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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成31年度/令和元年度)

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全項共通(国内・国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内・国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内・国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
大沼進、横山実紀、広瀬幸雄、大澤英昭、大友章司

無知のヴェールを用いた手続き的公正に基づく社会的決定:日本における高レベル放射性廃棄物地層処分候補地選定を題材とした仮想シナリオ実験

本研究では、誰もが潜在的に当事者となり得る状況(無知のヴェール下)が、高レベル放射性廃棄物の地層処分施設のサイト選定の手続き的公正を促進する方法として意義のあるものなのかを実証することを目的として、無知のヴェールの下でサイト選定を行っているスイスの方法と、日本の現在のサイト選定の方法でどちらが受け入れやすいかを、仮想的なシナリオ実験で調査した。その結果、スイスのサイト選定の方法の方が、わずかに受け入れやすいという結果を示した。

日本リスク研究学会第32回年次大会 東京
日本リスク研究学会第32回年次大会講演論文集 G2-4 pp.140-145
2019
飯野麻里、大沼進、広瀬幸雄、大澤英昭、大友章司

NIMBY施設の受容に対する補償の交換フレームの効果とTaboo trade-offs
—高レベル放射性廃棄物地層処分場のシナリオ実験—

本研究では、高レベル放射性廃棄物の地層処分場立地の受容に、補償の枠組み(金銭的補償と福祉的補償)の違いがもたらす影響についてTaboo trade-offs(神聖な価値と世俗的価値との間の交換)の点から調べることを目的として、シナリオ実験を行った。その結果、受容に関して有意な効果は見られず、補償の枠組みの違いは、HLW地層処分場の受容に影響を与えない可能性が示唆された。

日本リスク研究学会誌 Vol.29 No.2 pp.95-102 2019
大澤英昭、大友章司、広瀬幸雄、大沼進

高レベル放射性廃棄物地層処分施設の立地調査受容に信頼と手続き的公正が及ぼす影響

本研究では、手続き的公正及び信頼が、高レベル放射性廃棄物地層処分施設の立地の受け入れに及ぼす影響を確認するため、意見の反映状況で手続き的公正の高低を操作するシナリオと、価値の類似性で信頼の高低を操作するシナリオを用いて、シナリオ実験を行った。その結果は、手続き的公正及び信頼は、立地の受け入れに影響を与えていること、信頼が低い時ほど、手続き的公正が立地の受け入れに与える影響が強くなること、を示している。

人間環境学研究 Vol.17 No.1 pp.59-64 2019
大澤英昭、野上利信、星野雅人、徳永博昭、堀越秀彦

幌延深地層研究センターゆめ地創館および地下研究施設を活用したリスク・コミュニケーション

日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターでは、国民のみなさまの地層処分技術に関する研究開発および地層処分の理解を深めることを目的に、ゆめ地創館および地下研究施設を活用してリスク・コミュニケーションを実施してきた。本稿では、2013~2017年度、これらの施設の見学後に実施しているアンケート調査の結果を分析した。その結果は、理解度が深まると、長期の安全性についてはより不安な要素としてクローズアップされていることを示唆している。また、地下研究施設を見学している回答者の方が、見学していない回答者と比較して、地層処分の必要性、適切性、安全性をポジティブに評価していることなどから、本施設の見学が、地層処分の理解にとって貴重な体験になっていることが示唆される。

原子力バックエンド研究 Vol.26 No.1 pp.45-55 2019

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Kitayama, N. Taniguchi and S. Mitsui

Electrochemical behavior of carbon steel with bentonite/sand in saline environment

Current designs for the geological disposal of high-level radioactive wastes in Japan use carbon steel overpack containers surrounded by a mixed bentonite/sand buffer material, which will be located in a purpose built repository deep in the underground. There are suitable sites for a repository in Japan, however coastal areas are preferred from a logistics point of view. It is therefore important to perform the long-term performance of the carbon steel overpack and mixed bentonite/sand buffer material in the saline groundwaters of coastal areas. In the current study, the passivation behavior and initial corrosion rates of carbon steel with and without mixed bentonite/sand were tested as a function of pH in representative saline groundwaters. The main findings of the current study indicate that passivation of carbon steel with buffer material will be difficult in a saline environment, even at high pH = 12 conditions, and that the corrosion rate of carbon steel was more strongly affected by the presence of buffer material than by the concentration.

7th International Workshop on Long-term Prediction of Corrosion Damage in Nuclear Waste Systems (LTC2019) Nancy (France)
Materials and Corrosion Vol.72 No.1-2 pp.211-217 (2021/1)
2019
Y. Ogawa, S. Suzuki, N. Taniguchi, M. Kawasaki, H. Suzuki and R. Takahashi

Corrosion Resistance of Cast Steel Overpack for the HLW Disposal Concept of Japan

鋳鋼は、炭素鋼オーバーパックのレファレンス材料とされている鍛鋼の代替材料のひとつである。本研究では実規模の鋳鋼オーバーパックを試作するとともに、鋳造欠陥の検査を行った。また、このオーバーパックから切リ出した試験片を用いて腐食速度と応力腐食割れ感受性に関する腐食試験を行い、鍛鋼との比較を行った。ふたつの腐食試験より、鋳鋼の耐食性は鍛鋼と同等であることがわかった。

7th International Workshop on Long-term Prediction of Corrosion Damage in Nuclear Waste Systems (LTC2019) Nancy (France)
Materials and Corrosion Vol.72 No.1-2 pp.52-66 (2021/1)
2019

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
北村暁

地層処分システムの性能を評価するための熱力学データベースの整備
OECD/NEAのTDBプロジェクトと国内外の整備状況

高レベル放射性廃棄物や地層処分相当TRU廃棄物などの地層処分システムの性能を評価することを目的として、廃棄体が地下水に接触したあとの放射性核種の溶解および錯生成挙動を評価するために使用する熱力学データベース(TDB)が国内外で整備されている。本報告では、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が実施している国際プロジェクトを中心に、わが国および欧米各国で整備されているTDBを概説する。

日本原子力学会誌 Vol. 62 No.1 pp.23-28 2020
四辻健治、舘幸男、河村雄行、有馬立身、佐久間博

分子動力学法によるモンモリロナイト層間中の水とイオンの物性評価
—拡散モデルへの反映—

分子動力学シミュレーションによってモンモリロナイト層間間隙中の水分子やイオンの物性を調査した。膨潤挙動や安定な水和状態に対する層間陽イオンや層電荷による影響が最初に評価された。層間間隙中の水分子や陽イオンの拡散係数はバルク水と比較して小さく、層間間隙が広がるにつれてバルク水に近づくことが確認された。推定された層間間隙水の電粘性効果による粘性係数の変化は、1層あるいは2層水和状態において、また層電荷が高い条件において顕著であった。これらのMD計算によって得られた傾向は、既存の実測データや先行するMD計算事例とも整合することが確認できた。さらに、現状の拡散モデルに用いている電粘性効果を表現するモデルとパラメータは、MD計算結果と実測データの比較を通じて改善できることが示された。これらのMD計算によって得られる分子レベルでの現象理解は、圧縮モンモリロナイト中の拡散モデルの開発と改良に有益な情報を与えるものである。

粘土科学 Vol.58 No.1 pp.8-25 2019

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
P. C. M. Francisco, S. Mitsui, T. Ishidera, Y. Tachi, R. Soi and H. Shiwaku

Interaction of FeII and Si under anoxic and reducing conditions: Structural characteristics of ferrous silicate co-precipitates

The interaction of FeII and Si is at the heart of many critical geochemical processes in diverse natural and engineered environments. The interaction of these elements results in the formation of FeII -silicate phases, which play important roles in regulating the solubility and bioavailability of both FeII and Si, as well as serve as sinks for trace elements. Therefore, a detailed understanding of their structural characteristics may provide insights that may help in predicting their reactivity and stability under different conditions. In this work, co-precipitates with different Si/FeII ratios (0.5, 1.0 and 2.0) were synthesized under anoxic and reducing conditions at different solution pH (7, 9 and 11). The co-precipitates were studied using X-ray diffraction (XRD), infrared (IR) spectroscopy and Fe K-edge X-ray absorption spectroscopy (XAS). The results show the immediate and rapid formation of phyllosilicate-like local structures from solution. These incipient structural units lack long-range order but may serve as the precursors of crystalline phases.

