0.7 a.p.f.u), and utilized in solidification pressure estimate that yielded 0.17-0.29 GPa. The solidification age of the granite is estimated as ca 5.6-5.2 Ma using U-Pb zircon dating. From these data, the lower limit of an average denudation rate after ca 5.6-5.2 Ma for the area where Shiaidani Granodiorite is exposed is estimated as 0.93-2.5 mm/year.

Island Arc Vol.30 No.1 pp.12414_1 - 12414_11 2021
T. Yuguchi, K. Ishibashi, S. Sakata, T. Yokoyama, D. Itoh, Y. Ogita, K. Yagi and T. Ohno

Simultaneous determination of zircon U-Pb age and titanium concentration using LA-ICP-MS for crystallization age and temperature

ジルコンのU-Pb年代とチタンの濃度を同一スポットで同時に分析することにより、その結晶化年代と結晶化温度がわかる。花崗岩中のジルコンの結晶化年代と結晶化温度を一組のデータとして取得できれば、花崗岩が固化する前のマグマの時間-温度経路を知ることができる。一方で、LA-ICP-MSによる分析で低濃度のチタンを定量することは難しい。本研究では、コリジョン-リアクションセルが搭載された四重極型ICP-MSを用いて、2つの手法により低濃度チタンの定量を試みた。この手法を黒部川花崗岩体(KRG)、大崩山花崗岩体(OKG)、土岐花崗岩体(TKG)、遠野複合深成岩体(TPC)のジルコンに適用して分析したところ、既往研究と整合的なU-Pb年代およびチタン濃度を得た。KRG, OKG, TKG, TCPのジルコンの分析から得られた結晶化年代と結晶化温度から時間-温度経路を推定すると、試料採取されたそれぞれの場所においてジルコンが結晶化温度から急速冷却された時間-温度経路を特徴付けることができる。

Lithos Vol.372-373 pp.105682_1 - 105682_9 2020
K. Komura, H. Kaneda, T. Tanaka, S. Kojima, T. Inoue and T. Nishio

Synchronized gravitational slope deformation and active faulting: A case study on and around the Neodani fault, central Japan

本研究では、岐阜・福井県境の重力変形地形と、近接する根尾谷断層上で掘削調査を実施した。その結果、重力変形地形では少なくとも4回の成長イベントが検出され、それぞれの年代が240cal BP以降、1710-340cal BP、4730-3970cal BP、5570-5340cal BPに絞り込まれた。一方、根尾谷断層本体でも少なくとも計4回の古地震イベントが明らかとなり、それぞれの年代が新しいものから1891年濃尾地震、2010-1220cal BP、7180-2110cal BP、9540cal BPと推定され、本研究では重力変形地形のイベントが毎回根尾谷断層の活動に誘発されているものと結論付けた。また、クーロン応力変化のモデリングによると、本研究地域は根尾谷断層の活動により正断層運動が著しく促進されることが明らかとなった。従来、地震に伴う大規模地滑りや重力変形は地震動のみで論じられることが多かったが、本研究地域のように活断層のごく近傍では、地震動だけでなく、断層運動による地殻の静的歪みが重力変形の発生・成長に大きな影響を与えている可能性がある。

Geomorphology Vol.365 pp.107214_1 - 107214_22 2020
T. Watanabe, N. Tsuchiya, S. Yamasaki, Y. Sawai, N. Hosoda, F. W. Nara, T. Nakamura and T. Komai

A geochemical approach for identifying marine incursions: Implications for tsunami geology on the Pacific coast of northeast Japan