Geochimica et Cosmochimica Acta Vol.270 pp.1-20 2020
S. Kimuro, A. Kirishima, Y. Kitatsuji, K. Miyakawa, D. Akiyama and N. Sato

Thermodynamic study of the complexation of humic acid by calorimetry

幌延深部地下水から抽出したフミン酸及び一般的なフミン酸と、銅(II)イオン及びウラニル(VI)イオンとの錯生成反応に対して熱量滴定法を適用し、ギブス自由エネルギー、反応エンタルピー及び反応エントロピーを決定した。一般的なフミン酸の錯生成反応が高分子電解質性と組成不均質性によって特徴付けられるのに対し、幌延深部地下水フミン酸の錯生成反応ではどちらの影響も確認されなかった。反応熱力学量を正確に決定することから、深部地下水フミン酸の特徴的な反応機構が明らかになった。

Journal of Chemical Thermodynamics Vol.132 pp.352-362 2019
T. Hamamoto, K. Ishida, S. Shibutani, K. Fujisaki, Y. Tachi, K. Ishiguro and I. McKinley

A systematic radionuclide migration parameter setting approach for potential siting environments in Japan

NUMO's recently published safety case involves utilisation of the safety case approach to provide a basis for preparation for future phases of work and development of a template for later, more complete and rigorous, safety cases. Advances include capturing potential siting environments in Site Descriptive Models (SDMs) and focusing post-closure safety assessment methodology on repository designs tailored to these SDMs. Radionuclide-specific parameters in the engineered barrier system (EBS), such as solubilities, sorption and diffusion values, are selected based on established chemical models that take into account evolution of porewater chemistry, alteration of EBS material and different host rock properties. Existing chemical thermodynamic databases developed in Japan have been used for the coupled geochemical and mass transport analyses applied to set these parameters. Nevertheless, in view of fundamental uncertainties in the thermodynamic approach, expert judgment played a key role in the process. This paper discusses the methodology used to set "reasonably conservative" radionuclide migration parameters for the illustrative SDMs, with a focus on chemistry which can be captured in existing models only by introducing significant simplifications.

2019 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM 2019) Knoxville (USA)
Proceedings of 2019 International High-Level Radioactive Waste Management Conference (IHLRWM 2019) (CD-ROM) pp.77-82
2019

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
丹生屋純夫、畑浩二、鵜山雅夫、青柳和平、棚井憲治

気液二相流実験によるAE発生メカニズムの解明

本研究では、岩盤割れ目中の気液二相流体の流動に伴い発生するAEの特徴を解明するため、一次元の水の流れをモデル化した細管路実験と、割れ目中における二次元の水の流れをモデル化した隙間平板実験を実施した。実験の結果、圧力脈動がAE発生に関係していること、管路径の寸法には影響しないことなどが分かった。また、振幅値、持続時間、周波数およびスペクトル等のAEパラメータを基に整理した結果、幌延深地層研究センターの地下施設で実施している長期AEモニタリングにおいて採用している、岩盤の振動に起因するAEとそれ以外のAEを弁別する指標の妥当性を示すことができた。

第47回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.92-97
2020
辻正邦、沖原光信、中島均、齋藤亮、青柳和平、佐藤稔紀

海水条件下の岩盤亀裂に適した溶液型グラウトの特性取得

地層処分のための工学技術として、坑道掘削時のグラウト技術(湧水抑制対策)の高度化開発が多く行われてきた。ただし、海水条件下を想定した物性取得や硬化のメカニズムを考慮した具体的な設計・施工方法は未確立である。このような状況を踏まえて、海水条件下における知見、基本物性取得、浸透特性取得、研究レビューを実施したので、その概要について報告する。

第47回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.266-271
2020
松井裕哉、渡辺和彦、見掛信一郎、新美勝之、小林伸司、戸栗智仁

瑞浪超深地層研究所における地下500mまでを対象とした地震動観測結果とその分析

日本原子力研究開発機構は、地震による地下深部構造物への影響に着目し、瑞浪超深地層研究所の換気立坑を利用して、地表、深度100m、深度300mおよび深度500m地点に地震観測システムを設置し、同一地震における深度方向の地震動変化を十数年間観測した。その結果、震源位置やマグニチュードの異なる十数個の地震に対する地上から地下500mまでの間の地震動観測記録を取得し、釜石鉱山での観測などの既往の研究と同様の深度方向の地震動変化に関する知見を得た。また、得られた地震動の波形データなどを用い、地震動のフーリエ振幅と位相差の深度分布を分析した所、直下型地震では理論値に近い結果になる一方、遠方の地震では理論値との乖離があることなどを確認した。

第47回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.293-298
2020
笹尾英嗣

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの歩みと瑞浪超深地層研究所の概要

原子力機構は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業と安全規制の両面を支えるため、地層処分技術に関する研究開発を進めてきた。このうち、東濃地科学センターでは、深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として、岐阜県瑞浪市において超深地層研究所計画を進めており、瑞浪超深地層研究所を設置している。本報告では、瑞浪超深地層研究所の概要と東濃地科学センターの歩みを紹介した。

地質と調査 2019年 第2号 (通巻154号) pp.67-72 2019
望月陽人

若手優秀講演賞の受賞に際して

日本地下水学会 2018年秋季講演会における発表「深部地下水における酸化還元電位の不確かさに関する事例研究」が評価され、若手優秀講演賞を受賞した。今回の受賞に関する所感を同学会誌に寄稿する。

地下水学会誌 Vol.61 No.4 p.346 2019
佐藤伸、大野宏和、棚井憲治、山本修一、深谷正明、志村友行、丹生屋純夫

熱・流体・応力連成解析による水蒸気が及ぼす再冠水時のバリア性能への影響

本検討は、幌延深地層研究センターで実施中の人工バリア性能確認試験を対象に、熱・水・応力連成解析を実施した。再冠水時の熱・水・応力連成挙動は、間隙水の加熱により生じる水蒸気や、間隙圧の上昇により生じる気相の液相への溶解等の相変換の影響を受けると考えられる。そこで、相変換可能な熱・水・応力連成解析を実施し、水蒸気の発生や間隙空気の間隙水への溶解が再冠水挙動にどのような影響を及ぼすのか考察した。その結果、水蒸気を考慮することにより、ヒーター周辺の間隙率が増大し、乾燥密度の分布が生じた。さらに、気液二相流パラメータを変化させると緩衝材の応力状態が変化し、それに伴い、膨潤による緩衝材の膨出量にも影響を及ぼした。このため、緩衝材の長期挙動評価のうち再冠水挙動を模擬するには、相変換を考慮する必要があり、さらに、精緻な予測を行うためには、気液二相流パラメ ータの評価が重要であることが分かった。

第13回環境地盤工学シンポジウム 札幌市 2019
尾上博則、小坂寛、松岡稔幸、小松哲也、竹内竜史、岩月輝希、安江健一

長期的な地形変化と気候変動による地下水流動状態の変動性評価手法の構築

高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価は、処分施設閉鎖後、数万年以上に及ぶ時間スケールを対象として実施される。そのため、長期的な自然現象による影響を考慮した地下水の流速や移行時間といった地下水流動状態の長期変動性の評価技術の整備は重要な技術開発課題である。本研究では、長期的な自然現象のうち隆起・侵食による地形変化や気候変動に着目し、それらに対する地下水流動状態の変動性を、複数の定常解析結果に基づく変動係数で評価可能な手法を構築した。岐阜県東濃地域を事例とした評価手法の適用性検討の結果、過去100万年間の地形変化や涵養量の変化による影響を受けにくい地下水の滞留域を三次元的な空間分布として推定した。本評価手法を適用することで、地層処分事業の評価対象領域において、地形変化や気候変動に対する地下水流動状態の変動性が小さい領域を定量的かつ空間的に明示することができる。さらに、岐阜県東濃地域における事例検討結果を踏まえて、外挿法を用いた地下水流動状態の変動性の将来予測の基本的な考え方を整理するとともに、将来予測手法の適用可能な時間スケールについて考察した。

原子力バックエンド研究 Vol.26 No.1 pp.3-14 2019

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
A. Mochizuki, E. Ishii, K. Miyakawa and H. Sasamoto

Mudstone redox conditions at the Horonobe Underground Research Laboratory, Hokkaido, Japan: Effects of drift excavation

高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設・操業時には、坑道内の大気が掘削損傷領域(EDZ)に侵入し、坑道周辺の岩盤や地下水が酸化状態に変化することが想定される。坑道掘削が岩盤や地下水の酸化還元状態に与える影響を評価するために、幌延深地層研究センターの調査坑道周辺において酸化還元状態に関する調査を実施した。調査坑道周辺に掘削されたボーリング孔において、地下水のEhは-150mVより低く、酸化の指標となるSO42-濃度はおおむね1μmol L-1未満であった。ボーリング孔に設けられた区間の50%以上をガスが占め、その組成は主にCH4とCO2からなり、N2とO2の割合はわずかであった。坑道から採取されたコア試料を分析した結果、黄鉄鉱の酸化溶解や硫酸カルシウムの沈殿は認められなかった。以上の結果から、今回調査したEDZにおいては酸化の顕著な兆候は認められず、その理由として、地下水圧の低下に伴い脱ガスしたCH4やCO2が岩盤中の割れ目を占め、大気の侵入が抑制された可能性が示唆された。

Engineering Geology Vol.267 pp.105496_1 - 105496_11 2020
B. Al-Shayeb, R. Sachzdeva, L-X. Chen, F. Ward, P. Munk, A. Devoto, C. J. Castelle, M. R. Olm, K. Bouma-Gregson, Y. Amano, C. He, A. Sharrar, B. Brooks, A. Thomas, A. Lavy, P. Matheus-Carnevali, C. Sun, D. S. A. Goltsman, K. Borton, T. C. Nelson, R. Kantor, A. L. Jaffe, R. Keren, I. F. Farag, S. Lei, R. Méheust, K. Finstad, R. Amundson, K. Anantharaman, J. Zhou, A. J. Probst, M. E. Power, S. Tringe, W-J. Li, K. Wrighton, S. Harrison, J. Tung, E. Archie, F. M. Aarestrup, M. Morowitz, D. A. Relman, J. A. Doudna, A-C. Lehours, L. Warren, J. H. D. Cate, J. M. Santini and J. F. Banfield

Clades of huge phage from across Earth’s ecosystems

Phage typically have small genomes and depend on their bacterial hosts for replication. We generated metagenomic datasets from many diverse ecosystems and reconstructed hundreds of huge phage genomes, between 200 kbp and 716 kbp in length. Thirty four genomes were manually curated to completion, including the largest phage genomes yet reported. Expanded genetic repertoires include diverse and new CRISPR-Cas systems, tRNAs, tRNA synthetases, tRNA modification enzymes, initiation and elongation factors and ribosomal proteins. Phage CRISPR have the capacity to silence host transcription factors and translational genes, potentially as part of a larger interaction network that intercepts translation to redirect biosynthesis to phage-encoded functions. Some phage repurpose bacterial systems for phage-defense to eliminate competing phage. We phylogenetically define seven major clades of huge phase from human and other animal microbiomes, oceans, lakes, sediments, soils and the built environment. We conclude that large gene inventories reflect a conserved biological strategy, observed across a broad bacterial host range and resulting in the distribution of huge phase across Earth's ecosystems.

Nature Vol.578 pp.425-431 2020
Y. Nara, M. Kato, T. Sato, M. Kohno and T. Sato

Permeability Measurement for Macro-Fractured Granite Using Water Including Clay

地下を利用する様々なプロジェクトにおいて、長期的な地下水流動を評価することは重要である。長期的には花崗岩中の亀裂は鉱物の充填によって水みちが変化する。通常、岩石を対象とした室内試験では蒸留水を使用するが、実際の岩盤中では地下水に粘土鉱物が含まれる。そのような状態を模擬した透水試験を実施し、粘土鉱物の蓄積により透水性が低下する結果を得た。

The 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) Okinawa (Japan)
Proceedings of the 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) (USB Flash Drive) 6 pages
2019
K. Aoyagi, Y. Chen, E. Ishii, A. Sakurai and T. Ishida

Visualization of fractures induced around the gallery wall in Horonobe Underground Research Laboratory

本研究では、幌延深地層研究センターの350m調査坑道を対象として、坑道掘削時の割れ目の性状を検討することを目的とした。検討に際し、坑道周辺に約1mのボーリング孔を掘削し、低粘性な樹脂を注入し、割れ目を固定した。その後、オーバーコアリング試料を採取し、試料の観察を行った。結果として、坑道掘削により形成されたと推定される割れ目は、壁面から0.8mの範囲まで発達していた。また、割れ目は壁面から0.25mの範囲において連結しあっており、開口幅は最大で約1.0mmであることがわかった。これらの観察結果は、坑道周辺の掘削影響領域の割れ目形成プロセスの理解のための基礎情報として有用であるといえる。

The 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) Okinawa (Japan)
Proceedings of the 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) (USB Flash Drive) 6 pages
2019
Y. Ozaki, H. Matsui, A. Kohashi and H. Onoe

Hydro-Mechanical (HM) response during compression and decompression of hydraulic pressure

瑞浪超深地層研究所では深度500mにおいて岩盤変位計により岩盤の変位のモニタリングを実施している。ボーリング孔掘削に伴う水圧の変動に伴い、岩盤の変位が観測されている。岩盤変位計を設置しているボーリング孔内には、複数のき裂が観測されているものの、この水圧変動時における岩盤の変形挙動は弾性的なものであった。この岩盤変位を評価するために、有限要素法による数値シミュレーションを実施したところ、観測された岩盤の変位量と概ね一致する岩盤変位の値が算出された。これらの結果から、水圧変動に伴う岩盤の変位において、割れ目部の動きの寄与は比較的小さく、岩盤は水圧変動に対して安定的であるでるものと考えられる。

The 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) Okinawa (Japan)
Proceedings of the 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) (USB Flash Drive) 6 pages
2019
K. Miyakawa, K. Aoyagi, H. Sasamoto, T. Akaki and H. Yamamoto

The effect of dissolved gas on rock desaturation in artificial openings in geological formations