地層中の津波堆積物の分布から、過去の津波浸水域を推定することが可能である。津波浸水域に関する情報は、今後の防災や減災計画の基礎データとして利用することが期待されている。しかし、津波堆積物を用いて過去の津波浸水域を復元するにあたり、形成年代の決定、津波堆積物の供給源の特定、洪水や高潮堆積物との区別、及び目視で判別困難な泥質津波堆積物の検出等が現状で解決すべき課題となっている。本研究では上記の問題を解決する一つの手段として、津波堆積物の地球化学判別手法を提案した。仙台平野において採取された堆積物の化学分析を実施し、津波堆積物の判別手法の改良を試みた。分析の結果、カルシウム等の単成分による津波層検出は、後背地の特徴や貝殻の有無などの影響を強く受けることから必ずしも有効ではなく、ケイ素とアルミニウムとの相対比についても、砂層の検出には有効であるが、その供給源に関する情報は乏しいことが示された。一方、ナトリウムとチタンとの相対比を用いることによって海由来の物質で形成された堆積層を検出できる可能性が高いことが示唆された。

Applied Geochemistry Vol.118 pp.104644_1-104644_11 2020
T. Yuguchi, Y. Ogita, T. Kato, R. Yokota, E. Sasao and T. Nishiyama

Crystallization processes of quartz in a granitic magma: Cathodoluminescence zonation pattern controlled by temperature and titanium diffusivity

本研究は、花崗岩質マグマから晶出した石英を用いて、石英の生成メカニズムや結晶化温度からマグマ溜りの冷却プロセスに関する熱的変遷を論じた。本研究では、中部日本の土岐花崗岩体に産出する石英に着目し、(1)石英粒子の形状や産状の情報、(2)石英の結晶内部構造を反映するカソードルミネッセンス(CL)パターン、及び(3)石英中のチタン濃度から算出した結晶化温度を取得することで、石英の連続的な成長様式に関する新知見を得た。土岐花崗岩体の石英は、複数のCLパターンに区分できる。それらのCLパターンの相違は、メルト(マグマ)の温度やメルト中のチタンの拡散性に依存する。石英のCLパターンと結晶化温度条件から、土岐花崗岩体を形成したマグマの冷却温度条件を詳細に区分した。本研究により、マグマ溜りの詳細な熱史の解明に石英を用いたアプローチの有用性が示された。

Journal of Asian Earth Sciences Vol.192 pp.104289_1-104289_16 2020

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使用済燃料直接処分に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
北村暁、赤堀邦晃、長田正信

使用済燃料直接処分における放射性核種の瞬時放出率設定手法の構築

使用済燃料を再処理せず深地層中に処分(直接処分)した場合、放射性核種の放出挙動はガラス固化体の地層処分とは異なると考えられる。本論文では、直接処分における核種の放出挙動評価のひとつである瞬時放出率(IRF)の設定手法を構築した。IRFの設定にあたっては、諸外国の安全評価報告書等など最新の文献情報を参考に、瞬時放出挙動を、核分裂生成ガス放出率(FGR)に比例するものと一定値をとるものとに分類した。FGRについては、わが国の使用済燃料に対して取得されたデータを収集した上で、燃料挙動計算コードFEMAXIを使用して推奨値と最大値を算出した。また、算出したFGRや既往のIRF実測値を用いて、わが国の加圧水型原子炉(PWR)使用済燃料におけるIRFの推奨値と最大値を推定した。推定した推奨値を既往の文献値と比較したところ、概ね諸外国の設定値と同程度であることが確認された。

原子力バックエンド研究 Vol.27 No.2 pp.83-93 2020
杉田裕、谷口直樹、牧野仁史、金丸伸一郎、奥村大成

使用済燃料直接処分での処分容器の耐圧厚さの検討

使用済燃料を直接処分するための処分容器の一連の構造解析を実施して、処分容器の必要な耐圧厚さの予察的な検討結果を示した。直線、三角形、正方形に配置された2、3、4体の使用済燃料集合体を収容するように処分容器を設計した。処分容器の胴体部分および蓋部分の必要な耐圧厚さを評価するため、使用済燃料集合体の収容スペースの離間距離をパラメータとした。この検討では、応力評価ラインの設定の妥当性や解析におけるモデル長の影響など、解析に関する技術的知識も得られた。そして、これらは、さまざまな条件下で同様の評価を実行したり、より詳細な評価を進めたりするための基盤として参考となるものである。

日本原子力学会和文論文誌 Vol.19 No.3 pp.121-135 2020

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