高レベル放射性廃棄物の地層処分場の掘削により、坑道周辺岩盤の損傷や、溶存ガスの発生等による不飽和領域の形成といった掘削影響領域が生じる。そこでは、岩盤の透水性の増大や、地下水の水質変化といった、地層が有する放射性核種の移行を遅延させる機能に影響を与えることが考えられる。そのため、大規模地下施設の建設・操業・閉鎖に伴う地質環境(水理地質構造や地下水の流動特性・物質移動特性・地球化学特性等)の変化過程や定常状態に達するまでの時間やプロセスを、確度の高い情報に基づきモデル化するための一連の技術開発が必要である。本研究では、溶存ガスが岩盤中の不飽和領域の形成に与える影響を調べるために、幌延深地層研究所の深度140m、250m、350m調査坑道の条件を模擬した数値・感度解析を実施した。その結果、溶存ガス濃度は、不飽和領域の形成に対して、飽和度と領域の広がりの両方に影響する一方で、岩盤の透水性は、主に不飽和領域の広がりのみに影響することが分かった。

The 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) Okinawa (Japan)
Proceedings of the 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) (USB Flash Drive) 6 pages
2019
Y. Okazaki, H. Hayashi, K. Aoyagi, S. Morimoto and M. Shinji

Effects of Heterogeneity of Geomechanical Properties on Tunnel Support Stress during Tunnel Excavation

トンネルの支保工の設計の際、数値解析により掘削時の岩盤の挙動や支保工ヘ作用する応力が予想される。しかしながら、解析では、岩盤の持つ力学的な不均質性を考慮しない場合が通常である。そのため、解析では掘削時の岩盤挙動を正確に再現できていない可能性がある。そこで、本研究では、幌延深地層研究センターの深度350mの調査坑道を対象として、岩盤の持つ不均質性を考慮したトンネル掘削解析を実施した。結果として、調査坑道で計測されたような局所的に作用する支保工応力を再現するためには、岩盤の不均質性を考慮する必要があることが明らかとなった。また、不均質性の寸法の考慮も重要な要素であることが明らかとなった。

The 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) Okinawa (Japan)
Proceedings of the 5th ISRM Young Scholars’ Symposium on Rock Mechanics and International Symposium on Rock Engineering for Innovative Future (YSRM2019 and REIF2019) (USB Flash Drive) 6 pages
2019
Y. Matsuura, A. Hayano, K. Itakura and Y. Suzuki

Estimation of planes of a rock mass in a gallery wall from point cloud data based on MD PSO

三次元レーザスキャナの計測では、計測対象物表面に対して高解像度の距離計測が行われ、その計測結果として、計測対象物表面の三次元形状を表す点群データが取得される。取得される点群データは、トンネル壁面の岩盤に分布する割れ目といった不連続面の抽出に活用することができ、その際、点群データから小平面を推定する必要がある。本研究では、点群データから小平面を推定するアルゴリズムとして多次元粒子群最適化(MD PSO)に基づく手法を開発した。MD PSOでは、点群データをバウンディングボックスにより区分し、それぞれの点の法線ベクトルを求め、それに基づき点群データを複数のクラスターに分類する。そして、それぞれのクラスターの点群データに対する最小二乗法により面が推定される。新しく開発されたMD PSOに基づくアルゴリズムを実際の坑道壁面の点群データを用いて適用性を評価した。MD PSOアルゴリズムを適用した場合、従来手法の可変格子分割法(VBS)に基づくアルゴリズムと比較して、7%高い正確性を示した。

Applied Soft Computing Vol.84 pp.105737_1 - 105737_9 2019
N. Hatano, K. Yoshida, Y. Adachi and E. Sasao

Intense chemical weathering in southwest Japan during the Pliocene warm period

西南日本に分布する更新世堆積物の全岩主要成分と希土類元素組成、鉱物組成を調査した。その結果、化学的風化の強度、源岩の組成、粒径には延長方向にも水平方向にも広範なバリエーションがあり、化学組成は源岩の組成と堆積物の粒径に影響されるが、堆積環境と更新世温暖期の化学的風化の強度との間に関連があることが明らかになった。さらに、源岩の組成や粒度が異なる堆積物であっても、CIA値が90を超す堆積物の希土類元素組成とカオリナイトに富む粘土鉱物の含有量は、西南日本において更新世(3~4Ma)における激しい風化条件を示すことがわかった。

Journal of Asian Earth Sciences Vol.184 pp.103971_1 - 103971_13 2019
D. Savage, J. Wilson, S. Benbow, H. Sasamoto, C. Oda, C. Walker, D. Kawama and Y. Tachi

Natural Systems Evidence for the Effects of Temperature and the Activity of Aqueous Silica upon Montmorillonite Stability in Clay Barriers for the Disposal of Radioactive Wastes

本研究では、モンモリロナイトの安定性における温度及び溶液中のシリカ活量の影響に係る天然事例について評価を試みた。異なる熱力学データベースを用いた熱力学的モデルにより、モンモリロナイトの安定領域は、0~140℃の温度領域であると推測された。一方、溶液中のシリカ活量が低い場合、モンモリロナイトの安定領域の一部は、イライトが安定な領域に変わることも示唆された。また、日本の沖合におけるODPサイトで得られた堆積物中の間隙水や鉱物組成に係るデータでは、60℃程度の温度までは、モンモリロナイトと非晶質シリカが安定であるが、より高温の条件では、イライトと石英の組み合わせが安定であることも示唆された。一方、百万年を越えるような長期においても、80℃よりも低温の条件では、スメクタイトの一種であるモンモリロナイトは、イライトに変換されないことも示唆された。

Applied Clay Science Vol.179 pp.105146_1 - 105146_10 2019
Y. Saitoh, S. Hirano, T. Nagaoka and Y. Amano

Genetic survey of indigenous microbial eukaryotic communities, mainly fungi, in sedimentary rock matrices of deep terrestrial subsurface

培養に依存しない分子生物学的手法によって、さまざまな環境中の微生物群集組成について分析が可能となった。これらの手法により、嫌気的で太陽光の存在しない、高温・高圧の極限環境からも多くの未培養原核生物が検出されている。近年、深海環境においても真核生物が検出されており、その結果真核生物が従来考えられてきたよりも広範囲にわたって生息可能であることが示された。本研究では、幌延深地層研究センターの地下施設深度250mの環境において、分子生物学的手法を用いた真核生物に関する研究を行った。その結果、幌延の深部堆積岩環境において、菌類が真核生物群集の優占種であることが示された。また、岩石試料中からZygomycete, Basidiomycete, Ascomyceteのような様々な種の菌類が検出された。本研究は、深部堆積岩地下環境における真核生物の多様性に関する研究として世界初の成果である。

Ecological Genetics and Genomics Vol.12 pp.100042_1 - 100042_9 2019
E. Ishii

Protolith identification of bedding-parallel, smectite-bearing shear zones in argillaceous and siliceous marine sediments: Discriminating between tephra-derived shear zones and host-rock-derived fault gouges

スメクタイトを含むせん断帯はスメクタイトの独特な物理化学特性により地球科学、地球工学の様々な分野で重要となっている。同せん断帯は海成粘土質/珪質堆積物中に広く挟在するが、その起源としてテフラ起源と母岩起源のものが考えられ、両者は潜在的にスメクタイト含有量、拡がり、形成時期の点で異なる。しかし、その起源を観察により特定することは困難である。本論はその特定手法として、粘土鉱物中のイライトに対するスメクタイト含有量と全岩化学組成のAl2O3/TiO2(wt%/wt%)を用いた手法を提案する。高いスメクタイト含有量はテフラ起源の証拠となり得るが、この値はせん断変形に伴う鉱物学的擾乱/変質により低下することがあり、識別が困難になる。先行研究に基づくと、母岩と異なるAl2O3/TiO2もテフラ起源の証拠となり、その測定誤差もスメクタイトの含有量の誤差と比べれば非常に小さいが、例えそのせん断帯がテフラ起源であっても母岩と同じAl2O3/TiO2を示すことがある。これらの指標を摺曲した北海道の珪質泥岩に適用した結果、両指標を組み合わせることにより、せん断帯の起源をより簡便に、より高精度で特定できることが確認できた。

Engineering Geology Vol.259 pp.105203_1 - 105203_9 2019
T. Kubo, N. Matsuda, K. Kashiwaya, K. Koike, M. Ishibashi, T. Tsuruta, T. Matsuoka, E. Sasao and G. W. Lanyon

Characterizing the permeability of drillhole core samples of Toki granite, Central Japan to identify factors influencing rock-matrix permeability

花崗岩基質部の浸透率は主にマイクロクラックに規制される。本研究は土岐花崗岩を対象に、基質部の浸透率を支配する要因の特定を目指して、ボーリングコア試料の浸透率を、窒素ガス圧入式パーミアメータを用いて測定した。その結果、浸透率は断層帯や割れ目の多い場所で高く、弾性波速度と明瞭な相関が認められた。また、浸透率の特徴は、試料のマンガン/鉄比によって2つのグループに区分できることから、岩相が浸透率を規制する要因の一つであることが分かった。さらに、浸透率はケイ素と負の相関、カルシウムと正の相関があり、ケイ酸塩鉱物の溶解や炭酸塩鉱物の沈殿が浸透率に影響を及ぼしていることが明らかになった。このことから、断層活動に加えて、熱水活動が浸透率を規制する要因であると考えられた。

Engineering Geology Vol.259 pp.105163_1 - 105163_15 2019
M. Tsuji, K. Aoyagi, H. Nakashima, M. Okihara and T. Sato

Characterisation of colloidal silica grout under saline groundwater - Overall results for 3-year research project

本論文は、岩盤グラウト技術の高度化を目的とした、塩水条件の地下水中の溶液型グラウトの特性取得に関する3か年の研究成果概要を示すものである。初期段階では、溶液型グラウトの最新技術に関する調査を実施した。その後、実用性のある配合方法を開発し、塩水を練混ぜ水とした場合または、塩水を浸漬水とした場合の溶液型グラウトの各種特性データを取得した。さらに、塩水条件下でのグラウト浸透に関する理論を提案し、注入試験を実施した。最終年度に開催した第2回ワークショップでは、本研究で得られた知見がグラウト技術の発展に一定の寄与するものであると認められた。

Nordic Grouting Symposium 2019 Helsinki (Finland)
Proceedings of the Nordic Grouting Symposium 2019 (Internet) 15 pages
2019
J. Martikainen, H. Nakashima, M. Okihara, K. Aoyagi and T. Sato

Characterisation of colloidal silica grout under saline groundwater - Penetration theory and injection tests in a fracture test system

本論文は、塩水条件の地下水中の溶液型グラウトの特性取得に関する研究成果の一部を示すものである。ここでは、グラウト浸透特性に対する塩水による影響把握を目的とし、考案したグラウト浸透理論を室内試験により検証した。本理論は、Funehagの提唱する既存の浸透理論に、塩水地下水条件下を対象に時間係数φを追加したものである。本試験では、平行平板試験装置を用いて5種類の異なる環境を模擬した地下水で装置内を満たし、ヨーロッパ製・日本製それぞれの溶液型グラウトに対して注入試験を実施した。静水環境下では、全ケースにおいて比較的均質なゲルによる浸透領域が確認された。得られたφの分析結果から、今後の新たなグラウト手法として、φの逆数を掛けた長いゲルタイムの配合を設計することで、必要浸透距離を確保することを提案した。本検討では知見が多く得れらたが、浸透理論の発展には更なる研究開発が必要である。

Nordic Grouting Symposium 2019 Helsinki (Finland)
Proceedings of the Nordic Grouting Symposium 2019 (Internet) 13 pages
2019
T. Nohara, M. Uno and N. Tsuchiya

Enhancement of Permeability Activated by Supercritical Fluid Flow through Granite

この地質学的研究は、地熱活動の痕跡を評価するために、花崗岩の電子プローブマイクロアナライザ解析を利用している。角閃石-長石温度計を適用し、ガラス状脈の温度は約700℃と推定された。ボーリング岩石コアの肉眼および顕微鏡の観察の結果は、角閃石および斜長石によるマイクロフラクチャーの充填が、超臨界流体の流れの軌跡であることを明らかにした。粒界マイクロフラクチャーおよび平行マイクロフラクチャーは、白亜紀後期における花崗岩体の定置直後に起こったと考えられる超臨界流体の限られた活動によって形成された痕跡と認識された。現在の高い透水性は、超臨界流体に関連したマイクロフラクチャーネットワークと関係すると考えられた。超臨界流体による割れ目の痕跡は、深さ1200mの坑井を用いて簡易的に把握された。各試験区間の透水性と割れ目の特徴とに基づいて代表的なタイプが提案された。緑泥石充填の割れ目タイプは、相対的に小さい割れ目分布密度を示したにも関わらず、高い透水性に対応した。この研究の結果は、透水性の向上は、花崗岩を流れた超臨界流体によって活性化されたことを示した。

Geofluids Vol.2019 pp.6053815_1 - 6053815_16 2019
S. Ogata, H. Yasuhara, K. Aoyagi and K. Kishida

Coupled THMC analysis for predicting hydro-mechanical evolution in siliceous mudstone

We developed a coupled THMC model that can describe the long-term evolution in hydraulic and mechanical properties of the rock masses such as permeability and stiffness due to geochemical reactions within rock fractures induced by cavity excavation. Using the developed model, long-term prediction analysis by assuming the subsurface environments near the radioactive waste repository was conducted. Prediction results show that although many fractures are generated near the disposal cavity, which induces the permeability increase and the elastic modulus decrease in the cracked zone during the excavation, after the excavation the permeability and the elastic modulus of the damaged zone decreased to that of the intact zone and increased to 30% of the initial permeability, respectively. This evolution in rock permeability and stiffness after excavation was caused by pressure solution at contacting asperities within fractures. Therefore, it is concluded that pressure solution within the fractures has significant impact on the damage of rock masses in EDZ area by cavity excavation.

53rd US Rock Mechanics / Geomechanics Symposium New York (USA)
Proceedings of 53rd US Rock Mechanics / Geomechanics Symposium (USB Flash Drive) ARMA 19-1583 (6pages)
2019
N. Hatano, K. Yoshida and E. Sasao

Effects of grain size on the chemical weathering index: A case study of Neogene fluvial sediments in southwest Japan

堆積物の粒径の変化は供給源における化学的風化の評価を複雑にする。化学的風化の復元における粒径の影響を評価するため、西南日本に分布する中新世と鮮新世の堆積物を用いて鉱物・地球化学的研究を行った。その結果、Al2O3/SiO2が粒径の指標として適することがわかった。また、細粒堆積物は高い化学的風化度を示すのに対して、粗粒堆積物は幅広い化学的風化度を示す。中間的な粒度の堆積物は中新世と鮮新世の堆積物で明瞭な相違が認められた。中間的な粒度の堆積物では、中新世が鮮新世よりも高い化学的風化度を示す。この結果から、化学的風化の比較にあたっては、Al2O3/SiO2比から中間的な粒度の堆積物を抽出して評価することが望ましいことがわかった。

Sedimentary Geology Vol.386 pp.1-8 2019
K. Nakata, T. Hasegawa, D.K. Solomon, K. Miyakawa, Y. Tomioka, T. Ohta, T. Matsumoto, K. Hama, T. Iwatsuki, M. Ono and A. Marui

Degassing behavior of noble gases from groundwater during groundwater sampling

地下水に溶存している希ガス (He、Ne、Ar、Kr、Xe) は、地下水の起源や滞留時間、涵養温度などの推定に使われる。地下水に溶存しているガスを全て定量することが望ましいが、一方で、地下水の採取に伴う溶存ガスの脱ガスを避けることは難しい。本研究は、地下水の採取に伴う溶存希ガスの脱ガス挙動について調べ、その補正方法を提案するものである。地下施設及び深層ボーリングから地下水試料を採取し、原位置の圧力を維持した状態で採取した試料と、圧力を低下させて脱ガスさせた試料との比較を行った。その結果、溶存ガス圧が低い試料(約4.6気圧以下)については、大気圧下で脱ガスさせた湯合、気液平衡が成り立つことが分かった。一方で、溶存ガス圧が高い試料(約32気圧)については、気液平衡が成り立たないことが分かった。気液平衡が成り立つ試料については、脱ガスの影響を補正することが可能であるが、気液平衡が成り立たない試料については、補正が困難であり、さらなる検討が必要である。

Applied Geochemistry Vol.104 pp.60-70 2019
T. Sato, K. Aoyagi, N. Miyara, Ӧ. Aydan, J. Tomiyama and T. Morita

The dynamic response of Horonobe Underground Research Center during the 2018 June 20 earthquake

2018年6月20日に宗谷地方を震源とする地震が発生し、幌延町では深度4が観測された。幌延深地層研究所に設置された地震計や、防災科技研が設置したKik-NetやK-Netにより地震動が観測された。この地震動について周波数特性や増幅特性について解析され、さらに地層処分の安全性について検討を行った。

2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa Okinawa (Japan)
Proceedings of 2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa pp.640-645
2019
K. Aoyagi, T. Tokiwa, T. Sato and A. Hayano

Fracture characterization and rock mass behavior induced by blasting and mechanical excavation of shafts in Horonobe Underground Research Laboratory

本研究では、幌延深地層研究センターの発破掘削で施工された東立坑および機械掘削で施工された換気立坑において、掘削損傷領域の定量的な違いを検討することを目的とした。両立坑で実施した壁面観察の結果、発破掘削では、機械掘削と比較して、掘削に伴い発生したと考えられる割れ目が多く確認された。また、壁面で計測された弾性波速度に関しても、発破掘削で施工された東立坑の方が、機械掘削で施工された換気立坑よりも小さい値であった。これらの結果から、発破掘削の方が壁面岩盤に与える損傷の度合いが大きいことがわかった。さらに、発破掘削では、切羽前方の岩盤を補強するような支保パターンが、壁面の損傷を低減するのに最適である可能性が示された。

2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa Okinawa (Japan)
Proceedings of 2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa pp.682-687
2019
K. Kubota, K. Aoyagi and Y. Sugita

Evaluation of the excavation disturbed zone of sedimentary rock in the Horonobe Underground Research Laboratory

高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設時には、坑道周辺に掘削影響領域が形成される。この領域の存在により、岩盤内の核種の移行挙動に影響が生じるため、掘削影響領域の理解は重要である。掘削影響領域の評価のために、本研究では、幌延深地層研究センターの深度140mおよび250m調査坑道において、坑道掘削前、掘削中、および掘削後に原位置試験を実施した。結果として、140m調査坑道では、坑道掘削により生じた割れ目が0.45mの範囲まで発達しており、250m調査坑道では、約1mの範囲まで発達していることが分かった。また、不飽和領域に関しては、140m調査坑道では約1m発達したが、250m調査坑道ではほとんど発達していないことがわかった。

2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa Okinawa (Japan)
Proceedings of 2019 Rock Dynamics Summit in Okinawa pp.729-733
2019
T. Yuguchi, K. Shoubuzawa, Y. Ogita, K. Yagi, M. Ishibashi, E. Sasao and T. Nishiyama

Role of micropores, mass transfer, and reaction rate in the hydrothermal alteration process of plagioclase in a granitic pluton

結晶質岩内部における過去の流体の化学的特性を復元するためには、流体の化学的特性を記録しつつ形成された変質鉱物を研究対象とすることが有効となる。そこで本研究は、中部日本の土岐花崗岩体中に認められる斜長石の熱水変質プロセスを斜長石中の微小孔の役割、物質移動、反応速度の観点から論じ、斜長石の変質をもたらす熱水の化学的特徴の変遷について検討した。斜長石の変質はアルバイト化、カリ長石化、およびイライトの形成により特徴づけられる。本研究では、(1)変質領域と非変質領域の微小孔の分布特性の相違、(2)反応式の構築による斜長石変質に伴う流入・流出成分の解明、(3)イライトK-Arの年代決定に基づく変質年代・温度条件の推定、(4)斜長石の変質をもたらす年代・温度条件における熱水の化学的特徴の時間的な推移について論じた。

American Mineralogist Vol.104 No.4 pp.536-556 2019

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
國分陽子

地質試料の年代測定

日本原子力研究開発機構東濃地科学センター土岐地球年代学研究所では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、地質環境の長期安定性に関する研究として地震や火山、隆起侵食、海水準変動等の自然現象の研究を行っている。この研究では、これら様々な自然現象について数万年から数百万年の評価が求められていることから、当研究所では、様々な自然現象の幅広い年代範囲を網羅するように、複数の年代測定技術の開発に取り組んでいる。これらの技術開発については、名古屋大学宇宙地球環境研究所との研究協力協定のもと、両者が有する加速器質量分析装置や電子プローブマイクロアナライザーに関する情報交換や技術供与を行うとともに、地球科学分野における共同研究も行っている。

ISEE Newsletter Vol.9 p.4 2020
梶田侑弥、福田将眞、末岡茂、長谷部徳子、田村明弘、森下知晃、田上高広

東北日本弧前弧域における熱年代学的研究:アパタイトFT年代予報

太平洋プレートと北米プレート間の沈み込み帯に形成された島弧である東北日本弧の前弧域(阿武隈山地・北上山地)を対象として、アパタイトフィッション・トラック法を用いて隆起・削剥史を検討した。試料は、各山地を横断する方向にそれぞれ6地点と5地点で採取した。阿武隈山地では2地点で年代値が得られ、46.1±6.9Maと73.9±26.7Maと、先行研究と調和的な結果となった。北上山地では、同じく2地点で年代が得られ、66.8±10.4Maと65.8±10.4Maとなった。この2つの年代は先行研究より有意に若いが、両者の研究地域間には早池峰構造帯東縁断層が分布しており、年代差との関係は今後の検討課題である。

フィッション・トラックニュースレター No.32 pp.6-7 2019
小林侑生、末岡茂、福田将眞、長谷部徳子、田村明弘、森下知晃、田上高広

低温領域の熱年代学的手法に基づく南部フォッサマグナ地域の山地の隆起・削剥史解明

本州弧と伊豆弧の衝突帯である南部フォッサマグナ地域の山地において、山地の隆起・削剥史の解明のためにアパタイトフィッション・トラック(AFT)解析を実施した。南部フォッサマグナ地域から離れた筑波山、足尾山地、奥秩父では、岩体の形成年代に近いAFT年代が得られたのに対して、身延山地や関東山地では、岩体形成年代より有意に若いAFT年代が得られた。AFT長データを用いた熱史逆解析の結果によると、関東山地北部~中央部と身延山地では約1Ma、関東山地南部と奥秩父では4~5Ma頃の急冷イベントが推定されたが、これらは伊豆ブロックと丹沢ブロックの衝突時期とそれぞれ一致する。各ブロックの衝突と本地域の山地形成の関係については今後の検討課題である。

フィッション・トラックニュースレター No.32 pp.8-11 2019
福田将眞、末岡茂、長谷部徳子、田村明弘、森下知晃、田上高広

高空間解像度の熱年代マッピングによる奥羽脊梁山地の隆起形態の推定:アパタイトフィッション・トラック法による展開

東北日本弧の奥羽脊梁山地について、稠密な熱年代マッピングと斜面発達モデルの比較によって、隆起形態の制約を試みた。本研究で対象とした奥羽脊梁山地の南部では、山地の外側から内側に向かってアパタイトFT年代が若くなる(削剥速度が速くなる)傾向が見られた。従来提唱されていた奥羽脊梁山地の隆起モデルは、傾動隆起モデルとドーム状隆起モデルの2つであるが、斜面発達モデルを用いた検討によると、このような削剥速度分布は、ドーム状隆起モデルを支持すると考えられる。本研究地域では、脆性的なブロック状の変形よりも、地下の高温領域における塑性変形の伝播が支配的だと考えられるが、奥羽脊梁山地の他の箇所にもこの結果が適用できるかどうかは今後の課題である。

フィッション・トラックニュースレター No.32 pp.12-16 2019
末岡茂

第43回日本フィッション・トラック研究会実施報告

第43回フィッション・トラック研究会が、2018年11月28日から11月30日にかけて、神戸市元町のJEC日本研修センターにて開催された。本研究会は、ESR応用計測研究会及びルミネッセンス年代測定研究会と合同で行われ、42名の参加者により、29件の発表が行われた。また、11月29日には、第43回フィッション・トラック研究会総会も行われ、今後のフィッション・トラック研究会の体制や運営方法などについて議論された。

フィッション・トラックニュースレター No.32 pp.20-22 2019
末岡茂、田上高広

低温領域の熱年代学の原理と地殻浅部のテクトニクスへの応用

熱年代学は熱による放射年代の若返りを利用して、試料の熱史を推定する学問領域であり、世界各地において隆起・削剥史の解明に用いられてきた。本稿では、前半部では熱年代学の原理についてレビューする。すなわち、代表的な熱年代学的手法、熱アニーリングの数学的モデル、閉鎖温度やpartial annealing zoneの概念、熱史の逆解析手法などについて紹介する。後半部では、テクトニクスヘの応用と題して、隆起・削剥に係る用語の整理、年代から冷却史や削剥史を復元する手法、主要な応用事例などについて述べる。

地学雑誌 Vol.128 No.5 pp.707-730 2019
島田耕史

有限ひずみ関連式とせん断ひずみの概要把握法の図解例

近年、地球科学的研究開発は多様な専門的背景を持つメンバーの共同作業によって進められている。変動帯に位置する我が国では、分析用試料がどのような変形を受けてきたかの理解が重要である。そのため研究開発の可能な限り早期から、構造地質的観点による変形構造の解釈を示すことが期待される。本解説は、自学や参考のために構造地質学の非専門家の技術者が手に取りやすい邦文教科書を解説する参考資料として、地質体の有限ひずみに関連する式の幾何学的図解と、せん断ひずみの概要把握法の図解例を示した。

地質技術 No.9 pp.25-40 2019
横山立憲

レーザーアブレーション試料導入法を用いた炭酸塩鉱物の局所年代測定

原子核崩壊による核種変化、または放射線による損傷を利用して岩石や化石試料の形成年代を測定する放射年代測定は、地球惑星科学の分野において、過去の自然事象を解明する際に広く用いられる。岩石・鉱物試料の中でも、炭酸塩鉱物の年代測定技術の開発は、近年急速に進みつつある。炭酸塩の年代測定は、例えば鍾乳石や蒸発岩及び鉱石の形成年代を知るために実施されてきたが、岩石の割れ目を充填するように存在する炭酸塩は、過去の地下水から沈殿して生成され、その年代情報は地下水流動経路の変遷の解読に繋がり、過去の断層運動の解明などにも大きく寄与すると期待される。炭酸塩が地下環境において、地下水から段階的に成長した場合、その内部には微細な累帯構造が形成されることがある。また、炭酸塩の起源となる水の微量元素組成が変化した場合、累帯間で微量元素組成に違いが生じうる。このような試料について分析を実施する場合に有効な局所分析手法の一つとして、レーザーアプレーション装置と誘導結合プラズマ質量分析装置を組み合わせたLA-ICP質量分析法がある。本稿では、LA-ICP質量分析法を用いた炭酸塩鉱物の年代測定技術の開発について紹介する。

Isotope News No.764 pp.11-14 2019
永田和宏、古主泰子、松原章浩、國分陽子、中村俊夫

加速器質量分析(AMS)による和釘の14C年代と製造年代

和釘は、6世紀後半から江戸時代まで、たたら製鉄というわが国古来の製鉄法で作られた。和釘の質は、たたら製鉄によって作られた鋼鉄に依存し、製鉄の時期による。本研究では、神社仏閣の修理の際廃棄される3本の和釘について加速器質量分析法による14C年代測定を行い、製造年代を推定した。得られた14C年代を暦年較正し、その結果と神社仏閣の歴史や修理記録と照合することにより、製造年代を決定した。東大寺大仏殿、京都曼珠院庫裏、吉野金峯山寺蔵王堂の和釘の製造年代は、それぞれ、1692年より前、12世紀初めおよび1592年以前の修理あるいは再建時であることがわかった。

鉄と鋼 Vol.105 No.4 pp.488-491 2019

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
S. Fukuda, S. Sueoka, B. P. Kohn and T. Tagami

(U-Th)/He thermochronometric mapping across the northeast Japan Arc: towards understanding mountain building in an island-arc setting

島弧の山地形成の解明を目的として、東北日本弧北部において(U-Th)/He熱年代を用いて冷却・削剥史を推定した。10地点の試料から88.6-0.9Maのアパタイト年代、83.9-7.4Maのジルコン年代が得られた。アパタイト年代から推定した削剥速度は、前弧側で<0.05mm/yrと低い値を示し、古第三紀以降の緩慢な削剥が推測された。一方、奥羽脊梁山地と背弧側では0.1-1.0mm/yr以上の削剥速度が得られ、3-2Ma以降の隆起イベントを反映していると考えられる。このような削剥史の対照性は、東北日本弧南部における先行研究の結果と整合的で、主にプレート沈み込みに起因した東北日本弧全体に共通の性質だと考えられる。一方で、特に背弧側では削剥速度の南北差が大きく、hot fingersのような島弧直交方向の構造の影響が示唆された。

Earth, Planets and Space (Internet) Vol.72 No.1 pp.24_1-24_19 2020
M. Niwa, T. Kamataki, H. Kurosawa, Y. Kokubu and M. Ikuta

Seismic subsidence near the source region of the 1662 Kanbun Hyuganada Sea earthquake: Geochemical, stratigraphical, chronological, and paleontological evidences in Miyazaki Plain, southwest Japan

海溝型巨大地震に伴う地殻変動の傾向を明らかにする研究開発の一環として、宮崎平野を事例対象として、完新世堆積物の詳細な化学分析及び微化石分析を行い、陸成層から海成層への急激な環境変化を伴う層準を特定した。さらに、放射性炭素年代測定及び既往のテフラ分析の結果に基づき、この急激な環境変化を伴う層準が、歴史記録によって指摘されている1662年の寛文日向灘地震に伴う沈降に起因する可能性が高いことを明らかにした。

Island Arc Vol.29 No.1 pp.e12341_1-e12341_26 2020
G. E. King, S. Tsukamoto, F. Herman, R. H. Biswas, S. Sueoka and T. Tagami

Electron spin resonance (ESR) thermochronometry of the Hida range of the Japanese Alps: Validation and future potential

石英の電子スピン共嗚(ESR)法は、岩石の冷却史の推定に有効な可能性が示唆されていたが検証が不十分だった。本研究では飛騨山脈の試料を用いてESR熱年代法の検証を行った。Al中心とTi中心の熱安定性は従来の予想より低く、長石のルミネッセンスと同程度と推定された。ESRデータから推定された熱史は、同じ試料のルミネッセンスデータから推定された熱史と同様のパターンを示した。一方、ESRの方がより長期間の熱史を復元することができ、石英のESR熱年代法が第四紀後期の地形発達史の解明に広く有用である可能性が示された。

Geochronology (Internet) Vol.2 No.1 pp.1-15 2020
Y. Minami, T. Ohba, S. Hayashi, Y. Kokubu and K. Kataoka

Lahar record during the last 2500 years, Chokai Volcano, northeast Japan: Flow behavior, sourced volcanic activity, and hazard implications

烏海火山北麗に分布するラハール堆積物について堆積層解析、放射性炭素同位体年代測定、古記録解析を行った。以上の結果から、過去2500年間において少なくとも紀元前2~5世紀、紀元前2~4世紀、紀元5~7世紀、紀元871年、紀元1801年に大規模なラハールが発生していることが明らかになった。これらのラハールはその原因となった火山現象から以下の3つのタイプに区分でき、それぞれ(1)岩屑なだれ堆積物の再堆積、(2)マグマ噴火、(3)水蒸気噴火である。これら3種類のラハールは遠方において、以下の異なる特徴を示すことが明らかになった、(1)遠方においても大規模な粘着性土石流として流動する、(2)流動中の分化・希釈により遠方では河川流として流動する、(3)小規模な粘着性ラハールとなる。

Journal of Volcanology and Geothermal Vol.387 pp.106661_1 - 106661_17 2019
S. Sueoka, Z. Ikuho, N. Hasebe, M. Murakami, R. Yamada, A. Tamura, S. Arai and T. Tagami

Thermal fluid activities along the Mozumi-Sukenobu fault, central Japan, identified via zircon fission-track thermochronometry

ジルコンフィッション・トラック(ZFT)熱年代により、茂住祐延断層沿いの熱異常検出を試みた。ZFT年代は110-73Ma、ZFT長は7.1-9.0μmを示し、これらを基にした熱史逆解析の結果から、約60Maと30-15Maの再加熱イベントが認定された。前者は約65Maの神岡鉱床の形成に伴う熱水活動を反映していると考えられる。後者は日本海拡大時の火成活動起原の加熱で、高温流体の滞留が介在している可能性が高い。

Journal of Asian Earth Sciences: X (Internet) Vol.2 pp.100011_1-100011_11 2019
N. Katsuta, M. Takano, N. Sano, Y. Tani, S. Ochiai, S. Naito, T. Murakami, M. Niwa and S. Kawakami

Quantitative micro-X-ray fluorescence scanning spectroscopy of wet sediment based on the X-ray absorption and emission theories: Its application to freshwater lake sedimentary sequences

海や湖の堆積物の連続的な化学組成変化は、古環境の変化を推定する上で重要な情報となる。しかし、このような含水堆積物の化学組成をX線蛍光分析で測定する際は、吸着水がX線強度に及ぼす影響の評価が問題となる。本研究では、X線吸収・放出理論に基づきX線強度を補正する手法を検討し、含水堆積物に対して、μ-XRF走査型顕微鏡により化学組成の定量データを連続的に取得することを可能にした。

Sedimentology Vol.66 No.6 pp.2490-2510 2019
M. Niwa, K. Shimada, T. Ishimaru and Y. Tanaka

Identification of capable faults using fault rock geochemical signatures: A case study from offset granitic bedrock on the Tsuruga Peninsula, central Japan

地表付近での最近の断層活動に伴う化学組成変化を特定するため、発達史の異なる2つの断層破砕帯において岩石の鉱物・化学組成分析を行った。その結果、最近活動した断層では、すべり面に沿ってMnOの増加やFeOの減少、Ceの正の異常といった地下から上昇した地下水の酸化に伴う化学組成変化が特徴的に認められる一方、長期にわたり活動していない断層では、酸化に伴う化学組成変化は破砕帯の構造に関係なく、地表からの地下水の既存の割れ目への流入で説明できることが示された。

Engineering Geology Vol.260 pp.105235_1 - 105235_15 2019
P. Lin, C. Xu, D. I. Kaplan, H. Chen, C. M. Yeager, W. Xing, L. Sun, K. A. Schwehr, H. Yamazaki, Y. Saito-Kokubu, P. G. Hatcher and P. H. Santschi

Nagasaki sediments reveal that long-term fate of plutonium is controlled by select organic matter moieties

日本原子力研究開発機構等により長崎原爆由来のプルトニウムが含まれると明らかにされた堆積物を用いて、プルトニウムの存在形態を調べた。選択抽出後、エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共嗚質量分析装置により分子的特性を調べた結果、55%のプルトニウムが難分解性有機物と結合し、31%が他の有機物、残り20%以下が鉱物粒子に固定化されていることがわかった。現在の長期的なプルトニウムの処分や環境汚染修復のモデルでは、溶解が制限されることや鉱物表面への吸着が表層でのPuの移動性を制御していると考えられていたが、本研究により有機物がPuの隔離に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。

Science of the Total Environment Vol.678 pp.409-418 2019
S. Sueoka and T. Tagami

Low-temperature thermochronological database of bedrock in the Japanese Islands

日本列島における長期の削剥史の把握のため、日本列島の基盤岩類における低温領域の熱年代データをコンパイルした。計90編の文献、1096地点のデータから、アパタイトフィッション・トラック年代418点、ジルコンフィッション・トラック年代851点、アパタイト(U-Th)/He年代42点、ジルコン(U-Th)/He年代30点が収集された。データの密度には地域差があり、今後はデータ数の少ない地域でのデータの充実、特に報告数が少ない(U-Th)/He年代の測定が望まれる。

Island Arc Vol.28 No.4 pp.e12305_1 - e12305_8 2019
S. Fukuda, S. Sueoka, N. Hasebe, A. Tamura, S. Arai and T. Tagami

Thermal history analysis of granitic rocks in an arc-trench system based on apatite fission-track thermochronology: A case study of the Northeast Japan Arc

削剥史推定のため、東北日本弧南部の花崗岩類にアパタイトフィッション・トラック熱年代解析を適用した。前弧側では79.5-66.0Ma、奥羽脊梁山脈では29.8-5.5Ma、背弧側では19.1-4.6Maの年代が得られた。熱史逆解析の結果と併せると、前弧側は新生代を通じて静穏(削剥速度が0.05mm/yr以下)と考えられる一方で、奥羽脊梁と背弧側は3-2Ma以降の隆起に伴う急速な削剥(1-数mm/yr)が推定された。また、奥羽脊梁は傾動ポップアップ型の隆起モデルよりも、ドーミング型の隆起モデルの方が年代分布と整合的である。背弧側山地の隆起開始時期は、従来のモデル(5-3.5Ma)と異なり、奥羽脊梁と同時期(3-1Ma)と推定され、背弧側におけるテクトニクス史の地域差が示唆された。

Journal of Asian Earth Sciences; X (Internet) Vol.1 pp.100005_1 - 100005_9 2019

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